このページのまとめ
- 株式買取請求権は株主が所有する株式を公正な価格にて会社に買い取ってもらう権利
- 株式買取請求権には単元未満株式買取請求権と反対株主の株式買取請求権がある
- 単元未満の株式を保有している人は株式買取請求権を行使可能である
- 会社の特定の行動に反対の株主は株式買取請求権を行使可能である
- 株式買取請求権の行使の手続きはやや複雑なので、株主と会社双方が理解しておくべき
株式買取請求権は、株主が所有する株式を公正な価格で会社に買い取ってもらう権利です。株式買取請求権は会社から株式買取請求権を通知・公告するところより始まります、この記事では株式買取請求権を行使できる場合の流れもまとめていますので是非参考にしてください。
目次
株式買取請求権とは
「株式買取請求権」とは、特定の状況下で株主が持つ株式を適正な価格で発行会社に買い取ってもらう権利を指します。
この権利は、単元未満株式の買取請求と反対株主の株式買取請求に分類できます。
次章以降それぞれ解説しますが、より詳しく知っておくべきなのは重大な決議に関して行使される「反対株主の株式買取請求」と言えます。
そのため、本記事では主に反対株主の株式買取請求について解説します。
株主買取請求権の種類
前述の通り、株式買取請求権には下記2種類があります。
- 単元未満株式の株式買取請求権
- 反対株主の株式買取請求権
それぞれを解説します。
単元未満株主の株式買取請求権
「単元未満株」とは、株式市場で取引可能な最小単位に達していない株式を指します。たとえば、株式の取引単位が100株の場合に99株を所有しているケースでは、この99株は単元未満株になります。
単元未満株を持っている人は、会社に株式を買い取ってもらうよう請求可能です。
反対株主の株式買取請求権
「反対株主の株式買取請求権」とは、特定の行動(たとえば M&A 取引など)を会社が行う際、その行動に反対する株主が、自分の持つ株式を会社に買い取ってもらうことを要求できる権利です。
非上場会社の場合、M&Aなどの行為に反対する株主は、株式買取請求権の行使が可能です。
上場会社では、株主が反対の意思を持つ場合、市場で株式を売却することもできますが、大量に売却することで株価が下がる可能性があります。一方、株式買取請求権を行使し、会社に買取を要求する場合、売却価格が下がる心配はありません。
なお、M&A 取引が発生した場合でも、全株主がいつでも株式買取請求権の行使が可能というわけではありません。実際に、株式買取請求権の行使が可能なのは、M&A 取引に反対する「反対株主」のみです。
反対株主は、株主総会が開かれる際に、あらかじめ会社に反対する意向を知らせる必要があります。そして、株主総会に出席し反対の投票を行うことで、株式買取請求権の行使が可能です。
開催される株主総会で議決権を行使できない株主の場合、通知・投票は必要ありません。また、組織再編に際して株主総会が不要な場合、全株主が株式買取請求権を行使可能です。
行使されるケース
反対株主の株式買取請求権が行使可能な主なケースは以下の通りです。
- 組織再編
- 一定の定款変更
- 事業譲渡など
組織再編
組織再編を行う場合、関連する会社の株主全員に対して、合併・会社分割・株式交換・株式移転などの場合、一部の場合を除いて株式買取請求権が行使可能です。
一定の定款変更
以下の定款変更を会社が実施する場合、反対株主の株式買取請求権が行使可能です。
- 株式に譲渡制限を付ける
- 種類株式が発行されている場合に特定の種類の株式に譲渡制限を付ける
- 種類株式として全部取得条項を付ける
事業譲渡など
事業の全部または重要な一部の譲渡(ただし、総資産額が20%超の場合に限る)や他社の事業の全部の譲渡または賃貸、経営の委任などの場合には、反対株主の株式買取請求権を行使可能です。
反対株主の株式買取請求権行使の流れ
株式買取請求権を行使する手順は次の通りです。
- 会社が株式買取請求権を通知・公告
- 株主の反対通知
- 株主総会における反対票の投票
- 株式買取請求権の行使
- 株式買取価格の協議
それぞれ解説します。
1.会社が株式買取請求権を通知・公告
株式買取請求権を行使するにあたり、会社は効力発生日の20日前までに、関連する株主に対して通知するか公告を行わなければなりません。ただし、株主総会の招集通知に必要な情報が含まれている場合、株式買取請求に関する通知として代用可能です。
そのため、株主総会の招集通知を法定期限よりも早く行うという対応が一般的です。
2.株主の反対通知
株式買取請求権を行使したい場合、株主は、事前に会社に対して書留などで反対の意思を通知する必要性があります。
ただし、開催される株主総会での議決権がない株主や、株主総会が開催されない場合は異なります。議決権がない株主は会社に対して事前に反対の意思を通知する必要はありません。また、株主総会が不要な場合でも、株主は会社に予め反対意思の表明は不要です。
3.株主総会における反対票の投票
株式の買取請求権を行使する時には、実際に株主総会でも反対の投票をしなければなりません。ただし、株主総会が行われない場合や、株主総会での議決権がない株主の場合はこの規則は適用されません。
つまり株主は、まず事前に反対の意思を通知し、それに加えて株主総会で反対票を投じるという2つの段階を踏む必要があります。
4.株式買取請求権の行使
株式の買取請求を行う場合、一定の場合を除き、その効力発生日の20日前から前日までの間に行う必要があります。
株主は、株主総会で反対票を投じた後、株式買取請求権を行使します。
5.株式買取価格の協議
株式買取請求権の行使後、株主と会社は協力して株式の買取価格を話し合い、「公正な価格」で買い取りが実施されます。
「公正な価格」とは
株式買取請求権が行使された際、会社が株式を買い取る価格は「公正な価格」として定義されています。
ただし、「公正な価格」の具体的な算定方法は、会社法に明確に規定されていません。
通常の場合、株式買取請求権の効力が発生する時点での株価が基準となります。また一般的には、株価が組織再編行為などによって下がった場合にはその下落は考慮しない価格に、逆に、組織再編行為によって株価が上昇した場合にはその上昇を反映した価格が基準とされています。
まとめ
本稿では、株式買取請求権の適用ケースや手続きの進行について解説しました。
株式買取請求権は、所有している株式を会社に買い取ってもらう権利ですが、会社の経営方針への反対を表明する手段としても利用されます。株式買取請求権の行使には条件があり、手続きもやや複雑ですので、株主と会社双方がしっかり理解しておくことが重要です。
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