M&Aで起こるトラブルとは?不安や悩みを抱える前に確認したいポイント

2024年3月5日

M&Aで起こるトラブルとは?不安や悩みを抱える前に確認したいポイント

このページのまとめ

  • M&Aでよくあるトラブルは簿外債務や従業員の大量離職、買収直後の業績悪化など
  • 有名企業や大企業でもM&Aのトラブルを避けられなかった例がいくつもある
  • M&Aのトラブル回避方法はデューデリジェンスの徹底、従業員への告知の工夫など
  • M&Aを成功させるポイントは目的の明確化、信頼できる専門家の起用など

M&Aでの買収を検討する際に、「トラブルが起こったらどうしよう」とお考えの方も多いのではないでしょうか。M&Aでは確かにトラブルが発生することもありますが、ある程度事前の対策は可能なものです。本コラムでは、M&Aでよくあるトラブルや有名企業の実例とともに、M&Aのトラブル回避方法、さらにはM&Aを成功させるポイントまでを解説しています。

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

M&Aによくあるトラブル例

M&Aで発生するトラブルは、残念ながらいくつもあります。ここでは、特にM&Aで起こりやすいトラブル5例を挙げました。

  1. 買収先企業を適切に選定できない
  2. 引き継げるものと引き継げないものを見誤る
  3. 買収後に従業員が大量に退職する
  4. 買収後に簿外債務が発覚する
  5. 買収直後に業績が悪くなる

それぞれ、どのようなM&Aのトラブルなのか確認しましょう。

1.買収先企業を適切に選定できない

M&Aの買い手の場合に、買収先企業選びの段階でトラブルの発端を起こしてしまうケースがあります。特に、なかなか希望条件に合った企業が見つからない状況で起こりがちです。通常、M&Aでの買収を決める際には、目的やビジョンを決めます。その方針に沿って買収先探しを行いますが、すぐに相手が見つからないと、心理的に焦ってしまうこともあるでしょう。

そのような精神状態に陥ると当初の目的を忘れ、いつしか買収すること自体が目的化してしまうことがあります。すると、必ずしも適切ではない買収先候補だとしても、妥協して買収先として選んでしまいがちです。

2.引き継げるものと引き継げないものを見誤る

M&Aスキーム(手法)の1つである事業譲渡で買収を行う場合、買い手側で引き継ぐものを見誤るトラブルもあります。事業譲渡の特徴は、売り手企業の資産や権利義務などを選別して買収できる個別承継であることです。株式譲渡などの包括承継では丸ごと会社を買収するので、このトラブルは起こり得ません。

特に異業種の買収を行う場合、事業に必要となる資産などを完全に把握できていないため、本来、必要となる資産などを買収対象に入れていない可能性があります。また、過去には、事業に必要な何らかの権利は、売り手が第三者から貸与されていたもので、そもそも買収対象にできない、といったトラブルもありました。

3.買収後に従業員が大量に退職する

M&Aでは、買収後に従業員が大量に退職するトラブルも起こり得ます。売り手企業の従業員としては、将来への不安や、突然M&Aの事実を知らされたことへの不満や反発、売り手企業の経営者が退任していなくなることへの動揺など、精神的に不安定になりがちです。

その状況で強引にPMI(Post Merger Integration=経営統合プロセス)を進めると、1人が退職したのを皮切りに次々と退職者が出てしまう可能性があります。その中に幹部社員などのキーパーソンが含まれていると、さらに退職者の増加を助長するだけでなく、今後の事業運営にも痛手となるでしょう。

4.買収後に簿外債務が発覚する

買収後に簿外債務が発覚するトラブルでは、簿外債務の内容次第で経営上、大きなダメージを受ける場合があります。簿外債務とは貸借対照表に記載されていない負債のことです。具体的には以下のようなものがあります。

  • 計上漏れの買掛金
  • 未払い残業代
  • 未払い社会保険金
  • 賞与引当金
  • 退職給付引当金
  • リース債務
  • 債務保証
  • 損害賠償義務の発生リスク

