上場企業を買収する方法5つ|手順や価格の算出方法・事例も解説

2024年4月8日

上場企業を買収する方法5つ|手順や価格の算出方法・事例も解説

このページのまとめ

  • 証券取引所で株式を購入できる企業が上場企業と呼ばれる
  • 上場企業のM&Aは、一般的な株式譲渡・事業譲渡のほかTOBで行われることも多い
  • 上場企業のM&Aは、売り手・買い手とも株主総会の承認が必要な場合がある
  • 買収価格の算出では、将来の利益をもとに計算するDCF法が合理的な計算ができる

近年、M&Aそのものの件数が増えてきていますが、上場企業のM&Aの数も増加傾向にあります。上場企業を買収することを検討中の企業様も多いのではないでしょうか。

この記事では、上場企業を買収する際の手法や流れ、買取価格の算出方法や実際の事例についてまとめます。上場企業の買収をご検討中の企業ご担当者様はぜひ参考にしてみてください。

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上場企業とは

「上場企業」とは、不特定多数の投資家も証券取引所で株式を買える企業のことをいいます。証券取引所で株式を売買できる資格を与えることを「上場」といい、上場している企業が上場企業です。

日本には4つの証券取引所がありますが、実際の株式の取引はほとんどが「東京証券取引所(東証)」で行われます。東証では、2022年4月より市場は「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3種に再編されており、従来の市場と新興・成長企業向けの市場とに分けられています。 事実上、そのいずれかで買えるようになることが上場です。

上場を希望する場合、企業は証券取引所に申請して審査を受けます。審査の基準には「形式基準」「実質基準」の2種があり、両方の基準を満たす必要があります。

「形式基準」は、流通株式数や利益水準など数値に関する基準です。申請する市場によって基準となる数値が異なります。「実質基準」は、上場を判断する基準となる項目です。以下の5つがあります。

  • 上場にあたっての実質基準
  • 企業の継続性および収益性
  • 企業経営の健全性
  • 企業のコーポレートガバナンスおよび内部管理体制の有効性
  • 企業内容などの開示の適正性

上場するためにはこれら「形式基準」「実質基準」すべての基準を満たす必要があります。

次に上場のメリットとデメリットをまとめます。

メリット

デメリット

  • 資金調達がしやすくなる
  • 社会的信用度・知名度が高まる
  • 社内の管理体制を強化できる
  • 上場のコストと労力が必要
  • 経営責任・社会的責任が増大する
  • 買収されるリスクがある

良くも悪くも、上場すると社外に公開される面が増えて公的な側面が強くなります。

現在日本には4,000社弱の上場企業が存在しています。日本の企業数は約370万社とされており、上場企業は国内の企業の約0.1%ということになります。上場企業のニュースは頻繁に見かけますが、日本企業のごくごく一部だということがおわかりいただけるのではないでしょうか。

参考:
日本取引所グループ「上場会社数・上場株式数
e-Stat「経済センサス‐活動調査 令和3年経済センサス‐活動調査 速報集計 企業等に関する集計

非上場企業との違い

上場企業に対して、株式を公開していない企業は「非上場企業」と呼ばれます。証券取引所で株式を取引することができない企業ということです。公開されていない株式は「非公開株」と呼ばれます。不特定多数の投資家が株式を購入できないため、非上場企業の株主は主に創業者や役員とその親族、関連会社、社員などです。

非上場企業は広くから資金を集めることができないデメリットがある半面、買収されるリスクがない、株主への配慮が不要で意思決定がしやすくなるなどのメリットがあります。そのため大企業でも、サントリー、NTTドコモ、竹中工務店、ENEOSなど非上場企業として経営を続けている会社もあります。 

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上場企業を買収する方法5つ

次に、上場企業を買収する場合の方法についてまとめます。ここでは次の5つの方法について解説します。

  • 株式譲渡
  • 事業譲渡
  • TOB
  • MBO
  • その他

上場企業が売り手となるM&Aが行われることもあり、その際は上記のいずれかの形で実施されます。順に見ていきます。

1.株式譲渡 

「株式譲渡」は、売り手となる企業の株式を議決権の過半数以上購入して買収する方法です。日本のM&Aで中心となっている手法です。株主に直接交渉して株式を購入する場合と、市場を通じて取得する場合とがあります。ただし市場で売買されている株式数は少ないため、市場のみを通じて経営権を手に入れるのは現実的には難しいといえるでしょう。

