このページのまとめ
- 株式を売却し利益が出れば課税される
- 株式を売却した時に得た利益に発生する税率は20.315%である
- 上場株式と非上場株式では、買主と売主の関係により取り扱いが異なる
株式を売却すると、売却で得た利益に対して税金がかかります。株式売却に伴う税金はどのような種類があり、どのように申告する必要があるのでしょうか。この記事では、株式売却時にかかる税金の種類と申告区分、税金の計算方法について詳しく解説します。また、売却によって必要となる確定申告の手順や注意点についても合わせて紹介します。
目次
株式売却時にかかる税金の種類と区分
株式売却に伴う税金は、所得税と住民税で構成されています。以下、国税庁 タックスアンサー「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」をもとに解説します。
所得税は国に納める税金であり、住民税は地方自治体に納める税金です。所得税が15%、住民税が5%の合計20%であり、令和19年までは、基準所得税額の2.1%の復興所得税が課されます。
株式売却による所得は、譲渡所得に区分されます。譲渡所得とは、資産の譲渡により生じた所得です。なお、株式売却の場合、上場株式等と一般株式等に区分できます。上場株式等とは、日本国内の証券取引所に上場している株式です。一般株式等とは、非上場株式を指します。
この上場株式等と一般株式等には、申告分離課税を適用できます。申告分離課税とは、譲渡所得を他の所得と別に計算し、申告・納付する制度です。
上場株式等では源泉徴収が行われるため、確定申告が不要な場合があります。
ただし、国税庁 確定申告書等作成コーナー「特定口座とは」のとおり、源泉徴収する特定口座を選択している場合に限ります。一般株式等では源泉徴収が行われないため、確定申告が必要です。一般株式等の譲渡所得は、他の所得と別に申告して納付する必要があります。
税金の種類
株式売却に伴う税金は、所得税と住民税で構成されています。
所得税は国に納める税金であり、住民税は地方自治体に納める税金です。個人の場合は、所得税が15%、住民税が5%の合計20%であり、令和19年までは、基準所得税額の2.1%の復興所得税が課されます。法人の場合は、営業利益との合計に法人税(国税)が課され、利益に応じた法人住民税が課税されます。
税金の区分
株式売却による所得は、譲渡所得に区分されます。譲渡所得とは、資産の譲渡により生じた所得で、売却できる株式の種類は、上場株式等と一般株式等に区分できます。
- 上場株式等:日本国内の証券取引所に上場しされている株式
- 一般株式等:中小企業の株式のような非上場株式を指す
株式の譲渡所得、すなわち上場株式等と一般株式等を売却した場合には、申告分離課税が適用されます。申告分離課税とは、他の所得とは分離して税額を計算し、確定申告によって納税する課税方式です。具体的には、一般株式の譲渡所得には確定申告が必須となります。一方で、上場株式の譲渡所得に関しては、源泉徴収を行う特定口座を選択している場合のみ、確定申告が不要になります。それ以外の場合、確定申告が必要となります。
※参照元:
国税庁 タックスアンサー「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」
国税庁 確定申告書等作成コーナー「特定口座とは」
株式売却時にかかる税金の計算方法
譲渡所得の計算は、証券会社を通じて取引する場合、譲渡人(売主)が個人か法人かによって変わってきます。個人の場合は所得税、法人の場合は法人税の対象です。法人税の場合は、税引前当期純利益に株式の譲渡益も含まれているので法人税率を適用すれば完了です。
個人の場合、株式の譲渡所得は申告分離課税となるため最終利益の総所得に税率を掛けるということができません。そこで、まず申告分離課税の計算方法について国税庁 タックスアンサー「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」をもとに解説します。
譲渡所得の計算方法
株式を売却し、得た利益に発生する税金を求めるためには、まず譲渡所得の計算が必要です。上場株式や一般株式の区分に関係なく、譲渡所得は以下の計算式で算出できます。
譲渡価額とは、株式を売却したときに受け取る金額の時価です。取得費と譲渡費用は、株式の購入や売却の際に支払った金額の時価で、必要経費にあたります。
- 取得費:売却した株式を当初購入する際に支払った費用
- 譲渡費用:株式の売却にかかった販売手数料
該当するものは、購入代金や購入手数料などの取得費、売却の際に発生する委託手数料です。
たとえば、100万円で購入した株式を250万円で売却し、必要経費が2万円発生したと仮定します。このとき、計算式にあてはめると以下のようになります(便宜上、購入手数料は取得費に含めます)。
株式売却にかかる税金の計算方法
譲渡所得を計算できたら、その譲渡所得に所得税率を適用して所得税額を求めます。税率は、所得税が15%、住民税が5%です。令和19年までは、復興特別所得税率が発生します。復興特別所得税率は、以下の計算式で求められます。
以下の計算式で所得税額を計算します。
先ほどの譲渡所得の計算で求めた所得額を利用すると以下のようになります。
住民税は以下の計算式で計算します。
以上の計算式より、申告分離課税を選択した場合の納付額合計は300,600円です。
