M&A交渉で必要なノンネームとは?記載事項や作成時の注意点を解説

2023年10月16日

M&A交渉で必要なノンネームとは?記載事項や作成時の注意点を解説

このページのまとめ

  • ノンネームは、譲渡企業(売り手)が匿名状態でM&A交渉を打診するための書類
  • ノンネームは、本格的な交渉に入る前段階で作成・提示される
  • ノンネームは、企業特定のリスクを避けつつ魅力的な内容にすることが大事
  • 希望条件を明確に定め候補企業(買い手)を絞ることが、優良な相手とのマッチング実現につながる

自社を譲り受けてくれるM&A相手の選定について悩んでいる経営者の方も多いのではないでしょうか。M&Aを成功させるためには、自社の希望条件になるべく近い形で譲受してくれる企業を見つけることが大切です。

本記事では、自社に適したM&A相手の選定プロセスにおいて重要な役割を担っているノンネームについて詳しく解説します。必要な記載事項やノンネーム作成時の注意点についても解説するので、ぜひ参考にしてください。

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ノンネームとは

ノンネームとは、M&Aの相手候補に対して渡される、企業名を伏せた状態で譲渡企業(売り手)の概要を記した資料のことを指します。

本格的な交渉に入る前段階において作成・提出される書類で、A4用紙1枚に簡潔にまとめることが通例となっていることから、「1枚もの」という呼び名がついています。

ノンネームの役割

ノンネームは一般的にはM&A仲介会社が作成し、候補に上がった譲受企業(買い手)に対して提出されます。ノンネームは、秘匿性を維持したままM&A交渉を打診するという目的で用いられ、社名特定による情報漏洩リスクを抑えながら、匿名で相手探しを行う役割を担っています。

もしも社名が特定され、M&Aを検討していることが明らかになってしまった場合、取引停止や従業員の流出、企業の価値評価の低下などを招く恐れがあります。そのような事態を回避するために、秘密保持契約が締結されるまでは企業名を伏せた状態で、限定的な情報のみを開示しながら交渉を打診するのです。

ノンネームが用いられるタイミング

M&A進める場合、まずは仲介会社へ相談し、アドバイザリー契約を結んで、さまざまな手続きのサポートを受けることが一般的です。ノンネームは、このアドバイザリー契約が締結され、仲介会社の担当者がヒアリングした希望条件にマッチする候補企業(買い手)リストを作成した後に作成されます。

仲介会社の担当者が選定した候補企業(買い手)リストの中から希望する候補先に対して、ノンネームを提示し交渉を打診します。提示されたノンネームの内容に対して、候補企業(買い手)側が興味を示した場合、本格交渉に入る準備へと進んでいきます。

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ノンネームへの記載事項

ノンネームには、企業名が特定できるような情報を記載する必要はないものの、譲渡企業(売り手)の魅力や強み、希望条件など、譲受企業(買い手)が興味を示す内容や条件のマッチ度が確認できる内容を記載する必要があります。

どのような買い手とM&Aを望むのかをしっかりと検討したうえで、ターゲットとなる譲受企業(買い手)にアピールできる内容に仕上げることが重要なポイントなのです。

ここからは、ノンネームに記載される代表的な項目について、注意点や記載例をふまえながら解説していきます。

業種・事業内容

業種や事業内容は、たとえば「製造業」など、あまりに簡潔な記載では候補企業(買い手)側が判断に困ってしまう一方で、書き方によって企業名が特定されてしまう可能性があります。

たとえば、業種や事業内容は、書き方によっては後述する所在地や従業員数と照らし合わせることで企業名の特定が可能です。

そのため、譲渡企業(売り手)は自社が拠点を置くエリア内に同じくらいの規模で同業種の企業がどのくらい存在しているかをしっかりと調査したうえで、特定されないように事業内容をまとめていくようにしましょう。

所在地

所在地は、進出エリアを軸にM&Aを検討している候補企業(買い手)にとって、重要な情報となります。

ただし、どのくらいの範囲で所在地を記載するかは、譲渡企業(売り手)側の判断によります。所在エリアに同業種企業が少なく、企業の特定が簡単に行える状況であれば、「関東地方」などかなり広範囲を対象とした書き方でも問題ありません。

逆に、企業の特定リスクがないのであれば、「〇〇県〇〇市」など細かい所在地を記載することも可能です。

従業員数

従業員数は、候補企業(買い手)にとって、事業規模を把握するための1つの指標となります。

しかし、従業員数はホームページなどですでに公開されていることが多いため、そこから企業特定につながる可能性が高い情報です。特定リスクを抑えるためには、明確な従業員数を記載するのではなく「約300名」という具合に概算で記載するようにしましょう。

また役員数に関しても、そこから企業を特定される可能性があるため、ノンネームへの記載は避けたほうが賢明です。

資本金・売上高

資本金や売上高は、候補企業(買い手)にとってM&Aの相手選定における重要な要素となります。しかし従業員数同様、資本金や売上高はある程度調べることができるため、明確な数値を記載することは避けましょう。

譲渡企業(売り手)の安全を守りながらも、候補企業(買い手)(買い手)にとってある程度有効な検討材料となる情報にするためには、「1億〜5億円」といった形での記載方法が適切です。

