このページのまとめ
- 会社の解散とは事業を停止して法人格を消滅させる手続き
- 会社の解散は会社に関わる納税の義務がなくなるのがメリット
- 会社を解散するには株主総会の開催や清算人の選任、登記などの手続きが必要
- 会社の解散には2ヶ月半~3年程度の期間がかかる
会社の解散を決めたとき、どのような手続きが必要なのか悩む方も多いでしょう。小規模な会社では、経営者が自分一人で解散手続きができるのかも気になるところです。解散には債権や債務、財産の清算など、多くの手続きがあります。本記事では、会社の解散手続きの流れや具体的な進め方を解説します。
目次
会社の解散とは?
会社解散とは、事業を停止して法人格を消滅させるために行う手続きです。事業をストップすれば会社が消滅するわけではなく、会社の解散には一定の手続きが必要です。
また、会社の解散は経営者が自由にできるものではなく、相応の事由が必要であり、要件が定められています。
会社清算との違い
会社解散と会社清算は手続きのタイミングや目的に違いがあります。
会社の事業を停止するのが会社解散なのに対して、会社が解散した後、会社の債権・債務の整理を行い、財産を清算することを会社清算といいます。
会社を解散しても、まだ売掛金を回収していない、買掛金を支払っていない、あるいは借入金を返していないといった状態です。
会社清算では債権者への公告、債権の回収や債務の支払い、財産の現金化などを行った後、残ったお金がある場合には株主に分配を行います。
会社解散をしただけではまだ法人格は消滅していません。会社を消滅させるには清算手続きが必要です。
廃業との違い
廃業とは、会社の経営者が自ら事業をやめることを決定することをいいます。
事業が続けられない状態に陥る倒産に対する言葉です。
解散と廃業に違いがあるというよりも、会社を廃業するには、解散と清算の手続きが必要という関係性にあります。
会社を解散するメリット
会社を解散することで、次のようなメリットがあります。
- 会社に関わる納税の義務がなくなる
- 役員登記の手続きが不要となる
それぞれ、詳しくみていきましょう。
会社に関わる納税の義務がなくなる
会社を解散することにより、会社に関わる納税の義務がなくなります。事業を停止している場合でも、会社として存続している以上は法人住民税の均等割がかかります。また、利益が出ていなくても決算申告を行わなければなりません。
事業をしていないのに税金を支払うのは無駄であり、決算申告にも手間がかかります。会社を解散することにより、これらの納税や申告の義務もなくなります。手間やコストがかからなくなるという点がメリットです。
役員登記の手続きが不要となる
会社として存続している場合、役員の変更をしなければなりません。会社の役員には任期が決まっており、定期的に交代や改選、役員を継続するなどの手続きが必要です。再任の場合は重任登記が必要であり、申請をしないと制裁金を科される可能性があります。
会社を解散すれば、このような手続きは不要であり、申請を忘れて罰金を課せられるリスクもありません。
会社を解散するデメリット
会社を解散する場合、以下のようなデメリットもあります。
- 取引先や顧客を失う
- 従業員の再就職先を探す必要がある
具体的にみてみましょう。
取引先や顧客を失う
会社の解散により、取引先や製品・サービスを利用してくれた顧客を失います。取引先の売上にも影響する可能性があり、特に自社との取引が大きかった場合の影響は大きいでしょう。長い間自社製品・サービスを愛用してくれていた顧客は、会社がなくなることに失望するかもしれません。
これまで事業として培ってきた実績もなくなります。業務のノウハウなども、引き継ぐ会社がなければ失われてしまうのもデメリットです。
従業員の再就職先を探す必要がある
会社の解散により従業員は職を失います。新たな就職先を見つけなければなりません。解散を決断した会社の選択に不満を持つ人もいるでしょう。
解散を決めたら、できるだけ早く従業員に伝えて再就職先を探す時間を与える必要があります。関係会社などにあたってみるなど、再就職のサポートをすることも大切です。
ほかにも、会社解散には清算費用がかかる、資産売却の際に消費税を納付する場合があるといったデメリットがあります。
会社の解散後の清算手続きとは?
