事業譲渡には登記は必要?提出書類や手続きの流れについても解説

2023年10月27日

事業譲渡には登記は必要?提出書類や手続きの流れについても解説

このページのまとめ

  • 事業譲渡とは企業の事業を全部、または一部譲渡することである
  • 事業譲渡をしても、経営者や役員、事務所住所が変わらなければ基本的に商業登記は不要
  • 事業譲渡にともない不動産の所有権が移る場合は、所有権移転登記が必要
  • 事業譲渡後に商号や屋号を引き続き使用する場合は、免責登記をする必要がある

「事業譲渡をしたら登記が必要?」と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
事業譲渡では基本的には商業登記は不要です。しかし、条件によっては商業登記やその他の登記をする必要があります。

今回は、事業譲渡を実施する際に必要となる登記の種類や手続きの流れ、必要書類などについて解説します。このコラムを参考にして、自社の事業譲渡において必要な登記手続きを行ってください。

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事業譲渡とは

登記に関する解説に入る前に、事業譲渡がどういった手法なのかについて解説します。

事業譲渡の定義

事業譲渡とは、企業が営む事業の全部、あるいは一部を他企業へ売却することを指します。M&Aの代表的な手法であり、企業自体を売買するのではなく対象となる事業のみ譲渡するのが特徴です。事業を譲渡する際には、設備や在庫などの有形資産の他、従業員や社内に蓄積されたノウハウなどの無形資産も含め譲渡します。
譲渡対象の事業が選べる点と経営権が譲渡側に残る点が、株式譲渡や企業の分割・合併とは異なります。

事業譲渡には「全部譲渡」と「一部譲渡」の2種類があります。
全部譲渡は経営権はそのままに、企業の事業すべてを他社へ売却します。一方、一部譲渡は特定の事業のみを売却できるため、経営を見直して運営する事業を絞る場合によく行われます。

事業譲渡のメリットとデメリット

事業譲渡のメリット・デメリットは、以下の表のとおりです。

メリットデメリット
売り手側・売りたい事業だけを譲渡できる
・経営権が残り、法人格を存続できる
・負債があっても譲渡先を見つけやすい
・譲渡にまつわる手続きが煩雑である
・今後の事業内容が一定期間制限される
・事業を譲渡し負債だけが残る場合がある
買い手側・必要な事業だけを購入できる
・債務を引き継がず、事業のみを購入できる
・新規事業を始めやすい
・譲受にまつわる手続きが煩雑である
・許認可は引き継げない
・消費税込みの費用がかかる

次に、事業譲渡における商業登記の要否について解説します。

関連記事:M&Aにおける事業譲渡とは?メリット・デメリット、手続き・ポイントなどを解説

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事業譲渡では商業登記は不要

事業譲渡は、会社の設立ではなく事業資産の売買であるため、基本的には商業登記をする必要はありません。社名・所在地・社長・役員情報などに変更がなければ、すでに商業登記している情報のまま変更は不要です。

ただし、事業譲渡を行った場合に、商号の変更があったり、会社の所在地が変更になったりした場合は商業登記が必要となります。どのケースに当てはまるかを確認し、しかるべき対応をしましょう。

なお登記とは、個人または法人の権利や義務を、公開された帳簿に記載することです。
商業登記とは、商法や会社法において「登記すべき」と定められた企業情報を商業登記簿に記載して公に示すことを指します。商業登記の目的は、どのような企業で誰が社長・役員か、資本金はいくらかなどの情報を取引先が得られ、安心して取引できるようにすることです。通常、会社を設立する際には必ず企業情報を商業登記することになります。

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事業譲渡で所有権移転登記が必要になることがある

事業譲渡において譲り渡す対象に土地や建物などの不動産が含まれている場合、所有権移転登記が必要です。
所有権移転登記とは、不動産の所有権が移った際に所有者が誰かを証明するための手続きです。主に「不動産の売買を行ったとき」「不動産を贈与されたとき」「不動産を相続したとき」に行います。

