時価総額の計算方法とは?投資家のための「時価総額」の活用方法

2023年11月8日

時価総額の計算方法とは?投資家のための「時価総額」の活用方法

このページのまとめ

  • 時価総額とは、会社の大きさや価値、将来性を示す重要な指標である
  • 時価総額=株価×発行済み株式数で計算できる
  • 時価総額が高い会社ほど市場において「価値のある企業」と評価されている
  • 時価総額を理解できれば株価の適正水準が見積もれる
  • 時価総額はM&Aにおける買収価格の目安としても利用される

時価総額は現在の企業価値を測る上で重要な指標の1つであり、計算方法は株価×発行済み株式数です。時価総額の計算方法はM&Aの買収価格においても利用されます。本稿では、時価総額の概要について説明し、理解することで得られるメリットや活用方法、TOPIXとの関係性なども紹介しながら計算方法を解説します。

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時価総額とは何か

時価総額は、企業の評価や規模を示す重要な数値で、株価を発行済株式数でかけて求めることができるもので、企業の業界での位置や市場からの評価を理解するのに役立ちます。

株価は需要と供給によって日々変動します。従って、時価総額も日々変わります。時価総額が大きいほど企業の総合的な価値が高いとされ、同じ株価でも発行済株式数が多い企業は、時価総額が高くなります。そのため、時価総額を比較することで企業の規模や市場での評価を把握できます。

以下2つの企業を例にとり、次章で比較・解説します。

  • 企業A:1株2,000円の株式を100万株発行
  • 企業B:1株200円の株式を10万株発行
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時価総額の計算方法

時価総額は以下の計算式で計算されます。

時価総額=株価×発行済み株式数

企業Aの時価総額:1株2,000円 × 100万株 =20億円
企業Bの時価総額:1株200円 × 10万株 =2,000万円

この場合、企業Aの時価総額が20億円で大きく、企Bの時価総額が2,000万円と比較的小さいことがわかります。このケースでは企業Aは規模が大きいとされ、市場で高い評価を受けている可能性が高いです。

株式投資の初心者は、しばしば株価が高いか低いかだけで企業価値を決めてしまいがちですが、実際には時価総額の大きさを考慮することが重要です。

企業が高い時価総額を維持できると、有望な人材が集まり、企業の成長が促進される好循環が生まれることが期待されます。

発行済株式総数を無限大まで増やせば時価総額が増えるのではと考えるかもしれませんが、発行済株式総数は実数である必要があるためそれは不可能でしょう。また、株式の新規発行には、株価の下落リスクが伴います。これは、すでに株式を保有している株主の持分が減少するためです。

例えば、発行済み株式総数が100万株で、ある株主が30万株所有している場合、その株主の持株比率は30%となります。しかし、新たに10万株の株式を発行すると、発行済み株式の総数が増加し、その株主の持株比率は約27%に減少します。

持株比率の減少は既存の株主に株を売却するきっかけとなることがあり、その結果、株価の下落が起こる可能性があることを理解しておくと良いでしょう。

企業価値との違い

時価総額と混同されがちな用語に企業価値があります。どちらも企業の大きさや価値を測る指標です。

企業価値は、事業の価値やキャッシュ・フロー、株式や資産などを総合的に考慮して判断します。一方、時価総額は株価にそのまま株式の総数をかけて計算するため、会社の借金などの負債は含まれていません。

これに対し、企業価値については一般的に以下の計算式が成り立ちます。

企業価値=時価総額+有利子負債

時価総額は株主の持つ株式の価値に関する指標であり、株式価値であるとも言えます。企業価値と時価総額(株式価値)の主な違いは、会社の負債を含むかどうかです。

PER(株価収益率)との違い

時価総額と同様に、企業の価値を語るときによく使われる指標にPERがあります。

PER=株価÷EPS

PER(ピーイーアール、またはパー)とは、”Price Earnings Ratio” の略で、株価収益率を指します。時価総額を企業の純利益で割っても同じように求められ、時価総額と関連してよく用いられます。時価総額とPERは、いずれも企業の価値を評価する指標です。

