抱合せ株式とは?発生する例や消滅のメリット、差益・差損の仕訳を解説

2024年6月12日

抱合せ株式とは?発生する例や消滅のメリット、差益・差損の仕訳を解説

このページのまとめ

  • 抱合せ株式とは、合併や会社分割の際に存続会社が保有する消滅会社の株式のこと
  • 抱合せ株式には対価の割り当てができず、合併や会社分割にともなって消滅する
  • 抱合せ株式が消滅するメリットは、節税効果が得られる可能性があること
  • 抱合せ株式消滅差損益は、会計処理上における「特別損益」に計上される

「抱合せ株式とは何?」と疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
抱合せ株式とは合併・会社分割を行う際に存続会社が保有する消滅会社の株式のことを指し、実施にともなって消滅します。

本コラムでは、抱合せ株式の概要や消滅するメリット、会計・税務処理の方法について解説します。また、抱合せ株式が消滅する場合の仕訳例も紹介するため、ぜひ参考にしてください。

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抱合せ株式とは

「抱合せ株式」とは、合併や会社分割が行われる際に、存続会社が保有している消滅会社の株式のことを指します。
「抱合せ株式」の読み方は「だきあわせかぶしき」で、英語では「Tie-in Shares」と表記します。

抱合せ株式には対価を割り当てることが認められていません。
そのため、合併や会社分割にともない、抱合せ株式は消滅します。

抱合せ株式消滅差損益とは

合併や会社分割が行われるとき、存続会社が消滅会社から引き継ぐ純資産は時価となり、消滅する抱合せ株式は簿価となります。
そのため、会計処理上で差額が発生します。
この差額のことを「抱合せ株式消滅差損益」と呼びます。

差額が純資産を増加させる場合は「抱合せ株式消滅差益」、反対に純資産を減少させる場合は「抱合せ株式消滅差損」になります。

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抱合せ株式が消滅する2つのメリット

抱合せ株式が消滅するメリットは、主に下記の2つです。

  • 損失や欠損金を損益通算できる
  • 相続税評価額を下げられる

抱合せ株式が消滅することによって、節税効果が見込めることがあります。
2つのメリットについて詳しく解説します。

損失や欠損金を損益通算できる

抱合せ株式が消滅するメリットの1つ目は、グループ内で合併・会社分割を行った際、損失や欠損金を損益通算できることです。

通常であれば、完全子会社だったとしても連結納税を選択しないケースでは他社の損失を相殺して申告することはできません。
しかし、抱合せ株式が消滅する場合は損失および欠損金を損益通算することが可能です。
グループ全体の節税効果が期待できるでしょう。

相続税評価額を下げられる

抱合せ株式が消滅するメリットの2つ目は、相続税評価額を下げられることです。

相続税の支払い額は、相続税評価額に基づいて決定されます。
抱合せ株式が消滅することにより抱合せ株式消滅差損が生じて、純資産を減らすことになった場合、相続税評価額が下がります。相続税評価額が下がれば、その分節税につながるでしょう。

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抱合せ株式が消滅する際の注意点

抱合せ株式が消滅する際、相続税評価が上がってしまうケースもあるため注意しましょう。

抱合せ株式が消滅することで抱合せ株式消滅差益が生じる場合、純資産が増加します。
純資産が増加すると相続税評価額が上がるため、支払う相続税が高くなってしまいます。

抱合せ株式の会計処理の方法

ここでは、グループ企業が吸収合併のスキームを用いた場合における抱合せ株式の会計処理について解説します。

グループ内の完全親会社が吸収合併存続会社、完全子会社が吸収合併消滅会社となる吸収合併を実施し、抱合せ株式が消滅する場合、会計処理は下記のとおりです。
なお、吸収合併は適格要件を満たすものと仮定します。

  1. 親会社は、吸収合併を実施する直前の帳簿価額で子会社の純資産を承継する
  2. 抱合せ株式の帳簿価額を減らす
  3. 差額を特別損益に計上する

抱合せ株式消滅差損益は、会計処理上の特別損益に計上します。
差額が純資産を増加させるケースでは「抱合せ株式消滅差益」、純資産を減少させるケースでは「抱合せ株式消滅差損」として計上してください。

