後継者問題とは?中小企業の後継者不足は事業承継のマッチングで解消しよう

2023年10月16日

後継者問題とは?中小企業の後継者不足は事業承継のマッチングで解消しよう

このページのまとめ

  • 後継者問題とは、その会社の跡取りが見つからない問題のことを指す
  • 後継者不在率は解消傾向にあるが、60代の経営者の約4割は後継者問題を抱えている
  • 後継者問題の背景には少子化、事業承継の準備不足、後継者の意識の変化などがある
  • 後継者問題の解決には従業員承継やM&Aなどの「親族外承継」が役立つ場合が多い
  • 事業承継などに関する相談は事業承継・引継ぎセンターや仲介機関を利用すると良い

中小企業の経営者の中には、後継者問題について悩んでいる方もいるのではないでしょうか。後継者問題は、その会社を存続させるために解決しなければならない課題です。しかし、ひとりで対策するのは難しく、対応が遅れれば廃業することに繋がります。

本記事では、後継者問題について詳しく説明します。後継者不足の現状や原因、解決方法、事業承継やM&Aについての相談先なども説明しているので、ぜひ参考にしてください。

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後継者問題とは

後継者問題とは、その会社の後継者(跡継ぎ)がいない問題のことです。

後継者(跡継ぎ)とは、現在の経営者から株式、財産、権利関係など、その会社の全てを引き継ぐ人を指します。従来は家父長制などの影響もあり、家業はその家の長男が引き継ぐというケースが一般的でした。しかし、近年はそのような意識が希薄化していたり、経営者に求められる能力が高くなっていたりする傾向があり、必ずしも長男などの親族が事業を引き継ぐとは限らなくなっています。

こうした背景もあり、昨今は「会社を引き継ぐ人がいない」という後継者不足が重大な問題となっています。後継者問題を解消できない場合、会社を廃業することになり、従業員や取引先などにも大きな影響が生じます。

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後継者不足の現状

ここでは、後継者不足の現状について説明します。

年代別の後継者不在率

帝国データバンクの「全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)」によると、経営者の年代別の後継者不在率は以下のとおりです。

年代後継者不足率
30代未満89.3%
30代86.3%
40代79.3%
50代65.7%
60代42.6%
70代33.1%
80代26.7%
合計57.22%

一般的に経営者が事業承継を行う年齢は、60代後半ごろとされています。上記の表をみると60代の後継者不足率は42.6%であり、多くの会社で後継者問題を抱えているといえます。2017年の53.1%に比べると後継者不足率はやや解消されている傾向が見られますが、依然として不足率は高いといえるでしょう。

参照元:株式会社帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)

都道府県別の後継者不在率

前述した帝国データバンクの調査結果には、都道府県別の後継者不在率もまとめられています。これによると後継者不足率が高い地域は、以下のとおりです。

地域後継者不足率
島根県75.1%
鳥取県71.5%
秋田県69.9%
北海道68.1%
沖縄県67.7%
神奈川県66.2%
大分県65.6%
山口県65.3%
岐阜県62.9%
愛媛県62.1%
三重県(参考)29.4%

後継者不在率は都道府県によって大きく異なり、島根県や鳥取県は70%を上回っています。一方、三重県は全国で最も低い29.4%であり、後継者問題が少ない地域といえます。地域差が見られる原因はさまざまあり、地域金融機関による支援の積極性、経営・商圏の安定性などが関係しています。

参照元:株式会社帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)

業種別の後継者不在率

帝国データバンクの調査資料には、業種別の後継者不在率もまとめられています。主な業種ごとの後継者不在率は、以下のとおりです。

業種後継者不足率
建設業63.4%
製造業49.2%
卸売業54.6%
小売業60.1%
運輸・通信業53.5%
サービス業62.2%
不動産業57.5%
その他46.1%

業種別では建設業の63.4%が最も高く、その他を除けば製造業の49.2%が最も低いです。また、詳しい業種別の後継者不足率を確認すると、専門サービス業の68.1%が最も高く、金融・保険業の41.3%が最も低い結果となりました。なお、業種により差はありますが、全体として後継者不在率は解消傾向にあります。

参照元:株式会社帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)

