会社買収を徹底解説|メリットや方法、流れ、成功のコツ

2023年10月6日

会社買収を徹底解説|メリットや方法、流れ、成功のコツ

このページのまとめ

  • 会社買収とは、他の企業の経営権を取得すること
  • 会社買収のメリットには、事業の多角化や既存事業の拡大などがある
  • 会社買収のデメリットには、簿外債務や人材流出リスクなどがある
  • 会社買収の方法には、株式譲渡や株式交換などがある
  • 会社買収を成功させるには、シナジー効果を期待できる買収先の選定などが重要

会社買収とは、他の会社の経営権を取得することであり、株式譲渡や株式交換などのM&A手法が用いられます。会社買収を実施すると、既存事業の拡大や事業の多角化などのメリットを得られます。一方で、簿外債務の引き継ぎなどのリスクがあります。

会社買収を成功させるには、シナジー効果を見込める買収先企業の選定などがコツと言えるでしょう。会社買収の流れや事例、バリュエーションの方法なども解説します。

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会社買収の概要

はじめに、会社買収の定義と2種類の買い手「ストラテジック・バイヤー」と「フィナンシャル・バイヤー」について解説します。

買収の定義

買収とは、ある企業(買収者)が別の企業(被買収者)の経営権(支配権)または事業を買い取る行為のことで、言い換えると、現金や株式などを対価として支払うことで外部の会社を傘下に収めることです。

会社の経営権を取得する場合は「会社買収」、事業のみを取得する場合は「事業買収」と呼ばれます。
会社買収の場合、会社の経営権を取得する必要があります。そのため、一般的には被買収者の発行済株式の過半数を買い取るスキームが活用されます。

ストラテジック・バイヤーとフィナンシャル・バイヤー

買収を行う主体(買い手)は、一般的にストラテジック・バイヤーとフィナンシャル・バイヤーに分類されます。

ストラテジック・バイヤー(戦略的投資家)

ストラテジック・バイヤー(戦略的投資家)とは、買収によって業界内における自社の競争力を高めたり、製品・サービスラインの拡大を図ったりする目的で会社買収を行う買い手です。

基本的には、同業の事業会社や買収先会社との関連性が高い事業を行う会社などがストラテジック・バイヤーとなります。事業規模・販路の拡大や多角化を図ること、シナジー効果の創出を見込めることを重視して買収先を選定する点が特徴です。

フィナンシャル・バイヤー(金融投資家)

一方でフィナンシャル・バイヤー(金融投資家)とは、買収する会社の企業価値向上に伴う利益を得る目的で会社買収する買い手です。基本的には、投資ファンドがフィナンシャル・バイヤーとなります。一般的に、会社買収後に経営方針の合理化や経営陣の抜本的な変更を行ったり、企業価値が上昇した後に買収した会社を売却したりする点が特徴です。

関連記事:事業買収とは?買い取る手法や目的、メリット・デメリットを解説

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取得する議決権割合ごとに行使できる権利の内容

株式会社では、保有する議決権の割合(≒持株比率)が大きいほど、行使できる権限も大きくなります。したがって、会社買収では一定以上の議決権取得を目指します。

基本的には、子会社化の基準となる「過半数」の株式取得が最低条件となり、特別決議を単独可決できる「3分の2超」や、株式等売渡請求権を行使できる「90%以上」を取得できることが望ましいと考えられます。

この章では、議決権の割合別に行使できる権限を解説します。

50.1%以上(過半数)の取得

会社法」第309条1項の規定により、50.1%(過半数)の議決権を取得することで、普通決議を単独で可決できるようになります。

普通決議(特殊普通決議を含む)では、主に下記のような内容を決議します。

  • 役員報酬金額の決定
  • 剰余金の配当
  • 役員の選任・解任
  • 資本準備金の減額

会社の重要な意思決定の大半を単独で行えるため、過半数の議決権取得によって、実質的に会社買収は果たされると考えることが一般的です。

※参照元:e-Gov「会社法」第309条1項

66.7%以上(3分の2超)の取得

会社法」第309条2項の規定により、66.7%以上(3分の2超)の議決権を取得することで、特別決議を単独で可決できるようになります。

特別決議では、主に下記を決議します。

  • 定款の変更
  • 合併や株式交換等の実施
  • 事業譲渡や解散
  • 資本金の減額

M&Aの実施を決議するなど、普通決議と比べてより重大な意思決定を行います。そのため、会社買収を確実なものとしたい場合には、3分の2を超える議決権の取得が望ましいでしょう。

※参照元:e-Gov「会社法」第309条2項

90%以上の取得

会社法」第179条の規定により、90%以上の議決権を取得することで、株式等売渡請求権を行使できるようになります。株式等売渡請求権とは、会社からの承認を受けることで、他の株主が有する株式等の全部を強制的に取得できる権利です。

つまり、90%の議決権を取得することで、少数株主の排除によって完全子会社化を実現できるのです。完全子会社化による会社買収を目指す場合には、90%以上の取得が望ましいでしょう。

※参照元:e-Gov「会社法」第179条

全議決権の取得

全議決権を取得すると完全子会社化が完了します。

全株式(議決権)を保有することで、少数株主に対する権利(議案請求権や株主総会の少数請求権など)も付与されずに済みます。そのため、少数株主に意思決定を邪魔されることなく、スムーズに買収した会社の経営を進めやすくなるでしょう。

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個人でも会社買収は可能? 

