株式移転の手続きをわかりやすく解説!メリットやスケジュール例も紹介

2023年11月15日

株式移転の手続きをわかりやすく解説!メリットやスケジュール例も紹介

このページのまとめ

  • 株式移転とは組織再編の手法の一つで、既存会社が新会社に全株式を取得させること
  • 株式移転の目的は、経営統合やホールディングス化
  • 株式移転は最短で約2ヶ月で手続きが完了するスケジュールになる
  • 株式移転の手続きは、会社法や独占禁止法に従って進める必要がある
  • 株式移転の手続きは煩雑なので、専門家のアドバイスをもらうことがおすすめ

「株式移転の手続きはどのように進めればよい?」とお悩みの経営者の方もいるのではないでしょうか。
株式移転の手続きは複雑ですが、全体の流れを把握しておくことでスムーズに株式移転を実現できます。
この記事では、株式移転の手続きの流れやスケジュール、注意点について詳しく解説します。
また、株式移転のメリット・デメリットや、株式交換との違いについても触れていますので、これから株式移転を検討している場合はぜひ参考にしてください。

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株式移転とは

株式移転とは、組織再編のスキームの一つです。
株式会社が新会社を設立し、1社または複数社の既存株式をすべて新会社に取得させる手続きです。
株式移転を行うことによって、新しく設立された完全親会社と親会社に株式をすべて移転した完全子会社というグループの構図をつくることができます。

株式移転の目的は、複数の株式会社を経営統合することか、もしくは、株主と経営陣とを分離させて持株会社化することのいずれかです。

複数の株式会社で株式移転を行う際、すべての株式を新しい親会社に取得させることで、既存の会社を組織として残しつつ、実質的な経営統合が可能になります。

一方、1社のみで株式移転を行う場合は、既存の経営陣を子会社に残したまま、新しい親会社が持株会社(ホールディングカンパニー)となるのが特徴です。
親会社は株主として機能するため、子会社の監視役となり、健全経営を目指すことにつながります。

株式交換との違い

株式交換とは、既存の会社同士で親会社と子会社の関係を構築するため、子会社となる会社の株式を、親会社となる会社にすべて取得させる方法です。

最終的には親会社と子会社の関係を新たに構築するという点で、株式交換は株式移転とよく似ています。
大きく違うのは、株式移転における親会社が新しく設立された新会社であるのに対して、株式交換では既にある企業が親会社となって、子会社の株式を取得するというところです。

株式交換の手法は、グループ内の企業を完全子会社化する場合や、会社の譲受をしたい場合に用いられます。

関連記事:株式移転とは?手続きの流れやメリット、株式交換との違いなどを解説!

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株式移転のメリットとデメリット

株式移転には、以下のようなメリットとデメリットがあります。

メリットデメリット
・既存の会社組織を維持できる
・社員のモチベーションが維持できる
・親会社は株式取得の資金が不要
・経営統合がスムーズにできる
・要件を満たせば課税の繰り延べなどの特例措置がある
・少数株主を排除できる
・手続きが多岐にわたるため複雑
・株式移転に反対する株主からの株式買取請求への対応が必要
・買い手企業の株主構成が変わり、意思決定フローが変動する可能性がある
・株価が下がるリスクがある

株式移転では元の会社組織が維持されるため、既存の社員が「会社が買い取られた」という意識をもつことも少なく、ほとんどのケースでモチベーションを維持されます。
親会社が株式取得のために資金を用意する必要がないこともメリットです。
一方で、手続き関係が煩雑なことが大きなデメリットです。
株式移転を考える際は、早い段階で専門家に相談するとスムーズでしょう。

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株式移転の手続きのスケジュール例

株式移転は手続きにやや時間がかかります。大まかな流れをつかむために、ここでは株式移転のスケジュール例を紹介します。

今回は、株式移転の手続き完了を6月1日と想定しました。
株式移転の手続きにかかる期間は、最短でおよそ2ヶ月です。したがって効力発生日を6月1日とした場合は、4月上旬からの手続きを開始する必要があります。