所有権移転登記をして不動産の所有者を明確にすることによって、不動産の所有権を巡る争いを防げます。

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事業譲渡の所有権移転登記に必要な書類

事業譲渡の所有権移転登記は、書類を揃えて企業の所在地を管轄する法務局に提出します。
必要な書類は原則、以下の7種類です。

  • 登記申請書
  • 登記原因証明情報
  • 譲渡会社の登記識別情報
  • 譲受会社の住所証明情報
  • 株主総会議事録
  • 譲渡会社の印鑑証明書
  • 固定資産税評価証明書

事業譲渡は株主総会の特別決議が必要な場合があり、その際には議事録を「所有権移転登記」の申請に提出することになっています。「登記識別情報」に関しては登記済権利証でも構いません。

登記原因証明情報とは 

登記原因証明情報は不動産の権利が移った際の登記申請に必要な書類です。どのような権利の変動があって登記の申請をしているのかを証明するものであり「登記の原因となった事実又は法律行為とこれに基づき現に権利変動が生じたことを証する情報のこと」(引用元:法務省)と定義されています。
登記原因証明情報には、以下のような項目を記載します。

  • 登記の目的
  • 登記の原因
  • 当事者(買主・売主)
  • 不動産(登記事項証明書等の情報)

前述した内容を書類にすることもありますが、事業譲渡の場合には事業譲渡契約書が「登記原因証明情報」に該当します。

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事業譲渡における所有権移転登記の流れ

事業譲渡における所有権移転登記の流れは、下記のとおりです。

  1. 登記申請書の作成
  2. その他の必要書類の手配
  3. 登記申請書の提出
  4. 審査(登記所が行う)
  5. 登記識別情報と登記完了証の交付

まずは登記申請書を作成します。書類は法務局のサイトからダウンロードが可能です。さらに、前述したその他の書類の準備も並行して進めましょう。
登記識別情報は再発行ができない書類なので、紛失にはくれぐれも注意が必要です。固定資産税評価証明書は自治体により入手方法が異なるため、各自治体のサイトをチェックするか問い合わせをして確認しましょう。

申請書類が揃ったら、登記所へ申請します。提出後は登記所が審査を行い、審査が通り次第、登記識別情報と登記完了証が交付されます。

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事業譲渡の免責登記に関する注意点

事業譲渡後に譲受会社が譲渡会社の商号や屋号を使用する場合は、免責登記に関して注意が必要です。

通常、事業譲渡では負債を引き継ぐ必要はありませんが、商号や屋号を引き続き使用するケースにおいては当該事業によって発生した債務を弁済する責任が生じてしまいます。
免責登記を行うことによって債務を弁済する義務がなくなります。想定外の債務を負うことを防ぐために、譲受企業は免責登記を行いましょう。

免責登記とは

免責登記とは、事業を引き継いだ企業が、譲渡会社の債務を支払う責任を負わないと定める登記のことです。免責登記には登録免許税として3万円が。

免責登記の手続きの流れ

免責登記は以下のような流れで行います。

  1. 申請書の作成
  2. 申請書を登記所に提出
  3. 登記所での審査
  4. 登記識別情報と登記完了証の交付
  5. 免責登記の登録免許税の支払い

申請書の提出は、事業を行っている住所の管轄の登記所で行います。登記が完了した後に、登録免許税の支払いをします。

免責登記に必要な書類

免責登記に必要な提出書類は以下の3つです。

  • 譲渡企業の承諾書
  • 譲渡企業の登記簿謄本
  • 譲渡会社の印鑑証明書

登記簿謄本と印鑑証明書については、事業の譲渡企業と譲受企業の法務局の管轄が異なる場合にのみ提出が必要です。
譲渡企業の承諾書は提出が必須となる書類です。
必要書類を揃えたら、申請書と併せて管轄の登記所に提出しましょう。

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まとめ

事業譲渡の実施にあたって、基本的に商業登記は不要です。ただし、商号や所在地、経営者などの情報に変更がある場合は商業登記をしてください。
また、事業譲渡にともなって土地や建物などの不動産の譲渡が発生するケースでは、所有権移転登記が必要です。そのほか、譲受会社が譲渡会社の商号・屋号を使用する場合は、想定にない債務を負わされることを防止するために免責登記を行いましょう。

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