一般的に、会社買収と聞くと法人が法人を買収するケースを想定することが多いでしょう。
しかし、個人でも会社を買収することは可能です。実際、近年は個人の買い手が会社を買収するケースも増えています。

そこでこの章では、個人による会社買収の特徴や買収しやすい業界・業種、成功させるコツを解説します。

個人による会社買収の特徴

個人による会社買収には、買収規模が小さいという特徴があります。

法人同士のM&Aでは、買収金額は数千万円〜数億円規模、もしくはそれ以上となるケースが多いです。一方で個人による会社買収では、数十万円〜数百万円の買収金額となるケースがほとんどです。理由は、副業目的で買収するサラリーマンや個人事業主は、法人と比べて資金力が乏しいためです。

上記の特徴から、個人による会社買収は「マイクロM&A」や「スモールM&A」と呼ばれる傾向があります。

※関連記事:個人が会社を買う方法とは|メリット・デメリットや成功のポイントも解説

個人M&Aを比較的行いやすい業界・業種

個人の場合は資金力に限りがあるため、M&Aの対象となるのは数十万円〜数百万円で買収できる会社に限られます。この条件を満たす業界・業種として、主に以下が挙げられます。

  • Webサービス(アプリやWebメディアなど)
  • 飲食店
  • 美容サロン(エステサロンなど)
  • 学習塾
  • 雑貨店

実際、スモールM&Aをメインに取り扱うマッチングサイトを確認すると、上記業種に該当する会社が数百万円以内の金額で売りに出されているケースが見られます。効率的に会社買収を進めたい個人の方は、上記の業種を中心に案件を探してみると良いでしょう。

個人による会社買収を成功させるコツ

個人が会社買収を成功させるには、主に2つのコツを押さえておくことが重要です。

M&Aにおける基礎知識を持っておく

M&Aでは、デューデリジェンスや企業価値評価など、一般的なビジネスには見られないプロセスが多く、特有の知識が求められます。

こうした知識がない場合、不利な条件で契約を締結したり、買収先会社との間でトラブルに発展したりするリスクが高まります。したがって、ある程度はM&Aの知識を学んだ上で取引に臨むことが求められます。

従業員の不安解消と信頼の構築

会社買収によって経営者が変わると、従業員は不安を抱くおそれがあります。特に個人が経営者となる場合、「本当に資質や能力があるのか?」という疑問の目で見られるケースも少なくないため従業員との良好な関係構築が必要です。

こうした疑問や不安を解消するために、従業員とのコミュニケーション機会を増やしたり、現場での仕事に対する理解を深めたりすることが求められます。

※関連記事:個人で事業を買う時の成功ポイント7つ!買う際に決めるべきことは?

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個人・法人が買収先の会社を探す方法・相談先

個人・法人が買収先の会社を探す主な方法・相談先として以下の3つがあります。

  • M&A仲介会社
  • M&Aマッチングサイト
  • 事業承継・引継ぎ支援センター

それぞれの特徴や長所・短所を解説します。

M&A仲介会社

M&A仲介会社とは、M&Aの買い手企業と売り手企業のマッチングを行う専門業者です。
マッチングだけでなく、交渉や契約のサポート、バリュエーションやデューデリジェンスなどの実務も担う仲介会社が多いです。個人が買収先の会社を探す場合には、仲介会社と契約し、自らの希望条件をもとに最適な相手を紹介してもらう流れとなります。

仲介会社を利用する利点として、M&Aに関する包括的なサポートを得られる点が挙げられます。M&Aの専門的な知識や豊富な経験を有するアドバイザーに協力してもらうことで、円滑な会社買収を実現しやすくなります。

ただし、マッチングサイトを利用する場合と比べて、手数料が高い傾向がある点に注意が必要です。

※関連記事:M&A仲介業者とFAの違いとは?役割や手数料などについても解説します

M&Aマッチングサイト

M&Aマッチングサイトとは、インターネット上で売り手企業と買い手企業をマッチングするプラットフォームです。基本的にはマッチングのみに特化しているため、交渉のサポートや実務の依頼は別料金または専門家に別途依頼する必要があります(相談のみならば無料で行えるサービスもあります)。

マッチングサイトを利用する利点は、仲介会社と比べて手数料が安い傾向があることです。
売り手側は無料としているサービスも少なくないため、予算が少ない個人にとっては魅力でしょう。また、自らの目で直接買収先の会社を探せる点もメリットの1つです。売上高や業種などの条件を絞ることで、希望条件に合致する会社を選定できます。

一方で、仲介会社と比べてサポートの内容は手薄な傾向があるため、売り手企業とのトラブルを避けにくい上に、不利な条件でのM&Aとなるリスクがあります。手軽に買収先の会社を探せる点が魅力ではあるものの、トラブル回避のためには当事者である買い手側で対策する必要があるでしょう。

事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継・引継ぎ支援センターとは、国が設置している事業承継・M&Aに関する公的な相談窓口です。具体的には、後継者不在の企業に対して買い手候補の紹介や事業承継計画の策定支援などを提供しています。

税理士や公認会計士などの専門家に無料で相談できる点が最大のメリットです。一方で、バリュエーションなどの実務を依頼する場合には、専門家への手数料が別途発生するため注意が必要です。

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会社買収とM&Aおよび合併の違い

会社買収と混同しがちな概念に「M&A」や「合併」があります。その実態は異なるため、正しく違いを理解しておくことが重要です。この章では、会社買収との違いを明確にしつつ、M&Aと合併の意味を解説します。

会社買収はM&Aスキームの一種

M&A(Mergers & Acquisitions)とは、日本語に訳すと「合併と買収」を表します。具体的には、複数の企業が1つの会社に統合されたり、ある会社が別の会社の経営権や事業を取得(買収)したりすることをM&Aと呼びます。買い手側の視点で見ると、M&Aは「会社・事業または経営権を取得する取引」であるといえます。

このように、会社買収とは、M&Aスキームの一種です。M&Aには合併も含まれる概ため、会社買収よりも広い概念となります。なお、直訳すると「合併と買収」ですが、広義で業務提携や資本提携もM&Aに含まれます。

※関連記事:M&Aとは?会社が事業承継するメリットや手法を紹介!案件増加の理由も解説

会社買収と合併の違い

合併とは、複数の会社を1つの会社に統合させるM&Aの手法の1つです。合併によって消滅する会社の権利義務の全部を「存続する会社」に承継させる場合は吸収合併、「新たに設立する会社」に承継させる場合は新設合併と呼ばれます(「会社法」第2条)。

