医療法人の出資持分譲渡のやり方とは?手続きや税金についても解説

2024年6月4日

医療法人の出資持分譲渡のやり方とは?手続きや税金についても解説

このページのまとめ

  • 出資持分あり医療法人とは、出資を受けて運営する医療法人のこと
  • 医療法人における出資持分とは、出資額に応じて保有できる財産権のこと
  • 持分譲渡と社員・役員の入れ替えを行うことで、出資持分あり医療法人を譲渡できる
  • 出資持分を譲渡することの大きなメリットは、手続きが簡便に済むこと
  • 医療法人の出資持分譲渡を実施すると、譲渡所得と退職所得に対する課税が発生する

「医療法人の出資持分はどうすれば譲渡できる?」と疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
医療法人の出資持分は、出資持分譲渡契約書を交わして譲り渡します。社員の入れ替えを伴うケースが多いです。

本コラムでは、医療法人の出資持分を譲渡する方法や譲り渡すメリットを紹介。また、医療法人が出資持分および議決権を譲渡する手続きの詳しい流れや、発生する税金についても解説します。

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医療法人の類型

出資持分あり医療法人について理解を深めるため、まず最初に医療法人の類型について紹介します。

現行の医療法で定められている医療法人の類型は、下記の図のとおりです。

医療法人の類型の画像

引用元:厚生労働省『平成23年版 厚生労働白書』医療法人制度

医療法人は「社団医療法人」と「財団医療法人」の2つに大別されます。
両者の違いは、設立時の基盤です。社団医療法人は人の集まりが基盤で、財団医療法人は寄附された金銭等が基盤となっています。

さらに、社団医療法人は「出資持分あり社団医療法人」と「出資持分なし社団医療法人」の2つに分類されます。
出資持分あり社団医療法人は医療法の改正により新規設立はできなくなりましたが、現存する法人については「経過措置型医療法人」として存続しています。

出資持分あり社団医療法人とは、定款において出資持分に関する定めを設けている社団医療法人のことを指します。
出資持分あり社団医療法人は、一般の出資持分あり社団医療法人のほか「出資額限度法人」という類型があります。
出資額限度法人とは、出資持分の払い戻しや残余財産分配を行う際、その金額の払い込み出資額を限度とすることを定款で規定している出資持分あり社団医療法人のことです。

参照元:
厚生労働省『第1章 医療法人の基礎知識
厚生労働省『平成23年版 厚生労働白書

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医療法人における出資持分とは

出資持分あり社団医療法人は、出資を受けて運営しています。
医療法人における出資持分とは、出資者が出資した金額に応じて保有する財産権のことです。定款の定めに従い、医療法人から出資額に応じた払い戻しや残余財産の分配を受けることができます。
ただし、出資額限度法人に該当する出資持分あり社団医療法人である場合、払い戻しおよび分配は払い込み出資額が上限になります。

なお出資持分は、譲渡・贈与・相続を行うことが可能です。

出資持分と議決権の関係

出資持分は、出資額に応じて分配を受けられる点で一般企業における株式と性質が似ていますが、大きな相違点があります。
それは、出資持分と議決権に関連がないことです。

一般的な株式会社においては、株式の保有率に応じて議決権が与えられます。
一方で、医療法人においては出資持分に議決権は付与されません。

議決権を得るためには、別途医療法人の構成員である「社員」になることが必要です。
また、社員が有する議決権は1人につき1つと定められています。

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出資持分あり医療法人を譲渡する方法

出資持分あり医療法人の経営権を他の医療法人に譲渡したいと考えている場合、出資持分の譲渡と社員・役員の入れ替えを行う方法を採用できます。

下記の図は、社団医療法人の構成イメージ図です。

社団医療法人の構成イメージ図の画像

引用元:厚生労働省『第13回社会保障審議会医療部会 資料1』医療法人のイメージ図(社団の場合)

医療法人における最高意思決定機関は、社員で構成される「社員総会」です。
つまり、譲渡側の社員が退社して譲受側の自然人および非営利法人が入社し、社員の入れ替えを実施することによって実質的な経営権の移行が完了します。

通常、社員の入れ替え後に理事長・理事・監事の交代が行われます。
また、先述のとおり出資持分と議決権は関係がないため出資持分の譲渡は必須ではありませんが、社員・役員の入れ替えと同時に出資持分が譲渡されるケースがほとんどです。

