店舗売却で重要なポイントとは?売却相場や経営権の譲渡方法について解説

2023年10月16日

店舗売却で重要なポイントとは?売却相場や経営権の譲渡方法について解説

このページのまとめ

  • 店舗売却は、設備や内装も含めた居抜きで売却するスタイルが一般的
  • M&Aスキームを利用した店舗売却の方が有利な条件で成約できる可能性が高い
  • M&Aによる店舗売却では、株式譲渡と事業譲渡の手法が用いられることが多い
  • 高値での売却を実現するためには、査定で高評価を得ることが重要
  • 店舗売却によって発生する税金は、売り手が法人か個人かによって異なる

店舗の売却について悩んでいる経営者の方も多いのではないでしょうか。できるだけ有利な条件で店舗の売却を成功させるためには、店舗の価値を高く評価してもらうことが大切です。

本記事では、店舗売却を成功させるためにおさえておくべきポイントについて詳しく解説します。高評価につながる査定ポイントやM&Aスキームで店舗売却を行うことのメリットに加え、費用や税金についても解説するので、ぜひ参考にしてください。

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店舗売却とは

店舗売却とは、事業者が所有する店舗や賃借している店舗を、企業や個人に売却することを指します。店舗という資産を売却する行為を差すため、事業譲渡や株式譲渡などのM&A手法とは異なるものです。

賃借している店舗を売却したい場合は、店舗の貸主の許可を得ることができれば可能になります。特に、賃借店舗で運営している事業を廃業する場合において、原状復帰のためにかかる多額の費用を回避するために、店舗の設備や内装を残した居抜き物件として売却することが多くあります。

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店舗売却の方法

店舗売却においては、どのような状態で店舗を売り渡すかによって、それぞれメリットとデメリットが生じます。

ここからは、代表的な2つの店舗売却方法について解説していきます。

居抜きで店舗を売却する

飲食店や美容室などの店舗売却は、内装や設備、造作も含めた居抜き物件として売却されることが一般的です。居抜き物件の売却は、売り手にとっては退去コストを大幅に削減できる最大のメリットがあります。

また、退去コストを大幅削減できる理由は、店舗の立ち退き時に義務付けられている原状回復が不要になるためです。

店舗の立ち退きに際しては、基本的に原状回復を義務付けられていることがほとんどであるため、設備の撤去や造作の解体などさまざまな費用が必要となります。しかし、居抜きでそのまま次の利用者に引き渡すことで、そういった原状回復費用が不要となるのです。

スケルトン状態で店舗を売却する

スケルトン物件とは、内装や設備・造作を全て解体・撤去した状態の物件を指します。

「造作(ぞうさく)」とは、現在の店舗入居者が入居時に設置したものを指し、棚やカウンターなどの家具から空調・厨房などの設備、照明、天井や壁に至るまで多岐に渡ります。居抜き物件での売却の場合は、造作もそのまま引き継がれますが、スケルトン物件での売却の場合は、造作はすべて解体・撤去しなければなりません。

そのため、スケルトン物件の売却を行う際には、売り手は原状回復コストを負うことになります。

原状回復コストがかかるデメリットが発生する一方で、売却相手をスピーディに見つけられるメリットがあります。スケルトン物件は、0からの店作りができるので購入希望者が集まりやすく、短期間かつ売り手の希望価格で売却成立の可能性が高くなるのです。

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店舗売却とM&Aの違い

店舗売却とM&Aは混同してしまいがちですが、大きく違います。

店舗売却では、物件や設備・造作などの資産が売却対象なのに対し、M&Aでは、従業員やブランド、経営ノウハウなどの経営資源も含めた事業または運営企業そのものが売却対象となります。

