後継者に悩む中小企業経営者の解決策とは?引継ぎ成功のポイントを解説

2024年2月27日

後継者に悩む中小企業経営者の解決策とは?引継ぎ成功のポイントを解説

このページのまとめ

  • 経営者の高齢化が進み、2022年時点で中小企業の経営者の平均年齢は60.4歳
  • 後継者探しには、事業承継・引継ぎセンターやマッチングサービス、仲介会社が利用できる
  • 中小企業の後継者問題を解決するためには、計画的に準備を進めることが大事
  • 会社の承継先や後継者探しは、企業価値を高めた後に行った方が有利

後継者の不在により、会社の引継ぎ方法を検討している経営者の方もいるのではないでしょうか。
中小企業における後継者問題を解決するには、対象となる会社に適した流れや方法で候補者や引継ぎスキームの選定を進めていくことが大切です。

本記事では、中小企業の後継者問題の解決に有効な施策について詳しく説明します。後継者問題を取り巻く現状や引継ぎに際してのポイントについても解説するので、ぜひ参考にしてください。

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中小企業の後継者問題の現状

少子高齢化が進む日本において、特に中小企業を中心とした後継者不足問題は年々深刻さを増してきています。

後継者不在による倒産・廃業が続けば、日本経済にも大きなダメージを与えるとされています。
この後継者問題について、いくつかの調査データをもとに現状を見ていきましょう。

社長の高齢化が進行

全国的に会社経営者の高齢化が進行しており、「事業承継2025年問題」と呼ばれる中小企業・小規模事業者の大量倒産・廃業が目の前に迫ってきています。

株式会社帝国データバンクが公表している『「全国「社長年齢」分析調査(2022)』によると、2022年時点での全国の会社経営者の平均年齢は60.4歳となっており、32年連続で上昇を続けて過去最高齢を更新していることが明らかになっています。
加えて経営者全体のうち50歳以上が8割を占め、経営者交代率は3.82%と低迷した状態です。
また、平均68.8歳で引退を迎えるといった結果も報じられており、日本の経営者全体の高齢化が深刻化していることが見て取れます。

参照元:株式会社帝国データバンク『全国「社長年齢」分析調査(2022)』(2023年6月15日)

後継者不在率の高止まりが継続

経営者の高齢化が進行するなか、多くの企業が後継者が決まっていない状況にあります。

株式会社帝国データバンクが公表している『全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)』によると、調査対象となった全国27万社のうち57.2%が「後継者不在」の状態にあると答えています。
先の調査結果と合わせると、「後継者不在のまま高齢の社長が会社を経営している企業が多い」という現状が見えてきます。

新型コロナウイルスの感染拡大によって大規模に経済活動が停止し、業績悪化が進んだことを機に、M&Aを利用した事業承継に踏み切った企業は少なくありません。

同調査による後継者不在率は、2011年から2020年にかけて65%前後を推移していましたが、2022年には初めて50%台まで低下しています。
その背景には官民挙げての事業承継支援サービスが全国で拡充したことによって、後継者不在に悩む経営者の利用が増加したことが考えられます。

後継者不在率が低下したとはいえ、いまだに半数以上の企業が後継者不在状態にあるため、今後も後継者不在問題は深刻な社会課題として向き合っていく必要があるといえるでしょう。

参照元:株式会社帝国データバンク『全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)』(2022年11月16日)

休廃業を選択する企業の半数が「黒字」休廃業

株式会社帝国データバンクが公表している『全国企業「休廃業・解散」動向調査(2022)』によると、2022年、全国で休業・廃業・解散を行った企業件数は5万3,426件に達しています。

なかでも、債務超過をはじめとする財務状況における問題がないにもかかわらず、休廃業を選択する「黒字」休廃業件数の動向に注目が集まっています。

2022年に休廃業を行った企業のうち、休廃業する直前の決算における当期準損益が黒字だった企業が過去最低の54.3%に達し、休廃業した企業の過半数が黒字状態で休廃業という選択を行っていることが明らかとなりました。

これは、原材料価格やエネルギー価格の高騰や人手不足といった経営環境の悪化に直面し、事業の継続に将来性を見出せなくなったことで生じた「あきらめ」が、休廃業を選択するという経営判断につながっていると考えられます。

そして、黒字経営の状態で休廃業することによって、従業員への退職金や売掛金の支払い、債務整理などにも対応できるという判断から、余力を残した状態で会社をたたむ経営者が増加しています。このような休廃業ケースは今後も増加が続くと予想されます。

参照元:株式会社帝国データバンク『全国企業「休廃業・解散」動向調査(2022)』(2023年1月16日)

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中小企業の後継者問題に対する5つの解決策

後継者不在に悩む経営者は、今後の会社の行方を決断するという重責を担っています。

後継者をどうするかという問題に着手するのは早ければ早いほど良いものの、目の前の経営で手一杯となってしまい、事態が深刻化するまで放置してしまうケースは珍しくありません。