※参照元:国税庁 タックスアンサー「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」
非上場株式の税金の考え方
上場株式の譲渡ではなく非上場株式の譲渡を想定した場合、以下の4つのケースが挙げられます。
- 売主と買主がともに個人
- 売主と買主がともに法人
- 売主は個人、買主は法人
- 売主は法人、買主は個人
それぞれのケースの税金の計算方法について、以下に詳しく解説します。
1.売主と買主がともに個人
想定されるパターンと課税関係は以下のとおりです。
時価 = 譲渡価額 | 時価 > 譲渡価額 | 時価 < 譲渡価額 | |
売主(個人) | ・儲け部分(譲渡所得)が所得税の対象 | ・儲け部分(譲渡所得)が所得税の対象 | ・時価よりも高い部分は贈与税の対象 ・儲け部分(譲渡所得)は所得税の対象 |
買主(個人) | ・課税関係なし | ・差額がみなし贈与として贈与税の対象 | ・課税関係なし |
非上場株式の場合、上場株式や同業種の株式と比較して自社の現状の株価(時価)を算定します。(以降についても同様)
2.売主と買主がともに法人
想定されるパターンと課税関係は以下のとおりです。
時価 = 譲渡価額 | 時価 > 譲渡価額 | 時価 < 譲渡価額 | |
売主(法人) | ・儲け部分(譲渡益)が法人税の対象 | ・儲け部分(譲渡益)が法人税の対象・差額が寄付金課税の対象 | ・儲け部分(譲渡益)が法人税の対象 |
買主(法人) | ・課税関係なし | ・差額(受贈益)が贈与とみなされ法人税の対象・自己株式の取得は、みなし配当部分が源泉所得税の対象 | ・差額が寄付金とみなされ寄付金課税の対象 ・自己株式の取得は、みなし配当部分が源泉所得税の対象 |
みなし配当とは、配当金として剰余金を分配していない場合でも、実質的に剰余金の配当と変わらない性質を持つ場合です。法人税法上は「配当」とみなされ、課税対象になります。
3.売主は個人、買主は法人
想定されるパターンと課税関係は以下のとおりです。
時価 = 譲渡価額 | 時価 > 譲渡価額 | 時価 < 譲渡価額 | |
売主(個人) | ・儲け部分(譲渡所得)が所得税の対象 | ・儲け部分(譲渡所得)が所得税の対象・(額によってはみなし譲渡所得またはみなし配当所得として所得税の対象) | ・差額(一時所得)が所得税の対象 ・儲け部分(譲渡所得)が所得税の対象(時価と資本金等の額によってはみなし配当として所得税の対象) |
買主(法人) | ・課税関係なし | ・差額(受贈益)が贈与とみなされ法人税の対象・自己株式の取得は、みなし配当部分が源泉所得税の対象 | ・差額が寄付金とみなされ寄付金課税の対象 ・自己株式の取得は、みなし配当部分が源泉所得税の対象 |
時価 < 譲渡価額の際に、売主(個人)が買主(法人)の役員だと役員賞与に、従業員の場合は賞与とみなされ、給与所得として所得税の対象となります。特に、役員賞与に該当すると法人税の計算上、損金不算入の適用を受けるため、買主の法人税の課税対象となる金額が増加します。
4.売主は法人、買主は個人
想定されるパターンと課税関係は以下のとおりです。
時価 = 譲渡価額 | 時価 > 譲渡価額 | 時価 < 譲渡価額 | |
売主(法人) | ・儲け部分(譲渡益)が法人税の対象 | ・儲け部分(譲渡益)が法人税の対象・差額が寄付金とみなされる | ・儲け部分(譲渡益)が法人税の対象 |
買主(個人) | ・課税関係なし | ・差額(一時所得)が所得税の対象 | 課税関係なし |
時価 > 譲渡価額の際に、買主(個人)が売主(法人)の役員だと役員賞与に、従業員の場合は賞与とみなされ、給与所得として所得税の対象になります。特に、役員賞与に該当すると法人税の計算上、損金不算入の適用を受けるため、売主の法人税の課税対象となる金額が増加します。
1から4のいずれの場合も、取得価額と時価、譲渡価額を明確にする必要があります。
株式売却時に必要な確定申告の手順と注意点
株式売却時に利益を得た場合の税金はどのように申告するのでしょうか。ここでは、株式売却時の確定申告の手順、方法と注意点について詳しく解説します。
確定申告の手順
個人の場合、確定申告は、原則として利益を得た年の翌年の2月16日から3月15日までに行う必要があります。株式売却の確定申告に必要な書類は以下のとおりです。
- 確定申告書
- 分離課税用の申告書第三表
- 譲渡所得等の計算明細書
- 源泉徴収票(上場株式等を源泉徴収する特定口座で取引した場合)
- 年間取引報告書(証券会社や銀行などから送られる書類)
- 収入金額証明書(一般株式等を取引した場合)
- その他必要な書類(領収書や契約書など)
確定申告の方法は以下の3つがあります。
- e-Tax(国税庁が提供する電子申告・納税システム)
- 持ち込み(税務署や市区町村役場などに直接持っていく)
- 郵送(税務署や市区町村役場などに郵送する)
1.e-Tax
e-Taxを利用する場合は、事前にマイナンバーカードが必要です。また、インターネット環境やパソコンなど周辺環境の整備も必要です。
e-Taxは、ほぼ24時間いつでも申告でき、納付書が自動的に発行されるため作業工程を最小限に抑えられます。
2.持ち込み