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M&Aによって店舗売却するメリット

先述の通りM&Aによる店舗売却は、店舗設備以外の無形財産や権利も含めた売却のことを言います。

ここからは、M&Aによる店舗売却で期待できる2つのメリットについて、具体的に解説していきます。

1.売却価格が高くなる可能性がある

居抜きの店舗を売却する際、売却価格の評価材料は、物件と設備の2つに絞られます。

対してM&Aによる店舗売却では、売却価格算定の際に、店舗のブランド力や収益力などを踏まえた事業価値が評価材料となるため、高値で評価される可能性があります。

2.売却することで店舗拡大・事業継続できる

単に店舗を売却するだけの場合、売り手は店舗を手放すことになりますが、M&Aによる店舗売却では、売却後も店舗経営に携わるという選択肢を選ぶことができます。

たとえば、資金力の弱さから店舗拡大ができなかった人気店が大手資本の傘下に入ることで、元々の店舗所有者が経営陣としてその後の店舗拡大を指揮することも可能となるでしょう。

このように、M&Aによって店舗売却を行うことで、売却後の選択の幅が格段に広がるというメリットが期待できるのです。

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M&Aによる店舗売却で用いられる手法

M&Aによる店舗売却においては、株式譲渡や事業譲渡という手法が用いられるケースがよく見られます。ここでは、それぞれの手法について解説していきます。

株式譲渡

株式譲渡とは、売却企業の株式の売買によって経営権を買い手に譲り渡すというM&A手法です。

株式の保有割合が実質的な経営権を示す基準となるため、経営権を行使できる割合の株式を買い手が取得するだけで売却が完了するという、手続きの簡便さが株式譲渡の大きなメリットです。具体的な割合としては、1/2以上の株式を保有していると経営権があるとみなされます。

また、株式譲渡実施においては経営権の譲渡が主たる目的となることから、譲渡企業が雇用している従業員や取引先、各種許認可などはそのまま残るため、これまで培ってきた経営資源をスムーズに継承することができます。

事業譲渡

事業譲渡とは、ある特定の事業のみを他社に売却するというM&A手法です。

事業譲渡による店舗売却の場合、売却後も自身が経営する会社が残るという点が株式譲渡との大きな違いとなります。

事業譲渡は、不採算事業を手放すことで経営再建を図るといった事業再編目的で用いられるケースが多く見られます。

また、売却する事業にかかる人材や顧客リスト、各種契約や許認可などの資産の中から、譲渡対象とする資産を選択できるため、必要な資産は手元に残しておくことができます。

加えて、株式を持たない個人事業主であっても、事業譲渡を行うことで店舗売却を行うことができます。

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店舗売却の流れ

店舗を売却する手続きは、以下のような流れで進められていくことが一般的です。

  1. 業者によるヒアリング:不動産会社やM&A仲介業者による売却する店舗情報のヒアリング
  2. 現地査定・調査:実際の店舗を訪問し物件の状態や周辺環境を確認し、物件価格を査定
  3. 販売活動:マッチングプラットフォームなどを利用して購入希望者を募集
  4. 契約締結:売り手と購入希望者の双方が売買条件に合意したら、売買契約を締結
  5. 引き渡し:売却代金の支払い後に店舗が正式に引き渡され、売却プロセスが完了

売買契約の締結に際しては、売却手続きが完了した後の対応も定められるため、しっかりと双方で合意しておくことが大切です。

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店舗売却価格の算定方法

店舗の売却価格は、業態や業種、物件の立地や状態などを総合的に勘案して算定されるため、売却価格の目安はそれぞれ異なります。そのため、適正な売却価格がわからず条件交渉に不安を抱く方は少なくないでしょう。

そこで、大体の目安価格を算定できる下記の計算式を紹介します。

売却店舗の評価額=造作全般にかかった費用+直近3年間の営業利益の平均値×3

上記計算式における「造作全般にかかった費用」とは、「店舗を作るためにかかった費用」を意味します。

簡単な計算式ではありますが、比較的客観性の高い店舗の評価額を算定することができるため、あくまで参考の範囲内で利用してみてください。

ちなみにこの計算式においては、当該店舗のブランド力や集客力・収益力といった無形財産の価値は営業利益に反映されているものとして評価します。

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店舗売却価格の相場

10〜15坪程度の平均的な小規模店舗を売却した場合、売却価格の大体の相場は100万〜250万円程度です。その他の目安としては、坪単価の5〜10倍程度の価格を売却価格算定の基準とするケースもあります。

