垂直統合とは?事例や水平統合との違い、メリット・デメリットを紹介

2024年2月21日

垂直統合とは?事例や水平統合との違い、メリット・デメリットを紹介

このページのまとめ

  • 垂直統合とは、生産や流通、販売などの経済行為をひとつの企業内にまとめること
  • 垂直統合の実施方法は、M&Aとアライアンス、内製化の3つ
  • 垂直統合と水平統合は、目的と対象企業が異なる
  • 垂直統合は安定して商品・サービスを提供でき、取引コストを削減できることがメリット

経営戦略として垂直統合を検討している経営者の方も多いのではないでしょうか。
垂直統合には、コストを削減できたり新事業に進出できたりするなど、多くのメリットがあります。

本記事では、垂直統合の概要や方法、メリット・デメリットを解説します。また、垂直統合と水平統合の違いや垂直統合の成功事例も紹介します。

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垂直統合とは

垂直統合とは、これまで外部に任せていた活動を自社で担い、生産や流通、販売などの経済行為を自社内にまとめることです。付加価値を高め、収益を拡大することを目的とします。

ここでは、垂直統合の意味や目的、実施方法を解説します。

垂直統合の目的

垂直統合の目的は、製品の原材料調達から販売に至るまでの一連の流れ(サプライチェーン)の機能強化と効率化により、競争力を高めることです。

垂直統合は、川上統合と川下統合の2種類に分かれます。

原材料の生産から製品販売に至るまで一連の経済活動において、原材料の生産に近いプロセスを「川上」といいます。川上統合は、原材料の調達力強化などを目的に、仕入先や製造側を統合することです。

一方、製品販売に近いプロセスを「川下」といい、川下統合は自社からみて川下に向けた統合を指します。一例として、製造会社が販売店を運営するケースがあげられます。

川上統合では自前の調達能力を獲得することでコスト削減を図るとともに、自社で調達・製造することにより品質をコントロールすることを目的とします。製造ノウハウの蓄積・保護も目的のひとつです。

川下統合では最終顧客に直接アプローチできるようになるため、正確な需要量や潜在ニーズなどを把握するという目的もあります。

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垂直統合を実施する方法

垂直統合の実施方法は、以下の3つです。

実施方法特徴経営権の移転
M&A2つの企業がひとつに統合される
アライアンス互いの企業が独立性を保ったまま、他社と提携×
内製化自社内で一連の流れを行う×

それぞれ、詳しくみていきましょう。

M&A

M&Aとは、2つ以上の会社がひとつになる合併や、他の会社を買い取る買収のことです。企業や事業の全部または一部の移転を伴う取引であり、会社もしくは経営権の取得を指します。

M&Aにおける垂直統合とは、川上や川下の工程にあたる事業を合併もしくは買収し、バリューチェーンを自社内にまとめることです。 既存事業と関係が深い事業をM&Aによって自社に取り込むことで、事業における多角化戦略の早期実現が可能です。

アライアンス

アライアンスとは、複数の会社が特定の目標や利益を達成するために協力する手法です。業務提携や技術提携などがこれにあたります。お互いの強みを活かし、経営資源を共有することで市場の競争力を高めます。

M&Aは一方の企業が他方の経営権を譲受け、1つの企業として統合される手法ですが、アライアンスでは経営権の移転はありません。各社の独立性を保ったまま垂直統合を行うのが特徴です。

内製化

工程を内製化して垂直統合を実施する方法もあります。製品の開発や原材料の調達、販売店への流通、消費者への販売といった一連の工程を自社で行う手法です。

このような内製化により自社でコントロールできる範囲が広がり、事業運営の柔軟性が高まります。情報も入手しやすくなり、市場のニーズも把握しやすくなるでしょう。

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水平統合との違い

垂直統合と対照的なビジネスモデルに水平統合があります。水平統合とは、同じ業種・業態で競争関係にある会社同士が連携することです。

M&Aにおける垂直統合と水平統合は、目的や対象企業が異なります。

目的M&Aの対象企業
水平統合コスト削減・市場シェアの拡大同一業種・業態の会社
垂直統合サプライチェーンの機能強化や効率化・川上統合:仕入れや製造に関連する企業
・川下統合:消費者に近い企業

M&Aで果たそうと考えている目的に合わせて統合方法を選択しましょう。

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垂直統合のメリット

垂直統合には、次のようなメリットがあります。

  • 安定して商品・サービスを提供できる
  • コストを削減できる
  • シナジー効果がもたらされる
  • 新しい事業に進出できる

それぞれ、詳しくみていきましょう。

安定して商品・サービスを提供できる

垂直統合で外部企業との取引を減らすことにより、取引先企業の都合や倒産などに左右されず、安定的な商品・サービスの提供が可能です。

たとえば、取引先企業に原材料の仕入れを頼っている場合、減産や倒産などの影響で自社の生産活動が滞る可能性があります。
しかし、垂直統合により原材料の調達を自社で行うようになっていれば、影響を受けません。安定的な供給が可能になり、生産活動が停止するなどのリスクを回避できます。

