パックマンディフェンスとは?メリットや他の敵対的買収への対抗策も紹介

2024年2月2日

パックマンディフェンスとは?メリットや他の敵対的買収への対抗策も紹介

このページのまとめ

  • パックマンディフェンスとは敵対的買収の防衛策
  • パックマンディフェンスの意思を見せることで、敵対的買収を予防できることがある
  • パックマンディフェンスを実施するためには多額の費用がかかる
  • 買収しようとしている相手企業が非上場企業のときは活用できない
  • 敵対的買収を予防する方法にはポイズン・ピルやゴールデンパラシュートなどもある

「敵対的買収を防ぐにはどのような対策が必要だろう?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。

本コラムでは、パックマンディフェンスについて説明します。メリットやデメリット、パックマンディフェンスによって得られる効果についてもまとめました。また、敵対的買収の防衛に活用できるパックマンディフェンス以外の手法も紹介します。

他企業による買収を阻止するためにも、ぜひお役立てください。

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パックマンディフェンスとは

パックマンディフェンスとは、敵対的買収の防衛策の一種です。買収を仕掛けてきた相手企業に対し、逆に買収を仕掛けることで買収を阻止する手法です。

パックマンディフェンスは「デッドマンズトリガー」や「逆買収」と呼ばれることもあります。

なお、名前の由来となったパックマンとは、1980年代に流行したゲームの名前です。

パックマンはあるアイテムを取得すると無敵状態となり、敵を攻撃できるようになります。本来ならおとなしく攻撃(買収)を受けるだけの存在が、反対に攻撃(買収)する様子が似ていることが、パックマンディフェンスと呼ばれる由来です。

敵対的買収とは

敵対的買収とは、買収先から合意を得ずに株式を買い占め、経営権を取得することです。

原則として、有価証券報告書の提出義務のある会社の株式を市場外もしくは市場内と市場外の組み合わせ等で買い付けて、株券等の所有割合が3分の1を超えるときには、原則公開買い付け(TOB)をしなくてはいけません。

本来であればTOBは買収先の同意を得て実施しますが、買収阻止を回避するなどの目的で同意を得ずにTOBを実施することもあり、敵対的買収と呼ばれます。

友好的買収・M&Aとの違い

友好的買収とは、買収先の合意を得てから株式を買収し、経営権を取得することです。

M&Aで企業買収するときは、買収企業と売却企業が話し合って合意を得たうえで買収を実行するため、すべて友好的買収です。

そのため、買収をしようと思ったら反対に買収を仕掛けられた(=パックマンディフェンス)などの事態は、M&Aでは起こりません。

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パックマンディフェンスの3つのメリット

パックマンディフェンスには、次の3つのメリットがあります。

  • 敵対的買収を阻止できる
  • 敵対的買収をけん制できる
  • 相手の株式をすべて買う必要がない

それぞれ詳しく見ていきましょう。

敵対的買収を阻止できる

パックマンディフェンスを実施すると、敵対的買収を仕掛けた側は何らかの防衛策を実施しなくてはいけません。自社が買収対象となることで、買収を阻止するための対応に追われて、敵対的買収を継続することが困難になります。

また、パックマンディフェンスの対応には費用がかかるため、敵対的買収を仕掛けた側が買収を断念するでしょう。

敵対的買収をけん制できる

パックマンディフェンスは、本来は敵対的買収を仕掛けられたときの防衛策です。

しかし、買収を仕掛けられる前にパックマンディフェンスを行う姿勢を見せることも有効です。

相手企業の株式を買収する意思を見せることで、敵対的買収をけん制できることがあります。

相手の株式をすべて買う必要がない

パックマンディフェンスでは、買収を仕掛けてきた相手企業のすべての株式を買い占める必要はありません。

会社法により、相互保有株式の場合において相手企業の株式を4分の1以上保有すれば、相手企業の持つ自社株式を無効にできます。

相手企業株式の4分の1のみを買収すれば、敵対的買収の阻止が可能です。

すべて買い占めるためには市場外での交渉にも時間がかかりますが、4分の1のみなら、数名の大株主と交渉するだけで実現できることもあります。また、費用面での負担も抑えられます。