売り手が故意に簿外債務を隠すケースもありますが、売り手自身も簿外債務を把握していないことも多いです。少額のものはまだしも、債務保証が巨額であったり、訴訟や紛争の結果、許認可の取消やブランドイメージの下落になったりなど、取り返しのつかないトラブルとなる可能性もあります。

5.買収直後に業績が悪くなる

M&Aによる買収直後、買収先の業績が落ち込むケースもトラブルとしてあります。このトラブルの原因は、売り手企業がM&Aの売却額高騰を狙って、直近の年度の決算成績を無理に良くしたことです。具体的には、仕入れや経費を減らしたり、従業員の賞与は翌期に回したりなどで極力コストを削減し、黒字幅を拡大するケースなどが考えられるでしょう。

そのしわ寄せが買収後に現れ、直近の決算数値とは、ほど遠い業績となってしまうのです。また、設備投資を抑えてきたため、買収後、設備の入れ替えや修繕などの費用が発生し、業績を押し下げることもあります。

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

企業のM&Aトラブル事例

大手企業といえども、M&Aのトラブルを回避できない場合もあります。ここでは実際のM&Aのトラブル事例を3件取り上げました。

  1. 株式会社ディー・エヌ・エーの事例
  2. 第一三共株式会社の事例
  3. 株式会社東芝の事例

有名企業がどのようなM&Aのトラブルに見舞われたのか、確認しましょう。

1.株式会社ディー・エヌ・エーの事例

ディー・エヌ・エーのM&Aトラブルは、会社の買収後、起こったものです。2014(平成26)年、ディー・エヌ・エーは、キュレーション(情報まとめ)サイトを運営するiemoとペロリの2社を子会社化しました。ゲームポータルサイトMobageで業績を積み上げてきたディー・エヌ・エーが、ゲーム分野以外に事業領域を拡張させる経営戦略として行ったM&Aです。

しかし、M&A後、医療健康情報のキュレーションサイトで虚偽情報の掲載や他サイト記事の無断引用が発覚し、最終的にはキュレーションサイト10サイト全てを閉鎖する羽目になっています。ディー・エヌ・エーは、キュレーションサイト運営から撤退、iemoとペロリは吸収合併して消滅しました。

この原因は、2社との基本合意書締結後の段階で社内から出たリスクの指摘について、深く検討しないまま買収を決めてしまったことにあるとされています。

参考:産経新聞社「失敗M&A列伝 東芝、DeNA…華々しい買収が一転、窮地に」

2.第一三共株式会社の事例

大手製薬会社である第一三共のM&Aトラブルは、インドの後発医薬品会社ランバクシー・ラボラトリーズの買収後、同社が業績悪化したものです。2008(平成20)年、第一三共は、4,884億円でランバクシー・ラボラトリーズを買収しました。

買収に合意した段階で、アメリカの食品医薬品局(FDA)から主力2工場の製品輸出禁止措置を受けるなど、不安視される中、買収をしています。しかし、その後もランバクシー・ラボラトリーズの品質管理問題は改善されることがなく、他の工場の製品もFDAから輸出禁止措置を受けるなどして業績は悪化の一途でした。

最終的にランバクシー・ラボラトリーズは、2014(平成26)年にインドの同業者に吸収合併されています。第一三共は、後発医薬品事業と世界市場への進出という目的があったとはいえ、買収合意の段階で何らかのリスクヘッジを検討すれば、このようなトラブルは避けられたかもしれません。

参考:日本経済新聞「第一三共、失策続きの6年 印子会社を実質売却」

3.株式会社東芝の事例

東芝のM&Aトラブルは、買収した海外の子会社が経営破綻したことに伴い、巨額の損失を出したことです。2006(平成18)年、東芝はアメリカの原子力事業会社ウェスチングハウスを54億ドル(当時のレートで約6,000億円)で買収しました。しかし、2011(平成23)年の東日本大震災で福島第一原発事故が発生し、原子力事業に陰りが生じます。