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後継者問題が起こる原因

後継者問題が生じている原因には、以下のようなことが関係しています。

  1. 少子化による影響
  2. 事業承継などの準備不足
  3. 親族内承継に対する意識の変化
  4. 事業承継支援策の不足
  5. 経営・商圏が不安定

それぞれについて詳しく確認しましょう。

1.少子化による影響

1つ目に、少子高齢化に伴い、後継者(跡取り)となる人が不足していることが関係しています。内閣府の「令和4年版 少子化社会対策白書」によると、2020年時点の日本の出生数は84万835人、出生率は1.33でした。出生数は過去最低を記録しており、少子化はますます加速しています。

また、日本では出生数よりも死亡数が上回る人口減少も進んでいます。実際、前述した少子化社会対策白書によると、日本人の総人口は2010年頃をピークに減少傾向にあります。少子化や人口減少が進んでいる中で、中小企業の経営者が後継者を見つけることは、より困難になっています。

参照元:内閣府「令和4年版 少子化社会対策白書

2.事業承継などの準備不足

2つ目に、事業承継などの準備不足が関係しています。一般的に事業承継には5~10年程度の期間を要することが多いです。そのため、経営者が高齢になり引退を考え始めてから事業承継を行おうと思っても、準備期間が足りずに失敗してしまう可能性が高いのです。

事業承継に多くの時間を要する理由には、経営者が承継すべき資産を理解する必要があること、後継者の選定・育成などを行わなければならないことなどが関係しています。特に親族内承継の場合は後継者に経営能力を身に付けさせる必要があり、より多くの時間をかける必要があります。

3.親族内承継に対する意識の変化

3つ目が、親族内承継に対する意識の変化です。家父長的な意識が強かった時代は、実家の事業はその家の長男が引き継ぐというのが一般的でした。しかし、現在は家父長的な意識は弱まっており、実家の事業を子どもたちが引き継ぐというケースは一般的ではなくなってきています。

実際、株式会社帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)」によると、近年は同族承継の割合が減少傾向にあり、内部昇進やM&Aなどの割合が高まっています。また、経営者候補に非同族を検討するケースも増えており、非同族の割合が子どもを上回る結果となりました。

参照元:株式会社帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)

4.事業承継支援策の不足

前述の帝国データバンクの資料では、地方においては地域金融機関の積極的な支援があることで、後継者不在率が改善することが読み取れます。

しかし、地域金融機関の支援が充実している地域はまだまだ少なく、後継者不足が改善していない都道府県も多く見られます。

2021年には中小企業庁により各都道府県に事業承継・引継ぎセンターが設置され、後継者不足の解決に力が入れられていますが、実際に後継者不足が改善されるまでには少し時間がかかると予想されます。

5.経営・商圏が不安定

経営が安定していない場合、後継者に事業を引き継ぎたくとも、事業を引き継いでくれる人が見つからないことが考えられます。売上の基盤となる事業や取引先などが脆弱な場合、将来性という観点から引き継ぎを忌避されることもあるでしょう。

収益性が見込めなく経営者が高齢化している場合は、事業を引き継かずに廃業を選択する経営者も多い傾向にあります。

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後継者問題を解決するための方法

後継者問題を解決するには、以下のような方法が考えられます。

  1. 親族を後継者として育成する
  2. 従業員を後継者に指名する
  3. 外部の人材を後継者に登用する
  4. M&Aで会社や事業を他社に売却する

ここでは、それぞれについて詳しく確認しましょう。

1.親族を後継者として育成する

親族内承継を目指す場合は、子どもや配偶者などの後継者の育成に力を入れる必要があります。後継者を育成する方法には、事業への従事、経営会議への参加、現経営者からの直接の指導などが考えられます。また、社外のセミナーや研修会などに参加させることも後継者育成に役立つでしょう。

親族を後継者にする場合は、長期的な計画を立てて、できる限り時間をかけながら育成するのが重要になります。また、経営の知識や技術、ノウハウだけでなく、経営者としての意欲や覚悟などを持たせることも大切です。これにより従業員や取引先などからも信頼が得られるようになるでしょう。

2.従業員を後継者に指名する

近年は、親族内承継と同じくらい従業員承継による事業承継の割合が増えてきています。従業員承継のメリットは、自社の事業や方針などについて理解のある人に承継できるため、外部の人を引き入れるよりもスムーズに経営できること、適任の人を後継者にすればほかの従業員や取引先から理解が得やすいことなどが挙げられます。

従業員を後継者にするにあたって、最も重要なのが候補者の選定です。一般的には実務経験が豊富にあり、リーダーシップを発揮できる人とが適任といわれることが多いです。また、派閥争いが少なく、承継後も円滑に事業を行える人を選任するのが望ましいでしょう。

