事業承継ガイドラインとは?中小企業庁が示す指針や改訂後の内容を紹介

2024年6月26日

事業承継ガイドラインとは?中小企業庁が示す指針や改訂後の内容を紹介

このページのまとめ

  • 事業承継ガイドラインとは、会社や事業の引継ぎを円滑に行うための手引書
  • 事業承継ガイドラインは深刻な後継者問題を受け、中小企業庁が策定
  • 政府は事業承継ガイドラインのほか、中小M&Aガイドラインなどの資料も公表している
  • 事業承継ガイドラインは過去に2度改訂されており、より充実した内容になっている
  • 事業承継ガイドラインを活用し、引継ぎのための準備をスタートさせよう

「事業承継ガイドラインとは何に役立つ?」と疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
事業承継ガイドラインは、後継者の引継ぎを円滑にするための手引書として活用することが可能です。

本コラムでは、事業承継ガイドラインの意義やほかのガイドラインとの違い、活用方法などを紹介します。また、事業承継ガイドラインに記載してある内容を章ごとに解説しています。
事業承継を検討している方は、ぜひご覧ください。

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事業承継ガイドラインとは

事業承継ガイドラインとは、後継者に会社・事業を引き継ぐことを検討している経営者を対象とした手引書です。

事業承継を考えている中小企業および小規模事業者の経営者に向けて、事業承継の概要や事業承継診断、スムーズな事業承継のための手順などを示しています。

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事業承継ガイドラインが策定された目的

事業承継ガイドラインが策定された背景には、中小企業における深刻な後継者不在問題があります。
経営者が高齢となったあとも会社を引き継いでくれる後継者が見つからず、廃業に追い込まれる中小企業が数多く存在します。
中小企業が廃業すると、会社が持っていた貴重な技術が途絶えてしまったり、従業員の雇用が失われてしまったりと、深刻な問題につながるでしょう。

中小企業庁はそのような状況を打破しようと、中小企業の事業承継にまつわる取り組みに対してさまざまな支援を実施しています。
その支援策の一つが、事業承継ガイドラインの策定です。
事業承継ガイドラインを策定して事業承継への道筋を示すことにより、中小企業の円滑な事業承継を推進しています。

参照元:中小企業庁『事業承継を知る

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事業承継ガイドラインとほかの手引書との違い

日本政府は中小企業の事業承継を後押しするべく、事業承継ガイドラインのほかにも多くの手引書を用意しています。
事業承継ガイドライン以外に公表している主な資料は、下記のとおりです。

  • 中小M&Aガイドライン
  • 事業引継ぎガイドライン
  • 中小企業事業承継ハンドブック
  • 中小PMIガイドライン

ここでは、それぞれの手引書の概要を紹介します。

中小M&Aガイドラインとは

中小M&Aガイドラインとは、事業承継方法の一つであるM&Aに関する手引書です。
中小M&Aガイドラインには後継者不在問題に直面する経営者向けの内容と、M&Aの支援機関に向けた内容が盛り込まれています。
中小M&Aガイドラインの第1版は、2020年に策定されました。

経営者を対象にした内容には、M&Aの基本情報や中小M&Aの事例、進め方や注意点などが載っています。
また、事業承継の手段にM&Aを選んだ際に頼れる各種支援機関や手数料の目安などについても記載しています。
そのほか、M&Aに関する参考資料もダウンロード可能です。

M&Aの支援機関向けの内容には、M&Aのスタートからクロージング後までの詳細が示されているため、経営者がM&Aの全容を知るためにも役立つでしょう。

参照元:
経済産業省『中小M&Aガイドライン(第2版)』令和5年9月
経済産業省『中小M&Aガイドライン(第2版)参考資料(全体)

事業引継ぎガイドラインとは

事業引継ぎガイドラインとは、事業承継の重要性や手続きフロー、トラブル時の対応方法などを示した手引書です。

事業引継ぎガイドラインは2015年3月に策定されたもので、先述した中小M&Aガイドラインの前身となる指針です。
中小M&Aガイドラインは、事業引継ぎガイドラインを全面改訂するかたちで作成されました。

参照元:中小企業庁『事業引継ぎガイドライン』平成27年3月

中小企業事業承継ハンドブックとは

中小企業事業承継ハンドブックとは、政府が取り組んでいる事業承継に関する支援策を周知するために作成された資料です。
円滑な事業承継のために必要な情報を、Q&A形式で掲載しています。

中小企業庁は、2008年に「中小企業事業承継ハンドブック 20問20答 経営承継円滑化法対応版」を作成しました。
翌年2009年には、税制改正を反映させた「中小企業事業承継ハンドブック 26問26答 平成21年度税制改正対応版」を公表しています。