会社買収と合併には、会社・事業または経営権の取得過程における「法人格消滅の有無」に違いがあります。会社買収では権利を承継させる売り手側の法人格が存続する一方で、合併では権利を承継させる側の法人格は消滅します。ちなみに、事業買収の場合も事業(権利義務)のみを売却するため、売り手側の法人格は存続します。

上記のとおり、「M&Aスキームの一種」という点で合併と会社買収は共通していますが、その実態は大きく異なります。法人格消滅の有無だけでなく、活用される場面や法律で規定された手続き、得られるメリット・デメリットなどにも違いがあります。

したがって、一口にM&Aと言っても、状況に応じて合併と会社買収を使い分けることが重要です。たとえば買収先企業の独立性を維持したまま事業を続けたい場合には会社買収、グループ内で円滑に経営統合を図りたい場合には合併を活用することが一般的です。

※関連記事:合併とは?実施目的やメリット、手続き方法などを解説
※参照元:e-Gov「会社法」第2条

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友好的買収と敵対的買収の違い

会社買収は「友好的買収」と「敵対的買収」の2種類に分けられます。違いを理解できるよう、それぞれの意味を解説します。

友好的買収とは

友好的買収とは、売り手経営陣の同意を得た上で実施する買収です。中小企業の買収に関しては、原則として友好的買収となります。理由は、株式の譲渡制限がかかっているケースが多く、原則として同意を得ないと買収を強行できないためです。

例外的なケースとして、相続などによって株式が分散している場合、未公開の中小企業でも敵対的買収が実施されるリスクは残されます。

友好的買収では、経営陣との間で良好な関係性を築きながら買収を進めます。具体的には、売り手と買い手双方の経営者が交渉を行い、取引金額などの条件をすり合わせた上でM&Aが成立します。
主に、株式譲渡や事業譲渡、株式交換、株式交付などのスキームが活用されます。

敵対的買収とは

敵対的買収とは、売り手経営陣の同意を得ずに実施する買収です。主に、株式を公開している上場企業のM&Aにおいて、敵対的買収を仕掛けられる場合があります。

敵対的買収では、基本的にTOB(公開買付け)と呼ばれるスキームが活用されます。TOBとは、市場外で不特定多数の株主から株式を買い取るM&A手法です。具体的には、経営陣の同意を得ないまま、TOBのスキームによって過半数の議決権(株式)取得を目指します。

過半数の議決権取得に成功した場合、敵対的な会社買収は成立となり、経営権が売り手から買い手側に移ることとなります。

買収対象企業の経営陣や株主にとっては、敵対的買収で短期または中長期的に不利益を被るリスクがあります。そのため、基本的には敵対的買収が仕掛けられた時点で(または事前に)対抗措置(買収防衛策)が実行されます。

※関連記事:敵対的買収とは?友好的買収との違いやメリットデメリットを解説!

買収防衛策の概要と主な手法

買収防衛策とは、文字通り敵対的買収を防ぐ対策の総称です。具体的な手法には、主に以下のものがあります。

  • ゴールデンパラシュート:経営陣に莫大な金額の退職金を設定することで、敵対的買収の意欲を削ぐ手法
  • ポイズンピル:敵対的買収者のみが行使できない新株予約権を既存株主に無償で割り当てることで、敵対的買収者の議決権比率を下げる手法
  • ホワイトナイト:友好的な会社に買収してもらうことで敵対的買収を防ぐ手法

どの手法も強力な効果はあるものの、他の株主や従業員から反発を受けるリスクがあります。そのため、買収防衛策の実施に当たっては慎重な検討が求められます。

※関連記事:買収防衛策とは?具体的な手法や準備、注意点を解説!

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会社買収・売却の現状

日本での会社買収・売却は近年増加傾向にあります。その背景には、事業承継や海外市場への進出等を目的に、M&Aを活用する事例が増えていることが挙げられます。

事業承継を目的としたM&A

中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」によると、2025年までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人に上り、そのうち約半数は後継者未定になると見込まれます。後継者が不在となる背景には、少子化や職業選択の自由が重視されるようになったことなどの理由により、親族内での事業承継を行えない(行わない)ケースが増えていることが考えられます。

親族内で後継者がいない場合は従業員や役員から後継者を選定することも可能ですが、経営者の資質がある後継者が都合良く見つかるとは限りません。そこで、親族や会社内で後継者が見つからない中小企業が、第三者への承継を目的としたM&Aを行うケースが活発化しています。

実際、事業承継M&Aの件数と事業引継ぎ支援センターの成約実績が共に増加している旨が公表されています。今後も経営者の高齢化に伴い、事業承継を目的としたM&Aは活発に行われると考えられます。

※関連記事:事業承継とは?方法や税制・補助金などについても解説
※参照元: 中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」P1、P2

海外市場への進出や国内市場での生き残りを目的とした買収

大手企業を中心に、経営戦略の一環として会社買収を実施する動きも活発です。

少子高齢化の影響により、各業界・業種に共通して、国内市場の頭打ち・縮小が予想されます。また、経済のグローバル化に伴い、外資系企業との競争激化も進んでいます。

こうした影響により、海外市場への進出を目的としたクロスボーダーM&Aや、国内での生き残りをかけ、同業他社・シナジー効果を見込める異業種企業の買収を図るケースが多く見られます。自社のみでの成長や事業の存続に限界を感じ、経営戦略にM&Aを組み込む会社は今後も増えると考えられます。

※関連記事:M&A戦略とは?策定のポイントや流れ、注意点を解説

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会社買収を実施する目的

会社買収は、一般的に以下4つの目的で実施される場合が多いです。

  • 既存事業の拡大・競争力の向上
  • 事業の多角化
  • 買収する事業とのシナジー創出
  • 事業戦略達成にかかる時間の短縮

それぞれ解説します。

既存事業の拡大・競争力の向上

たとえば同業の会社を買収すると、その企業が有する設備や不動産(工場等)、ECサイトなどの経営資源を一括で確保できます。事業規模の拡大につながり、売上や利益の増加を見込めます。また、販路の拡大や未進出地域への進出を図ることも可能です。