従業員を後継者にする際のスキームは、基本的には株式売買による譲渡になります。そのため、株式買収のための資金調達が課題になることが多いです。従業員の手持ち資金が少なく、十分な買収資金を準備できない場合には、経営承継円滑化法に基づく日本政策金融公庫の融資などを検討すると良いでしょう。

3.外部の人材を後継者に登用する

外部招聘といって外部の人材(経営者など)を後継者に登用する方法も考えられます。外部招聘は親族内承継や従業員承継に比べると、後継者の選択肢が多いことが魅力です。また、従来とは異なる経営方針を採られることが多く、これまでに比べて会社を大幅に成長させられる可能性もあります。

外部招聘の場合は、従業員承継よりも後継者の選定に注力する必要があります。ビジネススキルやヒューマンスキルが高く、従業員や取引先などから受け入れられやすい人物であることが重要です。

また、外部承継の場合も株式売買による譲渡が基本になるため、株式買収のための資金調達が課題になることが多いです。資金面の課題を解決することも含め、現経営者が株式を所有したまま会長などに退き、外部招聘した人材を経営者に据えるといった方法を検討するのも良いでしょう。

4.M&Aで会社や事業を他社に売却する

親族や従業員などに事業承継させるのではなく、M&Aにより会社や事業を他社に売却するという選択肢もあります。M&Aとは会社の合併・買収のことであり、主に以下のような方法があります。

  • 株式売買:株式を売買し、経営権を取得するM&A手法
  • 事業譲渡:事業の一部または全部を売買し、その事業を取得するM&A手法
  • 会社分割:新設、もしくは既存の会社に不要な資産・事業を移し、旧会社の株式を売買するM&A手法

M&Aであれば、親族内承継や従業員承継が難しい場合であっても、より多くの候補者の中から後継者を選択することができます。また、適切な会社に売却することができれば、会社・事業の発展を望むことができますし、従業員の待遇改善やキャリアパスの選択肢の増加などにも繋がる可能性があります。

しかし、M&Aをするには、譲受企業の選定、適切な株価の算定、各種交渉、デューデリジェンスへの協力などが必要になり、M&A仲介会社によるサポートが重要となります。仲介会社選びなどを失敗すると満足のいかない結果になる可能性があるため気を付ける必要があるでしょう。

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事業承継を成功させるためにできること

事業承継を成功させるためには、以下のようなことに取り組むのが重要です。

  1. 早めに事業承継の準備を始める
  2. 経営上の課題などを解決しておく
  3. 優遇制度の条件などを確認しておく
  4. 遺言書作成などの相続対策を行う
  5. 早い段階から専門家に相談する

ここでは、事業承継を成功させるためにできることについて確認しましょう。

1.早めに事業承継の準備を始める

事業承継には数年程度の期間を要することが多いです。そのため「まだ大丈夫」と思っている段階であっても、できる限り早めに事業承継の準備を始めるのが重要になります。特に後継者が若くて経験が浅い場合であれば、経営者が40代のころから準備を始めても早すぎることはないでしょう。

2.経営上の課題などを解決しておく

事業承継を行うにあたり、経営上の課題・問題点などを洗い出し、解決しておくことが重要です。経営上の課題には、以下のような経営権や資産、実務などに関することがあります。経営上の課題があると事業承継の魅力が損なわれてしまうので、できる限り解決しておきましょう。

課題の種類課題の詳細
経営権に関すること代表権の引き継ぎ
経営者保証の解除
定款の見直し など
資産に関すること株式の引き継ぎ
運転資金の引き継ぎ
事業用資産の引き継ぎ
借金・借入金の解消 など
実務に関すること従業員からの理解
取引先や人脈の引き継ぎ
技術やノウハウの引き継ぎ
行政からの許認可の引き継ぎ など

3.優遇制度の条件などを確認しておく

近年は、非上場株式等の贈与税・相続税が軽減・免除される「法人版事業承継税制」や、事業承継後の設備投資・販路開拓などを支援する「事業承継・引継ぎ補助金」といった支援策が多く用意されています。事業承継を円滑に進めるためにも、これらの制度を確認し、有効活用すると良いでしょう。