会社を解散しただけでは、会社に資産と負債が残ったままの状態であり、解散後は清算手続きが必要です。清算手続きが完了して初めて会社は消滅します。
清算手続きでは会社に残された債権・債務を整理し、財産がある場合は換金処分を行います。
ここでは、清算手続きについてみていきましょう。
会社の状況により2つの方法がある
清算手続きは会社の状況により、次のような2つの方法があります。
- 通常清算
- 特別清算
通常清算とは、残された債務をすべて会社の財産で支払いできる場合に行う方法です。
特別清算は、会社に残っている資産で債務の完済ができない可能性がある場合に、裁判所の監督のもと行われる清算方法です。特別清算はいわゆる倒産手続きであり、裁判所への申し立てが必要になります。
具体的な清算手続き内容
会社解散の清算手続きは、株式会社の解散登記を行ったら、会社清算人による清算手続きを行います。
具体的に、清算人が行うのは以下の手続きです。
- 取引先や従業員との契約解除を行う
- 売掛金などの債権を回収する
- 換価できる財産を処分する
- 借入金などの債務を返済する
- 残余財産を株主等に分配する
残った債務を会社資産で全額支払うことができる場合は通常清算を行い、会社の資産では債務を完済できない場合、裁判所の監督のもとに特別清算(倒産手続き)を行います。
すべての清算処理が終わって残った財産がある場合は株主に分配し、会社清算・解散の手続きが終わります。
会社を解散するには相応の理由が必要
会社を解散するには相応の事由が必要であり、会社法で次の7つの要件が定められています。会社を解散するには以下のいずれかに合致することが必要です。
【会社解散の事由となる7つの要件】
- 定款に定められている存続期間を満了している
- 定款に定められている解散事由がある
- 株主総会で決議されている
- 合併による会社の消滅
- 破産手続きの開始が決定している
- 裁判所による解散命令
- 休眠会社のみなし解散
それぞれの要件について見ていきます。
1.定款に定められている存続期間を満了している
定款では、会社の存続期間を定めておくことが可能です。
定款で存続期間を定めている場合には、満了日の翌日に解散となります。
しかし、現在では定款で存続期間を定めておくのは、複数の企業によって会社を設立するケースなどを除くと、一般的ではありません。
2.定款に定められている解散事由があること
定款で解散事由を自由に定めておくこともできるため、解散事由の条件に該当すると会社を解散することになります。
たとえば、「社長が○歳に達した時点で解散する」「従業員が○名以下になった時点で解散する」「○○プロジェクトの完了をもって解散する」「○○の目的の達成により解散する」といった解散事由を定款で定めておくケースが挙げられます。
ただし、上述した存続期間同様、定款で解散事由を定めているケースも少ないです。
3.株主総会で決議されている
株主総会で解散の決議を行うには、一般的な普通決議よりもハードルが高く設定された特別決議が必要です。
特別決議では、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上による賛成をもって成立します。
ただし、特別決議に必要な議決権はこれを上回る定款を定めておくことも可能です。
株主総会で解散の特別決議が成立すると、その日を持って会社は解散となります。
会社の解散事由で最も一般的なのは株主総会による決議です。
4.合併による会社の消滅
合併とは、複数の会社が一つの会社になることをいい、新設合併と吸収合併の2種類があります。
新設合併は、新たに設立した法人が合併する会社のすべての権利を承継する方法で、合併する会社はいずれも消滅します。
吸収合併は存続会社となる会社が、吸収される会社のすべての権利を引き継ぎ、吸収される会社は消滅する方法です。
合併で一般的なのは吸収合併の方です。
5.破産手続きの開始が決定している
法人において破産とは、債務超過や支払い不能に陥った会社が、裁判所への申し立てによって、選任された破産管財人が財産の処分や債権者への配当を行い、会社を清算する手続きをいいます。
裁判所で破産手続きの開始が決定すると、会社は解散となります。
