このページのまとめ
- 株式交付制度とは、令和3年度に始まった、株式を対価とする組織再編スキーム
- 株式交付制度のメリットは「子会社化の手段となる」「煩雑な手続きがない」など
- 株式交付制度を利用するときは、TOB規制や税制改正による変更に注意が必要
- 令和5年度税制改正によって、課税繰延措置の要件に変更点が生じた
- 株式交付制度は、2つの要件を満たせば税制上の優遇措置を受けることができる
「株式交付制度とはどのような手法?」と疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
株式交付制度は、比較的コストをかけずに子会社化をかなえる制度です。
本コラムでは、株式交付制度の概要や利用する条件、流れ、メリット・デメリットをわかりやすく解説。類似した手法の株式交換・現物出資との違いも紹介します。
さらに、課税繰越措置の詳細や株式交付の活用事例、株式交付計画書のサンプルも載せているのでぜひ参考にしてください。
目次
株式交付制度とは
株式交付制度とは株式を対価とする組織再編の手法の一つで、完全子会社化しない範囲で株式を取得して子会社化する方法です。
株式交付の実施後、譲受企業は50%を超える譲渡企業の株式を保有することになり、親会社となります。
株式交付制度は令和元年の会社法改正で導入され、令和3年3月1日から施行されました。
出典:法務省「令和元年12月11日公布 会社法が改正されます」(2)株式交付制度の創設
株式交付制度において、親会社が交付する対価には、株式以外の金銭等を割り当てることも可能です。
また、子会社は株式と併せて新株予約権等を対価にすることもできます。
なお、子会社がこれまでに新株予約権を株主に対して発行していた場合、親会社は子会社の新株予約権を取得することが選択できます。取得することにより、株式交付後の保有率低下のリスクを避けることが可能です。
子会社の新株予約権を取得する際の対価には親会社の新株予約権のほか、親会社の株式や社債・金銭等を割り当てることができます。
参照元:法務省「会社法の一部を改正する法律について」「会社法の一部を改正する法律の概要」「令和元年12月11日公布 会社法が改正されます」
株式交付制度の定義・条件
会社法の第二条第三十二号の二において、株式交付制度は以下のように定義されています。
三十二の二 株式交付 株式会社が他の株式会社をその子会社(法務省令で定めるものに限る。第七百七十四条の三第二項において同じ。)とするために当該他の株式会社の株式を譲り受け、当該株式の譲渡人に対して当該株式の対価として当該株式会社の株式を交付することをいう。 |
引用元:デジタル庁「e-Gov法令検索 会社法」第二条第三十二号の二
また、株式交付制度が利用できる条件は以下のとおりです。
株式交付制度が利用できる条件 |
譲受企業・譲渡企業のいずれも、株式会社である |
譲受企業・譲渡企業のいずれも、国内の会社である |
譲受企業・譲渡企業のいずれも、持分会社ではない |
譲受企業・譲渡企業のいずれも、清算株式会社ではない |
譲渡企業が他社に株式の50%超を保有されていない(他社の子会社ではない) |
譲受企業と譲渡企業に支配関係が生じていない(現在、親会社と子会社の関係ではない) |
株式交付により、譲渡企業の株式の過半数を譲受企業が保有する(子会社化が行われる) |
株式交付制度は、一切株式を保有していない企業を子会社化したい場合や、現在50%未満の株式を保有している企業を株式の追加取得によって子会社化したい場合などに活用できます。
株式交付制度が創設された理由
株式交付制度が創設された趣旨は、企業買収に係る手続きの合理化を図ることです。
株式交付制度が創設される前にも子会社化をするスキームは存在しましたが、取得する株式の割合に決まりがあったり、手続きが煩雑であったりと、実施までにいくつもの障害がありました。
これらのハードルを解消し、企業再編やM&Aの推進を図ろうと創設された制度が、株式交付です。
株式交付制度と株式交換・現物出資との違い
株式交付制度と似たスキームに、株式交換と現物出資があります。
株式交付制度は、株式交換と現物出資において生じていた制約を取り除いたスキームだといえます。
ここでは、株式交付制度と株式交換の違い、および現物出資との違いを解説します。
株式交付制度と株式交換の違い
株式交換とは、譲受企業と譲渡企業の株式を交換することによって、完全親会社と完全子会社の関係を築くスキームです。
株式交換後は譲受企業が譲渡企業の株式を100%保有することになり、完全支配関係が生じます。
株式交換と株式交付制度の違いは、スキームを実施したあとの株式保有率です。
株式交換は、譲受企業が譲渡企業の株式を100%取得して完全子会社化する場合にのみ利用できます。完全子会社化しないケースでは、株式交換を利用できません。
一方、株式交付制度は完全子会社化を前提としない場合でも活用することが可能です。
株式交付で株式を譲り受けることによって譲渡企業の株式の過半数を取得し、親会社と子会社の関係を築けます。
