株主間契約(SHA)とは?定める条項や活用するメリット、注意点を解説

2024年7月5日

株主間契約(SHA)とは?定める条項や活用するメリット、注意点を解説

このページのまとめ

  • 株主間契約(SHA)とは、同じ会社の株主間で取り決めをして締結する契約のこと
  • 株主間契約は会社運営のリスクヘッジや少数株主の意向の反映などのために利用される
  • 株主間契約のメリットは、柔軟にルール設定できる点や株主の争いの抑止力となる点など
  • 株主間契約は効力の範囲が限られる点や、法的拘束力がないことなどに注意が必要
  • 株主間契約書ではガバナンスや持株比率、デッドロックなどについて定めることが多い

「株主間契約とは何のために締結する?」と疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
株主間契約は、株主同士における企業経営に関するルールを取り決めるために締結されます。
有効活用するために、記載項目をよく精査することが必要です。

本コラムでは、株主間契約の概要や必要となる場面、メリットなどを紹介します。
また、株主間契約に関する注意事項や、株主間契約書において規定すべき条項についても詳しく解説します。

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株主間契約(SHA)とは

株主間契約(SHA)とは、とある会社の株式を保有する株主同士で取り決めを行って締結する契約のことです。
株主間契約は、英語で「Shareholders Agreement」といいます。

株主間契約では、コーポレートガバナンスや株式を売却するときの権利などの事柄について取り決めます。
株主間契約を結ぶことによって、経営上のトラブルを減らす効果が期待できます。

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株主間契約を締結する8つの場面

株主間契約を締結する主なシチュエーションは、下記の8つです。

  • 合弁会社を設立する場面
  • スタートアップ創業時の投資を行う場面
  • 会社設立以降に第三者が資本参加する場面
  • 上場企業の大株主間で合意を形成する場面
  • 少数株主の意向を反映させたい場面
  • 株式の譲渡に関して条件を加えたい場面
  • デッドロックを回避したい場面
  • M&AやIPOを効率よく進行させたい場面

場面ごとに、規定するべき条項は変わります。
状況に合わせて株主間契約の内容を決めていきましょう。

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株主間契約の4つのメリット

株主間契約を取り決める主なメリットは、下記の4つです。

  1. 企業経営に関するルールを柔軟に設定できる
  2. 煩雑な手続きを省略できる
  3. 株主同士の争いの抑止力になる
  4. 取り決めの内容を開示しなくてもよい

それぞれのメリットについて詳しく解説します。

1.企業経営に関するルールを柔軟に設定できる

株主間契約は株主同士で取り決める規約であり、会社からの制限を受けることはありません。
そのため、株主の権利・義務に関するルールを柔軟に設定することが可能です。

2.煩雑な手続きを省略できる

株主間契約では、当事者にあたる株主の間で契約を締結すれば、手続きが完了します。

株主が持つ権利を調整する方法にはたとえば種類株式の発行が挙げられますが、種類株式を発行するためには定款変更や登記申請が必要です。
株主間契約の場合はそのような手続きをする必要がありません。
煩雑な手続きを踏まずにルールを設定できることは、株主間契約の大きなメリットだといえるでしょう。

3.株主同士の争いの抑止力になる

株主間契約では、取り決めた内容に違反したときの罰則についても規定します。
株主間契約に違反した場合、違反者に対して違約金の支払いなどの損害賠償が請求されます。

こうした罰則が存在することで株主間契約を守ろうとする意識が強まり、株主同士の争いが起きにくくなるでしょう。

4.取り決めの内容を開示しなくてもよい

株主間契約はあくまで当事者の株主同士での取り決めであり、その内容を公表する必要はありません。
一方で、種類株式を発行するケースでは登記申請や定款変更が発生し、その内容はほかの株主や債権者に見られてしまう可能性があります。

当事者以外の人に取り決めた内容を知られずに済むことは、株主間契約を活用するメリットの一つです。

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株主間契約の3つの注意点

株主間契約を締結するにあたって留意しておくべきことは、主に下記の3つです。

  1. 当事者以外には効力が発生しない
  2. 法的拘束力がない
  3. 複数の株主間契約のなかで矛盾が生じるおそれがある

それぞれの注意点について詳しく解説します。

1.当事者以外には効力が発生しない

株主間契約は、契約を締結した当事者となる株主の間でのみ効力を発揮します。
当事者ではない株主には効力が及ばないため、注意が必要です。
株主間契約を締結していない株主は、意向に沿わない行動を起こす可能性があります。

2.法的拘束力がない

法律である会社法とは異なり、株主間契約で取り決めた条項は法的拘束力を有しません。
株主間契約の内容に反することをされた場合、取り決めた内容にある損害賠償を請求することは可能です。
しかし、その行為を無効にしたり強制的に従わせたりする効力は持たないため、注意しましょう。

3.複数の株主間契約のなかで矛盾が生じるおそれがある

別の株主との間で複数の株主間契約を締結するときには注意が必要です。
契約内容によっては「とある株主との取り決めを守ると、別の株主との取り決めを破ることになる」などの事態が発生するおそれがあります。