参照元:
厚生労働省『医療施設の合併、事業譲渡に係る調査研究
厚生労働省『第2章 医療法人の適正な運営に関するチェックリスト(組織・運営)
厚生労働省『医政発0325第3号 医療法人の機関について
厚生労働省『第13回社会保障審議会医療部会 資料1

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医療法人の出資持分譲渡のメリット・デメリット

ここでは、医療法人が出資持分を譲渡することによってM&Aを行うメリットとデメリットを紹介します。

出資持分譲渡のメリット

出資持分譲渡のデメリット

  • 権利・義務を包括的に承継できる
  • 行政手続きの手間が少ない
  • 譲渡の対価が得られる
  • 将来的な利益が期待できる
  • リスクを引き継ぐ可能性がある
  • 取引価額が高騰する可能性がある

医療法人の出資持分譲渡の4つのメリット

医療法人が社員の入れ替えをともなう出資持分譲渡を実施した際のメリットは、以下の4つです。

  • 権利・義務を包括的に承継できる
  • 行政手続きの手間が少ない
  • 譲渡の対価が得られる
  • 将来的な利益が期待できる

それぞれのメリットについて詳しく解説します。

権利・義務を包括的に承継できる

社員の入れ替え・出資持分譲渡によってM&Aを行うメリットは、譲渡側医療法人が保有する権利・義務を包括的に承継できることです。

法人格は維持されるため、医療法人の権利・契約関係に影響を及ぼすことはありません。
許認可や取引先との契約、職員との雇用契約、税務・労務関係もそのまま引き継ぐことができます。
M&Aに際して煩雑な手続きが発生しないことは大きなメリットです。

行政手続きの手間が少ない

社員の入れ替え・出資持分譲渡によってM&Aを行う場合、行政手続きの手間が比較的少ないことがメリットです。

医療法人の運営はそのまま引き継ぐことができるため、閉鎖・開業の手続きや許認可の申請などが不要です。
必要な行政手続きは所定の届出のみで済みます。

譲渡の対価が得られる

売り手にとってのメリットは、出資持分を譲渡することで対価を得られることです。
出資者が保有する財産権である出資持分を譲り渡す対価として、金銭等を受け取ることができます。

将来的な利益が期待できる

出資持分の譲受を行うメリットは、将来的に利益を獲得できる可能性があることです。
出資持分を譲受することによって、出資額に応じた払い戻しおよび残余財産の分配を受ける権利を得られます。

ただし、出資額限度法人であるケースでは利益は期待できないため、注意しましょう。

医療法人の出資持分譲渡の2つのデメリット

医療法人が社員の入れ替えをともなう出資持分譲渡を実施した際のデメリットは、以下の2つです。

  • リスクを引き継ぐ可能性がある
  • 取引価額が高騰する可能性がある

それぞれのデメリットについて詳しく解説します。

リスクを引き継ぐ可能性がある

出資持分譲渡・社員の入れ替えをする形でのM&Aは、包括承継です。
そのため、権利や財産だけでなく、簿外債務や偶発債務、訴訟リスクなどの負の資産も一括して引き継ぐことになります。
こうしたリスクを引き継ぐ可能性がある点は、買い手にとってデメリットだといえます。

予想外のリスクを負うことにならないよう、事前に譲渡側の医療法人に対して入念に調査を行いましょう。
また、リスクが発覚した際は、そのリスクを負うことを承知でM&Aを進行させるのか、そのリスクを負わないことを条件に含めたうえで契約をするのか、双方で話し合って決めてください。

取引価額が高騰する可能性がある

出資持分あり医療法人は現在新規に設立できないこともあり、希少価値がつくことがあります。
また、配当が認められていないことから内部留保が蓄積しやすいです。その結果、時価純資産が高くなり、出資持分の評価額が大きく跳ね上がる可能性があります。

取引価額が高騰することはデメリットになりえます。
買い手にとっては、譲受するために多大な買収資金が必要となり、負担が大きいことがデメリットです。
売り手にとっては、取引価額が高すぎるために買い手が見つからないおそれがあります。

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出資持分あり医療法人譲渡の手続きの流れ

出資持分あり医療法人を譲渡する際の手続きの流れは下記のとおりです。

  1. M&A仲介会社を選定する
  2. 出資持分の価値算定する
  3. マッチングを行う
  4. トップ面談を行う
  5. 条件を交渉する
  6. 基本合意書を締結する
  7. デューデリジェンスが実施される
  8. 出資持分譲渡契約書を締結する
  9. 社員・理事会の入れ替えを行う