コストを削減できる

垂直統合により、サプライチェーンにおいて外部に委託していた分のコストが削減できます。
川上統合では、自前の調達力を獲得して取引コストを抑えます。川下統合では、自前で販路を確保することで、販売コストの削減が可能です。

また、外部企業との取引は、力関係によって不利な契約を結ばざるを得ないこともあります。垂直統合で外部との取引が少なくなれば、そのような契約で不利益を受けるリスクも減らすことができます。

シナジー効果がもたらされる

垂直統合では、シナジー効果が期待できることもメリットです。

シナジー効果とは、複数の企業がひとつになることにより、各社が単独で活動したとき以上の効果が生じることを指します。

垂直統合によるシナジー効果の例は、異なるプロセスを担っていた企業が技術やノウハウなどを共有し、より顧客のニーズに合う商品開発ができるようになることです。また、販売網や顧客の共有によって、収益性が向上することもシナジー効果の一例です。

新しい事業に進出できる

新規事業に進出できることが、垂直統合のメリットです。
たとえば製造業が下流工程の販売会社と統合すれば、販売業の新規事業を開拓できます。

自社の裁量でコントロールできる範囲が拡大することで、新しい施策も打ち出しやすくなるでしょう。また、垂直統合で事業が上流または下流へと広がることで、情報がこれまでよりも入手しやすくなり、新事業の経営戦略に反映できることもメリットです。

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垂直統合のデメリット

垂直統合には、デメリットもあります。

ここでは、垂直統合のデメリットについて解説します。

大規模な組織変革が必要

垂直統合はシナジー効果が期待できるのがメリットですが、統合にともない大規模な組織変革や方針の変更が必要になる可能性もあります。

事業領域が拡大し、人員や資金など経営資源が分散する場合もあるでしょう。また、企業規模が拡大することで意思決定が遅れるかもしれません。 
そうしたリスクを回避するために、組織・方針の改革が求められることがあります。

初期費用がかかる

垂直統合ではM&A仲介会社への手数料や買収資金など、多額の初期費用がかかる点がデメリットです。内製化によって垂直統合を実施する場合でも、設備投資や人員の増員など、コストがかかることに変わりはありません。

設備の維持費や人件費は、初期投資以降も必要です。費用の負担が大きくなるため、新技術を導入しにくくなるという問題もあります。技術の進化が激しい分野では、市場のニーズに追いつけなくなる可能性もあるでしょう。

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垂直統合の事例

ここでは、垂直統合の事例を紹介します。

LINEとZホールディングスの事例

モバイルメッセンジャーアプリ「LINE」を提供するLINE株式会社とYahoo!に関するイーコマース事業等を手がけるZホールディングス株式会社は、2021年にM&Aを実施し、ZホールディングスがLINEを完全子会社としました。顧客基盤と豊富なサービスラインアップについて、より集約的に活用することを目的としています。

さらにZホールディングス株式会社は、2023年、LINE株式会社とヤフー株式会社の3社を中心とした合併を決定しました。

新生Zホールディングスは国内最大規模のインターネットサービス企業グループとなり、国内総利用者3億人という巨大なユーザー基盤を強みに国内で約200を超える多彩なサービスを提供しています。

また、全国の自治体と連携した行政DXへの対応や防災・減災への取り組みなど、あらゆる社会課題の解決にも貢献しています。

参照元:Zホールディングス株式会社「新生Zホールディングス、始動。」

ユニクロの事例

アパレルブランドの株式会社ユニクロは、企画・計画から販売に至るまでのプロセスを一貫して行う会社です。垂直統合のビジネスモデルを展開しており、他社にはない独自商品を開発し、世界中でシェアを拡大しています。

ユニクロのビジネスモデルは、SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel・製造小売業)と呼ばれます。小売業が製造の分野に進出し、自社のオリジナル商品の開発を行いながら自社で販売する手法です。最も消費者に近い小売業者が、川上である製造業と卸売業を垂直統合しています。

徹底した一貫生産によるビジネスモデルにより、ユニクロは高い付加価値を生み出すことに成功しました。

トレンドが激しく変わるアパレル業界においては、顧客のニーズに合わせた製品開発をスピーディに進めることが求められます。デジタル化が進んだ現代社会でもユニクロは顧客とダイレクトにつながっており、顧客の要望をすぐにカタチにすることで素早くニーズに応え、他社との差別化に成功しました。

参照元:株式会社ユニクロ「ユニクロのビジネスモデル」

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まとめ

垂直統合は、生産から流通、販売に至るまでの経済行為を、ひとつの企業内にまとめることです。M&Aやアライアンスにより実施されるほか、内製化など、自社のビジネスモデルとして垂直統合を実践する企業もあります。

垂直統合により安定して商品・サービスを提供できたり、取引コストを削減できたりするなどのメリットがあります。

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