複数の株主間契約を結ぶ場合は、その内容に矛盾が生じていないか必ず事前に確認しましょう。
また、弁護士などの専門家にチェックやアドバイスをしてもらうことがおすすめです。

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株主間契約書で定めるべき条項

株主間契約書を作成するにあたって定める条項を大別すると、下記の6つに分けられます。

・ガバナンスに関する条項
・持株比率に関する条項
・株式譲渡に関する条項
・事業に関する条項
・契約終了に関する条項
・デッドロックに関する条項

条項の詳しい内容について、分類ごとに紹介します。

ガバナンスに関する条項

ガバナンスに分類される条項では、たとえば下記に列挙するものに関する条項を株主間契約書において定めます。

  • 取締役会の設置
  • 監査役・監査役会の設置
  • ステアリングコミッティ(運営委員会)の設置
  • 株主間協議会の設置
  • 取締役および監査役の選任
  • 取締役および監査役の解任
  • 拒否権条項

株主間契約において、会社法上の機関設計や役員の選任・解任について定めることがあります。
また、少数株主の意向を意向を反映させるために拒否権条項を規定するケースもあります。

持株比率に関する条項

出資した比率に分類される条項では、たとえば下記に列挙するものに関する条項を株主間契約書において定めます。

  • 持株比率に比例した新株引受権
  • 増資時の持株比率に比例した追加出資義務
  • 持株比率の変更における総株主の合意の要否

少数株主が持株比率を維持できるように、希釈化防止に関する条項を株主間契約書によって整えることがあります。

株式譲渡に関する条項

株式譲渡に関連する条項では、たとえば下記に列挙するものに関する条項を株主間契約書において定めます。

  • 株式の譲渡制限
  • 第三者への株式譲渡
  • 株主同士における株式の譲渡

具体的な権利の例は、以下の表のとおりです。

名称概要
譲渡制限第三者へ株式を譲渡することを禁止すること
先買権(First Refusal Right)当該株主が自身が保有している株式を第三者に譲渡しようとするときに、特定の株主に優先的に購入できる権利
強制売却請求権(Drag Along Right)ある株主が自身が保有している株式を第三者に譲渡しようとするときに、ほかの株主に対して、同条件で株式を譲渡するように請求できる権利
共同売却参加権(Tag Along Right)ある株主が自身が保有している株式を第三者に譲渡しようとするときに、ほかの株主も同じ第三者に対して、同条件で株式を買い取るように請求できる権利
コールオプション(Call Option)一定の事由が発生したときに、当該の相手に対して、あらかじめ決定した行使価格で株式を自身に譲渡するように請求できる権利
プットオプション(Put Option)一定の事由が発生したときに、自身が保有している株式をあらかじめ決定した行使価格で買い取るように請求できる権利

株式の譲渡・譲受によって権利が変動するため、株主間契約によって規定を設けることが多いです。

事業に関する条項

事業に関連する条項では、たとえば下記に列挙するものに関する条項を株主間契約書において定めます。

  • 会社と株主間における取引の内容および条件
  • 知的財産権の取り扱い
  • 資金調達の規定
  • 配当に関する方針
  • 競業の禁止

定める条項は当該会社が営む事業によって異なります。
雛形をそのまま使用することは避け、事業内容に合わせた株主間契約書を作成しましょう。

契約終了に関する条項

株主間契約の終了についても、契約書に明記して定めます。

株主間契約の終了事由の例には以下のものが挙げられます。

  • 株主間契約において深刻な義務違反があった
  • 倒産手続や民事再生手続の開始などの信用不安が発生した
  • 株主の異動などによって支配権が移転した
  • 契約の当事者が株主ではなくなった
  • 契約のすべての当事者が株主間契約の終了に合意した
  • 株主総会で解散決議があった(※合弁会社の場合)

なお、株主間契約の契約終了に関する条項を定める際は、コールオプションやプットオプションによる救済措置を設けることが一般的です。

デッドロックに関する条項

「デッドロック」とは、株主の間で対立が生じ、会社としての意思決定できず膠着状態に陥ることです。
株主間契約では、デッドロックの状態になった場合の対処方法について規定することがあります。

デッドロックを解消するために定められる条項の例は、下記のとおりです。

  • 株主間での協議によって結論を出す
  • 議決権の保有率が最も高い株主の意向に従う
  • 株式を強制的に譲渡させる
  • 株式の売却により議決権を放棄する権利を与える
  • 会社の解散・清算を行う

デッドロックに陥ると会社の意思決定が滞ってしまいます。
デッドロックが発生しないよう、株主同士でよく話し合い、株主間契約であらかじめ定めておきましょう。

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まとめ

株主間契約(Shareholders Agreement、SHA)とは、会社の株式を保有する株主の間で取り決めを行い、契約書を締結することです。

株主間契約は、合弁会社を設立する場面やスタートアップが創業する際の投資において活用されることが多いです。また、少数株主の権利を守ることやデッドロックを回避することを目的に締結することもあります。

株主間契約を活用することで、煩雑な手続きを踏むことなく柔軟に規約を設定することが可能になります。株主間契約には会社法のような強制力はないものの、円滑な会社運営に大きく寄与する契約です。有効活用しましょう。

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