それぞれのプロセスについて、詳しく解説します。

1.M&A仲介会社を選定する

まず最初に、出資持分あり医療法人の譲渡をサポートしてくれるM&A仲介会社を選定します。

支援機関の利用は強制ではありませんが、通常業務をこなしながらM&Aの手続きを独力で進めるのは負担が大きいため、利用するケースが多いです。
医療法人のM&Aに精通した仲介会社に支援を依頼し、出資持分譲渡を円滑に進めましょう。

2.出資持分の価値算定する

M&A仲介会社などの専門家に依頼し、出資持分の価値算定を行います。
必要な資料を提出し、価値算定してもらいましょう。

出資持分の価値算定は、医療法人の規模や純資産価額をもとに算定されます。

3.マッチングを行う

適切な譲渡価額の目安が判明したら、買い手とのマッチングに移ります。
希望取引価額や希望条件をM&A仲介会社に伝えてください。その内容に沿って、M&A仲介会社が候補先を探してくれます。

M&A仲介会社から譲受先候補を示されたら、希望条件と照らし合わせて候補を絞りましょう。
興味が持てる候補先があれば、顔合わせに移ります。

4.トップ面談を行う

候補先の医療法人のトップと面談を行います。
トップ面談は、トップに立つ人物の人柄や医療法人としての方針などを確かめる場です。
この時点では細かい条件交渉はせずに、自法人との相性をよく確認してください。

5.条件を交渉する

トップ面談を経て、出資持分の譲渡を行いたい意向が固まったら、詳細な条件の交渉に移ります。
取引価額や実施時期、社員・理事会の入れ替えなどに関する条件をすり合わせてください。

6.基本合意書を締結する

条件のすり合わせが完了してお互いの合意がとれたら、基本合意書を締結します。

基本合意書とは、これまで行った話し合いで暫定的に決定した基本条件について、譲渡側・譲受側で合意形成したことを示す契約書です。
法定拘束力はなく、このあとのデューデリジェンスの結果によって内容が変更される可能性はありますが、最終的な契約書のベースになるため、慎重に内容を検討してください。

7.デューデリジェンスが実施される

基本合意書の締結が済んだら、デューデリジェンス(買収監査、DD)が実施されます。
デューデリジェンスとは、譲渡側の医療法人の価値やリスクの実態を把握することを目的とした調査のことです。

譲受側は、専門家にデューデリジェンスを依頼します。
依頼後、専門家が譲渡側に対してデューデリジェンスを行うため、譲渡側は誠実に対応しましょう。
必要書類の用意や現地調査、マネジメントインタビューなどに応じてください。

8.出資持分譲渡契約書を締結する

デューデリジェンスを終えて最終的な条件を固めたら、出資持分譲渡契約書を締結します。
出資持分譲渡契約書は最終契約書にあたり、法的拘束力を持つ書類です。

出資持分譲渡契約書を締結したら、契約書の内容に沿って出資持分の譲渡と対価の支払いを実施しましょう。

9.社員・役員の入れ替えを行う

経営権を移行させるために、社員および役員の入れ替えを行います。

譲渡側の社員を退社させて、譲受側の自然人・非営利法人を入社させます。
なお、譲渡側の社員が譲受側の支配権に影響を及ぼさないと判断された場合は、退社させないこともあります。

社員の入れ替えが完了したら、社員総会の実施・決議によって役員の入れ替えを行います。
理事・理事長・監事の入れ替えができたら、M&Aは完了です。

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医療法人の出資持分譲渡にかかる税金

医療法人の出資持分譲渡を実施した際に課税されるのは、「譲渡所得」と「退職所得」です。

出資持分を譲渡することによって利益が発生した場合、その譲渡所得に対して20.315%の税率で課税されます。

理事や理事長などの役員が出資持分譲渡にともない辞任する場合、退職所得の金額に対して課税されます。
適用される税率は、超過累進税率です。

参照元:
厚生労働省『医療施設の合併、事業譲渡に係る調査研究
国税庁『No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)
国税庁『退職金と税

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まとめ

出資持分ありの医療法人を譲渡する主な方法は、出資持分の譲渡と社員・役員の入れ替えを同時に行うスキームです。
譲渡先との面談や交渉などを経て出資持分譲渡契約書を締結し、譲渡・入れ替えを実施します。
出資持分あり医療法人を譲渡するためには医療やM&Aに関する専門的な知識・ノウハウが求められます。

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