4.遺言書作成などの相続対策を行う

事業承継(親族内承継)をする際は、円滑に株式譲渡を行うために遺言書作成や生前贈与などの相続対策をするのが重要です。また、他の親族からの反発などの相続トラブルが懸念される場合は、早い段階から後継者の育成と資金調達を行い、株式売買によって経営権を取得させることも検討すると良いでしょう。

5.早い段階から専門家に相談する

事業承継を検討しているなら、できる限り早めに専門家に相談するほうが良いでしょう。事業承継に関する相談は、事業所承継・引継ぎセンターや商工会議所、顧問税理士、取引先金融機関などが受け付けています。スケジュールや課題なども明確になり、今後の対応が取りやすくなるでしょう。

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事業承継やM&Aに関する主な相談先

事業承継やM&Aについて相談できる主な施設や会社には、以下のようなものが挙げられます。

  1. 事業所承継・引継ぎセンター
  2. 顧問税理士などの専門家
  3. M&A仲介会社

ここでは、それぞれの相談先の概要や特徴などについて確認しましょう。

1.事業承継・引継ぎセンター

事業承継・引継ぎセンターとは、2021年4月に運営を始めた全国47都道府県に設置されている事業承継とM&Aのワンストップ支援センターのことです。親族内承継の支援を行っていた事業承継ネットワークと、M&Aの支援を行っていた事業引継ぎ支援センターを統合して設立されました。

事業承継・引継ぎセンターでは、以下のようなサポートを提供しています。

  • 親族内承継支援
  • 第三者承継支援
  • 後継者人材バンクを活用したマッチング など

親族内承継支援では相談から事業承継計画の策定までのサポートを受けられます。また、第三者承継支援では相談やM&Aのマッチング候補の選定などのサポートをしてくれます。無料で幅広いサポートを受けられるため、事業承継について困っているなら利用してみると良いでしょう。

2.顧問税理士などの専門家

顧問税理士がいる場合は、その税理士に事業承継やM&Aの相談をすることもできます。顧問税理士であれば内部事情に詳しいため、より具体的で的確なアドバイスを受けられます。事業承継が得意な税理士であれば、以下のようなサポートを受けられるでしょう。

  • 事業承継やM&Aに関するアドバイス
  • 自社株式の評価(企業価値評価)
  • 資金調達や経営者保証のサポート
  • 税務手続きや節税に関するアドバイス など

なお、税理士によって得意分野は異なるため、依頼している顧問税理士が必ずしも事業承継やM&Aに精通しているとは限りません。必要に応じて顧問税理士とは別に、事業承継やM&Aに精通している税理士、公認会計士、弁護士、司法書士などに相談することも検討しましょう。

3.M&A仲介会社

M&Aについて専門的なアドバイスやサポートを受けたいなら、民間のM&A仲介会社に相談・依頼するのがおすすめです。M&A仲介会社とは譲渡企業と譲受企業の中間に入り、M&Aが成立するようサポートしてくれる会社です。M&A仲介会社の場合、以下のようなサポートが受けられます。

  • M&Aの候補者の選定(マッチング)
  • 企業価値評価(バリュエーション)
  • M&Aの交渉や契約手続きのサポート
  • 譲渡企業への買収監査(デューデリジェンス)
  • M&A後の統合プロセス(PMI)のサポート など

M&A仲介会社にもさまざまな種類があり、得意な業界や規模、地域などが異なります。専門性が低い仲介会社に依頼してしまうと、満足のいかないM&Aになってしまうリスクもあります。事前に調査し、自社の特徴にあったM&A仲介会社に相談したり、サポートを依頼したりするのが良いでしょう。

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まとめ

後継者問題とは、会社の後継者(跡継ぎ)がいないという問題のことです。近年は後継者問題がクローズアップされていることもあり、後継者不足率は解消傾向にあります。しかし、現在も60代の経営者の4割以上は後継者問題に悩んでいるため、原因と対策を適切に知ることが重要です。

後継者問題の原因には、少子化の進行、事業承継の準備不足、親族内承継に対する意識の変化などが挙げられます。また、対策としては早い段階から後継者育成を始めることに加え、従業員承継、外部招聘、M&Aといった親族外承継を検討するということも考えられるでしょう。

いずれの場合でも事業承継を成功させるためには、できる限り早い段階から準備を始め、経営上の課題を解決したり、事業承継しやすい準備をしたりしておくことが大切です。また、事業承継・引継ぎセンター、顧問税理士、M&A仲介会社などからサポートを受けるのもおすすめとなっています。

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