買い手側から見た場合の株式譲渡による買収の目的は、会社の規模拡大・組織再編成・事業拡大などが挙げられます。株式譲渡のメリットは、手続が簡単なこと、雇用している従業員や許認可をそのまま引き継ぐことができることなどです。ただしデメリットとして、全株式の取得が難しい場合があること、簿外負債を引き継ぐリスクがあることなどがあります。

2.事業譲渡

「事業譲渡」は、売り手企業の行っている事業の一部またはすべてを事業単位で買収することです。 ここでいう「事業」は部門や子会社などが該当します。すべての事業を売買しない限り、売り手企業の経営権は移動しないことが特徴です。株式譲渡と並び、日本のM&Aでよく採られる手法です。

売り手・買い手とも、売買したい事業だけを売買できること、お互い必要な事業に専念できることがメリットです。そのメリットを享受するために、事業拡大やシナジー効果を目的として行われるのが一般的です。しかし手続が複雑なこと、基本的に許認可を引き継げないことなどのデメリットもあります。

3.TOB

「TOB」は、株主に対して買い付けの条件を公告して、条件に合意した株主から市場外で株式を取得する買収手法を指します。公告する条件は、価格・株式数・買い付け期間です。TOBは「株式公開買い付け」とも呼ばれ、「Take-Over Bid」の頭文字を取った略語です。

一定以上の株式の買い付けを行うときにはTBOを行わなくてはならない「5%ルール」「1/3ルール」が法律により定められています。そのため、大規模な株式取得を伴う上場企業のM&AではTOBの例は珍しくありません。

TOBが行われるときの目的としては、株式の取得による経営権の取得、あるいは子会社化があります。株式の1/3を取得すれば株主総会の特別決議拒否権が得られ、50%以上保有すれば経営権を取得できます。

TOBは市場外での売買になるため、株価の変動の影響を受けないというメリットがあります。また効率的に株式を取得できるのもメリットです。しかし市場で買い付けるよりも高いコストがかかる、後述する「敵対的TOB」の場合は買収対象側の防衛策によって失敗する可能性があるなどのデメリットがあります。

TOBは「友好的TOB」と「敵対的TOB」とに分けられます。それぞれの特徴は以下の通りです。

  • 友好的TOB
    買収の対象となる会社の了承を得たTOBのこと。グループ企業の完全子会社化などでよく行われる。日本のTOBの大半を占める
  • 敵対的TOB
    対象会社の了承を得ずに行うTOBのこと。買い付けの公告の後にTOBを受ける側が防衛策を講じることも多く、日本では失敗しやすい傾向がある

それぞれ上場企業での実例を挙げると、友好的TOBはYahoo!によるZOZOの買収、敵対的TOBは伊藤忠によるデサントの買収があります。

4.MBO

「MBO」は「Management Buy Out」の略で、経営陣が自社の株式を取得して経営権を取得することをいいます。「Management」は「管理」「経営」、「Buy Out」は「買い取る」という意味です。自己資本だけでは資金が不足することも多く、投資ファンドなどから資金調達することもあります。

MBOは、主に経営権の完全取得や上場廃止などを目的として行われます。経営陣が経営権を得ることによって、株主への配慮が不要になり、意思決定のスピードが上がったり方針がブレなくなったりするメリットがあります。また上場廃止によって買収リスクを回避することもできます。ただし資金調達の選択肢が少なくなる、経営の監視機能が低下するなどのデメリットもあります。

5.その他

その他の方法としては次の例が挙げられます。

  • 第三者割当増資
  • 株式交換
  • 株式移転

「第三者割当増資」は新しく株式を発行し第三者にそれを割り当てることです。M&Aでは、割当先の企業が売り手企業の保有株式の割合を高めるために利用されます。

「株式交換」は、売り手企業の発行済み株式をすべて買い手企業に取得させることです。完全子会社化することを意味します。対価は買い手企業の株式が一般的ですが、現金などの場合もあります。

「株式移転」は、新たに設立する「特定親会社」に売り手企業の株式をすべて取得させることです。ただし株式移転は経営統合に向く方法で、上場企業の買収にはあまり適していません。

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上場企業を買収する流れ

上場企業を買収する場合、以下の流れで行います。

  1. 戦略を策定する
  2. 売り手企業を探す
  3. 各種契約書を締結する
  4. デューデリジェンスを実施する
  5. 最終契約書を締結する
  6. クロージングする

