事業再生の手法とは?手続きの流れや成功させるポイントを解説

2024年2月29日

事業再生の手法とは?手続きの流れや成功させるポイントを解説

このページのまとめ

  • 事業再生は採算のとれない事業を立て直すための手続き
  • 事業再生の手法は法的再生・私的再生・再生型M&Aの3つ
  • 事業再生を成功させるポイントは、将来を見据えて採算のとれる事業を残すこと

事業再生は経営状況が悪い事業を立て直すことです。手続きには法的再生と私的再生の2種類があります。いずれの場合も一定のステークホルダーによる支援を受けつつ、M&Aによる事業継続を図る再生型M&Aの手法を選ぶことが可能です。

本コラムでは事業再生の手法について、それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。このコラムを読めば自社に合う事業再生の手法がわかりますので、ぜひ参考にしてください。

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事業再生とは

事業再生とは、採算のとれない事業を立て直すための手続きです。赤字の続く事業がある場合、そのまま放置すると倒産に至る可能性があります。

倒産は債権者や取引先、従業員など関係者に迷惑をかけるため、できる限り避けたいものです。そのようなときに廃業を回避して事業の立て直しを図れるのが事業再生です。事業再生では資金調達や経営改善などを行いながら、事業の再生を目指します。

事業再生をする前提として、経営改善などで事業を再生できる見込みがなければなりません。現在の会社に事業を再生できる可能性があり、再生する価値があるのかを考えて事業再生に取り組むかを決定する必要があります。 

企業再生との違い

事業再生のほかに企業再生という言葉があり、厳密にいえば両者は異なります。事業再生は採算のとれない事業を立て直すことであるのに対し、企業再生は企業全体に着目して経営再建を図ることです。

企業再生には事業再生が必要であり、両者に明確な違いはありません。着目するのが事業か企業全体かという違いで、いずれも会社を立て直すという点では共通しています。

事業再生のタイミング

事業再生には適したタイミングがあります。会社を倒産させないために資金繰りに奔走し、倒産寸前になってから事業再生の道を選ぶケースも少なくありません。

しかし、ギリギリの状態では選べる手法も限られ、再生できる可能性は低くなります。

事業再生のタイミングは、資金繰りにまだ余裕がある段階に行うことが大切です。業績が著しく悪化するなどの予兆が見られるとき、会社を存続させるためには、早めの決断が求められます。

例えば、業績の悪化で資金繰りが悪くなり、借入金の返済に支障が出そうな状況になったときは、事業再生を考えるタイミングです。また、収益性の高い事業はあるが、企業全体としては赤字決算が続いている場合は、事業再生の検討を始めるべきタイミングといえるでしょう。

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事業再生の手法

事業再生の手法は複数あり、それぞれ特徴やメリットは異なります。

手法は大きく分けて、以下の3つです。

  • 法的再生
  • 私的再生
  • 再生型M&A

法的再生は裁判所が介在する手法で、私的再生は当事者間の協議で会社の再建を行う手続です。それぞれにメリットとデメリットがあるため、 まずそれぞれの手法を把握し、会社の状況に適した手段を選びましょう。再生型M&Aは、一定のステークホルダーによる支援を受けつつM&Aによる事業継続を図る手法です。

ここでは、事業再生の手法を詳しく紹介します。

1.法的再生

法的再生は、裁判所が介在し、法的手続きを利用して再生する手法です。会社を立て直す再建型手続と生産する清算型手続があります。

再建型と清算型のどちらが優れているかは一概に判断できず、費用や早期に再生できるかなどを総合的に判断して手段を決定します。

法的再生で再生不可能な計画は裁判所からの認可が下りないため、債権者から納得されやすい手法といえるでしょう。また、債権者全員の同意がなくとも、一定割合の債権者が同意して裁判所が許可すれば、事業再生が開始できるのがメリットです。

ただし、法に従って手続きを進めるため、私的再生に比べて手続きに時間がかかる点がデメリットです。また、私的再生と比較すると費用も高額になるでしょう。

再建型手続

再建型手続は以下の3つです。

  • 民事再生
  • 会社更生
  • 特定調停

民事再生は民事再生法に基づく裁判手続で、裁判所の監督のもとに行います。経営者が主体となり、債権者の同意を得た再生計画に基づき、事業を継続しながら債務の返済を行う手続です。