参照元:
中小企業庁『中小企業事業承継ハンドブック 20問20答 経営承継円滑化法対応版』平成20年9月
中小企業庁『中小企業事業承継ハンドブック 26問26答 平成21年度税制改正対応版』平成21年8月

中小PMIガイドラインとは

中小PMIガイドラインとは、PMIの重要性や取り組みなどについてまとめた手引書です。
PMI(Post Merger Integration)とは、M&A実施後の経営統合作業のことを指します。
M&Aによる効果を最大化させるためには、PMIにしっかり取り組むことが大切です。

中小PMIガイドラインは、PMIに対する理解が不足している状況を受けて、中小企業庁が2022年に策定しました。
中小PMIガイドラインには、中小企業のPMIの役割や全体像や、具体的な進め方などが掲載されています。

参照元:中小企業庁『中小PMIガイドライン』令和4年3月

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事業承継ガイドラインの改訂内容

事業承継ガイドラインの内容は、これまでに2回改訂されています。

最初の事業承継ガイドラインは、2006年に事業承継協議会によって発表されました。
その後内容の見直しを行い、10年後の2016年に中小企業庁より改訂版である第2版が公表されました。

事業承継ガイドラインの2回目の改訂は、2022年に行われています。
2022年に公表された第3版の改訂のポイントは下記の3つです。

  • 掲載データや施策などを更新
  • 親族外承継に関する説明を充実
  • 後継者向けの内容を加筆

事業承継ガイドラインは、スムーズな事業承継をより一層推し進めるために改訂が重ねられています。
2024年6月時点では、2022年3月に公開された『事業承継ガイドライン(第3版)』が最新の事業承継ガイドラインです。

参照元:
中小企業庁『「事業承継ガイドライン」について
中小企業庁『「事業承継ガイドライン」を改訂しました

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事業承継ガイドラインの内容

ここでは、中小企業庁が公開している『事業承継ガイドライン(第3版)』の内容を紹介します。
章は全部で6章あり、以下の項目に分けて書かれています。

  1. 事業承継の重要性
  2. 事業承継に向けた準備の進め方
  3. 事業承継の類型ごとの課題と対応策
  4. 事業承継の円滑化に資する手法
  5. 個人事業主の事業承継
  6. 中小企業の事業承継をサポートする仕組み

以下、章ごとに詳しく解説します。

1.事業承継の重要性

「第一章 事業承継の重要性」の章では、中小企業の事業承継を取り巻く現状や、事業承継の概要について取り上げ、事業承継に取り組む重要性を説いています。

第一章では、中小企業の現状や経営者の高齢化問題、休廃業・解散などの状況について、データを示しながら紹介しています。
また、ほかの経営者の事業承継に対する姿勢や事業承継後の成長率、事業承継の成功事例および失敗事例も掲載されており、事業承継をよりリアルな課題として捉えられるようになるでしょう。

2.事業承継に向けた準備の進め方

「第二章 事業承継に向けた準備の進め方」の章では、主に事業承継・M&Aの進め方を紹介しています。

本章では、事業承継の必要性の検討から事業承継・M&Aの実行までのプロセスを、5つのステップに分けて解説しています。

  • ステップ1:事業承継に向けた準備の必要性の認識
  • ステップ2:経営状況・経営課題等の把握(見える化)
  • ステップ3:事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)
  • ステップ4ー1(※親族内・従業員承継の場合):事業承継計画の策定
  • ステップ4ー2(※社外への引継ぎの場合):M&Aの工程の実施
  • ステップ5:事業承継・M&Aの実行

事業承継の具体的な流れ・方法や、事業承継を進めるにあたっての注意点、成功事例が載っているため、事業承継の進め方のイメージを掴むことができるでしょう。

また、第二章には事業承継・M&Aの実行後に会社を発展させるための取り組みや成功事例も紹介されています。
そのほか、廃業を決断する前に検討するべき事項や、円滑な廃業のための事前準備・支援制度についても知ることができます。

3.事業承継の類型ごとの課題と対応策

事業承継の主な類型には、親族内承継・従業員承継・M&A(社外への引継ぎ)の3つがあります。
「第三章 事業承継の類型ごとの課題と対応策」の章は、類型ごとの課題とその対応策を紹介する内容です。

第三章では、後継者の選定や育成、事前協議など、スムーズな引継ぎのためにするべきことを事例をまじえて紹介しています。
また、納税や経営者保証、資金不足、株式・事業用資産の分散などの諸問題への対処方法も載っています。