主な違いは、時価総額が企業の規模や価値を示すのに対し、PERは株価の割高感や割安感を示すものであることです。PERの値は株価が1株あたりの純利益の何倍になっているかを指します。
一般的に、PERが日本取引所グループ(JPX)の公表する規模別・業種別の平均よりも高ければ、割高とされ、逆に低ければ割安と見なされます。

関連記事:企業価値とは?計算方法や高めるための4つの方法をわかりやすく解説

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時価総額からわかること

この章では時価総額からわかることを解説します。

企業規模や市場評価がわかる

企業の規模や価値を知るためには時価総額が重要です。時価総額を見ることで、企業の大きさがわかります。また、株価は日々変動するため、その変動を元に企業価値や株式市場での評価も読み取ることができます。

株価は投資家の需要と供給によって変動します。したがって、企業への期待が高まれば株価は上がり、逆にネガティブな要因があれば株価は下がります。同じ企業の時価総額の推移を見るだけでも市場でどのように評価されているのかや、市場評価の変化がわかります。

株価が順調に上昇し、発行済み株式数が増える場合、時価総額も増加します。したがって、時価総額が大きい企業は一般的に市場で信頼され、人気があると判断できます。

また、同じ業界の企業の時価総額を比較することで、各企業の相対的な価値を把握できます。ただし、たとえ株価が高い企業でも、発行済み株式数が少なければ、時価総額は低くなることがあります。株価だけで判断せず、時価総額を比較することが企業を分析する鍵です。この時価総額は国内外の企業を比較する際にも有用です。

さらに、時価総額が高い企業は、株式が多く市場で流通していると判断され、資金を調達しやすくなります。株式の売買も活発であるということは、企業買収に対する防御策として機能することもあります。

株価の適正水準がわかる

時価総額を評価基準の1つとして株式を分析するスキルを身につけると、『この業界の企業で、この程度の規模で、この利益を出すなら、株価はこんな水準が妥当だろう』という判断ができるようになります。

さらに、時価総額などの適切な指標を使って銘柄を選ぶ力を養うことで、『株価はこれくらいまで上昇するだろうから、売るタイミングは株価が〇円に達したとき』などと予測できるようになります。

時価総額の理解を深めることにより適正な水準を見立てることができるため、将来の成長が期待される銘柄を見つける能力も向上するでしょう。

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TOPIXと浮動株・時価総額の関係性|市場動向を理解する

株式市場の規模を比較する際にも時価総額を活用することがあります。例えば、東京証券取引所のプライム、スタンダード、グロースの各市場の企業の時価総額は、日本取引所グループの公式ウェブサイトなどで確認できます。

これらは通常、上場企業の時価総額を合計して算出しますが、発行済み株式数と上場株式数が異なる企業も存在するため、株価と上場株式数を掛けて算出する方法もあります。市場全体の時価総額の変動を観察することで、日本経済の大まかな動向を理解する手助けにもなります。

TOPIXは浮動株によって算定される

東京市場全体の状況や変化を理解する上で役立つ指数がTOPIX(東証株価指数)です。ニュースなどでよく日経平均株価と一緒に取り上げられます。日経平均株価は日本経済新聞社が発表している株価指数で、東証プライム市場に上場している代表的な225銘柄の平均株価を計算したものです。

一方、TOPIXは、東京証券取引所プライム市場に上場する全銘柄を対象にして計算され、公表される株価指数のことです。

以前は、東証1部に上場する全ての銘柄をカバーし、各銘柄の浮動株式の市場価値を合算して算出されていました。しかし、2022年4月4日の新市場区分の実施に伴いTOPIXも見直されました。構成銘柄について市場区分とは別に評価され、市場の代表性や投資対象としての機能性の向上を目指すとされています。

TOPIXを含む多くの株価指数は、浮動株時価総額加重方式を使って計算されています。この方法では、市場で取引されやすいと考えられる株式を「浮動株」とし、その株式が株価指数内で占める割合に基づいて、指数内の構成銘柄のウェイト(重要度)を計算します。

浮動株への対比として「特定株」や「固定株」と呼ばれるものがあり、創業者一族や企業の役員などの大株主が所有している株式を指します。これらの株式は市場での流通が少ないため、TOPIXの計算には含まれません。

