株式譲渡時に消費税はかかる?計算方法や仕訳の仕方を解説

2024年2月8日

株式譲渡時に消費税はかかる?計算方法や仕訳の仕方を解説

このページのまとめ

  • 株式譲渡とはM&Aの手法の1つで、経営権移転のために株式を譲渡すること
  • 株式譲渡は株式を譲渡するのに対し、事業譲渡は事業そのものを譲渡する点が大きく異なる
  • 株式譲渡では消費税が課されないが、所得税が課される
  • 株式譲渡で有価証券を売却する際、証券会社への手数料に対して消費税が課される

株式譲渡は、M&Aにおいて採用される手法の1つです。株式やその他の有価証券を譲渡または売却する際、消費税の取り扱いには特に注意が必要とされています。もし会計処理を誤ると、消費税の申告にも誤りが生じる恐れがあります。

この記事では、株式やその他の有価証券を譲渡する際の消費税の計算方法や、その仕訳の方法について、重要なポイントを分かりやすく解説します。

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そもそも株式・有価証券とは

まずは「株式」と「有価証券」とは何かについて確認しましょう。

「株式」とは、株式会社が資金調達のために出資者に発行する有価証券のことです。これらの株式を保有する個人や法人は「株主」と呼ばれます。

一方「有価証券」は、債券、手形・小切手、投資信託などのように、財産的価値を持つ証券や証書を指します。株式も有価証券の一種であり、株式を保有することで、個人や法人が株主となります。

株式譲渡(有価証券の売却)とは

株式譲渡とは、有価証券としての株式を売却することを意味します。

株式譲渡はM&A(企業の合併・買収)の一手法で、譲渡側から譲受側へ会社の経営権を移転するために株式を譲り渡すことを指します。株式を過半数保有し筆頭株主となることで、経営における発言権が強まり、事業の承継をよりスムーズに行うことが可能になります。

株式譲渡では、譲渡側の株主が株式を譲渡することで譲渡対価を得ることができ、手続きが比較的簡単であるため特に中小企業のM&Aでよく採用されます。

株式譲渡のプロセスでは、譲渡側と譲受側が株式譲渡契約書を交わし、株式の引渡しと対価の支払いを行うことになります。そして、株主名簿の書き換えが完了すれば、株式の譲渡は完了となります。

株式譲渡(有価証券の売却)と事業譲渡との違い

M&A(企業の合併・買収)の手法には、「事業譲渡」という方法があります。この手法はしばしば「株式譲渡」と混同されますが、両者は根本的に異なるものです。

事業譲渡とは、会社が所有する事業の全体または一部を他の企業や個人に譲渡することで株式譲渡とは大きく異なります。株式譲渡の対象が「株式」であるのに対し、事業譲渡では「事業」自体が譲渡の対象となるからです。

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譲渡側に課される税金

ここでは、株式譲渡した際に課せられる税金について解説します。

個人が個人に対して譲渡した場合の課税

譲渡側が個人である場合、適正な時価で譲渡した際には所得税が課されます。また、適正な時価よりも低い価格で売却した場合でも、当然に所得税が課されます。
逆に、適正な時価を上回る高い価格で売却した際には、譲渡側に贈与税が課されることがあります。

一方、譲受側が個人である場合、適正な時価での購入であれば課されることはありません。適正な時価よりも低い価格で購入した際には、時価と取得価額の差額に贈与税が課されます。適正な時価を上回る高価格で購入した場合には、課されることはありません。

個人が法人に対して譲渡した場合の課税

譲受側が法人の場合も、適正な時価で買ったときは、譲受側に税金が課されることはありません。
ただし、適正な時価より低額で買ったときは、時価額と取得価額の差額に基づいて、受贈益が発生し、それに法人税が課されます。

そして、適正な時価より高額で売買したときは、時価を超える金額は寄付金または役員賞与(役員の場合)として扱われ、損金不算入となってしまうことで、法人税が課されます。
なお、株式の譲渡収入に対して消費税は課されません。

消費税に関しては、次の章で詳しく説明していきます。

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株式譲渡(有価証券の売却)すると消費税は課されるか?