ここからは、後継者問題を抱える中小企業において、問題解決につながる下記の5つのアクションを紹介します。

  • 後継者を育成する
  • 外部から人材を登用する
  • 事業承継支援サービスを利用する
  • IPOを実施する
  • 廃業する

それぞれ解説します。

後継者を育成する

現経営者がまだ若く、実際に事業承継を行うまでに時間的な余裕がある場合は、後継者育成に着手しましょう。
自社の事業内容や企業風土を深く理解した人物が後継者となることで、事業承継が円滑に進められ、承継後の社内において生じる可能性がある混乱や反発といったリスクの最小化につながります。

特に、親族や従業員といった身近な存在の中に後継者候補がいるのであれば、現社長が健在のうちに一緒に働きながら育成を行っていくと良いでしょう。
そうすることで、現社長が実際にさまざまな経営判断を下す様子を間近で学ぶことができます。経営や事業に関するノウハウはもちろん、取引先や顧客も徐々に引き継いでいくことができるでしょう。

また、近年は後継者育成を目的としたセミナーや研修を提供する企業や自治体も増えているので、活用することもおすすめです。

外部から人材を登用する

親族や従業員などの身近な人の中で後継者を選出することが難しい場合、外部人材を後継者として迎えて育成する方法があります。

第三者を後継者として指名する場合、候補人材を見つけるためには、後継者候補となる人物をターゲットにした採用戦略を策定・実施する必要があります。

あらかじめ、次期経営者候補や幹部候補といった形で経営層に適した人材の獲得をゴールに設定し、該当する人材に対して採用施策を打ち出していきます。

戦略が功を奏し、同業他社の経営経験があるような人材が獲得できた場合、他社で培ってきたさまざまなノウハウや技術・経験によりシナジー効果が生み出され、さらなる事業の成長・拡大が加速化することが期待できます。

事業承継支援サービスを利用する

中小企業が後継者問題を解決する方法の一つは、事業承継支援サービスの利用です。
自社の状況や課題に合ったサービスを利用することで、後継者問題をスピーディに解決できる可能性があります。

ここでは事業承継支援サービスの例として「事業引継ぎ支援センター」「事業承継マッチングサイト」「M&A仲介会社」を紹介します。

事業引継ぎ支援センター

事業引継ぎ支援センターは、全国47都道府県に国が設置する事業承継の公的機関です。主に中小企業・小規模事業者を支援します。

親族承継と第三者承継の双方に対して、金融機関OBや公認会計士、税理士、中小企業診断士などの事業承継の専門家が、持ち込まれた相談に対して無料でさまざまなソリューションを提案してくれます。

当センターでは、専門家からの無料アドバイスのほかに、事業の譲渡先や後継者探しまでも支援してもらうことが可能です。

また、全国各地の商工会議所や創業支援機関との連携による後継者人材バンクを活用して、起業を希望する若手人材とのマッチングも支援しています。複数の角度から後継者問題解決にアプローチする体制と全国に広がるネットワークにより、高い精度でのマッチングが期待できます。

参照元:中小企業基盤整備機構「事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継マッチングサイト

中小企業や小規模事業者の後継者問題における解決の一助となるサービスとして、マッチングサイトがあげられます。
民間企業が運営するマッチングサイトをはじめ、日本政策金融公庫や各金融機関においても、承継先とのマッチングを支援するサービスが次々と誕生しています。
マッチングサイトの場合、オンライン上で後継者や事業の引き継ぎ先を見つけることができる点がメリットです。
しかしその後の具体的なM&Aや事業承継にかかる手続きなどのサポートは行っていない場合が多いです。そのため、別途サポートしてくれるサービスを利用したり、当事者自身がさまざまな手続きや交渉を行ったりすることになる可能性がある点には注意が必要です。

M&A仲介会社

民間のM&A仲介会社は、中小企業における後継者問題に対し、M&Aという視点からさまざまなソリューションを提案してくれます。

相談を受けるコンサルタントたちは、企業における会計・財務・経理・法務・労務などの幅広い専門知識を有しています。相談者に適した形での事業承継の実現をトータルサポートしてくれるという点が、仲介会社へ依頼する大きな強みです。

また、国が定めた一定基準を満たし「M&A支援機関登録制度」に登録されているM&A仲介会社を利用して事業承継を行った場合、そこで生じた仲介手数料やフィナンシャルアドバイザー費用などの費用が「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」の補助対象になります。
専門家のサポートに補助金を充てられることのメリットは非常に大きいといえるでしょう。

参照元:経済産業省・中小企業庁「事業承継に関する主な支援策(一覧)

IPOを実施する

IPO(株式公開)は、スタートアップをはじめとする非上場会社のイグジット戦略でよく用いられる手法です。外部の優秀な人材を後継者に登用したいと考えている場合に高い効果が期待できます。