それぞれのステップについて見ていきましょう。

1.戦略を策定する

まず初めに、M&Aの戦略を策定します。M&A戦略とは、M&Aの目的、買収のスキーム、買収額などのことです。買収のスキームとは、すでに述べた「株式譲渡」「事業譲渡」など買収の方法のことを指します。初めにこれらのM&Aの方向性を定めます。

とくに、目的を明確にしておくことが重要です。企業規模を拡大したいのか、シナジー効果を得たいのか、あるいは任意の事業を強化したいのかなど、何を目的にするのかを具体的にしておきましょう。目的をはっきりさせておかないと、M&A後の事業への効果が得られなくなるリスクが高まってしまうからです。 

2.売り手企業を探す

次に、買収すれば自社の目的や希望を達成できるような売り手企業を探します。さまざまな方法があり自社で探すこともできますが、M&A仲介会社に紹介してもらう方法も選択肢として検討する価値があります。

仲介会社に依頼すると、目的達成に適した企業かどうか判断したうえで紹介してもらうことができます。そのためM&A後に成功する可能性も高まるといえるでしょう。

3.各種契約書を締結する

次は各種契約書を締結します。この段階で作成する書類としては、「意向表明書」と「基本合意書」があります。

売り手の候補を探してから各種契約書を締結するまでの手順は、以下のように細分化できます。

  1. 候補となる企業とトップ同士の会談を行ったりして意思を確認し合い、対象を絞り込む
  2. 意向表明書を提出、交渉を進める
  3. 基本合意書を締結する

「意向表明書」は買い手が売り手に対してM&Aの意思があることを示すための文書です。大まかな条件も記載します。必須のものではありませんが、提出しておくと後々の交渉をスムーズに進めることができます。

「基本合意書」は、意向表明書より具体的かつ最終契約に向けた条件を記載します。基本合意書に法的な拘束力はありませんが、締結するのが一般的です。

4.デューデリジェンスを実施する

基本合意に達したら、「デューデリジェンス」を行います。デューデリジェンスは、売り手となる企業について買い手が事前に調べることです。調査の範囲はケースバイケースですが、主に財務・法務・事業などの実態を事前に把握して、M&Aのリスクや将来性・価格の妥当性などを判断する材料とします。

売り手に問題点が発見された場合は、M&Aを取りやめたり売り手側に事前の改善を求めたりするなど対処することができます。買い手からするとリスク回避になるほか、M&A後の買い手・売り手間のトラブル防止にもつながります。売り手も調査に協力することが大切です。

そのほかデューデリジェンスにより具体的な事業の状態や将来性を把握することで、価格が妥当かどうかの判断ができます。買収後の経営統合の準備材料にも活用可能です。

なお事業譲渡で買収した場合、効力発生の前日までに譲渡会社・譲受会社ともそれぞれ株主総会の特別決議で承認を得る必要があります。ここで解説しておきます。

決議が必要となる条件は、売り手と買い手とで異なります。譲渡会社すなわち売り手は以下の条件のいずれかに該当する場合に承認が必要です。

  • 事業の全部の譲渡
  • 事業の重要な一部の譲渡
  • その子会社の株式又は持分の全部又は一部の譲渡

ここでいう「重要な一部」は、事業の帳簿上の価額が会社の総資産額の1/5を超えているものを指します。

買い手すなわち譲受会社の方は、譲渡企業の事業の全部を譲受する場合に特別決議の承認が必要となります。

5.最終契約書を締結する

デューデリジェンスで問題がなかった場合や解決された場合は、最終契約書を締結します。最終契約書は「DA(Definitive Agreementの略)」とも呼ばれ、正式なM&Aの契約書のことです。なお「最終契約書」は最後に締結する契約書だということを表す語で、契約書そのものの正式な名称ではありません。正式な名称は行われるスキームによって異なります。株式譲渡の場合は「株式譲渡契約書」あるいは「SPA(Stock Purchase Agreementの略)」、事業譲渡の場合は「事業譲渡契約書」と呼ばれます。