会社更生は会社更生法に基づく手続で、裁判所に選任された更生管財人が手続きを進めます。手続にあたって、経営陣の交代が求められるのが一般的です。

民事再生は個人事業主や中小企業でよく利用されるのに対し、会社更生は主に大企業に利用されています。

特定調停は債務者として会社が借入金などの処理を裁判所に申し立て、調停委員会と呼ばれる機関が利害関係者の仲介を行う手続です。

清算型手続

清算型手続には、破産と特別清算があります。破産は破産法に基づき裁判所に申し立てを行う手続です。裁判所から破産管財人が選任され、会社財産を債権者に公平に分配します。破産により、会社は消滅します。

特別精算は会社法に規定のあり、株式会社のみが利用できる手続きです。経営者が主体となって手続きを進め、破産よりも簡易で安い費用により会社を清算できる手法です。

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2.私的再生

私的再生は裁判所が関与せず、当事者間で協議しながら会社再建を行う手続です。債権者と和解し、権利を変更しながら会社を再建します。

裁判所が介在する民事再生と異なり表立って公表されず、私的再生を行う情報は公開されません。対外的な信用不安を招きにくいというメリットがあります。事業再生開始までの時間を短くできるのも利点です。

一方、債権者全員の同意がなければ再生計画を進めることができず、反対する債権者の影響力が大きくなりやすいというデメリットがあります。大会社で関係者の数が多い場合、私的再生を利用するのは難しいケースもあるでしょう。

私的再生は法的再生に比べ短期間で再生が可能ですが、手続きが不透明になりやすいのがデメリットです。そのため、債権者が再生計画に同意する条件として、法的再生による再生よりも私的再生で債権放棄を実施し事業を継続させたほうが多くの回収を見込めることが必要です。この条件を満たせない場合、法的再生を選択するべきといえます。

私的再生の手法には、以下の3つがあります。

  • 私的整理ガイドライン
  • 中小企業再生支援スキーム
  • 事業再生ADR

私的整理ガイドラインは、債権者と債務者との合意に基づき、債権放棄などを行うための手続規定です。経済団体連合会や全国銀行協会などを委員とする私的整理に関するガイドライン研究会が公表したもので、法的拘束力はないものの、私的再生を行う際の一般的な合意事項として認知されています。

中小企業再生支援スキームは、 中小企業再生支援協議会が要件や手順を定めた手続きです。債務免除を含む再生計画の策定支援を実施します。中小企業再生支援協議会は、地域の中小企業の再生に.向けた取り組みを支援する公的機関で、全国各地に設置され、中立の立場で私的再生に協力しています。

事業再生ADRとは、民間主体の事業再生環境を整備するために創設された制度です。 事業再生の専門家が中立的な立場から債務者と債権者間の調整を行い、 事業再生を支援します。

ほかの私的再生の手法と異なり、第三者機関が関与することが特徴です。公正な第三者機関が間に入ることで債権者の納得も得やすくなり、再生の実現可能性が高まります。また、法的再生よりも事業再生を早く進められる点がメリットです。

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3.再生型M&A

再生型M&Aは、事業譲渡というM&Aの手法で事業再生を行う手続です。倒産などの最終手段しか選択肢がなかった事業を再生できる可能性がある点がメリットです。また、債権者は早期かつ確実に債権を回収することができます。

さらに、事業が廃止されることによる失業者の増加や取引先企業の連鎖倒産を回避できるなど、再生型M&Aを利用するメリットは少なくありません。

再生型M&Aには経営権を維持する手法や、採算事業のみを切り離して会社を廃業する手法などがあり、状況により適したものを選びます。

主な手法は以下の4つです。

  • 企業再生方式
  • 事業譲渡方式
  • 会社分割方式
  • 第二会社方式

それぞれの特徴をみてみましょう。

企業再生方式

スポンサー企業の子会社となり、会社の法人格を維持したまま事業再生を行う方法です。企業再生方式では法人格を維持するため、私的再生手続で行うことができます。

企業再生方式は、スポンサー企業の経営資源を共有できるのがメリットです。買い手企業に参画し、さまざまなシナジー効果を生みながら再生できます。

しかし、事業再生を図る会社と取引する会社は少なく、中小企業のように取引規模の小さい会社は取引停止となる可能性が高いでしょう。そのため、企業再生方式は主に規模の大きい企業の再生に用いられることが多い手法です。