6.裁判所による解散命令
会社法によって会社の存続が公益上許されない場合には、裁判所は会社の解散を命じることができます。
裁判所から会社の解散命令が出されると、解散することになります。
ただし、裁判所による解散命令はほとんど行われていません。
7.休眠会社のみなし解散
休眠会社とは一般的には長期にわたって企業活動を行っていない会社を指しますが、会社法では最後の登記から12年登記を行っていない株式会社が該当します。
会社法で役員の任期は最長で10年とされているため、株式会社は少なくとも10年に1回は役員変更登記の手続きが必要なためです。
法務大臣が休眠会社に対して官報公告を行った後、2ヶ月以内に登記申請手続きを行うか、あるいは事業を廃止していない旨の届出を行わなければ、解散したものとみなされ、登記官の職権で解散の登記が行われます。これを休眠会社のみなし解散といいます。
ただし、みなし解散とされても、解散の登記から3年以内に会社継続の手続きを行い、会社を継続することが可能です。
会社の解散手続きの流れ
会社の解散手続きの流れは、大まかに会社の解散を行う準備段階、清算手続きの段階、申告・登記手続きの段階の3つに分けられます。
このうち清算は債権・債務の整理や財産の処分を行い、残った財産やある場合には株主に分配する手続きです。
清算には次の2つの種類があります。
- 通常清算:債権回収や財産の売却によって、債務の全額支払える場合の清算方法。裁判所の監督を受けない。
- 特別清算:債務を弁済しきれない債務の疑いがある場合の清算方法。裁判所へ申し立てを行い、裁判所の監督下で清算手続きを行う。
ここでは、通常清算を行う場合の会社解散手続きの流れを取り上げていきます。
【会社解散手続きの流れ】
- 株主総会で解散が決議される
- 解散・清算人を登記する
- 財産目録と貸借対照表を作成する
- 債権者保護の手続きをおこなう
- 解散事業年度の確定申告を申請する
- 資産の現金化・債務弁済などをおこなう
- 清算確定申告を申請する
- 決算報告書を作成する
- 決算結了を登記する
- 各機関へ解散を届ける
1.株主総会で解散が決議される
株式会社は株主総会での決議によって、解散することができます。
株主総会を開催し、定款に特別な定めがない場合には、議決権を有する株主の過半数以上が出席し、出席した株主の持つ議決権の3分の2以上の賛成をもって可決されると、特別決議の要件を満たし、解散が成立します。
また、解散の決議と合わせて、会社の清算の事務を行う清算人の選任も同時に行うのが一般的です。通常、解散した時点での代表取締役や取締役が清算人に選任されますが、弁護士などの専門家を選任することもできます。清算人の選任は、出席した株主の議決権の過半数の賛成で可決すると成立する普通決議です。
株主総会を開くために株主を招集するには、原則として開催日の2週間前までに招集通知の発信が必要です。
ただし、株主全員の同意によって、株主の招集手続きを省くことや書面で同意の意思を示すことが可能です。
2.解散・清算人を登記する
会社の解散から2週間以内に、本店の所在地を管轄する法務局で、解散の登記と清算人の選任登記を行います。
3.財産目録と貸借対照表を作成する
選任された清算人は会社の財産の調査を行い、解散日時点の財産目録と貸借対照表を作成します。
財産目録は現預金や売掛金、在庫といった資産と、買掛金や借入金などの負債の明細表です。
貸借対照表は財産の構成を示すものになります。
そして、財産目録と貸借対照表を作成した後、株主総会で承認を得ます。
4.債権者保護の手続きを行う
売掛金や貸付金などの債権者に回収の機会を設けるため、清算人は会社の解散を知らせる債権者保護の手続きを行います。
債権者保護の手続きには、官報公告と個別催告の2つの方法があります。
官報公告の官報とは、法令の公布や国の広報、国民の公告のために国が発行する機関誌です。全国にある官報販売所で公告の申し込みを行います。
官報公告で債権者に会社の解散と2ヶ月以上の一定期間内に債権を申し出るように求めます。会社が把握していない債権者は、期間内に申し出がなければ清算の対象から除外することが可能です。