株式譲渡において消費税が課されることはありません。
消費税は物品の売買やサービスの提供など、「消費」という行為に伴って課される税金であるためです。消費税の実際の負担者は、商品やサービスを消費する個人や法人などの「消費者」ですが、消費税を納税する義務を負うのは「事業者」です。
消費税は消費者から支払われた後、最初に事業者が預かります。その後、事業者は消費者から預かった消費税から、自身が既に支払った消費税を差し引いて、消費税の納付額を計算します。

消費税を計算するときの取引の分類

消費税の計算を行う際には、まず、取引を大きく3つに分けることからスタートします。

  • 課税取引
  • 非課税取引
  • 不課税取引

「非課税取引」とは、日本国内で行われる、事業としての対価を伴う取引の中で、消費税の課税対象にならないもの、または政策的な理由により消費税が免除される取引を指します。非課税取引の例には、株式などの有価証券の譲渡のほか、土地や商品券の譲渡、預貯金の利子、社会保険医療などが含まれます。

「不課税取引」とは、消費税が課税されない取引を指します。一般的に、消費税は事業において対価を伴う資産の譲渡などの取引に対して課されるものです。このため、給与などの労働対価や、対価を伴わない寄付金などの取引は消費税の課税対象外です。

その他の有価証券の譲渡を行った際の消費税の扱い

債券の譲渡など「その他の有価証券の譲渡」にも、消費税は課されません。これは、債券、手形や小切手などは「消費財」ではないからです。これら有価証券の売却は「資本の移転」とみなされ、消費とは別の考え方が採用されているのです。

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株式譲渡・その他の有価証券の譲渡を行った際に課される消費税の計算方法

次に、株式譲渡・その他の有価証券の譲渡を行った年度において、全体の消費税の計算方法を詳しく説明します。

消費税を求めるには「課税売上割合」という数値を計算する必要があります。

課税売上割合とは、課税期間中の売上高の全体のうちで、「課税売上」が占める割合のことをいいます。課税売上とは、課税取引となる売上高のことです。
非課税売上高とは、「非課税取引」の売上高のことで、株式譲渡や有価証券の売却で生じた金額は非課税売上高とみなされます。

以下の計算式で「課税売上割合」は求められます。

課税売上割合 = 課税売上高  / ( 課税売上高 + 非課税売上高 )

この割合に応じて、消費税額の計算方法が変わります。

課税売上割合が95%以上、かつ、課税期間内の課税売上が5億円以下の場合には、課税仕入れに対する消費税は全額が控除されます。
逆に、課税売上割合が95%未満、あるいは課税期間内の課税売上が5億円以上の場合には、課税売上に対応する消費税を計算しなければなりません。その際には、個別対応方式、あるいは一括比例配分方式での計算が必要です。

個別対応方式

個別対応方式のケースでは、課税仕入れなどにかかってくる消費税を3つに分けます。

  • 課税売上に対する仕入などへの消費税
  • 非課税売上に対応する仕入などへの消費税
  • 課税売上・非課税売上の両方に共通する仕入などへの消費税

課税売上・非課税売上の両方に共通する消費税のケースでは、以下の計算式で求めます。

共通部分の仕入税額控除=共通する消費税の金額 × 課税売上割合

ここでは、仕入などに関する消費税を3つに区分できるかが実務的なポイントです。
明確な根拠でもって区分できない場合には、一括比例配分方式を選択することになります。
一括比例配分方式の計算は、それほど難しくありません。仕入などに係る消費税額のすべてに、課税売上割合を掛けることで控除額が求められます。

課税売上割合に準ずる割合

個別対応方式を選択した場合には、課税売上割合に準じた割合を用いて、共通している部分の消費税を按分して計算することになります。
ここで言う「課税売上割合に準ずる割合」とは、従業員の人数や、従業員が勤務した日数、消費する資産の価額やその使用数量、あるいは使用面積などのことを言います。税務署長の承認が事前に必要となりますが、それぞれの企業が、合理的な基準であると判断するものを選んでも構わないと規定されています。

課税売上割合に準ずる割合は、個別対応方式を採用する場合のみ使うことが認められています。これに対して、一括比例配分方式では、規定された計算式の課税売上割合を使うことしか認められていません。

一括比例配分方式

一括比例配分方式においては、消費税額の計算を仕入れなど全体で一括して行うことから、事務処理の負担が少ないというメリットがあります。これは、多くの取引を扱う事業者にとって大きな利点となります。