株式交付制度と現物出資の違い
現物出資とは、会社に対して金銭以外の財産を出資する手法です。現物出資の対価には主に譲渡企業の株式が提供されます。
現物出資の対価として株式を受け取った場合、譲受企業は保有数に応じた株主権を得ます。
現物出資・株式交付制度ともに、完全子会社化しないケースでも利用できる手法です。
現物出資と株式交付制度の違いは、手続きの複雑さです。
現物出資では一部の場合を除き、出資する財産の価額が不当な額ではないかを調査してもらう必要があります。調査は裁判所が選任した検査役によって実施されます。
検査役による調査を行うためには、裁判所に検査役の選任申し立てをしなければなりません。また、検査は数ヶ月かかることもあるうえ、調査費用がかかります。
一方、株式交付制度の場合は検査役による調査を実施する必要はありません。
煩雑な手続きに対する手間・コストをかけることなく、子会社化のために要する株式を取得できます。
株式交付制度を活用する4つのメリット
ここでは、株式交付制度を活用することで得られるメリットを4つ紹介します。
- 完全子会社化をしないケースでも利用できる
- 煩雑な手続きを省略できる
- 資金調達の負担が軽減される
- 税制上の優遇措置の条件が緩和されている
各メリットについて、以下で詳しく解説します。
完全子会社化をしないケースでも利用できる
前項の株式交換との違いで解説したとおり、株式交付制度は完全子会社化をしない場合も利用可能です。
「株式を対価にして子会社化したい」「しかし完全子会社化までする必要はない」といったケースに適しています。今後の経営計画に沿った議決権比率の株式取得を目指せます。
煩雑な手続きを省略できる
前項の現物出資との違いで解説したとおり、株式交付制度を活用すれば煩雑な手続きをカットしたうえで株式の一部を取得できます。
株式交付制度は「株式のすべてではなく一部を取得したい」「しかし面倒な手続きは避けたい」という希望をかなえる手段になるでしょう。
資金調達の負担が軽減される
親会社側の企業にとって、株式取得にかかる費用を減らせることは株式交付制度を利用するメリットです。
株式交付制度を活用する場合、親会社の株式を対価にすることができます。そのため、現金等を対価として子会社化を行うケースに比べて資金調達の負担が軽くなります。
また、株式交換と比べても資金調達面におけるメリットがあります。
株式交換を利用する場合は完全子会社化をする必要があり、全株式を取得するための対価が必要です。一方、株式交付制度を活用するケースではすべての株式を取得する必要はないため、その分負担が少なくなります。
税制上の優遇措置の条件が緩和されている
子会社側の株主にとって、税制上の優遇措置を受けるためのハードルが比較的低いことは、株式交付制度を選ぶメリットです。
実施以前に支配関係がない会社同士による株式交換において、特例を受けるためには下記の7つの要件を満たさなければなりません。
【支配関係がない法人間での株式交換における要件】
要件 | 要件の具体的内容 |
完全支配関係・支配関係の継続の要件 | 株式交換後も完全支配関係・支配関係の継続を継続させる |
株式交換の対価の要件 | 原則、完全親会社の株式のみを株式交換の対価とする |
従業員の引継の要件 | 株式交換後も従業員が継続して会社に在籍する |
事業の継続の要件 | 株式交換後も完全子会社側の法人の主要事業が引き続き営まれる |
事業の関連性の要件 | 完全子会社の主要事業が完全親会社のいずれかの事業と関連性がある |
株式の継続保有の要件 | 株式交換の対価として交付された完全親会社の株式を、支配株主が引き続き保有する |
事業規模の要件もしくは経営参画の要件 | 関連性がある完全親会社と完全子会社の事業の売上額もしくは従業員のいずれかが、おおむね5倍を超えない(事業規模の要件) あるいは、完全子会社側の特定役員が退任せず残留する(経営参画の要件) |
一方で、株式交付制度では下記の2つの要件を満たせば、課税繰延措置を受けることが可能です。
【株式交付制度における要件】
要件 | 要件の具体的内容 |
株式交付の対価の要件 | 対価として受け取る親会社の株式の価値が、対価として受け取る資産全体の価値の80%以上を占める |
親会社の法人の種類の要件 | 株式交付の直後において、親会社が一定の同族会社に該当しない |
株式交換と比べると、株式交付における要件は大幅に緩和されています。
税負担が軽減される制度を利用しやすい点は、大きなメリットだといえるでしょう。
参照元:
国税庁「No.1545 株式等を対価とする株式の譲渡に係る譲渡所得等の課税の特例」「【新設】66の2の2-1(株式の占める割合が8割以上となる場合の本制度の適用)」
財務省「令和5年度税制改正の大綱(3/10)」4 その他の租税特別措置等
株式交付制度を活用する2つのデメリット
株式交付制度を利用する際に留意しておくべきデメリットは、下記の2点です。
- 公開買付(TOB)規制の対象となる
- 制度が改正される可能性が高い
以下で、それぞれのデメリットについて詳しく解説します。
