このページのまとめ
- 同族会社は、3人以下の株主や同族関係者が発行済株式の50%超を保有する会社
- 意思決定をスピーディに行なえる点が同族会社のメリット
- 特別規定により税務面が厳しくなる点が同族会社のデメリット
- 特別規定には、経営に深く関わる従業員がみなし役員とされるなどが挙げられる
M&Aを検討している際、「相手先が同族会社でも大丈夫?」と不安に感じている方もいるのではないでしょうか。同族会社には、意思決定をスピーディに行なえるメリットがある一方で、経営者が会社を私物化する可能性が高くなるなどがデメリットです。
本コラムでは、同族会社の判定基準や、メリットとデメリットを詳しく紹介します。また、同族会社に該当する場合の特別規定についても解説しているため、参考にしてください。
目次
「同族会社」とは
「同族会社」とは、特定の少数の株主が経営権を掌握している会社のことです。中小企業で家族経営しているケースなどが具体例として挙げられます。
ここから、同族会社かどうかの判定基準や、「同族関係者」の概要について確認していきましょう。
同族会社かどうかの判定基準
法人税法第2条第10号によると、3人以下の株主並びに同族関係者が、発行済株式または出資の総数・総額の50%超を保有する会社を同族会社と呼びます。対象会社が有する自己の株式または出資は総数・総額の対象外です。
なお、国税庁の解説「2 同族会社」によると、対象の会社が議決権制限株式を発行しているときなどでは、株式数や出資割合で同族会社に該当していなくても、議決権の数で判定しなければなりません。
参照元:e-Gov「法人税法第二条第十号」
参照元:国税庁「2 同族会社」
「同族関係者」とは
「同族関係者」とは、同族会社かどうかを判定するにあたって、3人以下の株主と「特殊の関係のある個人・法人」のことです。
法人税法施行令第4条第1項によると、以下の個人が同族関係者にあたります。
- 株主の親族(配偶者・6親等内の血族・3親等内の姻族)
- 株主と事実婚状態にある人
- 株主の使用人
- 1〜3以外で、株主から受ける金銭などで生計を立てている人
- 1〜3の対象者と生計を一にする人の親族
また、以下の法人も同族関係者です(法人税法施行令第4条第2項)。
- 対象会社の株主の1人が支配している他の会社
- 対象会社の株主の1人と、上記の会社で支配している他の会社
- 対象会社の株主の1人と、上記2つの会社で支配している他の会社
なお、発行済株式・出資の総数・総額が50%を超えるケースなどが「支配」に該当します(法人税法施行令第4条第3項)。
参照元:e-Gov「法人税法第四条」
同族会社のメリット3つ
同族会社のメリットは、以下の3つです。
- 意思決定をスピーディに行なえる
- 事業承継を円滑に進めやすい
- 経営陣にリターンが入りやすく資産を増やしやすい
ここから、各メリットについて詳しく解説します。
1.意思決定をスピーディに行なえる
同族会社は、経営権が一部に集中しており、意思決定をスピーディに行える点がメリットです。親族・家族など関係が深い人同士で経営権を有しているため、同じ方向を向きやすいでしょう。
それに対して、同族会社に該当せず、意思決定に関与する人物が多数存在する会社では、関係者のコンセンサスを取るまでに時間がかかります。
2.事業承継を円滑に進めやすい
同族会社の場合、事業承継の手段として「親族内承継」を選ぶ可能性が高いため、円滑に進めやすい点がメリットです。
後継者候補が何人もいると、突然現経営者が後継者を指名しても納得されない可能性があります。一方、親族から後継者を選ぶ親族内承継であれば、あらかじめ事業承継の準備を進められる上、周囲からの理解も得やすいです。
また、現経営者が相続や贈与の計画を生前に立てておくことで、節税対策もできます。
3.経営陣にリターンが入りやすく資産を増やしやすい
一般的に、同族会社は経営陣がリターンを得やすい構造になっているため、経営者自身の資産を増やしやすい点がメリットです。会社法第361条で取締役の賞与・報酬は定款または株主総会決議で決めることが定められているため、同族会社で経営者が株主を兼ねている場合、比較的簡単に自身の役員報酬を高めに設定できます。
また、配当を自分たちで決められる点もリターンが入りやすい理由です。
参照元:e-Gov「会社法第三百六十一条」
同族会社のデメリット3つ
同族会社のデメリットは、以下の3つです。
- 経営者が会社を私物化する可能性が高くなる
- 後継者選びが難しくなりやすい
- 特別規定により税務面が厳しくなる