個別催告は会社が把握している債権者に対して、個別に債権の申し出を求めるため、催告を行うものです。
5.解散事業年度の確定申告を申請する
解散した日から2ヶ月以内に、事業年度開始日から解散日までの法人税の確定申告書を税務署に提出します。
6.資産の現金化・債務弁済などをおこなう
清算人は売掛金や未収入金の回収、現預金以外の棚卸資産や固定資産などの売却による現金化を行います。そして、官報公告の期間が終了して債権者が確定した段階で、買掛金や借入金などの債務を債権者に弁済します。
すべての債務の弁済を行っても、残余財産がある場合には株主に分配します。
残余財産を分けるときの基準となるのは、株式の持ち分の割合です。
7.清算確定申告を申請する
残余財産が確定した後、清算人は解散後の清算手続きに関する税務申告として、税務署に清算確定申告書を提出します。
清算確定申告は残余財産が確定した翌日から1ヶ月以内が期限です。
また、清算手続きで所得が生じた場合は納税を行います。清算が事業年度をまたぐ場合には、事業年度ごとに確定申告が必要です。
8.決算報告書を作成する
清算人は清算事務が完了した段階で速やかに決算報告書の作成を行います。そして、株主総会で清算事務報告を行い、承認を受ける必要があります。
決算報告書の株主総会での承認を持って、法人格が消滅します。
9.清算結了を登記する
株主総会で清算事務報告の承認を受けてから2週間以内に、本店の所在地を管轄する法務局で株主総会議事録と決算報告書を添付して、清算決了の登記の申請を行います。
これにより登記簿が閉鎖され、会社の解散を公示することになります。
10.各機関へ解散を届ける
税務署や都道府県税事務所、市区町村の役所、社会保険事務所、労働基準監督署などの公的機関に、解散の届出を行います。
会社の解散にかかる時間
会社の解散に関する手続きがすべて完了するには、少なくとも3ヶ月程度はかかります。
流れは以下のとおりです。
- 会社の解散を官報で広告する期間(債権者が申出する期間):2ヶ月以上清算結了後2週間以内に清算結了登記を行う
実際にすべての処理が完了する期間は会社ごとに異なり、大規模で取引先や財産の多い会社は、清算手続きが長期にわたる場合もあります。会社財産をすべて売却しなければ清算が完了しないため、不動産などに買い手がつかない場合は時間がかかると考えた方がよいでしょう。
会社の解散にかかる費用
会社の解散には登記費用や公告費用がかかります。登記申請時には法務局に登録免許税を納税し、官報への広告には掲載料が必要です。
登録免許税は、「解散および清算人選任登記」が39,000円、「清算結了の登記」に2,000円がかかります。官報公告の掲載費用は、約33,000円程度です。
そのほかにも、株主総会開催費用がかかります。開催規模や場所によって異なり、数十万円になる場合もあります。
会社解散の手続きを会社だけで行うのは難しく、司法書士などの専門家に依頼するのが一般的です。その際には、専門家に支払う報酬が発生します。費用は約7万円〜12万円程度です。
税務申告を税理士に依頼する場合の費用は約15万円以上で、会社の規模により異なります。
必要な費用の一覧は、以下のとおりです。
登録免許税 | ・解散および清算人選任登記:39,000円 ・清算結了の登記:2,000円 |
官報公告の掲載費用 | 約33,000円 |
株主総会開催費用 | 数十万円程度 |
専門家への報酬 | 約7万円〜12万円 |
税理士への報酬 | 約15万円以上 |
まとめ
会社の解散には債務整理や登記、税務申告などさまざまな手続きが必要となり、清算を完了するまでには最短でも2ヶ月半、長いケースでは2〜3年の期間を要します。登録免許税や株主総会開催費用などがかかることも把握しておきましょう。会社の規模や専門家への依頼の有無などにもよりますが、一般的な目安として40万〜50万円程度が必要です。
解散する際は、株主総会の開催と決議、解散・清算人の登記など多くの手続きを行わなければなりません。手続きの流れを理解し、必要に応じて専門家の手を借りることも必要です。
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