M&Aの利益相反とは? 法的規制や仲介会社の選び方を解説

2024年2月2日

M&Aの利益相反とは? 法的規制や仲介会社の選び方を解説

このページのまとめ

  • M&Aでは一方の利益が相手の不利益となることがあるため、利益相反が起こりうる
  • M&Aの利益相反問題においては、買い手企業に有利な条件で交渉が進む傾向にある
  • 信頼できるM&A仲介会社に依頼することで、利益相反が起こりにくくなる
  • M&A仲介会社に依頼すると、短期間での取引成立やトラブル回避などのメリットがある

「M&Aにおいて利益相反が生じないのだろうか?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
仲介契約の場合、利益相反が起こる可能性があります。

本コラムでは、M&Aにおける利益相反の内容や法的規制についてもまとめました。また、M&A仲介会社を利用するメリットやリスク、信頼できる業者の選び方も紹介します。
安心してM&Aを進めていくためにも、ぜひお役立てください。

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M&Aで起こりうる利益相反とは?

利益相反とは、一般的には、どちらか一方にとって有利な条件が、相手にとって不利になることを指します。M&Aにおける利益相反とは、一方のみが有利になる取引のことです。

M&Aは本来、利益相反が生じやすい行為です。企業や事業を購入する側は「少しでも安く購入したい」と考え、反対に売却する側は「少しでも高く売りたい」と考えます。

M&Aでは両者が納得できる着地点を見つけていく必要がありますが、合意が見られないときは、成約を優先しようとする仲介会社などの意向で、一方が有利・他方が不利の状況になるおそれがあります。

買い手企業にとって有利になる傾向にある

M&Aにおいては、どちらかといえば買い手企業が有利になるように仲介者が取引を操作する傾向があるため、注意が必要です。

買い手企業が有利になる理由としては、リピーターになる可能性が高い点が挙げられます。

売り手企業が自社の事業や会社を売却するのは一回きりになることが多いですが、買い手企業は何度も事業買収や企業買収を行うことがあります。

買い手企業が満足のいくM&Aができた場合、次も同じ仲介者に仲介を依頼する可能性があるため、買い手が有利になるように取引を誘導する可能性があります。

仲介契約では利益相反が起こりやすい

特定のアドバイザーが両企業から依頼を受ける仲介契約では、アドバイザーは双方の希望から交渉の着地点を探します。
しかし、着地点が見つからないときは一方の利益を優先する可能性があり、利益相反が生じやすくなります。交渉成立の時期は早まりますが、どちらか一方にとって妥協した結果になってしまいます。

なお、仲介契約以外の方法として、アドバイザリー契約が挙げられます。
アドバイザリー契約とは、アドバイザーが売り手企業・買い手企業のどちらか一方の企業につく契約方法です。
アドバイザリー契約では利益相反は生じにくくなりますが、条件交渉が長引いてM&Aがまとまりにくくなる点に注意が必要です。

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利益相反に関する法的規制

M&A以外の場面でも、利益相反が起こることがあります。たとえば、ビジネス上の取引や不動産の仲介契約、個人的なやり取りなどでも、利益相反は生じます。

利益相反に対してどのような法的規制があるのか見ていきましょう。

1.会社法における利益相反規制

会社法第356条では、取締役の競業および利益相反取引の制限について定めています。

取締役が自分自身もしくは第三者のためにおこなう行為が、会社の利益と相反する場合には、取締役会の承認を受けなくてはいけません。取締役会が設置されていない会社であれば、株主総会での承認が必要です。

具体的には、たとえば次のような行為が該当します。

  • 取締役が自分自身あるいは第三者のために、会社の事業と類似する取引をする行為
  • 取締役が自分自身あるいは第三者のために、会社と取引をする行為
  • 会社が取締役に贈与をする行為
  • 会社が取締役のために、債務保証をおこなう行為