公開買付(TOB)規制の対象となる
上場企業を対象に株式を対価とした株式交付を行う場合、公開買付(TOB)規制の対象となる点に注意が必要です。
公開買付の義務は主に以下のケースにおいて発生します。
規制の分類 | ルールの詳細 |
TOBの5%ルール | 証券取引所を通さずに買付けを行った際に、買付け後の株式の保有率が発行済み株式数の5%を超えるケース(10名以内の株主から買付けを行う場合を除く) |
TOBの3分の1ルール | 証券取引所を通さずに10名以内の株主から買付けを行うケースにおいて、買付け後の株式の保有率が3分の1を超える |
証券取引所内で特定売買を行うケースにおいて、買付け後の株式の保有率が3分の1を超える | |
証券取引所内外において急速な買付けを行うケースにおいて、買付け後の株式の保有率が3分の1を超える |
公開買付規制が生じる場合、それにともないスケジュール調整も必要になります。
子会社となる法人が上場企業の場合は、公開買付規制の対象となるかどうかを事前に確認しましょう。
参照元:デジタル庁「e-Gov法令検索 金融商品取引法」第二十七条の二
制度が改正される可能性が高い
株式交付制度は令和3年の3月に施行された会社法改正によってスタートしており、比較的新しい制度です。
そのため、実際に運用をしていくなかで問題点が判明する可能性が高いです。運用するなかで生じた問題点を解決するため、改正がなされることもあるでしょう。
実際、令和5年度の税制改正において、特例措置を受けられる対象法人の条件に変更がありました。
今後も変更が生じる可能性があるため、政府から発信される最新情報をチェックしておきましょう。
参照元:財務省「令和5年度税制改正の大綱(3/10)」4 その他の租税特別措置等
株式交付制度を利用する流れ
株式交付制度を利用する際の株式交付親会社(譲受企業)の流れは下記のとおりです。
- 株式交付計画の作成
- 事前開示書類の備置
- 株主総会での承認
- 株主への通知・公告
- 株式の割当て・通知
- 反対株主の株式買取請求への対応
- 債権者の異議への対応
- 株式交付の効力発生
- 事後開示書類の備置
なお、株式交付においては株式交付子会社(譲渡企業)は再編の当事者にはあたらないため、機関決定を要しません。譲受企業と株主との間で株式交付の手続きが完結します。
それでは、株式交付の各プロセスについて詳しく解説します。
1.株式交付計画の作成
株式交付制度を利用するときは、株式交付計画を作成することが義務付けられています。
「会社法」の第774条の2および3にある内容に従い、株式交付計画を作成しましょう。
株式交付計画書には、以下に掲げる事項を記載します。
|
その他必要事項に記載する例には、承認決議や株式交付計画の効力、株式交付計画の変更、株式交付の中止に関する内容などが挙げられます。
必要に応じて記載項目を加えましょう。
株式交付計画書はのちほど作成サンプルを紹介します。そちらも併せて参考にしてください。
参照元:デジタル庁「e-Gov法令検索 会社法」第七百七十四条の二・三
2.事前開示書類の備置
株式交付親会社は株式交付計画を作成したら、株式交付計画に関する書類等(書面でも電磁的記録でも可)を本店に備え置きます。
備え置く期間は、株式交付計画の備置開始日から効力発生日後6ヶ月を経過するまでの間です。
なお株式交付計画備置開始日は、次に掲げる日のいずれか早い日を指します。
- 株主総会の承認を受けなければならない場合、株主総会の日の2週間前の日
- 株主総会の承認を受けなければならないケースで書面決議の場合、その提案がなされた日
- 株式交付親会社による、その株主に対する通知の日あるいは当該通知に代わる公告の日の、いずれか早い日
- 債権者異議手続きが必要な場合、官報公告の日あるいは個別催告の日の、いずれか早い日
株主や債権者から事前開示書類の閲覧および交付の請求があったら、株式交付親会社は請求に応じて手続きを行いましょう。
参照元:デジタル庁「e-Gov法令検索 会社法」第八百十六条の二
3.株主総会での承認
株式交付親会社は、株式交付の効力発生日の前日までに、株主総会の特別決議によって株式交付計画の承認を受けることが必要です。
株主総会の特別決議で承認を得られなかった場合、株式交付は進められなくなってしまいます。
小規模な株式交付における株主総会
譲渡人に対して交付する株式交付親会社の対価の合計額によっては、株主総会での特別決議の承認を省略できます。
簡易株式交付制度を利用することが可能になり、簡易要件の取締役決議が採用されます。
株主総会の特別決議を省略できるケースは、以下に列挙する額の、株式交付親会社の純資産額(法務省令で定める方法により算定)に対する割合が、5分の1を超えない(20%以下である)場合です。
- 株式交付子会社の株式および新株予約権等の譲渡人に対して交付する株式交付親会社の株式数に、1株あたり純資産額を乗じて得た額
- 株式交付子会社の株式および新株予約権等の譲渡人に対して交付する株式交付親会社の社債、新株予約権または新株予約権付社債の帳簿価額の合計額
