買収・売却(M&A)された企業における退職金の扱いとは?税金対策の方法も紹介します!
2024年6月4日
このページのまとめ
- 買収された企業の退職金の取り扱いはケースごとによって異なる
- 退職金の計算方法は役員よりも従業員の方が複数パターンある
- M&Aの実行が決定したら早急に従業員に説明することが大切
M&Aによる退職金はどのようになるのか、税金対策もできるのかなど、M&Aで売却された企業の退職金の扱いについて疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、M&Aによって支払われる退職金について詳しくご紹介しています。M&Aで売却された企業の退職金の扱いについて知りたい方に役立つ情報を解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
M&Aによって支払う退職金とは
M&Aによって従業員の雇用状況や退職金の扱いは変化することがあります。M&A後に退職者が出た場合に退職金を支払うケースがありますが、合意書や契約に基づいて検討しなければなりません。
従業員の雇用が継続される場合、買収企業が引き継いだ以前の退職金プランで支払われる、あるいは新たな退職金プランが導入されます。
一方、合併や買収後に従業員の雇用が終了する場合、退職金の支払いに関しては買収契約や合意書に基づいて決まるのが基本です。ただし、M&A実行後に退職者が出なかった場合には退職金を支払う必要はありません。
また、M&Aに限った話ではありませんが、自己都合で辞める場合と会社都合で退職する場合で退職金の受給額に差が生じるため注意が必要です。
退職金の支払い額や条件は合意された内容によって異なりますが、それぞれの状況に合わせて、M&Aコンサルタントなどの専門家と協力して具体的な契約内容や法的義務を確認することが大切です。
買収された企業の退職金の取り扱い
M&Aの種類によって、買収された企業の退職金の取り扱いが異なります。役員の退職金と従業員の退職金についてまとめると、以下の通りです。
役員の退職金 | 従業員の退職金 | |
株式譲渡 | 支払われるケースがある | 制度が継続されるため買収時点での支払いはない |
事業譲渡 | 会社に残るケースが多いため買収時点での支払いはない | 支払われる |
吸収合併・吸収分割 | 場合によって支払いが可能 | 企業と従業員で同意が必要 |
役員の退職金と従業員の退職金に分けて詳しく解説します。
役員の退職金の取り扱い
役員が引き続き買収企業で雇用される場合、既存の退職金プランが引き継がれる、もしくは新たなプランが導入されます。一方、雇用が終了する場合は、買収契約や合意書に基づいて退職金の支払いが決定することになるでしょう。
ただし、M&Aの種類が株式譲渡の場合には、役員は退職するケースや使用人などとして企業に残るケースがあり、これらのケースでは退職金が支払われることがあります。
また、事業譲渡の場合には、買収された企業の役員はそのまま会社に残るケースが多いため、退職金の支払いはなく、M&A以前と同様の退職金の取り扱いとなることがほとんどです。吸収合併や吸収分割をして新会社の役員に就任した場合でも、形式的には買収された企業の役員を退任している扱いなので、退職金支払い対象となるケースが少なくありません。
従業員の退職金の取り扱い
買収後、従業員の雇用が継続される場合は、以前の退職金プランを引き継ぐことがありますが、雇用が終了する場合は、買収契約や合意書に基づいて退職金が支払われる可能性があります。
株式譲渡の場合、買収された企業は買収した企業の子会社となるため、一般的には買収された企業の退職金制度が継続されます。
また、事業譲渡の場合、買収された企業と従業員との雇用契約が一旦破棄されて買収した企業との雇用契約を締結し直すことになるため、買収された企業から退職金を受け取ることが可能です。
吸収合併や吸収分割の場合には、買収される企業の事業を承継するため、一般的には退職金の制度も受け継がれます。
ただし、退職金の金額や制度の承継などについては、企業と従業員間で同意の必要がある点に注意が必要です。
M&Aによって支払う退職金の計算方法
ここでは、M&Aによって支払う退職金の計算方法について社長や役員、従業員の場合に分けて解説します。
社長・役員の退職金の計算方法
M&Aによって支払われる社長や役員の退職金は、一般的に以下の計算式で算出されます。