最終契約書は合意に至った条件すべてを記載するため複雑な内容となりますが、主な内容は次の通りです。

  • 取引対象となる株式・事業
  • 価格
  • 価格の調整方法
  • 代金の支払方法
  • 支払いの時期

最終契約書は契約書なので、法的拘束力がある書類です。そのため上記の内容のほかにも、双方の義務や禁止事項、違反があった場合の賠償や補償なども定めておきます。

6.クロージングする

最終契約書を締結したら、「クロージング」に移行します。クロージングとは契約にある事業の承継の内容を実際に履行することです。スキーム実行の手続と、譲渡代金の支払いと決済手続を行い、経営権の移転が完了することをいいます。

スキーム実行の具体的な手続の内容は、スキームによって異なります。たとえば上場企業の株式を譲渡する場合は、売り手企業による株式の振替申請がクロージングの手続です。事業譲渡の場合は資金の譲渡や契約移管の手続を行います。

最終契約書の締結からクロージングまでは一定期間空けるのが通例です。またクロージングは行うべき手続も複数あるため、すべての手続が1日で終わるとは限りません。

加えて、クロージングの後も行うべき手続があります。株式譲渡・事業譲渡に共通する手続としては次の内容があります。

  • 新たな取締役が派遣される場合、株主総会・取締役会の開催
  • クロージング時の財務諸表作成
  • 対価の調整

さらに株式譲渡の場合は次の2点も必要です。

  • 株主名簿の書き換えの請求
  • 株式名簿記載事項証明書交付の請求

また、事業譲渡の場合は次の2点を行わなくてはなりません。

  • 必要に応じて登記
  • 引き継げない許認可の申請

実際には、上記の手続を行ってからM&A後の企業活動が始まることになります。

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上場企業の買収価格を算出する方法3つ

上場企業の買収価格を算出する方法はいくつかあります。具体的には次の3つの方法が挙げられます。

  • マーケットアプローチ
  • インカムアプローチ
  • コストアプローチ

それぞれについて、基本的な考え方を確認していきましょう。

1.マーケットアプローチ

「マーケットアプローチ」は、株式市場の価格から企業価値を推定計算する方法です。さらに具体的な方法としては、次の3つが挙げられます。

  • 「市場株価法」…市場における該当企業の実際の株価を参考にする
  • 「類似会社比較法」…類似する会社の市場価格を参考にする
  • 「類似取引比較法」…過去の類似したM&Aの取引などを参考にする

いずれも実際に売買されている市場の価格を参考にするため、一定の客観性が期待できるというメリットがあります。しかしデメリットや注意点もあります。たとえば市場株価法の場合は、計算した金額にプレミアムを加えるのが通例で、算出される価格をそのまま購入価格にはできません。プレミアムは実際のTOBなどでは30~40%が目安です。敵対的TOBへの防衛策の場合などは、それ以上となることもあります。

類似会社比較法・類似取引比較法は、類似の例がないとそもそも計算ができないというデメリットがあります。

2.インカムアプローチ

「インカムアプローチ」は、将来生み出されると想定される利益をもとに企業価値を算出する方法です。

具体的な計算方法には「DCF法」があります。DCF法は、代表的な企業価値の評価方法の1つです。将来の「フリーキャッシュフロー」を現在の価値に割り引いて、将来の収益を現在の買収価格に反映させるという方法です。DCF法はやや計算が複雑な点がデメリットですが、最も合理的な計算方法といえます。

そのほかの具体的な計算方法の例としては、「収益還元法」「配当還元法」があります。「収益還元法」はやや簡易的な方法で計算しやすいというメリットがありますが、不確定要素を反映できず主観が加わるのがデメリットです。「配当還元法」は配当をもとに計算するため、欠損などで配当がない場合は過小評価になるというデメリットがあります。

3.コストアプローチ

「コストアプローチ」は、純資産をもとに企業価値を算出する方法です。具体的な計算方法には次の2つがあります。

  • 「簿価純資産法」…会計上の純資産に基づき株式価値を算出する
  • 「時価純資産法」…資産を時価に置き換えて株式価値を算出する

「簿価純資産法」は客観的・簡易的に計算できるメリットがありますが、帳簿と比べて含み損や含み益がある時に正確な算出ができないのがデメリットです。

「時価純資産法」は、簿価純資産法の問題点を解決した方法です。ただし既存の資産しか対象にしていないため、将来の収益性が一切考慮されていないというデメリットがあります。