IPOを実施して自社株が市場で自由に売買できるようになることで、会社の知名度・信頼性が高まります。それにより外部の優秀な人材が集まりやすくなるでしょう。

さらに、自社株を売ることでより多くの資金調達が可能となります。その資金をエグゼクティブ人材の採用戦略や事業承継の納税資金に充てることができます。

ただしIPOの実現のためには、株主数や発行株式の数に加え、直近の利益額などの審査基準をクリアする必要があるので注意が必要です。

廃業する

後継者問題の解決策としては、廃業という選択肢も含まれます。

業績悪化や債務超過により深刻な赤字状態に陥っている会社の場合、そのような状態の会社を引き継ぐことを希望する人を見つけるのは難しいでしょう。
そのような状態で無理に会社を継続させたり、後継者を探したりすることには多くの手間やコストが生じるため、経営者にとっては大きな負担となるでしょう。

廃業を選択すれば、従業員は失業し取引先にも迷惑がかかることが避けられません。しかし、会社を引き継ぐことができる可能性とそのために生じる負担とを天秤にかけたとき、廃業する方が賢明な判断となる場合もあるのです。

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中小企業の後継者問題解決に必要な3つのポイント

自社で抱える後継者問題を円滑に解決するためには、いくつかのポイントを押さえたうえで解決策を進めていくことが大切です。

ここからは、後継者問題解決のために必要な下記の3つのポイントについて解説します。

  • 計画的に準備を進める
  • 企業価値を高める
  • 専門家にサポートを依頼する

それぞれ解説します。

計画的に準備を進める

後継者問題は、一夜にして解決する問題ではないため、計画的に準備する必要があります。

株式会社帝国データバンクが公表している『全国企業倒産集計2023年上半期報』によると、2023年上半期における企業の倒産件数のうち、「経営者の病気、死亡」を原因とする倒産件数は132件と高い水準を維持しています。

冒頭であげた経営者の高齢化が進行している現状も踏まえると、後継者育成や事業承継に着手することなく、廃業や引退を迎える経営者が相当数存在していることが伺えます。

後継者の選定や育成でも、M&Aによる事業譲渡でも、スムーズにトラブルなく進めていくためには、事前にさまざまな準備が必要です。

また事業承継に関しては、先述の仲介サービス利用に対する補助金をはじめとする各種補助金や、事業承継にかかる税制優遇措置など、国が多種多様な支援策を設けています。

このような支援策を活用するためには、事前にしっかりと内容や対象範囲、必要な手続きを確認したうえで、適切なプロセスで後継者探しや事業承継を進めていかなければなりません。

後継者問題を抱えている会社にとっては、早めに問題に着手して計画的に準備を進めていくことが、不本意な形での会社の売却や廃業を避けるうえで重要なポイントです。

参照元:株式会社帝国データバンク『全国企業倒産集計2023年上半期報

企業価値を高める

外部人材を後継者候補として登用する場合や、M&Aを活用して事業や会社の承継を行う場合、企業価値を高めることが、事業承継を成功させる大切なポイントとなります。

企業価値とは、M&Aにおいて対象企業や事業の売却価格の算定の際に用いられる指標の1つです。経営状況や資産状況に加え、ブランド力や人材、特許などの知的財産権などの無形資産を含めた会社の価値を示します。

債務超過などのマイナス要因を抱えている場合、安価な譲渡額を提示されたり、希望条件に合う相手が見つからなかったりと、なかなか思うとおりに引き継ぎを進めていくことができません。

そのため、あらかじめ自社の企業価値を下げている要因を改善し、企業価値を高めたうえで承継先や後継者選定を行う方が、よりスムーズに物事を進めることができます。

企業価値の高い会社であれば、より高値で事業や会社を引き受けてくれる相手が見つかったり、より優れた後継者候補とのマッチングが成立したりすることが期待できます。

企業価値を高めた後に高値で事業や会社を売却したい場合は、豊富なノウハウと支援実績を活かして企業のバリューアップを支援する、事業再生ファンドを利用するという選択も有効でしょう。

専門家にサポートを依頼する

後継者問題をトラブルなく、円滑に解決に導くためには、事業承継の専門家へサポート依頼すると良いでしょう。

これまで挙げてきたように、中小企業における後継者問題を解決するためには、多岐にわたる専門知識や経験が必要となる場面に直面する機会が非常に多くなります。

そのような場面において、対応リソースを社内から捻出することは、多くの中小企業にとっては難しいことです。

そのため、的確に必要な手続きを進めることができて、適切なアドバイスとサポートを提供してくれる事業承継やM&Aの専門家に伴走してもらうことで、より確実に自社の後継者問題が解決に近づいていくでしょう。

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まとめ

中小企業における後継者問題は、日本の経済や社会全体に対しても深刻な影響を及ぼす問題であり、早急に解決策に取り組むことが求められています。

そんななか、官民双方から事業承継や後継者探しに関するさまざまな支援策やサービスが提供されており、後継者問題に悩む経営者が前向きなアクションを起こす機運が高まっています。

これらのサービスを利用することで、自社がこれまで培ってきた財産をより良い形で後世に引き継いでいくことができるでしょう。

M&A仲介会社は事業承継を含めたあらゆるM&Aに精通しており、M&A専門機関の中でも専門性の高い組織といえます。そのため、M&Aを視野に入れた事業承継を実施する際には、M&A仲介会社に相談することをおすすめします。

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