加えて、優秀な人材や特許技術、独自の販路(大手企業の取引先等)など、獲得が容易でない経営資源を獲得できる可能性もあります。こうした希少な経営資源を確保することで、長期的な競争優位性の確立や、弱みの補強による業績改善を見込めるでしょう。

事業の多角化

自社と異なる事業を運営している会社を買収すると、事業の多角化(新規事業領域への進出)を図れます。事業を多角化することで、経営上のリスクを分散できます。たとえば、本業の収益が悪化した場合に、買収した事業の収益で会社全体の業績をカバーする効果を見込めます。

また、新しい収益源の確保により、単純に売上アップの効果も期待できるでしょう。たとえば1億円の売上を得ている本業に加えて、同様に1億円の売上を期待できる会社を買収すれば、買収後に合計で2億円の売上を期待できます。

買収する事業とのシナジー創出

シナジー効果とは、既存事業と買収した事業が組み合わさることで、それぞれを別々に運営していた時の合計よりも大きな効果(売上など)を生み出すことです。
たとえば顧客の相互送客やクロスセルに伴う売上増加、物流ラインの統合によるコスト削減などの効果が挙げられます。

※関連記事:M&Aによるシナジー効果とは?種類や分析用のフレームワーク、事例を紹介

事業戦略達成にかかる時間の短縮

ここまで紹介した事業規模拡大や多角化などは、すべて自力で行うことができます。しかし、自社のみで一から行うとなると、ノウハウの確立や顧客獲得などに時間がかかります。

一方でM&Aの場合、既に事業が軌道に乗っており、必要なリソースが揃っている会社を買収できます。ノウハウ確立や顧客獲得などのプロセスが不要となるため、よりスピーディーな目標達成が可能です。

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会社買収で注意したいデメリット

一方で、会社買収では以下4つのリスクが生じるというデメリットに注意が必要です。

  • 簿外債務や偶発債務の引き継ぎリスク
  • 人材流出などに伴う買収の失敗リスク
  • のれんの減損が生じるリスク
  • 経営統合にかかる大きな負担と失敗リスク

それぞれ解説します。

簿外債務や偶発債務の引き継ぎリスク

簿外債務とは、買収対象企業の財務諸表には記されていない債務です。債務保証や退職金、未払賃金などが簿外債務に該当します。
一方で偶発債務とは、将来的に債務となるリスクがある要素です。訴訟による損害賠償リスクなどが偶発債務となります。

こうした簿外債務や偶発債務を引き継ぐと、買収後に追加で費用が発生するおそれがあるため要注意です。対策としては、事業譲渡のスキームを用いて簿外・偶発債務を承継対象から除外する、デューデリジェンスを徹底して事前に債務を洗い出す、などが考えられます。

※関連記事:M&Aにおける簿外債務とは?具体的な種類や回避方法、発見時の対応を解説

人材流出などに伴う買収の失敗リスク

M&Aによって経営主体が売り手から買い手側に移ると、それに伴って組織文化や働き方、人事制度などが多かれ少なかれ変わります。それに対して従業員が不満や不安を抱くことで、モチベーションの低下による生産性の低下、最悪の場合は転職する事態となり得ます。

特に、買収先企業の成長に大きく貢献しているキーパーソンの退職は、業績に大きな影響を及ぼすおそれがあります。

従業員との対話を通じて不満を解消したり、不満を生じさせないような働き方や待遇を提供したりすることが対策となるでしょう。

のれんの減損が生じるリスク

のれんとは「買収金額と買収された企業の純資産の差額」、減損とは「買収後に業績が悪化した際に、回収を見込めないのれん分を損失として計上する手続き」を意味します。

買収後、想定していたシナジーが獲得できないなどの理由で業績が想定を大幅に下回ると、減損損失を計上する必要があります。その結果、会社全体の業績が大幅に悪化し、場合によっては事業の続行が困難となり得ます。

こうした事態を避けるには、デューデリジェンスの結果を踏まえて、のれん代を過大評価しないことや、必要に応じて買収を見送ることが求められます。

※関連記事:M&Aや会計に出てくる「のれん」とは?概要や計算方法を解説

経営統合にかかる大きな負担と失敗リスク

買収後の経営統合(PMI)は、買い手企業にとって大きな負担となり得ます。PMIでは、複数の企業文化や業務プロセスの調整、人材統合、ITシステムの統合などを行うため、多大な時間や労力を要します。そのため、本業に支障をきたしたり、統合が円滑に進まないことで業績が悪化したりするおそれがあります。

こうした事態を避けるには、あらかじめ専門家から協力を得た上で、入念に統合計画を立てることが求められます。

※関連記事: PMIとは何かをわかりやすく解説!方法を知りM&Aを成功に導く

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会社が買収されると売り手企業はどうなる?

ここまで会社を買収する側の視点で解説を進めましたが、売り手企業にとっては「会社を買収されるとどうなるのか」が気になる部分かと思います。そこでこの章では、会社が買収された後に売り手企業に生じる3つの変化を解説します。

経営陣にもたらされる変化

株式譲渡によって会社ごと買収される場合、経営陣は退職して会社から出て行くか、会社内に残って事業の成長を目指すかの2パターンとなります。

退職する場合、株式の譲渡対価や退職金を受け取った上で引退する流れとなります。業務の引き継ぎに時間を要する場合は、2〜3年にわたり業務に携わった後に引退するケースもあります。

一方で会社内に残る場合は、引き続き事業の運営や会社経営に当たります。ただし、買い手企業の傘下に入るため、基本的には相手方の事業戦略や方針に従う必要が出てきます。
また、株式は譲渡するため、基本的にオーナー経営者ではなくなります。したがって、経営の自由度は基本的に下がることになります。