特にM&A(社外への引継ぎ)の項目では、事業承継の際に活用される代表的なM&Aの手法や支援機関についても解説しています。

4.事業承継の円滑化に資する手法

「第四章 事業承継の円滑化に資する手法」の章は、事業承継をスムーズに進めるための手法に関する内容です。
ここで紹介されているのは、種類株式・信託・生命保険・持株会社の活用方法です。

種類株式の項目では「議決権制限種類株式」「配当優先種類株式」「取得条項付種類株式」「拒否権付種類株式」の4つの種類株式の活用方法や導入するための手続きについて解説しています。

信託については、信託の種類と信託が事業承継において果たす機能を紹介しています。
ここで紹介されている信託は「民事信託と商事信託」「遺言代用(型)信託」「他益信託と自益信託」「議決権行使指図権」「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」の5つです。
また、信託の利用方法についても紹介されています。

生命保険や持株会社については、ケース別の活用方法や事例を掲載しています。

5.個人事業主の事業承継

「第五章 個人事業主の事業承継」の章では、個人事業主が事業承継を行うときの課題と対応方法を紹介しています。
事業承継ガイドラインでは、法人の事業承継だけでなく、個人事業主の事業承継に関する情報までカバーされています。

個人事業主とは、法人を設立せず、独立して事業を営む自然人のことです。
個人事業主の事業承継の手段には、主に親族内承継が選択されています。
第五章では、個人事業主が事業承継に取り組む際に課題となる、人(経営)の承継 ・資産の承継・知的資産の承継の3つについて、それぞれの実態や進めるときのポイントを載せています。

また、個人事業主がM&Aによって社外に引継ぎを行うケースについても言及しています。
紹介されている主な内容は、個人事業主が活用可能なM&A支援機関と後継者人材バンクの特徴です。
そのほか、後継者人材バンクを活用して事業承継を成功させた個人事業主の事例も掲載されています。 

6.中小企業の事業承継をサポートする仕組み

「第六章 中小企業の事業承継をサポートする仕組み」の章では、中小企業が事業承継を検討するときに利用可能なあらゆる支援体制を紹介しています。

中小企業が事業承継を進める際に利用できる主な支援機関は、下記のとおりです。

  • 商工会議所・商工会 
  • 中小企業団体中央会
  • 認定経営革新等支援機関
  • 行政書士
  • 公認会計士
  • 司法書士
  • 税理士
  • 中小企業診断士
  • 弁護士
  • 金融機関
  • 登録M&A支援機関(M&A仲介会社やFAなど)
  • M&Aプラットフォーマー
  • 事業承継・引継ぎ支援センター
  • 中小企業活性化協議会
  • よろず支援拠点
  • 独立行政法人中小企業基盤整備機構
  • 中小企業庁・経済産業局

本章では、上記の支援機関の詳細や活用方法を紹介しています。

また、中小企業伴走支援の在り方を示した「経営力再構築伴走支援モデル」についても図付きで分かりやすく解説しています。
そのほか、事業承継診断や創業・事業再生との連携などについても言及しています。

参照元:中小企業庁『事業承継ガイドライン(第3版)』令和4年3月改訂 

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事業承継ガイドラインの活用方法

事業承継ガイドラインには、中小企業の事業承継を円滑化するための情報が網羅されています。
事業承継ガイドラインを参考にして事業承継に関する課題を認識し、各々の状況に応じた準備をスタートさせる指標として活用しましょう。

また、事業承継ガイドラインの第六章には、事業承継をサポートしてくれる支援機関の一覧と詳細が掲載されており、連絡先も載っています。
支援機関に相談し、事業承継の情報を得たり自身の状況を知ったりすることが、事業承継の第一歩です。
事業承継を検討している方はまずは支援機関とコンタクトをとり、早めの準備をスタートさせましょう。

そのほか、事業承継ガイドラインの末尾に載っている資料も活用可能です。
「事業承継診断票」「10カ年版事業承継計画」「5カ年版事業承継計画」のフォーマットや記入例が付いているので、事業承継の準備にお役立てください。

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まとめ

事業承継ガイドラインとは、事業承継の手引書です。
後継者への引継ぎを検討している中小企業・小規模事業者の経営者が事業承継を円滑に進められるよう、中小企業庁が公開しました。

事業承継ガイドラインを読めば、事業承継の概要や手順、課題と対策方法、サポートしてくれる支援機関など、事業承継に関連するあらゆる情報を知ることができます。
事業承継ガイドラインを活用し、自身の課題発見や事業承継に向けた準備を始めましょう。

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