いずれにせよ、店舗の業種・業態・立地条件や内装設備など、様々な条件を総合的に勘案したうえで適正な売却価格が算定されるため、上記相場より高くなるケースも低くなるケースも存在します。

関連記事:会社売却の相場や税金はどれくらい?準備からクロージングまでの流れも解説

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店舗売却価格の評価額アップにつながる査定ポイント

「できるだけ高い価格で店舗を売却したい」というのが、多くの売り手の正直な気持ちでしょう。
ここからは、売却価格設定において重要なプロセスとなる店舗の査定において、評価額アップにつながる4つの査定ポイントについて解説していきます。

1.店舗の立地

店舗の立地や周辺環境は、査定において最も評価に影響するポイントです。

人気エリアや駅前など、利便性が高く集客が見込める場所に立っている店舗は、ビジネスを展開するうえで有利に働く可能性が高いことから評価額がプラスされます。

2.物件の大きさ・形

極端に大きすぎたり小さすぎたりする物件は、購入希望者とのマッチングが難しいことから評価が低くなってしまいます。そのため、査定において高評価を得られる物件の広さ目安は、需要が高い10〜20坪程度の店舗です。

店舗面積に加え、店内の各種レイアウトが簡単なベーシックな形の店舗である点も査定においては高評価となるポイントです。奇抜で変則的な間取りの物件の場合、物件面積に対して座席稼働率が下がってしまうなど効率的なレイアウトが難しくなるため、マイナス評価となってしまいます。

3.設備の利便性・新しさ

居抜きで店舗を売却する場合、備え付けられている設備の状態も、査定評価に大きく影響します。たとえば飲食店であれば、最新の厨房設備があることはもちろん、換気扇やグリストラップなどの排気・排水設備が清潔な状態にメンテナンスされていることもプラス評価となるポイントです。

加えて、店舗が古い雑居ビルなどのテナントである場合は、空調や給排水設備の老朽化リスクもチェックされるポイントとなってきます。

物件査定が入る前には、ビルのオーナーに対して各設備の使用年数や交換歴、メンテナンス状態などはもちろん、各種法定点検の実施状況についても確認が必要です。

法定点検の実施や日々のメンテナンスなどは、オーナーがビルの管理会社に委託している場合がほとんどなので、オーナーから店舗売却の承認が得られたら、管理会社の担当者に取り次いでもらえるか相談してみましょう。

4.店舗全体の清潔感

どのような業態・業種の店舗であっても、清潔感が感じられない店内の物件は評価額が大きく下がってしまいます。

飲食店でもヘアサロンでも、買い手側にとって清潔感は物件選びの重要ポイントとなっているため、いくら好立地の店舗であっても、清潔感に欠ける店内は成約に結びつく可能性が低くなります。

逆に築深の古い物件であっても、隅々まで清掃が行き届き、きちんとメンテナンスされている物件は高評価を受けやすくなるため、ヴィンテージ感を売りに高値での売却が実現する可能性も高くなります。

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店舗売却にかかる費用

店舗売却では、各種手続きを進めていく中でいくつかの費用が発生します。ここでは、店舗売却する際に発生する代表的な3つの費用について解説していきます。

仲介手数料

店舗売却を行うにあたって不動産会社やM&Aの仲介会社を利用している場合は、仲介手数料の支払いが発生します。

一般的な不動産売買においては、宅地建物取引業法(以下、宅建法)によって不動産会社に支払う仲介手数料が定められています。

しかし、2023年8月時点では、居抜き店舗の売却にかかる仲介手数料は宅建法の対象とはならず、手数料に関する法制度も未整備であるため、業者ごとに独自に仲介手数料を設定しているのが現状です。そのため業者によって仲介手数料の価格にばらつきがあるものの、一般的には「売買価格の10%程度」を手数料の目安とするとよいでしょう。