- 株式交付子会社の株式および新株予約権等の譲渡人に対して交付する株式交付親会社の株式等以外の財産の帳簿価額の合計額
ただし、以下のケースにおいては簡易株式交付を利用することはできません。
- 株式交付親会社が公開会社ではない場合
- 株式交付親会社に株式交付による差損が生ずる場合
- 株式交付親会社の一定割合の株主が、株式交付への反対を通知した場合
簡易手続きによって株式交付を進めたいと考えている方は、条件に当てはまっているかどうか確認しましょう。
公開買付の義務がある株式交付における株主総会
公開買付(TOB)規制の対象となる株式交付を実施する場合は、株主総会のスケジューリングに注意が必要です。
公開買付を開始すると、原則撤回できません。
そのため、公開買付をスタートする前に株主総会での特別決議の承認を得る必要があります。
参照元:デジタル庁「e-Gov法令検索 会社法」第三百九条、第八百十六条の三・四
4.株主への通知・公告
株式交付親会社は、株式交付子会社の株主に対し、株式交付計画の通知および公告を行います。
株式交付親会社が株主に対して知らせる内容は次の3つです。
- 株式交付親会社の商号
- 株式交付計画の内容
- そのほか、法務省令で定める事項
通知・公告を受けた株式交付子会社の株主のうち譲り渡しの申し込みをする株主は、申し込みの期日までに下記に関する事項を記載した書面を株式交付親会社に交付します。
- 申込みをする者の氏名または名称、および住所
- 譲渡しようとする株式交付子会社の株式の数
もし申し込み期日を迎えても譲り渡しの申し込みをした株式の総数が下限に満たない場合は、株式交付は実施されません。
なお、総数引受契約を締結する場合には、株式交付子会社の株式の譲り渡しの申し込みの手続きは不要です。
「総数引受契約」とは、株式交付親会社が株式交付の際に譲受する株式交付子会社の株式の総数を譲渡する契約のことを指します。
参照元:デジタル庁「e-Gov法令検索 会社法」第七百七十四条の四・六・十
5.株式の割当て・通知
株式交付子会社の株主から譲り渡しの申し込みを受けたら、株式交付親会社は申込者の中から株式を譲受する者を定めます。
また、その株主に割り当てる株式数を定めてください。なお、割り当てる譲受株式の数は、下限を下回らない範囲内で減少させることが可能です。
上記を定めたら、株式交付親会社は定めた内容を株式交付の効力が発生する前日までに、申込者に対して通知します。
なお、総数引受契約を締結するケースにおいては、株式交付子会社の株式の譲り渡しの申し込み手続きは必要ありません。
参照元:デジタル庁「e-Gov法令検索 会社法」第七百七十四条の五・六
6.反対株主の株式買取請求への対応
株式交付を行う際、反対株主は株式交付親会社に対して株式の買取請求をすることができます。
反対株主が株式買取請求権を行使した際には、株式交付親会社は対応する必要があります。
反対株主から株式買取請求があったら、株式交付親会社は反対株主の保有株式を適正な価額で買い取りましょう。
なお、簡易株式交付の場合は株式買取請求の権利は発生しません。
参照元:デジタル庁「e-Gov法令検索 会社法」第八百十六条の六・七
7.債権者の異議への対応
株式交付の際に株式交付親会社の株式以外に金銭等の対価も交付する場合、債権者は株式交付親会社に対して株式交付に関する異議を唱えることが可能です。
このとき、株式交付親会社は債権者保護手続きを行わなければなりません。
株式交付親会社は、官報公告と債権者への個別催告の両方を用いて、下記の事項を伝える必要があります。
- 株式交付を行う旨
- 株式交付子会社の商号および住所
- 株式交付親会社および株式交付子会社の計算書類に関する事項として、法務省令で定めるもの
- 債権者が一定の期間内(1ヶ月以上)に異議を述べることができる旨
期間内に債権者から異議が申し立てられた際には、株式交付親会社は当該債権者に対して以下のいずれかの対応をとることが必要です。
- 弁済
- 相当の担保の提供
- 弁済を目的とした、信託会社等への相当の財産の信託
なお、株式交付の対価が株式交付親会社の株式のみであるケースでは、債権者保護手続きは不要です。
参照元:デジタル庁「e-Gov法令検索 会社法」第八百十六条の八
8.株式交付の効力発生
株式交付計画において定めた効力発生日を迎えると、株式交付子会社の株式が株式交付親会社に譲渡されて、それに対して株式交付親会社の株式等の対価が交付されます。
株式交付の効力発生にともない、株式交付子会社の株式を譲り渡して株式交付親会社の株式の交付を受けた株主は、株式交付親会社の新たな株主に加わります。
参照元:デジタル庁「e-Gov法令検索 会社法」第七百七十四条の七・十一
9.事後開示書類の備置
株式交付の効力発生後、株式交付親会社は遅滞なく事後開示書類(書面または電磁的記録)を作成し、本店に備え置く必要があります。備置する期間は効力発生日から6ヶ月間です。
事後開示書類には、株式交付によって株式交付親会社が譲受した株式交付子会社の株式数その他の株式交付に関する事項として法務省令で定める事項を載せます。