さらに、2015(平成27)年、ウェスチングハウスがアメリカで原子力発電所建設会社のストーン・アンド・ウェブスターを子会社化しましたが、この会社が問題を抱えており、ウェスチングハウスでは2,600億円の減損が発生しました。

翌2016(平成28)年、ストーン・アンド・ウェブスターでは数千億円の減損の可能性が発覚し、2017(平成29)年、ウェスチングハウスは破産したのです。子会社、孫会社による一連の失敗から、東芝の損失のトータルは1兆2,000億円超となりました。

参考:株式会社 東芝「ウエスチングハウスグループにおける原子力事業 経営成績」

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

M&Aのトラブルを回避する方法

ここでは、M&Aのトラブルを回避する方法を紹介します。

  1. M&A仲介会社に任せきりにしない
  2. デューデリジェンスで簿外債務などを細かく確認する
  3. 適切なタイミングで従業員に告知する

上記3つのM&Aトラブル回避方法や手順などを説明します。

1.M&A仲介会社に任せきりにしない

M&Aを実施する当事者はあくまでも自社であるため、M&A仲介会社に丸投げしては買収後のトラブルがおきかねません。まずは、担当のM&Aアドバイザーとコミュニケーションを密にとり、M&Aの目的、自社の状況、業界の動向、希望条件などをきちんと伝えることから始めます。

定期的にミーティングを行ってM&Aの進捗報告を受けながら、疑問点や不明点は必ず質問して解消するようにしましょう。専門的なことはM&A仲介会社に任せて当然ですが、当事者としての自覚を忘れないのがポイントです。

2.デューデリジェンスで簿外債務などを細かく確認する

事業譲渡以外のM&Aスキームは包括承継であるため、偶発債務などの簿外債務を引き継いでしまうリスクを否定できません。簿外債務の有無・内容を把握するには、徹底したデューデリジェンスの実施が必要になります。デューデリジェンスとは、売り手企業に対して行う精微な調査のことです。

財務・税務・法務・労務・IT・事業などの分野ごとに、士業などの専門家を起用して実施します。デューデリジェンスは、各種資料のチェックだけでなく役員や経営者などへのヒアリングも実施し、1~4週間程度の期間で行うものです(期間は売り手企業の規模によって異なり、もっと期間を要する場合もあります)。

3.適切なタイミングで従業員に告知する

M&Aでは、売り手企業側の従業員にどのタイミングでM&Aの告知を行うか気をつける必要があります。基本的には、最終契約書を締結したらすぐに告知するのがいいでしょう。告知は個別に行うと情報が交錯するため、全員を一堂に会して実施すべきです。告知を行うのは売り手側の経営者ですが、買い手側の経営者も同席します。

従業員に不安や不信を与えないように、質疑応答では丁寧な説明を心掛けましょう。気をつけたいのは、M&Aの交渉段階で、その情報が社内に漏れることです。従業員に動揺が広がり、交渉にも悪影響を及ぼしかねません。なお、幹部社員などのキーパーソンに対しては、全社員よりも先に個別で伝えるケースもあります。

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

M&Aを成功させるポイントは?

最後に、M&Aを成功させるポイントを確認しておきましょう。

  1. M&Aを行う目的を明確にしておく
  2. 自社への理解を深め、M&A候補企業の条件を明確にする
  3. M&Aの実行を決めた段階から行動する
  4. 売り手・買い手の経営者・経営幹部間でコミュニケーションを深める
  5. 信頼できる専門家と相談して進める

M&Aを成功させるポイントは上記の5つです。それぞれの内容を説明します。

1.M&Aを行う目的を明確にしておく

M&Aを成功させるポイントの1つは、M&Aを行う目的を明確にしておくことです。一般に、M&Aの買い手の目的には、以下のようなものがあります。

  • 人材や設備、機械類の獲得
  • 店舗、事業所、営業所などの獲得
  • 知的財産権の獲得
  • 事業規模拡大
  • 新規事業への進出(事業の多角化)
  • 海外市場への進出
  • シナジー効果の創出

