このページのまとめ
- 投資キャッシュフローとは、将来的な利益獲得のために行う投資活動による現金の増減
- 投資キャッシュフローを読み解くことで、経営実態を知ることができる
- 投資キャッシュフローは、キャッシュフロー計算書に記載されている
- 投資キャッシュフローの増減のみの情報では、良し悪しを判断できない
- 投資キャッシュフローの数値とその背景を知ることで、経営状態が分かるようになる
投資キャッシュフローの見方が分からず、お困りの経営者の方もいるのではないでしょうか?
投資キャッシュフローは数値がマイナスかプラスかだけではなく、その背景やほかの指標も併せて確認する必要があります。
本コラムでは、投資キャッシュフローが表す意味や分析方法を解説します。また、投資キャッシュフローを増減させる項目やチェックするべき要素も紹介します。
投資キャッシュフローを知り、経営状態の把握を図りましょう。
目次
投資キャッシュフローとは
投資キャッシュフロー(投資CF)とは、設備投資や資産運用などの投資活動によって生じる現金の収支の動きのことです。
投資キャッシュフローは、英語では「Cash Flow from Investing Activities」といいます。
投資キャッシュフローは、経営実態を知るために必要となる指標の一つです。
投資キャッシュフローは投資を行うと減少し、保有資産を売却すると増加します。
しかしマイナスになっているからといって、経営状態が悪いというわけではありません。
また、プラスだからといって良好な経営状態とは限りません。
経営状態を正確に分析するためには、投資キャッシュフローの内訳やほかのキャッシュフローの状況を併せて確認する必要があります。
投資キャッシュフローはキャッシュフロー計算書で確認
投資キャッシュフローは、キャッシュフロー計算書に記載されています。
投資キャッシュフローを確認したいときは、キャッシュフロー計算書をチェックしましょう。
キャッシュフロー計算書とは
キャッシュフロー計算書とは、企業のキャッシュの収支について記載されている書類です。
キャッシュフロー計算書は主に以下の3つの項目で構成されています。
項目 | キャッシュの出入りの内容 |
投資CF | 営業活動を行うことによって生じるキャッシュフロー |
営業CF | 将来的な利益獲得や資産運用を目指すことにより生じるキャッシュフロー |
財務CF | 営業活動・投資活動を維持するための資金調達や返済によって生じるキャッシュフロー |
キャッシュフロー計算書は、上場企業に提出が義務付けられている財務諸表の一つです。
会社の一定期間内の現金の動きを、投資家や利害関係者などに知らせる役割も果たしています。
なお、上場企業以外の会社には提出義務はありません。
しかしキャッシュフロー計算書は経営実態を把握する書類であるため、中小企業や小規模企業者も作成しておくとよいでしょう。
投資キャッシュフローに含まれる項目
投資キャッシュフローを増減させる要素には、以下のようなものがあります。
影響を及ぼす項目 | キャッシュの増減 |
定期預金の預け入れ | マイナス |
定期預金の払い戻し | プラス |
固定資産の購入 | マイナス |
固定資産の売却 | プラス |
投資有価証券の購入 | マイナス |
投資有価証券の売却 | プラス |
貸付金の貸付 | マイナス |
貸付金の回収 | プラス |
預け入れ期間が3ヶ月を超える定期預金は投資キャッシュフローとして取り扱われます。
定期預金の預け入れを行うと投資キャッシュフローはマイナスになり、払い戻しを行うとプラスになります。
また、固定資産や有価証券などを取得すると、投資キャッシュフローはマイナスになります。逆に、売却によって現金を得た場合はプラスになります。
そのほか、現金の貸付をすると投資キャッシュフローはマイナスになり、貸付金を回収した際にはプラスになります。
投資キャッシュフローの読み解き方
最後に、投資キャッシュフローの読み方を解説します。
投資キャッシュフローがマイナスなのかプラスなのかという情報だけでは、会社の経営状況の評価はできません。
投資キャッシュフローの分析において大切なことは、マイナスあるいはプラスになった背景を丁寧に読み解くことです。
マイナス状態が意味するもの