いずれの行為も、取締役と会社の利益が相反する可能性があります。

取締役や会社の行為が会社に不利益をもたらさないためにも、取締役会や株主総会で承認を受けてから実施することが必要です。

参照元:eGov法令検索「会社法 第三百五十六条」

2.民法における利益相反規制

民法第108条では、自己契約および双方代理について定めています。

民法では契約などの法律行為において、売主が買主の代理人になる、もしくは買主が売主の代理人になる「自己契約」や、同一人が売主と買主双方の代理人となる「双方代理」は原則として認められていません。

自己契約では、代理人を依頼した売主・買主の不利益になる取引が実現しやすく、双方代理では代理人がかならずしも本来の売主・買主の利益を追求しない可能性があります。

民法で各行為を禁じることにより、本来の売主・買主の利益保護を目指します。

なお、M&Aの仲介取引は民法における双方代理に該当しますが、説明と契約書により売主・買主から許諾を得ているため、規制の対象とはなりません。

参照元:eGov法令検索「民法 第百八条」

3.宅地建物取引業法における利益相反規制

宅地建物取引業法第34条の2では、媒介契約について定めています。媒介契約とは宅地建物取引業者が買い手と売り手の両方と結ぶ契約のことで、これにより、宅地建物取引業者は仲介者として売買をサポートできるようになります。

買い手と売り手のどちらとも契約を結ぶため、媒介契約は利益相反になるのではと疑問視されることがありますが、結論からいえば利益相反とはなりません。

媒介契約とは、あくまでも売買の成立や契約書の作成などの事務処理をサポートするための契約であり、買い手や売り手の代理人として料金を交渉するわけではなく、利益相反事項も生じないからです。

参照元:eGov法令検索「宅地建物取引業法 第三十四条の二」

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M&A仲介会社による取引の5つのメリット

利益相反リスクがあっても、M&A仲介会社に依頼することには多くのメリットがあります。

主なメリットとしては、次の5つが挙げられます。

  1. M&Aの相手企業が見つかりやすい
  2. 短期間でM&Aを実現しやすい
  3. M&A終了後にトラブルが起こりにくい
  4. 専門家に税務・会計などを任せられる
  5. より良い経営課題の解決方法が見つかる

各メリットについて見ていきましょう。

1.M&Aの相手企業が見つかりやすい

M&A仲介会社なら買い手・売り手のリストを持っているため、相手企業が見つかりやすくなります。

また、規模が大きく取引実績の多いM&A仲介会社であれば、リストに掲載されている企業数も多く、希望時期・条件でのM&Aを実現しやすくなるでしょう。

M&A仲介会社はM&A交渉のプロフェッショナルであるため、可能なかぎり双方の希望を叶えるように交渉を進めてくれる点も特徴です。

2.短期間でM&Aを実現しやすい

M&A交渉のプロフェッショナルであるM&A仲介会社に依頼することで、短期間でM&Aが成立しやすくなります。

M&Aでは譲渡内容や金額などのさまざまな条件をすり合わせる必要があるため、スムーズに進まないのが普通です。しかし、相手候補となる企業リストを有し、交渉実績が豊富なM&A仲介会社に仲介を依頼すれば、相手企業がすぐに見つかるだけでなく、専門家によるサポートを受けてM&Aがスムーズに進みます。

M&A成立までの時間が長引くと、買い手にとっては利益を逸する可能性があり、売り手にとっては負債の増加や次のステップに進めないなどのデメリットがあるため、どちらにとっても好ましい状況とはいえません。

短時間でM&Aを実現しやすいことは大きなメリットだといえます。

3.M&A終了後にトラブルが起こりにくい

M&Aは売買取引が成立すれば終わりというものではありません。取引終了後に、さまざまなトラブルが起こる可能性があります。トラブルに巻き込まれると、事後処理に時間がかかることもあるため、注意が必要です。

リスク回避のために、M&A成立前に相手企業の法務・税務などを精査する「デューデリジェンス」をおこないます。デューデリジェンスが不十分だと、後々法的なリスクや簿外債務などが発覚するおそれがあります。