目的を明確にしておかないと途中でブレが生じ、相手選びや交渉で迷走するリスクがあります。M&Aの目的と方針、戦略をはっきりさせましょう。

2.自社への理解を深め、M&A候補企業の条件を明確にする

売り手側としてM&Aを成功させるポイントは、自社への理解を深めてM&A候補企業の条件を明確にすることです。自社の状況をあらためて分析し、特徴、強み、課題、競合との関係、有力な取引先の有無、従業員の状況などを見つめ直します。それをM&Aアドバイザーに伝えることで、適するM&A相手像も明らかになるでしょう。

3.M&Aの実行を決めた段階から行動する

売り手・買い手ともに、M&Aの実行を決めたらすぐに行動をとることが、M&Aを成功させるポイントになります。M&Aは準備段階も含めると半年~1年程度かかる長丁場です。相手探しが長引けば、もっと時間を要する場合もあります。すぐに行動するに越したことはありません。

行動の第一歩目は、M&A仲介会社などの専門家への相談です。ほとんどのM&A仲介会社では、正式依頼前の相談でも無料で受けつけています。専門家選びという意味合いも含め、M&A仲介会社の無料相談を活用してM&Aの準備に取りかかりましょう。

4.売り手・買い手の経営者・経営幹部間でコミュニケーションを深める

買い手にとってのM&Aの成功は、PMI(経営統合プロセス)を計画どおりに遂行しシナジー効果が創出される状況までもっていくことです。M&Aの売り手と買い手の経営統合を円滑に進めるには、それぞれの経営者・経営幹部間の協力関係構築が欠かせません。

PMIは計画策定が肝となります。したがって、PMI計画策定プロジェクトには売り手側の人間も必要です。円滑に進められるPMI計画を策定するためには、売り手・買い手の経営幹部間でコミュニケーションを深めることが必要となります。

5.信頼できる専門家と相談して進める

M&Aは、各プロセスで専門的な知識や経験が欠かせません。当事者だけでM&Aを進めるのは難しいものがあります。したがって、専門家に業務を依頼するのが一般的です。現在、M&Aの仲介業務を行うのは、以下のような機関があります。

  • M&A仲介会社
  • 士業事務所(公認会計士、税理士、弁護士など)
  • 金融機関(銀行、信用金庫、証券会社など)
  • FA(ファイナンシャルアドバイザー)
  • 経営コンサルタント

売り手でも買い手でも自社に適する専門家を選ぶことが、M&Aを成功させるうえでポイントになります。専門家選びには、M&A仲介会社が行っているような無料相談を活用するとよいでしょう。複数の会社と話したうえで、比較検討して選べます。

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

まとめ

M&Aのトラブルで原因不明のものはありません。つまり、M&Aのトラブルには、対策や回避方法があります。M&Aは大きな取引であるため、極力、失敗は避けたいものです。

トラブルの内容によっては単なる失敗にとどまらず、経営上の大きなダメージになることもあります。トラブルを避けてM&Aを成功させるには、やはりM&A仲介会社などの専門家を起用するのが得策です。自社に適した専門家を選び、大いに活用しましょう。

M&AならレバレジーズM&Aアドバイザリーにご相談を

レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、M&A全般をサポートする仲介会社です。専門的な知識・経験が豊富な各コンサルタントは、M&Aのトラブルを避け、それぞれの会社様に適したアドバイス・サポートを提供できます。

料金体系は、M&Aのご成約時にのみ料金が発生する完全成功報酬型のため、M&Aのご成約まで費用は発生しません(買い手企業様のみ中間金が発生します)。
随時、無料相談をお受けしておりますので、M&Aをご検討の際には、ぜひお気軽にお問い合わせください。