- 退職金=退職時の月額報酬×役員勤続年数×功績倍率
この計算式によって算出される金額が税務上損金と認められる役員の退職金と言われており、功績倍率は明確に定められていませんが、一般的には2~3倍とされています。
役員の退職金は企業の損金として計上するため、法人税の節税にも役立てることが可能です。節税方法など詳細については、専門家に相談することをおすすめします。
従業員の退職金の計算方法
M&Aによって支払われる従業員の退職金の計算方法には、複数の種類があります。
退職金の計算式 | |
最終給与連動方式 | 退職金=退職時の基本給×支給率×退職事由係数 |
全期間平均給与方式 | 退職金=在職中の平均基本給×支給率×退職事由係数 |
別テーブル方式 | 退職金=別途管理する月例賃金×支給率×退職事由係数 |
勤続年数別定額方式 | 退職金=積立額の合計×支給率×退職事由係数 |
ポイント制方式 | 退職金=ポイント累計値の合計×ポイント単価×支給率×退職事由係数 |
従業員の退職金の計算方法は役員とは異なるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
買収した会社の退職金の会計・税務処理
ここでは、買収した会社の退職金の会計処理と税務処理についてご紹介します。
ただし、ケースに合わせた具体的な会計処理や税務処理については、国や地域の法律や会計基準、税法に基づいて異なる場合があるため、専門家や会計士、税理士のサポートを受けるのがおすすめです。
退職金の会計上の処理
まずは、退職金の会計上の処理について紹介します。買収した企業の退職金は、買収企業の負債として計上することがあります。ただし、先述したM&Aの方法によって会計処理が異なるため注意が必要です。
企業を買収する際に買収された企業から退職金が支払われる場合に、損益算入ができる点も覚えておきましょう。
退職金の税務処理
次に、税務処理についてご紹介します。企業を買収する際に買収された企業から退職金が支払われている場合には損金として算入し、課税所得の対象金額が軽減されるため、節税効果が期待できるでしょう。
ただし、計上する金額が不当に高いと判断される場合は、損益として計上できないケースがあるため注意が必要です。
M&Aによって退職金を支払うときの注意点
M&Aによって退職金を支払うときの注意点は、以下の2つです。
- 勤続年数による税控除の違いに注意する
- 退職金の取り扱いを従業員に証明する機会を設ける
順番に解説します。
勤続年数による税控除の違いに注意する
M&Aによって退職金を支払うときの1つ目の注意点は、勤続年数による税控除の違いに注意することです。
退職金の計算をする際に勤続年数は重要な指標となるため、M&Aを実施する前の企業における勤続年数が、通算されるかどうかを気にする人も多いのではないでしょうか。
退職金についての所得税の控除額は勤続年数によって異なるため、会社都合のM&Aで従業員の納税額が増えないように注意してください。そのような事態に陥らないためにも、M&Aを実行する前に勤続年数の通算ができるか交渉しておくことが大切です。
退職金の取り扱いを従業員に説明する機会を設ける
M&Aによって退職金を支払うときの2つ目の注意点は、退職金の取り扱いを従業員に説明する機会を設けることです。M&Aが実行される際には、多くの従業員が退職金や次の環境における待遇を気にするでしょう。
M&A実行後に従業員の士気やモチベーションが下がらないようにするためにも、退職金の取り扱いについてはなるべく早く従業員に説明する機会を設けることが大切です。
その際には、退職金のことだけでなく、次の環境における待遇や福利厚生など、細かな説明をしておくことで円滑なM&Aが実行できる可能性が高まります。
まとめ
M&Aによって支払われる退職金は、役員や従業員、M&Aの種類によっても異なります。細かな方法や企業ごとの相談については、専門家に相談するのがおすすめです。
レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社には、M&A各領域に特化した専門コンサルタントが在籍しており、豊富な経験からさまざまな事例をお手伝いいたします。M&A後の退職金について、書類作成や手続き上の的確なアドバイスも可能ですので、ぜひレバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社のご利用をご検討ください。