なお、事業譲渡では売り手側の経営陣に変化は生じません。

従業員の雇用および待遇

株式譲渡による会社買収の場合、従業員の雇用契約はそのまま引き継がれます。そのため、労働条件や退職金規定などの待遇は変化しないことが大半です。

ただし、買い手企業の意向により、買い手側に合わせる形で待遇が変更されるケースもあります。たとえば買い手企業が大手などの優良企業であるケースや、引き継ぐ社員の能力が高いケースなどでは、M&A前よりも良い待遇となる可能性があります。

一方で、買い手企業の評価基準や業績次第では、待遇が悪くなる可能性もあります。ただし、離職やモチベーション低下を防ぐ観点から、待遇を悪くするケースは考えにくいでしょう。

取引先との関係性や契約の変化

株式譲渡では、取引先との契約がそのまま引き継がれます。買い手企業の意向によって契約内容が変更される可能性はあるものの、契約打ち切りを防ぐ観点から、買収後すぐに変更するケースは考えにくいでしょう。

一方で事業譲渡では、雇用契約と同様に個別に契約を再締結する必要があります。そのため、買い手と取引先の間で合意できない場合には、契約は引き継がれません。

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会社が買収されるメリット

「会社が買収される」という事実は、マイナスな目線で見られることも多々あります。ですが、会社が買収されることで売り手企業にはさまざまなメリットももたらされます。具体的には、以下4つのメリットを期待できます。

  • 事業承継の実現
  • 従業員の雇用継続
  • 業績の安定化・成長の加速
  • 会社の売却益獲得

それぞれ解説します。

事業承継の実現

前述のとおり後継者不足の状態が続くと、たとえ業績が良くても事業を存続させることができなくなります。一方で会社が買収されると、後継者不足の会社でも、経営権を外部の第三者に承継させることができます。

そのため、事業承継の実現を目的に、主体的に会社売却を図るケースも少なくありません。

従業員の雇用継続

後継者不足や業績悪化などを理由に会社を畳むと、長年培ってきた会社のブランドなどを失うことになります。また、会社の成長に貢献してきた従業員たちも仕事を失います。

一方で会社が買収されると、第三者に経営権が移動することで廃業や倒産を回避できます。従業員の雇用、取引先との契約などを存続できるため、誰にも迷惑をかけずに引退できるでしょう。

業績の安定化・成長の加速

ネームバリューのある大手企業や事業規模が大きい会社などに買収されると、買い手企業の傘下として事業を継続することになります。
買い手企業が有する資金力やノウハウ、ブランド力、知名度などの経営資源を活用できるようになるため、安定的な受注の実現や、新規顧客獲得により事業の成長を後押しするなどの効果が期待できます。

特に零細〜中小企業の場合、リソースの乏しさや、閉鎖的な社風・価値観などが理由で事業の成長に限界が生じているケースが少なくありません。こうした企業が優良な会社に買収されると、新しい価値観やノウハウ、豊富なリソースを社内に取り入れることができ、結果的に現状を打開しやすくなるでしょう。

会社の売却益獲得

会社が買収される場合、株式や事業の売却対価として現金を受け取れます。受け取れる金額はケースバイケースですが、基本的には今後数年分の利益またはそれ以上の金額を受け取れるケースが多いです。

ある程度大きな額の現金を得ることで、経営者は引退後に経済的余裕のある生活を送れるようになります。もしくは、新しい事業や既存事業の成長に資金を投資することも可能です。

会社を畳む場合に諸費用が発生する廃業と比較して、より多くの現金を手元に残せる可能性が高い点で、会社が買収されるメリットは大きいといえます。

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会社が買収されるデメリット

一方で、会社が買収されると以下4つのデメリットが生じるおそれがあります。

  • 従業員や取引先からの反発
  • 買い手が見つからない・不利な条件で売却するリスク
  • 買収後の一定期間にわたって自由が制限されるリスク
  • 生きがいや経営者としての地位を失う

それぞれ解説します。

従業員や取引先からの反発

ここまで述べた通り、会社が買収されると従業員の雇用条件や働く環境、取引先との契約条件などが変更される可能性があります。それによって不利益を被ると考えられる場合、従業員や取引先から買収前後に反発を受けるリスクが生じるでしょう。

最悪の場合、従業員が離職したり、取引先から契約を打ち切られたりしてしまい、売上が大幅に低下します。この事態を避けるためには、売り手側でも買収が決定したタイミングで、従業員や取引先との対話を行い、不安を取り除くことが求められます。

買い手が見つからない・不利な条件で売却するリスク

売り手側が主体的に会社を売却する場合、買い手を探す必要があります。

業績や保有する経営資源に魅力があれば、スムーズかつ満足できる条件で売却できる可能性は高いでしょう。しかし、そうでない場合には時間をかけても買い手が見つからなかったり、見つかっても不利な条件でしか売却できなかったりするおそれがあります。

不利な条件を受け入れてしまうと、買収された後に経営陣自らが後悔したり、取引先や従業員に迷惑をかけたりするリスクがあります。
こうした事態を避けるには、あらかじめ企業価値の向上に努めて、買収する魅力を高めることが効果的です。

買収後の一定期間にわたって自由が制限されるリスク

会社が買収される際、契約書に「キーマン条項」を盛り込まれる場合があります。キーマン条項とは、会社売却後の一定期間にわたって、経営陣などの重要なポジションに立つ人が引き続き売却した事業や会社の運営に携わることを定める条項です。

つまり、この条項が定められることで、売り手側経営者はしばらくの間売却した会社に拘束されるのです。「会社売却後は引退して悠々自適に暮らしたい」、「別の事業にチャレンジしたい」などを考えている場合は注意しましょう。

※関連記事:キーマン条項(ロックアップ)とはM&Aに関連する条項!メリットを紹介

生きがいや経営者としての地位を失う

会社が買収された後に経営から引退すると、生きがいや経営者としての地位を失う方は少なくありません。特に、長年会社経営に心血を注いできた方は大きな寂しさを感じると考えられます。また、株主や経営者としての地位を失うことで、会社が成長した際に得られるはずの利益や恩恵も得られなくなります。

会社を売却する際には、あらかじめ引退後の生活や生きがいとなる趣味などを考えておきましょう。

※関連記事:会社譲渡とは?手続きやメリットを紹介!かかる税金・手数料も解説します

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会社買収によるM&Aの事例

会社買収の目的や手法を理解するには、実際のM&A事例を確認することが効果的です。会社買収のスキームが用いられたM&Aを3例取り上げ、M&Aに至った目的や用いられた手法、取得価額などを解説します。

※関連記事:M&Aの成功事例26選!成功に向けたポイントや、失敗事例も解説!