しかし、デメリットとしては、個別対応方式に比べて仕入税額の控除額が小さくなりがちであるため、納税額が増加する可能性が高いという点が挙げられます。これは、一括比例配分方式が一定の比率で消費税額を計算するため、個別の取引に応じた細かな調整が難しいことに起因します。

さらに、一括比例配分方式を選択した場合、一度この方式を採用すると2年間は変更できないというルールがあるため、この点にも注意が必要です。事業者はこの方式を選択する際に、その長期的な影響を慎重に考慮する必要があります。

一括比例配分方式の計算式は次のとおりです。

仕入税額控除=仕入などの消費税の金額 × 課税売上割合
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株式譲渡・その他の有価証券の譲渡を行った際の消費税仕訳・会計上の処理方法

株式などの有価証券の売買に関しては、会計処理や仕訳に特有のルールが存在します。これは、株式が現金と異なり、売買によってその時価が変動する性質を持つためです。たとえ同じ金額で株式を購入したとしても、売却時の時価によっては利益が生じる場合もあれば、損失が発生する場合もあります。

このような時価の変動を会計上正確に反映させるために、「有価証券売却益」と「有価証券売却損」という特定の勘定科目を使用して記帳します。これにより、有価証券の売買に伴う実際の経済的影響が、財務諸表に適切に表現されるようになります。

有価証券売却益が発生した場合の仕訳・処理

有価証券売却益とは、株式など有価証券を売買することで得た利益のことです。

例を挙げてわかりやすく説明します。
例えば、株式を10万円で購入して、購入したときと同じ決算期内に、株価の上昇によって、現金で12万円で売却した場合、仕訳は次のようになります。

借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
現金120,000有価証券100,000
有価証券売却益20,000

仕訳では、売却で得た利益は、勘定科目は「有価証券売却益」で処理します。
また、有価証券を売却した際には、支払手数料が発生して、消費税が課されます。

有価証券売却損が発生した場合の仕訳・処理

有価証券売却損とは、株式などの有価証券の売買で被った損失のことです。

上と同じく、わかりやすく例を挙げて説明します。
株式を10万円で購入して、購入したときと同じ決算期内に、株価の下落によって、現金9万円で売却した場合、仕訳は次のようになります。

借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
現金90,000有価証券100,000
有価証券売却損10,000

仕訳では、売却で被った損失は、勘定科目は「有価証券売却損」で処理します。

株式譲渡に係る消費税と手数料の仕訳・会計処理

お伝えしたように、有価証券を売却するときには、証券会社への手数料の支払いが発生し、これに対して消費税が課されます。

上記の例の売却益が出た場合で、例えば、売却手数料が1万円の場合には、売却手数料には、10%の消費税が課せられるので、支払う金額は11,000円となります。

仕訳方法は以下のとおりです。

借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
現金109,000有価証券100,000
支払手数料10,000有価証券売却益20,000
仮払消費税1,000

同じように、上記の例で、売却損のケースでは、仕訳は以下の通りです。

借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
現金79,000有価証券100,000
有価証券売却損10,000
支払手数料10,000
仮払消費税1,000

売却損が出た場合にも、売却手数料と、それに対する消費税がかかります。 

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株式譲渡・その他の有価証券の譲渡をした際の消費税に関する注意すべきポイント

ここでは、株式譲渡やその他の有価証券の譲渡時に関連する消費税について、どのようなポイントに注目し、注意して理解するべきかを確認しましょう。特に注目すべきポイントは次の3点です。

  • 非課税売上高の割合
  • 5%相当額の例外規定
  • のれん代の金額

それぞれについて、詳しく説明します。

非課税売上高の割合

「株式譲渡・その他の有価証券の譲渡時の消費税計算」の箇所で説明した「非課税売上高」の割合に注意することは重要です。

株式譲渡やその他の有価証券の譲渡によって得られる売上は、非課税売上高に分類されます。非課税売上高が増加すると、課税売上の割合が低下し、計算式によりこれが明らかになります。
この結果、控除できない消費税の発生が考えられます。すなわち、課税売上の割合が高ければ支払った消費税は大部分が控除されますが、その割合が低いと消費税が十分に控除されず、支払う消費税が多くなります。