譲渡理由

譲渡理由については、ノンネームに詳細を記載する必要はありません。

「事業再編」や「後継者不足による事業承継」というように、最大でも50文字程度に簡潔に収めた形で記載しましょう。

企業の特徴

自社の特徴は、候補企業(買い手)にアピールするうえで重要なポイントとなる項目です。

特定を避けながら書くため、ほかの企業との差別化をしっかりと図ることは難しいですが、明確で伝わりやすい表現を用いながら自社の魅力や強みを表すのにふさわしい言葉や表現を慎重に選んで記載するようにしましょう。

特に競合優位性がある企業は、候補企業(買い手)にとっても魅力的に映るため、「独自技術」や「特許取得」「大手上場企業との取引実績」などはしっかりとアピールすることをおすすめします。

希望する譲渡額

ノンネームに希望譲渡額が記載されていない場合、候補企業(買い手)に対して「まだ売却する意思がない」という印象を与えてしまいます。

候補企業(買い手)側も、買収する企業に求める条件をある程度設定しているため、買収額が予算オーバーになってしまう企業は本格的な交渉相手としては対象外とみなされます。

譲渡方法と譲渡額の2つがしっかりと明記されていることで、候補企業(買い手)側もスムーズに相手企業の選定を行うことができるため、事前に適正価格をしっかりと検討したうえでノンネームに記載しましょう。

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ノンネームを提出する流れ

具体的にどのようなプロセスでノンネームが作成され、作成後どのような流れになるかは以下のとおりです。

  1. M&A戦略の策定
  2. ノンネームの作成
  3. 候補企業(買い手)選定とノンネーム提出・交渉
  4. 譲受企業(買い手)と秘密保持契約を締結
  5. IM(企業概要書)を開示し、本格的な交渉へ

ノンネーム確認後、本格的な交渉に入ることを希望する譲受候補(買い手)の企業が現れた場合、ノンネームよりもさらに詳しい会社情報や財務状況などをまとめたIM(企業概要書)を譲受候補(買い手)の企業に対して開示します。

その後本格的なM&A交渉に入ると、60品目を超える多くの資料が必要となってきます。

スムーズなM&Aを実現するためにも、ノンネームを作成する早い段階から計画的に資料準備を進めておくことをおすすめします。

関連記事:M&Aの流れ・フローをわかりやすく解説!手続きの進め方や検討事項も紹介

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ノンネーム作成時の注意点

ここでは、ノンネームを作成する際に気をつけるべき3つのポイントについて解説していきます。

1.社名を特定されるような情報を記載しない

秘匿性はノンネーム作成における最も注意すべきポイントです。

秘密保持契約を締結していない相手に対し、詳しすぎる企業情報を開示することは、企業特定による情報漏洩リスクを高めてしまいます。

早く譲受企業(買い手)を決めたい一心で、たくさんの情報をノンネームに盛り込みすぎてしまうと、結果的に企業価値が低下するなどの大きな損失につながりかねません。

そのため、自社にあった譲受企業(買い手)にアピールできる要素をしっかりと取り入れながらも、秘匿性が確保できる内容にとどめるという絶妙な塩梅で作成することが大切なのです。

2.譲渡方法をあらかじめ絞っておく

譲渡方法が決まっていない状態でノンネームを提示してしまうことで、譲受企業(買い手)の選定はより困難になってしまいます。

譲渡方法は、譲受企業(買い手)にとっても重要な検討材料となるため、それが記載されていない企業は検討対象から外されてしまう可能性が高くなります。

また譲渡企業(売り手)側にとっても、譲渡方法を明確に決めておくことで、その方法によるM&Aを希望する譲受企業(買い手)が求めている情報をノンネームに的確に記載することができます。

このように譲渡方法をあらかじめ絞ってノンネームを作成することで、譲渡・譲受企業(買い手)双方が効率的にM&Aを進めていくことが可能となるのです。

3.ノンネーム提出先を限定する

なるべく多くの候補企業(買い手)に自社とのM&Aを検討してもらいたいという思いから、闇雲にノンネームを提示しようとすることは逆効果となります。

多くの企業にノンネームを提示することは、そのまま企業特定や情報漏洩のリスク増大に直結するため、むやみにノンネームを提示することは避け、しっかりと選定した限られた企業に対して提示するようにしましょう。

ある程度提示先を絞り込むことで、情報漏洩リスクを抑えられるだけでなく、本格交渉に進む可能性も高くなり、スムーズな譲渡の実現につながります。

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まとめ

ノンネームは、譲渡を希望する企業にとって適したM&A相手を見つけるために重要な役割を担っています。

魅力的なノンネームは、優良な候補企業(買い手)とのマッチング成立の確率を高めるため、情報漏洩対策をしっかりと講じたうえで、自社の魅力や強みが伝わるノンネーム作成を進めることが大切です。

ノンネームの作成実績やM&Aに関する知識が豊富なプロフェッショナルにサポートを依頼することで、秘匿性の確保と効果的なアピールを両立させながらスムーズにM&A交渉を進めていくことができるでしょう。

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レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社では、効果的なノンネームの作成実績とノウハウを兼ね備えたコンサルタントが、お客様の希望条件に合った形でのM&A交渉の実現をサポート致します。

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