オリックスによるディーエイチシーの買収

買い手のオリックスは金融や不動産などの事業、売り手のディーエイチシーは化粧品・健康食品の研究開発、製造および販売等の事業を展開しています。

買い手側は、ヘルスケア分野におけるネットワーク拡大を図る目的で会社買収を行いました。2023年1月に実施されたM&Aでは、株式譲渡のスキームによってオリックスがディーエイチシー株式の91.1%を取得しました。取得価額は約3,000億円(100%取得時点の概算額)です。

※参照元:オリックス「ディーエイチシーの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

任天堂によるNLGの買収

買い手の任天堂はコンピュータゲームなどの開発・製造・販売事業、売り手のNLG(Next Level Games)はカナダにおいてゲームソフトウェアの企画・開発事業を展開しています。

買い手側は、開発リソースの安定的な確保やソフトウェアの開発スピードおよびクオリティ向上を図る目的で会社買収を行いました。2021年3月に実施されたM&Aでは、株式譲渡のスキームによって任天堂がNLGの全株式を取得しました。取得価額は非公表です。

※参照元:任天堂「カナダのソフトウェア開発会社Next Level Games Inc.の子会社化に関するお知らせ

ベネッセホールディングスによるプロトメディカルケアの買収

買い手のベネッセホールディングスは教育や介護などの事業、売り手のプロトメディカルケアは介護・福祉・医療領域における広告関連事業や福祉用具貸与・販売事業などを展開しています。

買い手側は、介護領域の事業拡大を図る目的でM&Aを行いました。一方で売り手の親会社は、事業ポートフォリオの選択と集中を目的に子会社を売却しました。2021年6月に実施されたM&Aでは、株式譲渡のスキームによってベネッセホールディングスがプロトメディカルケアの全株式を取得しました。取得価額は42億5,000万円です。

※参照元: 
ベネッセホールディングス「プロトメディカルケアの株式取得に関する株式譲渡契約締結のお知らせ
プロトコーポレーション「連結子会社の異動(株式譲渡)に関するお知らせ

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会社買収の方法・スキーム

会社買収で主に用いられる5つの方法を解説します。

株式譲渡

売り手企業の発行済み株式を取得することで、経営権の獲得を図るスキームです。株式譲渡には、相対取引、市場買付け、公開買付け(TOB)という3つの手法があります。

他のスキームと比べて、債権者保護などの手間のかかる手続きが少ない点や、権利義務を包括的に承継できる点などがメリットです。ただし、前述のとおり簿外債務や偶発債務を引き継ぐリスクがあります。

※関連記事:株式譲渡とは?実施の流れや準備、メリットなどを解説

事業譲渡

売り手企業における事業の一部もしくは全部を取得するスキームです。株式譲渡と異なり、売り手企業は法人格を維持したまま各種契約や資産等を譲渡します。

事業譲渡では、売買する資産や権利義務の範囲を指定できます。そのため、簿外・偶発債務や不要な資産を取得せずにM&Aを行える点が最大のメリットとなります。
ただし、取得する権利義務(雇用契約や取引先との契約など)ごとに個別で引き継ぐ必要があります。

株式交換

自社株式などを対価として、売り手企業における発行済株式の全部を取得するスキームです。主に、完全子会社化による会社買収を図るケースで活用されます。

株式を対価とすることで、買収資金の準備が不要となるメリットがあります。ただし、原則として株主総会の特別決議を要する点や、株式譲渡と同様に簿外債務などの引き継ぎリスクに注意が必要です。

※関連記事:株式交換とは?実施のメリットや流れ、注意点を解説

株式交付

自社株式を対価として、売り手企業を子会社とする目的で発行済株式を取得するスキームです。株式交換とは異なり、一部の株式のみを取得することも可能です。一方で、対価として自社株式を全く交付しないことや、株式会社以外が買い手となることは認められません。

株式交付のメリットには、完全子会社化をせずに会社買収できる点があります。一方、デメリットとして、すでに子会社となっている会社の株式を追加取得する場合には活用できない点が挙げられます。

会社分割

ある会社が有する権利義務の全部もしくは一部を取得するスキームです。既存企業が取得する場合は吸収分割、新設した会社が取得する場合は新設分割と呼ばれます。
組織再編や一部の事業のみを買収するケースで用いられることが一般的ですが、株式譲渡との併用によって会社買収を図るケースも少なくありません。

具体的には、譲渡対象となる事業のみを新設分割によって切り離し、新設された会社を株式譲渡によって買収する流れとなります。株式譲渡と新設分割を併用することで、不要な資産や簿外債務等を除外した上で会社買収できます。

会社分割単体のメリットとしては、現金の準備がなくても買収を実施できる(株式を対価にできる)点が挙げられます。一方で、労働契約承継法に則った手続きを要することや、株主構成に変化が生じる点がデメリットです。

※関連記事:会社分割とは?事業譲渡との違いや実施方法、ポイントを解説

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会社買収のプロセス・手続き

会社買収の手続きは、一般的に以下のプロセスで進められます。

  1. M&Aの事前準備
  2. マッチング・交渉
  3. デューデリジェンス
  4. 最終契約・クロージング

1.M&Aの事前準備

はじめに、事前準備として「目的の明確化」や「M&A戦略の策定」を実施します。たとえば、「経営の多角化」や「事業規模の拡大」などが目的、「多角化のために、進出する領域で〇%のシェアを有する企業をターゲットとする」などが戦略となります。