事業譲渡方式

事業を切り離し、採算事業をスポンサー企業に譲渡して再建する手法です。事業を切り離した会社は清算することになりますが、採算事業とそこに属する従業員の雇用を継続することができます。破産手続でも利用できる手法です。

事業譲渡方式では、採算事業と不採算事業を切り離せることがメリットです。収益性の高い事業があっても採算のとれない事業の影響で赤字経営になっている会社は多く、事業譲渡方式により事業再生を実現できる会社も少なくありません。

事業譲渡の対価により債務の弁済ができ、不採算事業の債権者からも納得を得やすいでしょう。事業譲渡で得た資金で精算することから、譲渡するのはある程度の資金が得られる収益性のある事業であることが必要です。

会社分割方式

採算事業を別会社へ移し、残された不採算事業は債権者の協力を得ながら再建を目指す手法です。不採算事業が多くの負債を抱えた状態で立て直すことは難しく、清算に向かうケースも少なくありません。

会社分割方式では、早期に事業を切り離すことで事業再生を迅速に行うことができます。会社分割は権利義務を包括的に承継するため、手続きを簡便化できるのもメリットです。業種によっては許認可の再取得も必要なく、会社分割してすぐに事業を進めることもできます。

第二会社方式

採算事業を切り離し、新設した会社に事業譲渡や会社分割などの方法で引き継ぐ手法です。不採算事業が残された会社は、特別清算により法人格をなくします。

親族や社員が新会社を設立するのが一般的ですが、スポンサー企業が設立して採算事業を引き継ぐ方式もあります。収益性の高い事業はあるものの企業全体が抱えている債務が多く、財務状況が悪化している場合に用いられる手法です。

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事業再生の流れ

事業再生を成功させるには、正しい手順に沿って行うことが大切です。まずは現状を把握し、再生方針を決めることから始めます。

ここでは、事業再生の流れを紹介します。手続きの流れは法的再生・私的再生で変わり、資金や債権者の状況によっても若干違ってきますが、一般的に行われる流れとして参考にしてください。

1.現状を把握し再生方針を決定する

事業再生に至る経緯は、会社によりさまざまです。まずは会社が置かれている状況を数字で客観的に把握し、戦略を練らなければなりません。財務内容や銀行別の借入残高、担保状況などを確認して現状を把握します。

現状を数字で確認したら、事業再生に至った原因や将来の見通しなどをしっかり分析することが大切です。

現状分析により実態を把握し、再生方針を決定しましょう。課題の優先順位や、関係者の同意を得るために何が必要なのかが確認できたら、自社に合う手法を決定しましょう。

ただし、法的再生と私的再生のどちらも債務の免除が必要になり、債権者に迷惑をかけることになります。そのため、事業再生に踏み切るかどうかの局面では、すぐに法的再生や私的再生を検討するのではなく、債務を弁済する方法はないかをまず検討しなけばなりません。

2.デューデリジェンスを行う

デューデリジェンスとは、会社の経営状況や財務状況、リスクなどを調査することです。事業再生を実施するには、資産と負債を明確にしなければなりません。デューデリジェンスで会社の資産・負債や実態を適切に把握することで、具体的な事業再生計画を策定できます。

デューデリジェンスは計画の策定に役立ちますが、スポンサーや債権者に提供する資料の役割も果たします。事業再生でどの手法を用いる場合も役立つ資料となるため、デューデリジェンスの実施は重要です。

3.事業計画を策定する

デューデリジェンスの調査結果をもとに、再生後の事業計画を策定します。事業計画は採算のとれる事業を残し、赤字事業を手放すなどして今後どれほどの売上と利益が見込めるかを記載した計画書です。一般的に、3年〜5年くらいの売上と利益の予想について記載しておきます。

事業計画は、債務免除を受ける事業再生手続を行う際の資料や、スポンサー募集のプレゼン資料としても重要な役割を果たします。また、事業計画書があることで融資を受けられる場合もあるため、事業計画の作成は重要です。