株主および債権者から事後開示書類の閲覧・交付の請求があった際には、株式交付親会社は対応をすることが必要です。
以上で、株式交付制度の利用に関する手続きが完了します。
もし株式交付に関する手続きに瑕疵があったり株式交付親会社の株主が不利益を被るおそれがあったりする場合、株式交付の差止請求や無効の訴えをされる可能性があります。
株式交付制度を利用するにあたっては専門家の助言を受ける等しながら計画を立てて、各種手続きを慎重に進めましょう。
参照元:デジタル庁「e-Gov法令検索 会社法」第八百十六条の五・十、第八百二十八条の十三
株式交付計画書の記載例
ここでは、株式交付制度を活用する際に作成が必要な「株式交付計画書」の記載例を紹介します。
株式交付制度の利用を検討している方は、本サンプルをぜひ参考にしてください。
上記のサンプルは、対価に株式交付親会社の株式のみを用いた一般的な株式交付における記載例です。
対価として株式以外の金銭等を交付する場合や新株予約権・新株予約権付社債を交付する場合などには、記載項目が一部変わります。記載事項はケースに合わせて変更しましょう。
株式交付制度にまつわる会計処理
株式交付制度は、株式交換と同様に組織再編行為の一種です。
株式交付制度の創設にともなった改正は実施されていないため、現行の「企業結合に関する会計基準」に沿って処理されることになります。
株式交付を実施した際に会計処理が必要となるのは、株式交付親会社と株式交付子会社の株主です。
株式交付親会社の会計処理
株式交付親会社の会計処理においては、実施する株式交付が「取得」「共通支配下の取引等」のどちらに該当するかによって会計処理が異なります。
株式交付では株式の取得によって議決権の過半数を保有し子会社化を図る手法であるため、ほとんどの株式交付が「取得」のケースに該当すると考えられます。
一方「共通支配下の取引等」に該当するのは「議決権の観点では支配関係が生じていないが、会計上では親会社・子会社の関係である」というケースです。
株式交付子会社の株主の会計処理
株式交付子会社の株主の会計処理においては、「株式交付子会社への投資が続いている」「株式交付子会社への投資が清算されているか」のどちらのケースに該当するのかによって会計処理が異なります。
株式交付制度の5つの活用事例
ここでは、株式交付制度を活用した事例を5つ紹介します。
楽天カード社と楽天ペイメント社の株式交付の事例
株式交付親会社(譲受企業) | 株式交付子会社(譲渡企業) |
楽天カード株式会社 | 楽天ペイメント株式会社 |
株式交付親会社が楽天カード株式会社(以下「楽天カード社」)、株式交付子会社が楽天ペイメント株式会社(以下「楽天ペイメント社」)である株式交付の事例です。
楽天カード社はクレジットカードやカードローン、信用保証事業などを行う企業です。
楽天ペイメント社は、主にキャッシュレス決済サービスや共通ポイントサービスの提供などを行っています。
株式交付の方式 | 株式交付 |
株式交付計画の承認(株主総会) | 2023年10月11日 |
株式の譲渡の申込期日 | 2023年10月31日 |
株式交付の効力発生日 | 2023年11月1日 |
譲受する株式数の下限 | 27万6,800株 |
割当ての内容(株式交付比率) | 楽天ペイメント社の普通株式1株に対して、楽天カード社の普通株式0.019795株を交付 |
新株予約権および新株予約権付社債に関する取扱い | 該当事項なし |
株式交付制度を活用した今回のグループ組織再編の主な目的は、さらなるグループ内シナジーの向上です。
クレジットカードを使用したショッピングにおいて取扱高がある楽天カード社と、強固な顧客基盤やキャッシュレス決済プロトコル等を持つ楽天ペイメント社が一体となることにより、相乗効果の向上が実現できると判断しました。
本組織再編は、楽天グループ全体の企業価値向上にもつながるとしています。
楽天カード社と楽天ペイメント社は、ともに楽天グループ株式会社(以下「楽天グループ」)の子会社でした。
株式交付が進行し、譲受株式数の下限として設定していた27万6,800株を超え、2023年11月1日に効力発生日を迎えます。
株式交付の効力が生じたことにより、楽天ペイメント社は楽天カード社の連結子会社になりました。
参照元:楽天カード株式会社「楽天カード、楽天ペイメントの子会社化に関するお知らせ」「楽天カード、楽天ペイメントの子会社化に関する経過のお知らせ」「楽天カード、楽天ペイメントの子会社化に関する完了のお知らせ」
CAICAとZaif Holdingsの株式交付の事例
株式交付親会社(譲受企業) | 株式交付子会社(譲渡企業) |
株式会社CAICA | 株式会社Zaif Holdings |
株式交付親会社が株式会社CAICA(以下「CAICA社」)、株式交付子会社が株式会社Zaif Holdings(以下「Zaif HD」)です。
CAICA社は、金融向けSI(システム・インテグレーション)を主力とし、デジタル金融の未来を開拓するIT企業です。