また、M&A仲介会社を利用する場合、仲介会社では相談料・着手金・中間金・デューデリジェンス費用・成功報酬費用といった様々な手数料が発生します。

ただし全ての仲介会社において必ず上記手数料が発生するわけではありません。完全成功報酬型というスタイルで、M&Aが成立するまで一切の料金が発生せず、成立時に売却価格の何割かを手数料としてまとめて支払うという料金体系を設けている会社も多く存在します。

承諾料

賃貸物件の店舗を運営している事業者が店舗売却を行う場合、物件のオーナーに承諾料の支払いを求められることがあります。テナントとして店舗を運営している事業者は、店舗と一緒に店内の設備も売却することを、オーナーに事前に承諾してもらわなければ、売却手続きに入ることはできません。

承諾料に関しては、法律で定められている費用ではないため、あくまで双方の合意のうえに発生するものとなりますが、請求された場合には支払うことが通例となっています。価格は、店舗の売却価格の10%程度を目安としておくと良いでしょう。

税金

店舗を売却した際に得られる売却益は、課税対象となります。ただし、売却した事業者が法人か個人かによって、課せられる税金の種類が異なってきます。

売り手が法人の場合

店舗売却を行ったのが法人である場合、売却益はその他損益に加算されて、法人税と事業税の課税対象となります。

年間所得額に応じて、法人税と事業税の税率は異なるため、売却益を含めた所得額を確認しておくことが大切です。

加えて、売買契約締結の際に契約書に印紙を貼付して納める印紙税も忘れないようにしましょう。

印紙税は、店舗の売却価格に応じて以下のように変動します。

100万円以下:500円
500万円以下:1,000円
1,000万円以下:5,000円
5,000万円以下:10,000円
1億円以下:30,000円
5億円以下:60,000円

印紙の貼り忘れが発覚すると、本来支払うべき印紙税額の3倍の額を過怠税として納めることになるため、注意が必要です。

売り手が個人の場合

店舗売却を個人が行った場合、売却益は「譲渡所得」として所得税と住民税の課税対象となります。ただし店舗売却においては、店舗物件や土地の売却益と備品や什器などの売却益それぞれに対して異なる課税方法が適用となります。

備品・什器などの資産の売却益は、給与所得などと合算した所得額に応じて累進課税で税率を決定するようになります。物件や土地の売却益は、譲渡所得として扱われ、分離課税として単体で所得税と住民税の計算が行われます。

譲渡所得税に適用される税率は、店舗の所有期間に応じて以下のように変動します。

  • 所有期間が5年超:所得税15%+住民税5%
  • 所有期間が5年以下:所得税30%+住民税15%

ただし譲渡所得とは、店舗の売却価格ではなく、店舗の利益から店舗の取得にかかった費用と譲渡にかかった費用とを差し引いた額を指すため、譲渡所得と売却価格を混同しないようにしましょう。

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まとめ

店舗売却は、M&Aのスキームを利用して行うことで、売却対象とする資産や売却後の選択肢の幅が広がるだけでなく、より高値での売却が実現する可能性が高くなります。これは、物件や内装設備などの有形資産の評価に加え、M&Aでは店舗のブランドや人材、これまで培ってきたノウハウなどの無形資産も売却価格に反映されるためです。

店舗売却を成功させるためには多角的な視点から店舗や運営会社を査定・評価し、現在の経営状況や経営課題、今後のビジョンなども勘案したうえで、希望する売却スタイルを戦略的に決めていくことがポイントです。有利な条件での売却を進めるための戦略策定から実行、各種手続きにおいては、豊富な専門知識や取引経験が有利に働く場面も多いことから、専門家にサポートを依頼することをおすすめします。

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