このページのまとめ
- CAとは、M&Aの進行にてお互いが知り得た情報の漏洩を防ぐために取り交わす書面
- 秘密情報の開示を受ける・行う際には、CAの締結が不可欠
- 基本的な盛り込むべき内容は決まっているため、事前確認しておこう
- 一般的な作成手順を理解しておくことで、抜け漏れのない書面作成につながる
M&Aでは、さまざまなポイントに最大限の意識を向けることが大切です。特に情報の管理については、売り手・買い手をともにしっかりと認識しなくてはいけません。そこで今回は、M&Aにおける秘密保持契約書「CA」について解説します。CAの締結を検討している方やCAについて理解したい方はぜひ参考にしてください。
目次
CA(秘密保持契約書)とは
CA(シーエー)とは英語の「Confidentiality Agreement」を略した言葉であり、日本語では「秘密保持契約書(守秘義務契約)」のことを指します。NDA(Non-Disclosure Agreement)も同義であり、売り手と買い手が直接、もしくは仲介業者を介して締結するものです。
CAを締結した当事者は、M&Aにおいて入手した相手先の情報を他で利用したり、外部に漏洩させたりしてはいけません。M&Aでは多くの秘密情報を扱うことから、CAの締結が重要です。
CAを締結する目的
CAを締結する目的は、主に以下の3つです。
- 秘密にすべき情報が当事者以外に漏洩することを防ぐ
- M&Aに関する情報を関係のないことに利用するのを防ぐ
- 規約を破った場合の責任の所在、内容をはっきりさせる
基本的な目的として挙げられるのが、意図する・しないを問わず、M&Aの進行にてお互いが知り得た情報の漏洩を防ぐことです。情報管理の甘さから、秘密にするべき情報を意図せず漏洩させてしまうケースだけでなく、意図的にM&Aと関係のないことに情報を利用するケースも想定されます。
また、情報を外部に漏らしてしまった場合の責任についても、CAによって追求できるようにします。CAに約束を破った際の責任の所在について盛り込んでおくことで、実際に違反された場合に損害賠償請求や行為差止請求などを実施できるようになるでしょう。
CAが使用される場面
CAは、秘密情報をやりとりする際に必要になります。
想定されるケースは、以下のような場面です。
- 売り手が仲介会社に、財務諸表などを提出する
- 買い手が仲介会社に、企業の詳細情報の開示を依頼する
- 買い手が売り手に、収益性やリスクなどを分析するための資料開示を依頼する
M&Aでは、交渉やデューデリジェンスなどの各段階において、頻繁に秘密情報のやり取りを行います。なぜなら、売り手は買い手や仲介会社に対して自らの情報を詳細に開示し、売り手の情報を細かく分析できるようにしなければならないからです。そのため、一連の手続きの初期から後期に至るまで、CAが求められる場面は複数あると考えられるでしょう。
CAの重要性
CAは、M&Aの円滑な進行においてなくてはならないものです。なぜなら、M&Aは、買い手と売り手双方の事業において、非常に大きなインパクトを与えるものであるからです。大切な情報が漏洩されてしまったり、目的外利用されてしまったりすれば、事業そのものに打撃を与える可能性があります。その際、社内での動揺も大きなものになってしまうでしょう。
さらに、上場している場合は株価にも影響し、より幅広い人々の生活にインパクトを与えてしまうこともあり得ます。上記の理由から、M&AではCAを締結し、秘密情報を漏らさない・目的外利用しないように抑制しなければなりません。また、情報漏洩が発生した際の対応を円滑にすることも、CAを締結する重要な意義の一つです
CAのひな形と記載項目
ここでは、CAのひな形と記載項目を紹介します。
ひな形に関しては経済産業省が公開している業務提携時の例があるため、以下の通りリンクを紹介します。
記載する基本的な項目は、以下のとおりです。
【CAに記載する項目】
項目 | 詳細 |
秘密情報の定義 | 秘密情報になる情報の定義と当てはまらないものの定義を決める |
秘密情報の 開示範囲の定め | どこまで、誰にまで共有できるのかを決める 秘密情報を共有できる人たちが実際に情報を受け取った際にも、守秘義務は発生する |
目的外使用の禁止 | 情報を利用できる目的を明確にし、その他の目的で使用されることを禁止する |
秘密保持契約書の 利用目的完了時の 秘密情報の取り扱い | 情報が入っている媒体を利用完了した際の返却、または破棄する旨を定める |
有効期間 | 契約の有効期間と秘密保持義務の存続期間を決める |
損害賠償事項 | 契約違反をした際に、情報開示側に損害賠償請求することを記載する。 |
上記はあくまでも基本的に盛り込むべき内容であり、状況によって別の項目が必要になるケースはあるでしょう。
参照元:経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック〜企業価値向上に向けて〜」
CAを締結する手順
CAを作成する手順は、以下のとおりです。
- 秘密情報の定義
- CAの作成
- 双方による確認・合意
- 署名・捺印
それぞれの工程について、詳しく解説します。
1.秘密情報の定義
まず、秘密情報を定義します。どんな情報が秘密情報にあたるのか、どんな情報なら含まれないのか、定義をできるだけ明確に定めてください。
必要なものが含まれていなかったり、不要なものを含めていたりしたら、M&Aに支障が出てしまう恐れがあるでしょう。
2.CAの作成
次に、CAを作成していきます。当事者のどちらかがひな形を持っている場合は、それを基本として作成して良いのか確認を取ることが大切です。もし自社にひな形が用意されているなら、なるべくそれを使うようにしましょう。
3.双方による確認・合意
CAのドラフトができたら、当事者双方が確認し、合意形成を行います。チェックにあたっては当事者が自分で見るだけでなく、弁護士にリーガルチェックを依頼することも大切です。
4.署名・捺印
当事者双方が合意形成に至ったら、当事者の人数分だけ作成して署名捺印を行います。この際、法人の各代表者が署名捺印し、1通ずつ原本を保管することが基本です。
CAを締結する際の注意点
CA締結時には、以下の点に要注意です。
- 不利な内容が盛り込まれていないか確認する
- 契約期間について確認しておく
- 社内の情報管理に対する意識づけも並行して進める
- 専門家に相談する
CAの締結時には、自社にとって不利な内容が盛り込まれていないかをよく確認しましょう。
特に相手方のひな形を使っている場合は、当方に不利な条件になっていないかの事前チェックが欠かせません。
また、秘密保持の義務をいつまで負うのかを確認しておくこともポイントです。特に情報の開示を受ける側の立場の場合、どのくらいの期間契約が有効なのかを確認しておく必要があります。
さらに、締結時には社内の情報管理に関する意識やリテラシーの向上も並行して行うべきです。経営者同士がどれだけ気を遣って書面を取り交わしたとしても、社員の意識が低ければ情報漏洩が起きることも考えられます。
その他さまざまなポイントを押さえなくてはならないことから、できる限り専門家である仲介会社に協力してもらうことを推奨します。
まとめ
CA(秘密保持契約書)とは、秘密情報の適切な管理と約束違反時の責任の所在について記載している書面です。事業に大きな影響を与えるM&Aにおいては、慎重を期すためにCAの作成を怠らないことが求められます。
一般的に盛り込むべき内容は基本的に決まっているため、専門家である仲介会社のサポートも受けながら過不足のない書面の作成につなげましょう。
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