M&A仲介会社に依頼すれば、相手企業の状況をデューデリジェンスによって詳細に調べるだけでなく、M&A後に想定されるさまざまなトラブルを想定したM&A契約書を作成してくれます。トラブルが起こりにくくなるでしょう。
また、トラブルが起こったときの損害賠償責任や契約解除の条件についても契約書に漏れなく含めるため、万が一のときでも損害を被りにくくなります。

4.専門家に税務・会計などを任せられる

税務なら税理士、法律なら弁護士、会計なら公認会計士など、専門的な内容の業務や手続きは専門家に任せると安心です。
M&A仲介会社なら各専門家が多数在籍しているため、M&Aに必要な業務をそれぞれの専門家に任せられます。

普段から業務を任せている顧問弁護士や顧問税理士に依頼するのもひとつの方法ですが、それらの専門家がM&Aに詳しいとは限りません。M&Aならではの特殊な事情を理解したうえで業務を進める必要があるため、M&Aの経験が豊富な専門家に依頼するとよいでしょう。

5.より良い経営課題の解決方法が見つかる

M&A仲介会社は、経営課題に合わせたより良い解決方法を提案します。

M&Aには事業譲渡や会社譲渡、合併、分割などのさまざまな手法がありますが、状況によって適切な手法が異なります。M&A仲介会社に自社の状況や解決したい課題などを伝え、適切な方法を提案してもらいましょう。

また、実績が豊富なM&A仲介会社なら、自社の状況を丁寧に分析することで、解決すべき本当の課題を見つけてくれます。

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M&A仲介会社による取引の4つのリスク

M&A仲介会社に仲介を依頼するメリットは多いです。しかし、悪質なM&A仲介会社に依頼してしまうと、いくつかのリスクがあるのは事実です。

主なリスクとしては、次の4つが挙げられます。

  • 買い手企業が有利になりやすい
  • 交渉戦略が相手企業に漏洩する可能性がある
  • 売り手企業の希望価格が採用されにくい
  • 利益相反に関する法整備が不十分

リスクを事前に理解しておくことで、不利な契約を回避してください。

1.買い手企業が有利になりやすい

M&A仲介会社に仲介を依頼すると、リピーターになる可能性がある買い手企業にとって交渉が有利に進むこともあります。

譲渡の対象やM&A成立日などのさまざまな要素において、売り手企業の主張が通りにくくなるかもしれません。納得できるM&Aを実現するためにも、自社の希望を正確に伝えましょう。
また、妥協できない点や折り合えるポイントをあらかじめ決めておくことが大切です。

2.交渉戦略が相手企業に漏洩する可能性がある

M&Aの成立には多くの人々が関わるため、交渉戦略や機密事項などの情報が漏洩してしまう可能性があります。機密保持に対する意識が低いM&Aが仲介会社に依頼すると、大切な情報が漏洩してしまうかもしれません。

また、悪質なM&A仲介会社では、自社が受け取る手数料を多くしたいという意識から、意図的に交渉戦略などを漏洩する可能性もあります。

3.売り手企業の希望価格が採用されにくい

買い手企業が有利なように交渉が進むと、売り手企業の希望価格は反映されにくくなってしまいます。

とりわけ次の特徴がある企業を優先する可能性があるため、注意が必要です。

  • 大手企業(M&Aにかける予算が多いと予想されるため)
  • M&Aに慣れている企業(リピーターになる可能性があるため)

一方だけが有利になる取引を避けるためにも、信頼できるM&A仲介会社を選ぶことが大切です。

4.利益相反に関する法整備が不十分

M&Aの仲介には特別な資格は不要です。また、利益相反に関する法整備も不十分なため、どちらか一方が有利になる取引が成立する可能性も十分にあります。

不利益を被らないためにも、信用できる仲介会社を選んで依頼するようにしましょう。

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信頼できるM&A仲介会社の選び方

どちらか一方に有利な交渉を避けるためにも、信頼できるM&A仲介会社を選びましょう。
次のポイントに注目すると、信頼性の高さを見極めやすくなります。

  1. 中小企業庁が定める登録機関かどうかを確認する
  2. 実績に注目する
  3. サービス内容に注目する
  4. 妥当な料金体系か確認する
  5. 担当者との相性に注目する