そのため、消費税の課税を避けるためには、非課税売上高に含まれる株式取引の金額を減少させ、課税売上の割合を高く保つことが必要になります。

5%相当額の例外規定

資金運用をビジネスで行っている会社の場合には、毎日のように有価証券などの譲渡が行われます。また、個人の場合でも、株取引を毎日行っている方も少なからずいます。
このような場合には、課税売上割合の計算で割合を求めてしまうと、課税売上割合が極端に低くなるため、消費税の納税額が非常に大きくなってしまう可能性があります。

そこで、株式などの有価証券の売却に関しては例外規定を設けています。
それは、有価証券の売却については、課税売上割合の計算の際には、課税売上割合における計算式の分母に入れるのは、「売却額・譲渡額の5%」のみを加算すればよいという規定です。
この規定により、会社や個人間で、税制上の不利が生じないように調整しています。

のれん代の金額

「のれん代」とは、一般に「営業権」を指し、課税資産に分類されるものです。事業譲渡においてのれん代を大規模に譲渡する場合、それに伴う消費税額が大きくなる可能性があります。M&Aにおける事業譲渡の際、この点には特に注意が必要です。

営業権やのれん代は、企業のブランド価値、顧客基盤、市場の立ち位置などの無形資産の価値を反映します。これらを譲渡する際、それ自体が高額な取引となり得るため、消費税額もそれに応じて大きくなる傾向があります。したがって、M&Aの際には、のれん代の譲渡に関連する消費税の計算と影響を慎重に検討することが重要です。

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株式譲渡の際の消費税に関してのまとめ

最後に、株式譲渡の消費税について重要なポイントを見ていきます。

  • 株式などの有価証券の譲渡は、基本的には消費税は非課税
  • 課税売上割合が低くならないような注意が必要

それぞれ詳しく解説していきます。

株式などの有価証券の譲渡は、基本的には消費税は非課税

前述のとおり、株式を含む有価証券の譲渡は通常、消費税がかからない「非課税取引」に分類されます。
ただし、取引が事業譲渡の一環として行われる場合や、株式譲渡であっても、課税売上の割合が低い状況では注意が必要です。なぜなら、非課税取引である株式譲渡の割合が全体の売上に占める割合が高くなると、消費税の控除額が減少し、結果として支払う消費税が多くなる可能性が出てくるためです。
したがって、株式譲渡やその他の有価証券の譲渡を行う際には、全体の取引構造と課税売上の割合を考慮し、消費税の影響を検討することが重要です。

課税売上割合が低くならないような注意が必要

消費税の負担を軽減するためには、株式譲渡を行う際に課税売上割合を適切に検討する必要があります。
課税売上割合は、課税売上高と非課税売上高の合計額に対する課税売上高の割合で決まります。ここで重要なのは、非課税売上高が全体の売上に占める割合を高くしすぎないことです。

具体的には、課税売上割合が95%を下回らないように注意することが重要です。これは、課税売上割合が95%以上であれば、全体の売上に占める非課税売上の比率が低いため、課税仕入れに係る税額の全額を控除することができるからです。
その結果、消費税負担を軽減することができます。この95%という割合を維持することが、株式譲渡において消費税を適切に管理する鍵となります。

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まとめ

株式譲渡やその他の有価証券の譲渡自体には消費税は課されませんが、これらの取引が「課税売上割合」の計算に大きく影響することを理解することは重要です。

株式譲渡は、税金の面でメリットがあるだけでなく、事業承継や事業再編などを目的としたM&Aの重要な手段となります。
ただし、税務面や契約書の締結など、個人には難しい面が多いため、M&Aや税務、経理に関してM&A仲介業者などの専門家によるサポートが不可欠です。これらの専門家のアドバイスを得ることで、取引の複雑な側面を適切に管理し、望ましい結果を得ることが可能になります。

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監修者|岸田 康雄

監修者

岸田 康雄

国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)/公認会計士/税理士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/行政書士 平成28年度経済産業省中小企業庁「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。 一橋大学大学院修了。中央青山監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、みずほ証券投資銀行部M&Aアドバイザリーグループ、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部不動産投資グループ、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント営業部などに在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のクロスボーダーM&Aまで、100件を超える事業承継とM&Aアドバイザリー業務を遂行した。現在は、相続税申告と相続・事業承継コンサルティング業務を提供している。