持ち込みの場合は、必要書類を用意して、所轄の税務署に提出します。持ち込みを申告を行う場合は、税務職員に相談できることや、納付書の記載がその場でできる点がメリットです。ただし、申告期間中の税務署の窓口は混雑しているケースがあるため、注意が必要です。
3.郵送
郵送の場合は、申告期間中の混雑している税務署へ訪問する必要はなく、申告期限内であればポスト投函で済みます。
確定申告に関する注意点
確定申告の注意点には以下の3つが挙げられます。
- 上場株式等では源泉徴収が行われるため、確定申告が不要な場合があります。確定申告が必要なのは、「譲渡所得がマイナス(損失)である場合・取得費や必要経費を控除したい場合」です。
- 一般株式等では源泉徴収が行われないため、確定申告が必要です。
- 株式売却に伴う損失は、同じ種類の株式売却に伴う利益と相殺できます。たとえば、上場株式等で損失が発生した場合は、上場株式等で発生した利益と相殺できます。一般株式等と上場株式等では相殺できません。
上場株式と一般株式の詳細については国税庁 タックスアンサー「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」で確認することができます。
株式売却時の節税方法とM&Aのタイミング
株式売却益にかかる税金を節約する方法はないのでしょうか。ここでは、株式売却時の節税方法について解説します。
株式売却時の税金を節約する方法には、次の2つの方法があります。
- 配当金や利息所得と併せて総合課税を選択する方法
- 株式交換や株式移転などの非課税措置を利用する方法
それぞれの方法について、詳しく説明します。
1.配当金や利息所得と併せて総合課税を選択する方法
配当金や利息所得を他の所得と合算して納付することで、株式売却に伴う損失を配当金や利息所得と相殺できるという方法があります。
配当金や利息所得は申告分離課税によって個別に課税されますが、総合課税にすることで、他の所得と合算して納付できます。この方法を適用するためには、以下の条件を満たす必要があります 。
- 配当金や利息所得が源泉徴収されている場合は、一般口座であること
- 株式売却に伴う損失が50万円以下であること
- 配当金や利息所得が20万円以下であること
- その他の所得(給与所得や事業所得など)があること
2.株式交換や株式移転などの非課税措置を利用する方法
「M&A(企業の合併や買収)に伴い、株式交換や株式移転などの非課税措置を利用する手法もあります。
M&Aでは、自社の株式を他社の株式に交換したり、他社に譲渡したりします。このとき、一定の条件を満たす場合には非課税措置の適用が可能です。非課税措置とは、株式の譲渡による所得に課税しないことです。
株式交換とは
株式交換とは、自社の株式を他社の株式に交換することです。たとえば、A社がB社の株式を取得して合併する場合、A社の株主はA社の株式をB社の株式に交換します。このとき、A社の株主には譲渡所得が生じません。
ただし、国税庁 タックスアンサー「No.1526 株式交換により株式を譲渡した場合の譲渡所得等の特例」によると、以下の条件を満たす必要があります 。
- 株式交換の目的が合併や事業再編などであること
- 株式交換後も引き続き株主であること
- 株式交換後の株式の時価が株式交換前の株式の時価と同等であること
- 株式交換後の株式を1年間以上保有すること
※参照元:国税庁 タックスアンサー「No.1526 株式交換により株式を譲渡した場合の譲渡所得等の特例」
株式移転とは
株式移転とは、自社の株式を他社に譲渡し、その代わりに他社から現金や債権などを受け取ることです。たとえば、A社がB社に自社の全株式を譲渡し、B社から現金や債権などを受け取る場合、A社に譲渡所得は生じません。ただし、以下の条件を満たす必要があります 。
- 株式移転の目的が合併や事業再編などであること
- 株式移転後も引き続き事業を行うこと
- 株式移転後に受け取る現金や債権などの時価が株式移転前の株式の時価と同等であること
- 株式移転後に受け取る現金や債権などを1年間以上保有すること
まとめ
株式売却に伴う税金は、譲渡所得に対して所得税と住民税が課されます。譲渡所得は、上場株式等と一般株式等に区分されます。上場株式等では源泉徴収が行われる特定口座を利用すれば確定申告が不要です。一般株式等では源泉徴収が行われないため、確定申告が必要です。
確定申告は、原則として翌年の2月16日から3月15日までに行う必要があります。配当金や利息所得と併せて総合課税を選択する方法や、株式交換や株式移転などの非課税措置を利用する方法など、節税方法についても検討しましょう。株式の売却について有利な方法が見つからない方には、レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社に相談することもおすすめです。
M&AならレバレジーズM&Aアドバイザリーにご相談を
レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社には、各領域の専門性に長けたコンサルタントが在籍しています。 デューデリジェンスにも対応しており、M&Aのご成約まで一貫したサポートを提供することが可能です。安心かつ円滑なM&Aを実現します。ぜひレバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社のご利用をご検討ください。