各ポイントについて解説します。

1.中小企業庁が定める登録機関かどうかを確認する

信頼できるかどうかを調べる目安として、中小企業庁にM&A支援機関として登録しているかをチェックする方法があります。

M&A支援機関登録をしているM&A仲介会社は、中小企業庁が定めた以下などの基準を満たしています。

  • M&Aの成立をサポートする質の確保・向上に向けて取り組みを実施していること
  • 仲介契約やアドバイザリー契約の締結前に利用者に書面を甲府市、重要事項を説明すること、また、重要事項の説明実施体制を整備すること
  • 直接交渉の制限についての条項の留意点を遵守した仲介契約書、アドバイザリー契約書を作成すること
  • 社外関係者にも遵守事項を周知・徹底し、運用体制を整備すること

依頼する際は、登録機関かどうかをチェックしましょう。

参照元:中小企業庁「M&A支援機関登録制度 登録機関データベース」

2.実績に注目する

実績豊富なM&A仲介会社なら、公平性の高い取引を期待できます。また、経験豊富なアドバイザーが多数在籍していると考えられるため、短期間でのM&A成立も期待できます。

実績豊富なM&A仲介会社なら、相手となる候補企業の数も多いため、より幅広い選択肢から自社の状況に合った相手企業を選べるでしょう。

実績が十分である点を確認したうえで、成立案件の規模や業種も確認しておきましょう。自社の規模や業種と類似する案件が多いなら、よりスムーズなM&A成立が可能になります。

3.サービス内容に注目する

M&A仲介会社のサービス内容にも注目してください。

相談から相手企業の選定・交渉・クロージングまでをトータルサポートするM&A仲介会社もありますが、「相手企業の紹介のみ」「交渉のみ」をサポートする会社もあります。

M&A終了後のサポートにも注目しましょう。
万が一、トラブルが起こったときに相談できる体制が整っているのか、また、損害を被ったときの保証制度や再交渉制度などについても確認しておくと安心です。

4.妥当な料金体系か確認する

M&A仲介会社をとおしてM&Aが成立すると、手数料の支払いが発生します。M&Aは事業や企業の売買となるため、手数料も高額になる傾向にあります。納得できる妥当な料金体系なのか、事前に確認しておきましょう。

事前にM&A仲介会社に料金体系について尋ねるのはもちろんのこと、料金を見積もってもらうと安心です。無料見積もりを実施しているM&A仲介会社もあるため、問い合わせてみましょう。

5.担当者との相性に注目する

担当者との相性も重要なポイントです。
経験豊富なM&A仲介会社に依頼し、スムーズにM&Aが進んだとしても、数ヶ月~数年かかることもあります。担当のアドバイザーと会う機会も多いため、相性が良くないとストレスに感じるかもしれません。

また、話しやすい担当者であっても、長く付き合ううちに「連絡がつきにくい」「話した内容を覚えていない」「誤解が多い」などの点が見られることもあります。M&Aの進行にも影響をおよぼす可能性があるため、M&A仲介会社に担当者の変更を申し入れましょう。

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まとめ

実績豊富で信頼できるM&A仲介会社に相談してM&Aを進めることで、利益相反が起こりにくくなります。
また、M&A仲介会社と契約してM&Aを進めていくことで、相手企業が見つかりやすくなるだけではなく、短期間でM&Aが成立することやM&A後のトラブルを回避しやすくなることなどのメリットも得られます。

信頼できるM&A仲介会社かどうかをチェックするときは、実績に加え、中小企業庁でM&A支援機関登録をしているかどうか、サービス内容の充実度や妥当な料金体系であるかにも注目してみましょう。
万が一、担当者との相性に問題があるときは、早めにM&A仲介会社に交代してもらえるように相談することも大切なポイントです。

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