投資CFを減少させる主な要素には、定期預金の預け入れ・固定資産の購入・投資有価証券の購入・貸付金の貸付があります。
これらの要素は、実施された背景によって経営状態の評価が変わります。
下記は、考えられる背景と判断の例です。
【投資CFがマイナス状態】
経営状態が良い傾向にある | 経営状態に注意が必要 | |
定期預金の預け入れ | 定期預金に現金を預け入れた | 定期預金に預け入れることで、手元の現金に余裕がなくなった |
固定資産の購入 | 事業拡大のために工場を取得した業務効率化のために最新の機械装置を導入した | 営業CFがマイナスなのに固定資産を購入した利益の見込みが不透明な固定資産を購入した |
投資有価証券の購入 | 配当利回りが高い投資有価証券を購入した他社の支配権を獲得するために投資有価証券を購入した | 配当利回りが著しく低い投資有価証券を購入した投資先の企業が不祥事を起こした |
貸付金の貸付 | 期待値が高いスタートアップ企業に貸付金を貸付した | 貸付金を貸付した企業の経営状態が悪化した |
投資キャッシュフローがマイナスだったとしても、将来的な利益獲得に向けた投資であれば、評価できる項目になり得ます。
投資した分、次期の現金収入が上がって営業キャッシュフローがプラスになることが期待できます。
「投資に積極的な姿勢を持つ企業」という好評価につながるでしょう。
一方で、営業CFや利益率とのバランスが悪い場合は手元のキャッシュを減らしてしまうことになり、不安定な経営状態になるおそれがあります。
投資キャッシュフロー以外の指標にも気を配り、投資に使用できる現金はいくらあるのかを考えましょう。
また、投資有価証券の購入や貸付金の貸付を行っている場合、回収できなくなるリスクがあることに注意が必要です。
プラス状態が意味するもの
投資CFを増加させる主な要素は、定期預金の払い戻し・固定資産の売却・投資有価証券の売却・貸付金の回収です。
これらのことが実施された際は、その背景をチェックして経営状態が良好なのか不穏なのかを確認しましょう。
投資キャッシュフローがプラス状態のときに考えられる背景と判断の例は以下の表のとおりです。
【投資CFがプラス状態】
経営状態が良い傾向にある | 経営状態に注意が必要 | |
定期預金の払い戻し | 預け入れの期間が満了になった | 資金繰りに行き詰まり、預金を引き出すために中途解約した |
固定資産の売却 | 運用効率を上げるために固定資産を売却した | 手元のキャッシュが不足し、支払いのために固定資産を売却した |
投資有価証券の売却 | 価値が高まったタイミングで売却を決意したより魅力的な投資先がほかに見つかった | 価値が下がり続けて、今後も上がる見込みがないと考えて売却に踏み切った資金繰りが悪化し、支払いに備えて売却した |
貸付金の回収 | 理想的な回収サイトで貸付金を回収できた | 相手企業の業績悪化のため支払いが滞り、期限を過ぎてから貸付金を回収した |
投資キャッシュフローがプラスになっている場合、投資した現金を回収できていることになります。
回収時期もスケジュールどおりであれば、投資キャッシュフローは健全であるといえます。
しかし、投資キャッシュフローがプラスだからといって必ずしも良好な状態だとはいえません。
価値が上昇しないために見切りをつけたり、支払いに困窮してすぐに現金が必要になったりして、やむを得ず売却したという事情も考えられます。
また、貸付金を回収したものの本来の回収時期から大幅に遅れていた場合も、注意すべき状態です。
貸倒れのリスクが高いので、次回以降の貸付を行うかどうかを慎重に検討する必要があります。
まとめ
投資キャッシュフローとは、将来的な利益獲得を目指す活動により発生するキャッシュの増減のことです。投資キャッシュフローはキャッシュフロー計算書で確認できます。
投資キャッシュフローは、「マイナスだから」「プラスだから」という理由だけでは一概に良い状態・悪い状態だと判断できません。
正しい経営実態を知るためには、投資キャッシュフローを変動させる要素一つひとつの背景をチェックすることが必要です。
また、営業キャッシュフローや利益の指標も併せて確認しましょう。
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