目的や戦略を明確にすることで、M&Aで意図した利益を得やすくなり、失敗の可能性を軽減できます。

2.マッチング・交渉

事前準備が完了したら、買収先の会社を探すプロセスに入ります。一般的には、マッチングやその後の実務をサポートしてもらうために、M&A仲介会社やM&Aアドバイザーなどの専門家と契約した上で実施します。仲介会社などは幅広いネットワークやM&Aの専門知識を有しているため、自社にとって最適な買収先を探せる上に、売り手企業とのトラブルを回避しやすくなるでしょう。

自社の戦略や希望条件に合致する買収先候補が見つかったら、交渉を実施します。交渉では、買収価格や従業員の処遇、M&Aのスキームなどを協議します。条件に対してある程度合意がなされたら、双方の認識にズレが生じないために、合意内容を基本合意書に取りまとめることが一般的です。

3.デューデリジェンス

交渉が完了したら、買い手またはM&A専門家によるデューデリジェンスが行われます。デューデリジェンスとは、買収対象会社の詳細な調査を行うプロセスです。財務や法務、人事、ビジネスなど各領域の情報を収集・分析することで、M&Aの成否を左右するリスクを洗い出します。洗い出されたリスクをもとに、買収金額・条件の調整や買収可否の判断を行います。

※関連記事:デューデリジェンスとは?種類や実施の流れ、必要書類を解説

4.最終契約・クロージング

デューデリジェンスの結果を踏まえて、修正した条件をもとに最終的な交渉が実施されます。交渉によって双方が合意したら、最終契約書を締結します。最終契約書には、買収の諸条件に加えて、表明保証やクロージング条項などが盛り込まれます。最終契約書が締結された時点で、法律上正式にM&Aの取引は成立となります。

最終契約書の締結後、譲渡対象物の受け渡しや対価の支払いなどのクロージングが実施されます。クロージングの実行により、M&Aの取引自体は完了です。なお、クロージングが完了したら、事前に策定した計画に沿って経営統合(PMI)を進めていきます。

※関連記事:M&Aのクロージングとは?手続きや必要な書類まとめ

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会社買収によって株価はどうなる?

会社買収を行うことで、買い手側と売り手側の株価はどのように変動するのでしょうか?株価が変動する要因や、会社買収によって株価が上昇・下落する主なケースを解説します。なおこの章では、株式が市場で流通している上場企業を前提に解説を進めます。

株価が変動する要因

株価とは、株式の価格です。株価と発行済株式数を掛け合わせることで、会社の時価総額を計算できます。

この前提より、株価は会社の価値(時価総額)を変動させる要因によって左右されると言えます。具体的には、「市場の変化」や「各企業における状況の変化」に対して、「株主がどのように反応するのか」によって変動します。

たとえば対象企業が属する市場が拡大していれば、株主の期待度が高まることで株価は上がる可能性が高まります。また、最新の業績や成長性が高い場合、同様に株主からの期待が集まるため、株価は上昇するでしょう。

買収側の株価が上がる・下がるケースとは

買収に関しても、会社の状況変化に対して、株主(投資家)がどのように反応するかによって株価が変動します。

買収後に会社の業績や成長性が上昇すると投資家が判断すると、株価は上昇する可能性が高いです。具体的には、事業規模の拡大による売上増加や、買収した事業とのシナジー創出などが期待できる場合が該当します。

反対に、買収に対して否定的な考えを投資家が抱いた場合には、株価は下落します。たとえば、買収金額が割高であると判断された場合や、シナジー効果や売上増加などのメリットを期待しにくいと判断された場合が当てはまります。

売却側の株価が上がる・下がるケースとは

売却側に関しても、同様に「M&A後に業績向上などの恩恵を見込めるか」によって株価は変動します。

会社を売却した後に業績や成長性が高まると投資家が判断した場合、株価は上昇する可能性が高いでしょう。たとえば、大手企業の傘下入りを果たすケースが該当します。また、買い手側の買収意欲が高い場合には、買収プレミアムが上乗せされることで株価が上昇します。

反対に、会社売却後に業績が低迷すると判断されると、株価は下落すると考えられます。

※関連記事:自社株買いで株価はどうなる?

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会社買収を成功させるコツ

会社買収を成功させる4つのコツを解説します。

シナジー効果を期待できる買収先を選定する

会社買収の成功には、シナジー効果を期待できる買収先の選定が重要です。前述のとおり、シナジー効果が創出されると、売上増加やコスト削減などの効果を得られます。買収に費やした費用を大幅に上回る恩恵を得ることで、会社買収の成功に大きく近づきます。

シナジー効果を期待できる買収先を選定するには、「バリューチェーン分析」や「アンゾフのマトリクス」などのフレームワークを駆使し、売上やコストの観点から期待されるシナジー効果を定量化すると良いでしょう。

デューデリジェンスによってリスクの洗い出しを徹底する

先ほど解説したデューデリジェンスの徹底も、会社買収を成功させる上で欠かせません。デューデリジェンスを疎かにすると、簿外債務や偶発債務を引き継いで莫大な損失を被る可能性や、期待していたシナジー効果を得られずに買収資金を回収できないリスクが高まるためです。

公認会計士や税理士などの専門家を起用し、慎重にリスクの洗い出しを行いましょう。財務諸表などの資料を精査することはもちろん、経営陣へのインタビューなどを通じて、目に見えないリスクを分析することが重要です。また、リスクを最小限に抑えるための対策の検討も不可欠です。