Zaif HDは、暗号資産関連ビジネスを営む会社を傘下に置いているホールディングスカンパニーです。
株式交付の方式 | 株式交付 |
株式交付計画の承認(株主総会) | 2021年7月30日 |
株式の譲渡の申込期日 | 2021年8月13日 |
株式交付の効力発生日 | 2021年8月31日 |
譲受する株式数の下限 | 4,225株 |
割当ての内容(株式交付比率) | Zaif HDの普通株式1株に対して、当社の普通株式2,558.14株を交付 |
新株予約権および新株予約権付社債に関する取扱い | 該当事項なし |
本株式交付を実施する以前、CAICA社は株式の取得と代表取締役の派遣をしたことによって、実質支配力基準においてZaif HDを連結子会社化しています。株式交付を実施する前の議決権の所有割合は40.72%です。
今回、株式交付制度を利用することで株式を追加取得し、過半数を保有してZaif HDを子会社化しました。
本株式交付の目的は、子会社化によって意思決定を迅速化することと、CAICAグループ全体の総合力を糾合させて企業価値を最大化することです。
本株式交付は2021年8月31日に効力発生日を迎え、下限の4,225株を大幅に上回る1万6,091株ものZaif HDの普通株式をCAICA社が譲り受ける結果となりました。株式交付実施後の議決権の所有割合は83.76%です。
CAICA社はZaif HDの普通株式の譲渡人に対し、対価としてCAICA社の普通株式を4116万3,030株交付しています。
参照元:株式会社CAICA「株式の取得(連結子会社化)完了に関するお知らせ」「株式交付による株式会社Zaif Holdingsの株式追加取得に関するお知らせ」「株式交付による株式会社Zaif Holdingsの株式追加取得の結果に関するお知らせ」
アサヒ衛陶と日本ライフエレベーションの株式交付の事例
株式交付親会社(譲受企業) | 株式交付子会社(譲渡企業) |
アサヒ衛陶株式会社 | 日本ライフエレベーション株式会社 |
株式交付親会社がアサヒ衛陶株式会社(以下「アサヒ衛陶社」)、株式交付子会社が日本ライフエレベーション株式会社(以下「NLE社」)です。
アサヒ衛陶社はASAHI EITO ホールディングス株式会社(以下「ASAHI EITO HD」)のグループ会社です。主要な事業として、衛生機器事業および洗面機器事業を行っています。
NLE社は、福岡県北九州市に本社を置く企業です。事業内容は太陽光発電システム・オール電化システムの施⼯や建築物の内外装および営繕⼯事です。
NLE社は2024年4月時点において、ASAHI EITO HDの傘下において「アサヒエレベーション株式会社」という社名で事業運営をしています。
株式交付の方式 | 簡易株式交付 |
株式交付計画の承認(取締役会) | 2023年3月15日 |
株式の譲渡の申込期日 | 2023年3月20日 |
株式交付の効力発生日 | 2023年4月5日 |
譲受する株式数の下限 | 153株 |
割当ての内容(株式交付比率) | NLE社の普通株式1株に対して、アサヒ衛陶社の普通株式965株を交付 |
新株予約権および新株予約権付社債に関する取扱い | 該当事項なし |
アサヒ衛陶社とNLE社の株式交付は、グループ企業となって相互に協力することにより、さらに発展していくことを目指して実施されました。
お互いが持つ、事業に係るネットワークや販売チャネルなどの経営資源を相互に活用し、紹介・斡旋を行うことにより、双方の販売拡充につながると見込んでいます。
本株式交付は、簡易株式交付の方式によって行われたため、取締役会において承認を受けて進めています。
また、NLE社の発行済株式300株の51%(譲受する株式数の下限153株)について、総数引受契約を締結しています。
今回のアサヒ衛陶社とNLE社の株式交付は、2023年4月5日に効力が発生しました。
アサヒ衛陶社が譲り受けたNLE社の株式の数は、下限の153株です。
参照元:アサヒ衛陶株式会社「簡易株式交付による日本ライフエレベーション株式会社の 子会社化に関するお知らせ」「(訂正)簡易株式交付による日本ライフエレベーション株式会社の 子会社化に関するお知らせ」「2023年11月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」
GFAとフィフティーワンの株式交付の事例
株式交付親会社(譲受企業) | 株式交付子会社(譲渡企業) |
GFA株式会社 | 株式会社フィフティーワン |
株式交付親会社がGFA株式会社(以下「GFA社」)、株式交付子会社が株式会社フィフティーワン(以下「フィフティーワン社」)です。
GFA社は主にメタバース事業や金融サービス事業などを運営する企業です。グループ事業としてはサイバーセキュリティ事業、空間プロデュース事業およびゲーム事業などを展開しています。
GFA社は2018年から積極的にM&Aに取り組んでおり、変革が著しい現代に対応できる多角経営を行っています。また、SDGsを重要視し、関連するさまざまな取り組みに力を入れている企業です。