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抱合せ株式の税務処理の方法

ここでは、グループ企業が吸収合併のスキームを活用したケースでの抱合せ株式の税務処理について解説します。

グループ内の完全親会社が吸収合併存続会社、完全子会社が吸収合併消滅会社となる吸収合併を実施し、抱合せ株式が消滅する場合、税務処理は下記のとおりです。
なお、吸収合併は適格要件を満たすものと仮定します。

  1. 親会社は、吸収合併を実施する直前の帳簿価額で子会社の純資産を承継する
  2. 親会社は、子会社の「資本金等の額」と「利益積立金」を承継する
  3. 抱合せ株式の帳簿価額を減らし、相当額の「資本金等の額」を減算する

会計上における「抱合せ株式消滅差損益」は、税務上においては損益金不算入となります。

抱合せ株式の帳簿価額が消滅会社の資本金等の額よりも大きい場合、吸収合併後に存続会社の資本金等の額が減少します。
抱合せ株式の帳簿価額が消滅会社の資本金等の額よりも小さい場合、吸収合併後に存続会社の資本金等の額が増加します。

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抱合せ株式の仕訳方法

グループ内において、完全親会社が存続会社、完全子会社が消滅会社となる、適格要件を満たす吸収合併を実施したケースにおける会計上の仕訳方法を解説します。

今回は、親会社を「A社」、子会社を「B社」とし、子会社である「B社」の各金額を下記のとおりに仮定します。

【ケース例】

子会社「B社」の現預金2,000万円
子会社「B社」の売掛金3,000万円
子会社「B社」の借入金1,000万円
子会社「B社」の当期純利益1,000万円

以下、存続会社(完全親会社)と消滅会社(完全子会社)に分けて、仕訳例を紹介します。

存続会社における抱合せ株式の仕訳方法

吸収合併存続会社となる親会社「A社」の仕訳は、下記のとおりです。

【親会社であるA社の仕訳】

借方貸方
現預金20,000,000借入金10,000,000
売掛金30,000,000B社株式30,000,000
抱合せ株式消滅差益10,000,000

吸収合併により、B社の現預金2,000万円と売掛金3,000万円がA社の資産として加えられるため、借方に振り分けます。
B社の借入金1,000万円も負債としてA社に引き継がれるため、借入金の金額は貸方に振り分けます。

A社は、B社株式を3,000万円で取得します。
その差額となる1,000万円は、「抱合せ株式消滅差益」として計上し、貸方に仕訳します。

消滅会社における抱合せ株式の仕訳方法

吸収合併消滅会社となる子会社「B社」の仕訳は、下記のとおりです。

【子会社であるB社の仕訳】

借方貸方
借入金10,000,000現預金20,000,000
B社株式30,000,000売掛金30,000,000
抱合せ株式消滅差損10,000,000

吸収合併によって、B社の現預金2,000万円と売掛金3,000万円がA社に移転して減少するため、貸方に振り分けます。
B社の借入金1,000万円はA社に引き継がれ、B社の負債は減少するため、借入金の金額は借方に振り分けます。

A社がB社から株式を取得するにあたって、B社の株主資本の3,000万円が減少します。
その差額となる1,000万円は、「抱合せ株式消滅差損」として計上し、借方に仕訳します。

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まとめ

抱合せ株式(Tie-in Shares)とは、合併や会社分割が実施されるときに存続会社が保有している消滅会社の株式のことです。抱合せ株式は合併や会社分割の際に消滅します。
抱合せ株式が消滅することによって、「抱合せ株式消滅差損益」という会計処理上の差額が発生します。

抱合せ株式が消滅する主なメリットは、損失・欠損金を損益通算できることや、相続税評価額を下げられることです。節税効果が得られる可能性があります。
ただし、場合によっては相続税評価額が上がり、かえって相続税が高くなるおそれもあるため注意しましょう。
専門家に相談し、抱合せ株式が消滅することで及ぼされる影響について事前に検討することが大切です。

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