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パックマンディフェンスの3つのデメリット

パックマンディフェンスにはデメリットもあります。主なデメリットとしては、次の3点が挙げられます。

  • 多額の費用がかかる
  • 株主から賛同を得にくい
  • 非上場企業の敵対的買収には対抗できない

それぞれについて解説します。

多額の費用がかかる

パックマンディフェンスでは、相手企業株式を4分の1のみ購入すれば買収を阻止できます。

しかし、4分の1だけでも購入するのは大きな負担です。とりわけ相手企業が上場企業の場合は、株式の時価総額も大きくなる傾向にあり、阻止したくても費用が出せない可能性もあります。

株主から賛同を得にくい

「事業規模を拡大する」「事業を提携してシナジー効果を得る」などの目的で他社の株式を買収するときは、株主からも賛同を得やすいと考えられます。長期的に見れば収益増につながり、配当金も増える可能性があるからです。

しかし、「買収を阻止する」だけの目的で他社の株式を買収しても、収益増にはつながるとは限りません。それどころか事業発展に活用できる資金が減ったり、金融機関への返済が経営を圧迫したりするおそれがあります。

このような事情から、パックマンディフェンスは株主から賛同を得にくいと考えられます。それどころか、「資金力のある企業に買収されることで、株価が上昇するかもしれない」と期待する株主もいるでしょう。

非上場企業の敵対的買収には対抗できない

自社株式を買収しようとしている相手企業が非上場企業の場合、株式を公開していないため、相手企業の賛同を得ずに買い付けできません。パックマンディフェンスを実施しようにも、相手企業が賛意を表明するわけもなく、防衛策が実現できないのが実際のところです。

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日本においてパックマンディフェンスの事例はない

日本では、相手企業の4分の1の株式さえ取得すれば、パックマンディフェンスは成立します。

比較的成功しやすい手法だと考えられますが、実際にはけん制をすることで未然に防げているパターンが多く、パックマンディフェンスを実施した例は少ないです。

海外においても1980年代は何件かの成功事例があったといわれていますが、それ以降はあまり実施されていません。

実際的な敵対的買収の防止手段というよりは、敵対的買収を回避するための威嚇手段として使われていると考えられます。

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敵対的買収を未然に防ぐ4つの防衛策

パックマンディフェンス以外にも、敵対的買収の防衛策として活用される方法があります。

  • ポイズン・ピル
  • ゴールデンパラシュート
  • スタッガード・ボード
  • 黄金株

これら4つの手法は、敵対的買収を未然に防ぐものです。

それぞれの防衛策の特徴や実施の流れについて見ていきましょう。

ポイズン・ピル

ポイズン・ピルとは、既存株主に新株予約権を発行し、株式を買い占められないようにしておく手法です。「毒薬条項」や「ライツ・プラン」とも呼ばれます。

敵対的買収が実施されると、ポイズン・ピルが発動し、市場価格よりも安い価格で新株が発行されます。株式数が増えることで、敵対的買収をしようとしていた企業は過半数の株式を買い占められず、結果的に経営権を獲得できません。

また、信託銀行に対して新株予約権を発行し、敵対的買収者が出現したときは無償で新株を発行して買収者の持株比率を下げる方法もあります。

なお、ポイズン・ピルは、敵対的買収者に対して「買収しても、新株予約権で過半数の株式を買い占められない可能性がある」と警告するために用いられることがあります。

ゴールデンパラシュート

ゴールデンパラシュートとは、経営陣の退職金を高額に設定するなどにより、買収の負担を増やす手法です。買収のコストが増えるため、敵対的買収者の買収意欲を削ぐ効果があります。