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上場企業の買収事例3選

最後に、上場企業の買収事例をご紹介します。ここでは次の3つの例について概略を解説します。

  • ヒビノ株式会社の買収事例
  • 株式会社ロコンドの買収事例
  • 前田建設工業株式会社の買収事例

1つずつ見ていきましょう。

1.ヒビノ株式会社の買収事例

まず、2019年4月にヒビノ株式会社(以下「ヒビノ」)が日本板硝子環境アメニティ株式会社(以下「日本板硝子環境アメニティ」)を買収した事例をご紹介します。

ヒビノは、音響・映像機器の販売・施工、建築音響に関する設計・施工、コンサート・イベントの音響・大型映像サービスを行う会社です。また日本板硝子環境アメニティは、名前の通りもともと日本板硝子株式会社の100%子会社でした。防音・防振音響技術をベースに、防音・防振製品をはじめピアノレッスン室・オーディオリスニングルーム、録音スタジオ、音楽ホール、学校音楽教室や騒音対策などを手掛けるほか、電磁波分野でも調査・測定・設計・施工を行う会社です。

日本板硝子環境アメニティは安定的な業績を計上してきたものの、将来的な発展のために他社との相乗効果が必要との判断でM&Aを検討します。ヒビノ側もエンドユーザーへのアプローチの強化のほか、新製品の開発や労働生産性の向上を図りたいとの考えがあり、両者の条件が一致。株式譲渡によりヒビノが日本板硝子環境アメニティを買収しました。現在日本板硝子環境アメニティは「日本環境アメニティ株式会社」と社名を変更し、ヒビノの完全子会社となっています。

参照元:日本経済新聞「日本板硝子、子会社「日本板硝子環境アメニテイ」の全株式をヒビノへ譲渡

2.株式会社ロコンドの買収事例

次は、2019年3月に株式会社ロコンド(以下「ロコンド」)が株式会社モバコレ(以下「モバコレ」)を買収した事例です。

ロコンドは、自宅で試着できる靴とファッションのECサイト「LOCONDO.jp」を運用、さらにプラットフォーム事業やブランド事業を行っている会社です。モバコレの方は、東証1部(当時)上場の千趣会という企業がありますがその子会社でした。20代女性向けファッション商品を販売するECサイト「モバコレ」を運営していました。

ロコンドのLOCONDO.jpのメインユーザーは30代・40代の女性。モバコレのメインユーザーである20代を取り込むことやプラットフォームサービスを共有することで、より効率的な企業運営を目指そうと考えます。千趣会側もこれに同意し、株式譲渡により完全子会社化されました。同年6月にモバコレは解散し、ECサイトも「ロココレ」へ名称が変更されています。

参照元:株式会社ロコンド「株式会社モバコレの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

3.前田建設工業株式会社の買収事例

3つめは2020年3月の前田建設工業株式会社(以下「前田建設工業」)による前田道路株式会社(以下「前田道路」)の買収の事例を紹介します。

前田建設工業は、土木建築工事の請負・設計、公共インフラなどの運営事業を行う準大手ゼネコンの企業です。前田道路は、建設事業・製造販売事業の会社です。もともと前田道路は前田建設工業の持ち分法適用関連会社で、グループ傘下の会社でした。

前田建設工業が請負の体質から脱却する策の一環として、シナジー効果を期待して前田道路に子会社化を提案します。しかし前田道路側はこれに反発。結局、前田建設工業が敵対的TOBを仕掛けることとなりました。グループ傘下の企業に対する敵対的TOBだったため、当時「親子喧嘩(げんか)」とも呼ばれました。前田道路も防衛策を講じますが最終的にTOBが成立。前田建設工業は、前田道路を連結子会社化して経営陣を刷新します。その後は関係修復へ進み、前田製作所を含むグループ3社で2021年10月に持ち株会社を設立。3社とも完全子会社化されています。

参照元:日経クロステック「前田建設が敵対的TOBの亀裂修復、前田道路と持ち株会社設立へ

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まとめ

これまで見てきたように上場企業でも買収が行われることがあり、多くは売り手が合意したうえでの株式譲渡や事業譲渡・TOBなどの形を取ります。M&Aの大まかな流れは非上場企業の場合と変わりませんが、株主総会での承認が必要な場合があるなど、上場企業ならではの注意点もあります。手続を確実に行うことが重要です。そもそもM&Aが複雑な手続を必要とするため、上場企業のM&Aはプロの仲介会社に相談するのが間違いない方法といえるでしょう。

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