ここから、各デメリットについて詳しく解説します。
1.経営者が会社を私物化する可能性が高くなる
オーナーなど一部の人物が経営権を独占し、会社が私物化される可能性がある点が、同族会社のデメリットです。
同族会社の場合、一部の株主が経営権を掌握しているため、行きすぎると健全な会社経営が行われなくなることがあります。万が一経営陣による私的流用などが発覚すると、取引先や金融機関からの信頼の失墜、従業員のモチベーション低下につながるでしょう。
2.後継者選びが難しくなりやすい
事業承継を進めやすい反面、後継者選びが難しくなりやすい点が同族会社のデメリットです。
一般的に、親族(代表例:現経営者の子ども)を後継者とする親族内承継が事業承継の手段として選ばれます。しかし、親族の中にふさわしい後継者がいない場合や、後継者候補に承継を断られた場合などに、後継者選びが難しくなるでしょう。
3.特別規定により税務面が厳しくなる
税法で同族会社に対して特別規定が定められており、税務面が厳しくなる点が同族会社のデメリットです。同族会社の場合、経営者自身が経営権を掌握したり、経営者と関係の深い人物が経営権を独占したりしやすいため、不正防止の観点で3種類の特別規定が設けられています。
特別規定の内容については、ここから詳しく解説します。
同族会社に該当する場合の特別規定3つ
同族会社には、以下の特別規定が定められています。
- 経営に深く関わる従業員はみなし役員と扱われる
- 税務署長が法人税額を決定する場合がある
- 法人税とは別に留保金に対して課税される
ここから、同族会社に該当する場合の特別規定を3つ確認していきましょう。
1.経営に深く関わる従業員はみなし役員と扱われる
特別規定により、肩書が役員でない場合でも、経営の中枢に関わっていると判断された従業員は「みなし役員」として扱われることがあります。「みなし役員」に該当する場合、従業員に対して支払う給与・賞与でも、税務上役員と同様に扱わなければなりません。
国税庁の「No.5200 役員の範囲」によると、同族会社の使用人のうち、同族会社と判断された上位3位以内の株主グループに所属する、その使用人の属する株主グループの所有割合が10%を超えているなどの条件を満たす使用人が対象です。
参照元:国税庁「No.5200 役員の範囲」
2.税務署長が法人税額を決定する場合がある
同族会社が法人税の負担を減らすための取引や計算をした場合、通常の税額計算結果とは関係なく、税務署長に法人税の課税所得や法人税額を決められる可能性があります。
なぜなら、法人税法第132条に「法人の行為・計算で法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、行為または計算に関わらず、税務署長の認めるところにより、その法人にかかる法人税の課税標準もしくは欠損金額または法人税の額を計算できる」という趣旨の規定があり、その対象となる法人として「内国法人である同族会社」が掲げられているためです。
参照元:e-Gov「法人税法第百三十二条」
3.法人税とは別に留保金に対して課税される
特定同族会社に該当する場合、一定の控除額を超える金額の留保があると判断されると、留保金に対して通常の法人税とは別に課税されます。その場合の税率は、以下のとおりです(法人税法第67条)。
金額 | 税率 |
年3,000万円以下の部分 | 10% |
年3,000万円超1億円以下の部分 | 15% |
年間1億円超の部分 | 20% |
なお、被支配会社に該当し、当期末における資本金額・出資金額が1億円以下で、他の法人と完全支配関係にあるなどの各種要件を満たす普通法人を特定同族会社と呼びます。非支配会社とは、会社の株主、もしくはその同族関係者が、発行済株式または出資の総数・総額の50%超の金額の株式や出資を有する会社のことです。
参照元:e-Gov「法人税法第六十七条」
まとめ
同族会社とは、3人以下の株主並びに同族関係者が、発行済株式または出資の総数・総額の50%超を保有する会社のことです。また、同族関係者は3人以下の株主と「特殊の関係のある個人・法人」を指します。
同族会社は、意思決定がスピーディな点がメリットです。経営者が会社を私物化する可能性が高くなるなどのデメリットもあるため、M&Aの候補先に同族会社が含まれる場合は注意しましょう。M&Aの相手先が同族会社に該当するかわからない場合は、専門家に相談することがポイントです。
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