ゴールデンパラシュートという名前は、経営陣が高額な手当をもらって買収後の企業から脱出できることから名づけられました。

経営陣にとっては万が一買収されても高額な退職金を約束されているため、敵対的買収によって大きな不利益を被らないというメリットがあります。

しかし、株主や従業員からは反発を招きやすい方法のため、慎重に実施することが必要です。

スタッガード・ボード

スタッガード・ボードとは、取締役の改選の時期をずらし、取締役全員が解任されるまでの時間を稼ぐ手法です。

スタッガード・ボードを実施することで、敵対的買収後も一定期間は実質的な経営権を保持できます。

経営方針などが大きく変わらない点はメリットですが、新たな経営陣の経営を妨害することにもなり、株主の利益を阻害する可能性があります。

黄金株

黄金株とは種類株式の一つであり、拒否権付き株式のことです。敵対的買収を阻止するために、あらかじめ黄金株を発行します。

黄金株が発行されている場合、株主総会や取締役会で他社による買収などの重要事項が決まっても、黄金株の保有者が拒否することで決議に至らないようにできます。

ただし、黄金株が敵対的買収者の手にわたると、かえって敵対的買収を進めることにもなりかねません。また、平時にも黄金株の拒否権は有効であるため、経営に悪影響が及ぶこともあります。

黄金株の発行は慎重に行いましょう。

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敵対的買収を仕掛けられたときの2つの防衛策

パックマンディフェンスは、実際に敵対的買収を仕掛けられたときの防衛策として活用されることもあります。また、パックマンディフェンス以外にも、次の手法が実施されることがあります。

  • クラウンジュエル
  • ホワイトナイト

それぞれの手法の特徴やメリット、懸念点について見ていきましょう。

クラウンジュエル

クラウンジュエルとは、自社の魅力を減らすことで敵対的買収をやめさせる方法です。

クラウンジュエルとは「王冠についている宝石」のことです。宝石(自社の魅力的な要素)を外すことで王冠(自社)の魅力を減らし、敵対的買収の意欲を削ぎます。

たとえば、高利益を生む事業を分社化したり、第三者に譲渡したりすることで、魅力を低減できます。ただし、重要事業の譲渡は株主総会の特別決議が条件となるため、敵対的買収を仕掛けられそうなときは、迅速に対応することが必要です。

また、重要事業の譲渡は企業にとってはマイナスとなるため、決議が成立しない可能性がある点に注意しましょう。

特別決議を成立させるためにも、株主に対して丁寧に説明する必要があります。たとえば、事業譲渡をすることで経営のスリム化を図れることや、ほかの有望事業に資金を投入できることなどを説明し、長期的に見ればメリットがあることを理解してもらいましょう。

ホワイトナイト

ホワイトナイトとは、友好的な売却先を見つけて、自社を買収してもらう手法です。

ホワイトナイトとは「白馬の騎士」のことです。敵にさらわれそうなヒロインを救う白馬の騎士になぞらえて名づけられた名称です。

「買収してもらう」という姿勢であるため、ホワイトナイトにとって有利な条件を提示することが一般的です。

ホワイトナイトのメリットは、敵対的買収が実施されたあとでも検討できる点です。敵対的買収が実施されそうなときにホワイトナイトを探せばよいため、買収を仕掛けられた後でも対応できます。

デメリットとしては、敵対的買収は回避できても、結局は自社を売却しなくてはならない点が挙げられます。

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まとめ

パックマンディフェンスは、敵対的買収の阻止だけでなくけん制目的でも活用できます。敵対的買収を回避したい場合、仕掛けられる前に「パックマンディフェンスを実施する」姿勢を見せることも一つの方法です。

敵対的買収の可能性があるときは、クラウンジュエルやホワイトナイトも検討しましょう。事業譲渡や友好的な相手への売却を実施することで、敵対的買収の阻止が可能です。

事業譲渡や企業売却については、M&A仲介会社に相談してみましょう。M&A仲介会社では候補となる譲渡先企業の情報を有しているため、事業譲渡や企業売却のスムーズな実現が可能になります。

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