それでは、具体的なスケジュールを見てみましょう。

日程完全子会社完全親会社
4月上旬株式移転計画を立てる
関係者間の調整・交渉
4月中旬株式移転計画の内容確認
株式移転の準備開始
4月下旬取締役会による株式移転の承認決議
取締役会による株主総会招集の決定
事前開示書類の備置
5月上旬株主総会招集通知の発送
反対株主の株式買取請求通知発送
5月下旬株主総会における特別決議
株式移転計画の承認
6月1日(効力発生日)株式移転による変更登記の申請
※必要な場合のみ
会社設立登記
6月1日以降事後開示書類の備置事後開示書類の備置

完全子会社側、完全親会社側の手続きの詳細については、次の項目で詳しく解説します。

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株式移転の手続きの流れ8ステップ

ここでは、株式移転の手続きの流れを8つのステップに分けて解説します。
上述の、株式移転に関わる手続きのスケジュールと照らし合わせて確認してください。

1.株式移転計画を作成する

株式移転にあたっては、会社法で株式移転計画書の作成が定められています。
最初の段階で株式移転計画を立てて、株式移転完了までのスケジュール感を掴み、各方面との調整を開始しましょう。

会社法で株式移転計画書に記載することが定められている項目は、以下のとおりです。

  • 完全親会社の目的、商号、本店の所在地および発行可能株式の総数
  • 完全親会社の定款において定める事項
  • 完全親会社の設立時の取締役の氏名
  • 設立時の会計参与、監査役、または会計監査人の氏名もしくは名称(完全親会社が会計参与設置会社、監査役設置会社、または会計監査人設置会社である場合)
  • 株式移転において完全子会社の株主に対して交付する、完全親会社の株式の数、または算定方法および割当てに関する事項
  • 完全親会社の資本金および準備金の金額に関する事項
  • 完全子会社の株主に対して交付する社債などの種類、金額、内容、または算定方法および割当てに関する事項
  • 完全子会社の新株予約権者に対して交付する新株予約権の内容、または算定方法および割当てに関する事項

上記が会社法で定められている必要事項です。
抜け漏れがないよう、専門家のアドバイスを受けながら作成すると安心です。
また、上記のほかに「会社の設立日」「株式移転計画の計画変更・中止」「剰余金の配当」などに関する事項は任意で記載します。

2.事前開示書類を備え置く

事前開示書類とは、株式移転に先立って完全子会社の本店に用意しておく、株式移転の詳細について記された開示書類です。

事前開示書類で定める事項には、以下のような内容があります。

  • 株式移転計画の内容について
  • 株式移転の対価の相当性に関する事項
  • 株式移転にあたっての新株予約権の相当性に関する事項
  • 完全子会社の重要性の高い財産の処分、債務処理等に関わる計算書類等

株式移転が取締役会で承認された後、株式移転計画備置開始日までに事前開示書類を準備し、株式移転効力発生日の6ヶ月後まで、備え置くことが決められています。

株式移転計画備置開始日は、以下のうちいずれか早い日です。

  • 株主総会の2週間前
  • 反対株主への公告日もしくは通知日
  • 債権者保護手続き公告日もしくは通知日
  • 新株予約権に関する公告日もしくは通知日

事前開示書類は、株主や債権者の閲覧請求に対して営業時間内であればいつでも応じる義務があります。
また、株主や債権者が希望すれば、実費を請求者が負担することを条件に、抄本の交付も可能です。

3.株主総会で承認を受ける

株式移転を行うためには、完全子会社となる予定の会社で株主総会を開き、特別決議によって株主移転の承認を受ける必要があります。
株主総会の招集通知は、株主総会開催日の2週間前までに発送することが必要です。
ただし、書面投票や電子投票を伴わない株主総会となる場合、完全子会社となる会社が非公開会社であり、かつ、取締役会が設置されていない会社であれば、招集通知の発送期限は株主総会開催日の1週間まででよいとされています。