4.スポンサーを募集し資金を確保する

事業再生では、事業計画の実施に必要な資金の確保も必要です。金融機関から融資を得られない場合はリスケジュールで債務の返済を延ばす、取引先への支払い期間の延長交渉をするなどして、資金繰りを行います。

融資やリスケジュールだけでは資金確保が難しい場合、スポンサー企業の募集も必要です。多くのスポンサーを集めることができれば、豊富な資金を得て事業再生を迅速に進められるでしょう。スポンサーの獲得は資金提供が受けられるだけでなく、社会信用を築くために有用です。金融機関に対する信用を得て、資金調達も可能になるでしょう。

5.事業再生を実施する

資金を確保できたら、事業再生を実施します。法的再生で民事再生手続を行う場合、管轄の地方裁判所に再生手続開始の申し立てを行います。申立後に再生手続開始決定が行われ,監督委員の監督のもとで債権調査手続と財産状況調査を実施するという流れです。再生計画を立案し、債権者からの承認を得なければなりません。

再生計画案は債権者の決議にかけられ、一定数以上の同意を得られれば再生計画が認可されます。認可後は、再生計画案に従って弁済をしていきます。

私的再生で私的整理ガイドラインを利用する場合、債権者であるメインバンクへの申し出が必要です。事業計画の策定と債権者会議を経て、事業計画を実施します。

中小企業再生支援スキームを利用する場合は、 中小企業再生支援協議会に相談を行います。再生可能性が認められれば、協議会や債権者の支援により再生計画案を作成し、事業再生が実施されるという手順です。

事業再生ADRでは事業再生実務家協会に利用申請を行い、事業再生ADRの利用に適した事案かどうかの審査に通過後、債権者会議で事業再生計画案の概要説明・審議が行われます。最終的に債権者全員の同意を得て、事業再生計画案を決議するという流れです。

どの手法においても承認を得た再生計画案に基づいて再生手続を実行するという点で共通し、計画通り債権者に弁済が行われて再生手続が終了します。

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事業再生を成功させる3つのポイント

事業再生を成功させるには、押さえておきたいポイントがあります。まず、将来を見据えて事業を整理しましょう。また、事業再生で行うべき手順は多く、スケジュールを明確にしておくことも大切です。

会社の状況によって適した手法・手続は異なるため、専門家のアドバイスを受けることも検討してください。

ここでは、事業再生を成功させるポイントをみていきましょう。

1.将来性を考えて事業を整理する

事業再生では現状の把握を徹底的に行い、不要な事業を明確にする必要があります。その上で、採算のとれる事業に資源を集中させましょう。

採算性の判断は現状だけで考えるのではなく、将来的に需要がなくなるなど採算がとれなくなる見込みの事業も除外して考えます。採算のとれない要因が人件費の場合、リストラも検討する必要があるでしょう。

2.スケジュールを明確にする

事業再生では現状把握から始まって手法の決定やスポンサーの募集など、行うべき事柄が多々あります。会社の再生を成功させるためには、それぞれのスケジュールを明確にすることが大切です。

再生計画にそって資金調達が必要になる場合もあるため、資金繰りのタイミングもよく確認しておきましょう。民間金融機関だけでなく、日本政策金融公庫などの制度も利用して必要な資金を調達してください。

3.専門家のアドバイスを求める

事業再生の過程では、金融機関やスポンサーの協力が必要です。事業再生を行うことに理解を得て、計画的に事業を立て直しましょう。

事業再生の手法は多く、自社に適した手法を選ぶには専門家のアドバイスも大切です。特に再生型M&Aによる事業再生を行う場合、専門家のサポートが必要になるでしょう。M&A仲介会社に相談するなどして、上手に事業再生を進めてください。

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まとめ

事業再生は大きく分けて法的再生と私的再生があり、自社の現状を把握して適切な手法を選ぶことが大切です。事業再生はタイミングが重要であり、判断が遅くなると再生が難しくなるため、兆候があれば早めに行動を起こしましょう。

事業再生を成功させるには、現状把握・分析や事業計画の策定などの手順をよく理解し、スケジュールを明確にすることがポイントです。事業計画の実施には資金の確保も必要になり、リスケジュールで債務の返済を延ばしたり、スポンサー企業を募集したりといった対応もしなければなりません。

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