TOPIXは市場全体の動向を把握しやすい

TOPIXは、1968年1月4日を基準にしており、この日の時価総額を100として算出しています。TOPIX自体は東京証券取引所が公表しています。日経平均株価と比べると、東証プライムに上場するすべての銘柄を対象にしているため、市場の変動を把握しやすいと言えます。ただし全ての銘柄を対象にしているため、時価総額の大きな株式に大きな変動があった場合、その影響を受けやすい側面もあります。

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時価総額の活用方法

1つは株式投資における活用方法です。時価総額の計算方法を理解すれば、投資対象の企業の規模が把握できます。これに加えて、銘柄選定に役立つ指数と組み合わせることで、将来の株価動向の分析が可能になるでしょう。ただし、これを成功させるには、企業の実際の価値を正しく評価する能力が重要です。そのためには、さまざまな指標を組み合わせて総合的に判断する必要があります。

株式投資のベテラン投資家たちの中には、時価総額を初めに見て、そして最後にまた見るというアプローチを取る人が多いようです。

最初に時価総額を見ることで、どの銘柄に投資するかを絞り込むスタートラインに立つことができます。その後、絞り込んだ銘柄を株価やさまざまな指標を使って分析し、「これが有望な銘柄なのか」「どのタイミングで売買すべきか」などを考えていくわけです。

そして最終的に、決定に迷う時や確認が必要な時に、時価総額を再度確認するというアプローチです。時価総額は、株式投資初心者向けの基本的なガイドラインとして使われるだけでなく、プロの投資家たちも判断に欠かせない指標として活用しています。

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時価総額が高くなることのメリット

時価総額が高くなることによって得られるメリットについて説明します。

信頼度向上

時価総額が高い企業は、通常、良好な業績を残し、多くの純資産を有していることから投資家からの信頼度と期待度が高まります。株価が上昇しやすくなるため、株式を通じた資金調達も効果的に行うことができ、経営の安定が促進されます。

ただし、企業自身が時価総額を偏重して経営を行うと問題が生じる可能性もあります。政治状況、経済状況、災害、合併先の不祥事などの外部要因が時価総額に影響を及ぼすことも考えられ、予測できない要因に経営が大きく左右されることになりかねないためです。

自社株買いやM&Aを通じて、株価や発行株式数をある程度コントロールできる場合もありますが、完全にコントロールすることは難しいと言えます。

人材確保の競争力向上

求職者は企業価値や将来性、安定性などを考慮して就職先を選びます。時価総額が高い企業は認知度が高まり、求職者は将来性や安定性のある企業と判断するでしょう。このため、優れた人材を引き寄せることができます。優秀な人材が集結すれば利益が向上し、企業価値や時価総額が増加する要因となるでしょう。

M&A交渉時の優位性獲得

高い企業価値は、経営戦略の一環としてのM&A(合併・買収)を有利に進める要因として挙げられます。M&Aは事業の拡大や経営の戦略的展開のために利用されますが、その際、高い時価総額を持つ企業は交渉において強い立場を築くことができます。

この背景には、高い企業価値を持つ企業は市場からの信頼が高く、その結果として資金調達の容易さや交渉の際の信用力が増すためです。さらに、自社の強固な財務状況やブランド力を背景に、他社との交渉時に有利な条件を引き出すことが可能となるため、M&Aの成功確率が高まるのです。

金融機関審査時の評価向上

利益を上げている優良企業と認識されることで、金融機関からの融資を受けやすくなります。融資の可否や金額は企業の返済能力を考慮して決定されますが、時価総額もその検討材料となります。

時価総額が高いということは、投資家や市場がその企業を高く評価しているという証拠であり、企業の将来的な成長や安定性を示唆しています。 
時価総額が高いほど融資の際のリスクが低いと評価され、金融機関の審査において優遇される可能性があります。

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まとめ

本稿では時価総額について説明してきました。時価総額は企業の規模や価値、将来性を示す指標で、その計算式は「株価 × 発行済株式数」です。

市場の株価や発行株式数によって変動するため、時価総額の高い企業は株式市場で高い評価を受け、金融機関や投資家からも信頼されることが多いです。時価総額はM&Aにおける買収価格の目安としても利用されます。M&Aの方法や時価総額の調査方法を知りたい場合は、専門のM&A会社が役立つ情報を提供しています。

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