フィフティーワン社は、トータル物流企業として設立された企業です。運送事業としてチャーター便や貸切配送便、ハンドキャリー、倉庫保管、医療品輸送など、多様なサービスを取り扱っています。
運送事業のほか、通販事業・広告代理業・ペット関連事業も営んでいます。
株式交付の方式 | 簡易株式交付 |
株式交付計画の承認(取締役会) | 2022年10月7日(再決議) |
株式の譲渡の申込期日 | 2022年11月2日 |
株式交付の効力発生日 | 2022年11月4日 |
譲受する株式数の下限 | 160株 |
割当ての内容(株式交付比率) | フィフティーワン社の普通株式1株に対して、GFA社の普通株式5,500株を交付 |
新株予約権および新株予約権付社債に関する取扱い | 該当事項なし |
GFA社が注目したのは、フィフティーワン社のメイン事業である運送事業です。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行をはじめとする不測の事態において、フィフティーワン社の運送事業はGFA社のリスクマネジメントの大きな助けとなると判断しました。
また、フィフティーワン社が医療品輸送においてニッチな需要に応えられる強みを持っていたことも、本株式交付を決断した理由の一つです。GFA社の子会社である株式会社SDGs technologyとのシナジー効果が見込まれています。
GFA社とフィフティーワン社の株式交付は、1度目は申し込みが下限の株数に至らず、効力が発生しませんでした。
株式交付決議取締役会が2022年9月14日に実施されたときの株式交付比率は、「フィフティ社の普通株式1株に対して、GFA社の普通株式4,625株を交付する」といった割当ての内容です。
その後、2022年10月7日に実施された取締役会での再決議においては株価算定を見直し、割り当てるGFA社の株式を5,500株に変更しました。
2度目の申し込みでは無事に下限の160株に到達し、2022年11月4日に本株式交付の効力が発生します。
本株式交付によってGFA社はフィフティーワン社の議決権の80%を取得し、フィフティーワン社を子会社化しました。
参照元:GFA株式会社「株式会社フィフティーワンの株式交付(簡易株式交付)による 子会社化に関するお知らせ」「株式会社フィフティーワンの株式交付(簡易株式交付)による 子会社化に関する再決議のお知らせ」「簡易株式交付による株式会社フィフティーワンの子会社化の結果に関するお知らせ」
GMOインターネットとOMAKASEの株式交付の事例
株式交付親会社(譲受企業) | 株式交付子会社(譲渡企業) |
GMOインターネット株式会社 | 株式会社OMAKASE |
株式交付親会社がGMOインターネット株式会社(以下「GMO社」)、株式交付子会社が株式会社OMAKASE(以下「OMAKASE社」)です。
GMOグループは、総合インターネット企業グループです。インターネットインフラ事業やインターネット広告・メディア事業、インターネット金融事業、暗号資産事業およびインキュベーション事業を展開しています。
なお、GMO社は2022年9月1日付で「GMOインターネットグループ株式会社」に商号を変更しています。
OMAKASE社は、飲食店と顧客をつなぐ予約管理サービス「OMAKASE」を提供する企業です。
「OMAKASE」は人気が高く予約が難しい飲食店に特化して事業展開をしています。店舗側の負担と顧客側の不便の両方を、テクノロジーの力で解決するサービスです。
株式交付の方式 | 簡易株式交付 |
株式交付計画の承認(取締役会) | 2021年5月24日 |
株式の譲渡の申込期日 | 2021年6月18日 |
株式交付の効力発生日 | 2021年6月21日 |
譲受する株式数の下限 | 24万6,069株 |
割当ての内容(株式交付比率) | OMAKASE社の普通株式1株に対して、GMO社の普通株式3.677株および371円を交付 |
新株予約権および新株予約権付社債に関する取扱い | OMAKASE社の第1回新株予約権1個に対して、GMO社の普通株式331.208株および3万3,395円を交付 |
GMO社は、OMAKASE社が持つ顧客基盤と、GMOグループのインターネットインフラ事業におけるEC支援事業および決済事業との間にシナジー効果が期待できると判断しました。
また、OMAKASE社にとっても、子会社になることによってGMOグループが培ってきた経営ノウハウ・ブランド力を活用できるようになることは、大きなメリットです。
これらのシナジーは、GMO社・OMAKASE社の中長期的な企業価値の向上に寄与するとし、株式交付の実施を決断しました。
今回、完全子会社化を行う株式交換ではなく、子会社化を行う株式交付を選択した理由は、GMOグループが「グループ参画後も継続的に事業にコミットしていただく」ということをグループ経営の方針に定めているためです。
本株式交付では、GMO社がOMAKASE社に交付する対価として自己株式のほか、金銭も割り当てています。