4.債権者保護手続きを行う

債権者保護手続きとは、債権者の利益を守ることを目的に、異議申し立ての機会を設けるための手続きのことです。
株式移転においては、完全親会社が完全子会社の新株予約権付社債を承継した場合に限り、債権者保護手続きを行う必要があります。

株式移転にあたって条件に該当する場合は、官報公告や個別催告を行い、債権者から一定期間(1ヶ月以上)にわたって異議を受け付けます。
期間内に債権者から異議申し立てがあった場合は、債権者に対して弁済が義務付けられます。
異議申し立てがなかった場合、期日を過ぎた時点で同意したとみなされるため、弁済手続きは不要です。

5.反対株主からの買取請求に応じる

完全子会社となる予定の株券発行会社において、株式移転に反対する株主は、会社に対して株券の買取請求を行うことができます。
この場合、株主側は株主総会の開催前に、株式移転計画に反対する旨と株式数を会社に通知し、さらに株主総会で反対の意思を明確にします。

買取請求があったら、株主と協議して株式の買取価格を調整しましょう。
会社側と株主側が合意に至って買取価格が決まったら、効力発生日から60日以内に買取分の支払いを行ってください。

6.証券の提出手続きを行う

完全子会社化する予定の会社が新株予約権を発行している場合は、証券の提出手続きを行います。

株式移転の完了後に保有者に新株予約権を行使されると、親会社が100%子会社の株式を取得できなくなってしまいます。
証券の提出手続きは、それを防止するために必要な手続きです。
公告および通知の結果、証券の提出を受けた場合は、会社側から対価を支払います。
期日までに証券が提出されなかった場合、金銭等の対価の支払い拒否が可能です。

7.登記申請を行う

株式移転の準備がすべて整ったら、新しく設立する完全親会社の登記申請を行います。
また、必要に応じて親会社と同時に完全子会社側でも変更登記申請をしてください。

子会社側の変更登記が必要なケースは、新株予約権を完全親会社に移転した場合などです。

株式移転は、親会社の登記申請によって効力発生が認められます。したがって登記申請の日が、すなわち株式移転の効力発生日です。

8.事後開示書類を備え置く

事後開示書類は、完全親会社と完全子会社が共同作成した、株式移転の詳細について記された書類です。

事後開示書類には以下のような内容を記載することが定められます。

  • 株主移転の効力発生日
  • 完全親会社が取得した完全子会社の株式総数
  • 債権者保護手続き・債権者異議手続きの経過
  • 新株予約権の権利者・反対株主による買取請求の経過
  • その他重要事項等

また事後開示書類は、子会社の関係者などが常に参照できるよう、効力発生日から6ヶ月にわたってそれぞれの本店に備置しなければなりません。

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株式移転の手続きに関する注意点

株式移転の手続きのなかには、独占禁止法に沿って公正取引委員会への届出が必要な場合があります。
公正取引委員会への届出を必要とする株式移転の条件は、以下のとおりです。

  • 完全子会社化する株式会社のうち、いずれか1社の国内売上高の合計額が200億円を超える
  • 他のいずれか1社の国内売上高の合計額が50億円を超える

上記の条件を2つとも満たす場合は、株式移転が独占禁止法に抵触する可能性もあると考えられています。
規模の大きな株式移転では申請事項が増えるため、漏れのないよう手続きを行いましょう。

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まとめ

株式移転は組織再編やグループ企業化に便利な方法です。
会社組織を維持したまま子会社化できたり、新株を発行すれば資金調達なしで実施できたりするなど、多くのメリットがあります。
一方、手続きが煩雑であることはデメリットです。周到な準備のないままスムーズに行うのは難しいと考えられます。
株式移転を利用した企業再編を考えている場合は、事前に手続きの全体的な流れを把握したうえで、余裕をもったスケジュールで計画を立てましょう。

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