また、OMAKASE社は普通株式と併せて新株予約権も対価にしています。
申し込みの結果、GMO社がOMAKASE社から譲受する普通株式は下限である24万6,069株を上回る24万8,799株となり、2021年6月21日に株式交付の効力発生日を迎えました。また、GMO社が譲り受けたOMAKASE社の新株予約権の数は、345.2個です。
GMO社はOMAKASE社の普通株式・新株予約権を譲り受ける対価として、譲渡人に対してGMO社の普通株式102万9,166株および現金1億383万2,386円を交付しました。
株式交付後にはGMO社が議決権の62.2%を保有することになり、OMAKASE社の子会社化が完了しました。
参照元:GMOインターネット株式会社「人気飲食店の予約管理サービスを展開する 株式会社OMAKASEの株式交付(簡易株式交付)による子会社化に関するお知らせ」「人気飲食店の予約管理サービスを展開する 株式会社OMAKASEの株式交付(簡易株式交付)による子会社化の結果に関するお知らせ」
株式交付制度における課税繰延措置
株式交付制度では、税制上の優遇措置が設けられています。
一定の要件を満たすことで、本来は株式を譲渡した時点で子会社側の株主に課税される株式譲渡益の課税(所得税や法人税)を、当該株式の売却時まで課税を繰り延べられます。
この課税繰延措置は恒久的な制度で、事前認定が不要です。
株式交付において課税繰延措置を受けるための要件は、下記の2つです。
【株式交付制度における要件】
要件 | 要件の具体的内容 |
株式交付の対価の要件 | 対価として受け取る親会社の株式の価値が、対価として受け取る資産全体の価値の80%以上を占める |
親会社の法人の種類の要件 | 株式交付の直後において、親会社が一定の同族会社に該当しない |
先述の「株式交付制度を活用する4つのメリット」にも記載したように、株式交付制度における課税繰延措置の要件は2つのみで、7つの要件を満たさなければならない株式交換と比べると利用しやすくなっています。
参照元:
国税庁「No.1545 株式等を対価とする株式の譲渡に係る譲渡所得等の課税の特例」「【新設】66の2の2-1(株式の占める割合が8割以上となる場合の本制度の適用)」
財務省「令和5年度税制改正の大綱(3/10)」4 その他の租税特別措置等
税制改正による株式交付制度への影響
令和5年度の税制改正によって、株式交付制度の課税繰延措置の要件に変更が生じました。
令和5年度の税制改正の内容は、2023年10月1日以後に実施される株式交付制度に適用されています。
令和5年度税制改正による変更点
令和5年度の税制改正により、株式交付制度における課税繰延措置の利用ルールに以下の内容が追加されました。
(12)株式等を対価とする株式の譲渡に係る所得の計算の特例について、対象から株式交付後に株式交付親会社が同族会社(非同族の同族会社を除く。)に該当する場合を除外する(所得税についても同様とする。)。 |
出典:財務省「令和5年度税制改正の大綱(3/10)」4 その他の租税特別措置等
前項「株式交付制度における課税繰延措置」において2つの要件を列挙しましたが、そのうちの一つである「親会社の法人の種類の要件」は、令和5年度の税制改正によって追加された要件です。
株式交付の直後において親会社が一定の同族会社に該当する場合は、課税繰延措置に関する特例を活用することはできません。
改正が行われた背景
令和3年(2021年)に施行された株式交付制度は、企業買収に関する手続きを合理化し、企業再編・M&Aを推進することを目的に創設されています。
しかし、実際にはオーナー株主の相続税対策や配当政策のために使用されるという、創設時の目的とは異なる使途の活用事例が多数発生しました。
その活用事例とは「株式交付親会社となる資産管理会社を設立し、自社を株式交付子会社とする株式交付を実施することによって、自社株式を資産管理会社へ無税で移転する」といった方法です。
こうした手法は、主に上場準備会社の資本政策に利用されていました。
上記に挙げたような本来の用途から外れた活用を防ぐために、令和5年度税制改正において株式交付制度の課税繰延措置に関する制限が加えられたのです。
参照元:
国税庁「No.1545 株式等を対価とする株式の譲渡に係る譲渡所得等の課税の特例」「【新設】66の2の2-1(株式の占める割合が8割以上となる場合の本制度の適用)」
財務省「令和5年度税制改正の大綱(3/10)」4 その他の租税特別措置等
まとめ
株式交付制度は令和元年に導入され、令和3年3月1日から施行された新たな組織再編のスキームです。
株式交付制度は完全子会社化をしないケースでも利用可能で、煩雑な手続きを踏まずに実施することができます。また、要件をたった2つ満たすだけで課税繰延措置を受けられます。
多数のメリットがある株式交付制度をうまく活用し、M&Aによる経営戦略をスムーズに進めましょう。
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