PMIの計画策定と実行を疎かにしない

買収後に行う経営統合(PMI)は、前述のとおり多大な労力を要する上に難易度が高いです。ですが、会社買収を成功させるには疎かにできません。

経営統合が円滑に進まないと、従業員の離職やITシステムの稼働に関する不備といった問題が生じるリスクが高まります。その結果、当初想定していたシナジー効果や収益を得られず、会社買収の費用を回収できなくなるおそれがあります。

こうした事態を防ぐためにも、前述のとおり専門家を起用した上で入念に計画を策定することが重要です。また、PMIの実施に当たっては、営業やIT部門など、実務を担当する人材の協力も欠かせません。そのため、実務担当者も含めたプロジェクトチームを組んだ上で進めていくことが推奨されます。

自社の規模に合わない大規模な買収を回避する

買収の規模が大きいほど、経営統合の複雑さや失敗のリスクは増します。また、失敗した場合に負う損失の金額も膨れ上がります。そのため、自社の事業規模に見合わない大規模な買収は避けるのが得策です。

会社買収の実績が豊富でない限り、自社よりも規模が小さい会社を買収先とするべきでしょう。

※関連記事:会社を売りたい場合に意識するポイントは?売却の流れを合わせて解説

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会社買収・売却の税務

会社買収・売却でかかる税金はM&Aのスキームごとに異なります。M&Aのスキームを検討する際には、課される税金の違いなども踏まえて有利なものを検討することが重要です。この章では、代表的なスキームである「株式譲渡」と「事業譲渡」で発生する主な税金を紹介します。

株式譲渡

売り手側に関しては、株主が個人か法人かによって税金は異なります。株主が個人の場合、譲渡所得(譲渡金額−諸費用)に対して20.315%の所得税等(住民税および復興特別所得税を含む)が課されます。法人の場合、譲渡益とその他の損益を合算した所得金額に対して法人税等が課されます(税率は法人によって異なります)。

一方で買い手側に関しては、原則として税金は発生しません。ただし、著しく低い価額で株式を取得する場合には、例外的に買い手側にも課税されます。

上記の前提で、たとえば個人間で株式を取得する場合には贈与税(「相続税法」第7条)、法人株主が株式を取得する場合には受贈益に対して法人税が課されます(「法人税法」第22条2項)。

※関連記事:株式譲渡益にかかる税金とは?わかりやすく解説
※参照元: 
e-Gov「相続税法」第7条
e-Gov「法人税法」第22条2項

事業譲渡

売り手側に関しては、法人の場合に法人税等、個人の場合に所得税や住民税等が課されます。法人税等は、譲渡益を他の損益と合算し、そこに法人税等の実効税率(約30%)をかけることで計算されます。事業譲渡の譲渡益は、「事業譲渡の金額 – 譲渡対象資産 – 譲渡対象負債」によって算出します。

一方で買い手側に関しては、取得した資産に課税対象が含まれている場合に消費税が課されます。課税対象となる資産には、営業権や有形固定資産(土地を除く)などがあります。また、不動産を事業譲渡によって取得する場合、登録免許税と不動産取得税も課されます。

国税庁「登録免許税の税額表」および東京都主税局「不動産取得税」によると、登録免許税と不動産取得税の計算方法および税率(原則)は以下のとおりです。

  • 登録免許税:不動産の価額×20/1000
  • 不動産取得税:不動産の価額×3/100【または4/100】

※関連記事:事業譲渡で掛かる消費税の算出方法は?課税対象になる資産も解説!
※参照元: 
国税庁「登録免許税の税額表
東京都主税局「不動産取得税

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会社買収におけるバリュエーションの方法

バリュエーションとは、買収する会社の企業価値を評価するM&Aのプロセスです。最終的な買収金額は、売り手企業との交渉をもとに決定します。バリュエーションの結果があると、客観的な基準をもとに買収金額の交渉を行えると言えるでしょう。

この章では、簡易的な算出方法である「年倍法」と、バリュエーションにおける3つのアプローチを解説します。

簡易的な算出方法(年買法)

中小企業のM&Aでは、簡易的にバリュエーションを行える年買法(年倍法)を用いる場合があります。
年買法(年倍法)とは、時価純資産に3〜5年分の営業利益を「営業権」として足し合わせた金額を企業価値とする手法です。

後述するコストアプローチの一種であり、財務諸表さえあれば容易に活用できる点がメリットです。一方で、ファイナンス理論に基づいていない点や市場の状況を反映していない点などがデメリットです。

※関連記事: M&Aの売却価格の目安は?算定法や買収額をアップさせる方法を解説

インカムアプローチ

インカムアプローチとは、買収対象の将来的な収益性を基準に企業価値を評価する方法です。具体的な手法には、DCF法や収益還元法、配当還元法などがあります。

買収対象の将来性や個別の価値(独自の強みなど)を加味できる点が長所です。一方で、事業計画書を作成する売り手企業の恣意性を排除できない点や、清算する会社には適さない点などが短所となります。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、買収対象と類似する上場企業や類似するM&A取引などを基準に企業価値を評価する方法です。具体的な手法には、類似会社比較法(マルチプル法)や市場株価法、類似取引比較法などがあります。

市場の情報を基準とすることで、客観性の高い企業価値評価を行える点が長所です。一方で、買収対象における個別の事象を反映できない点や、類似会社がないケースでは利用できない点などが短所となります。

コストアプローチ

コストアプローチとは、買収対象の純資産を基準に企業価値を評価する方法です。具体的な手法には、時価純資産法や簿価純資産法などがあります。

財務諸表をもとに企業価値評価を行うため、客観性の高さが長所となります。一方で、将来的な収益性や市場の状況を反映できない点、財務諸表に誤りがある場合に適切な評価を行えない点などが短所となります。

※関連記事:M&Aのバリュエーション(企業価値評価)とは?算定方法も紹介

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会社買収にかかる費用

最後に、会社買収でかかる主な費用を解説します。

買収費用

買収にかかる費用です。買収にかかる費用(買収金額)は、前述のとおり企業価値やデューデリジェンスの結果をもとに、売り手企業との交渉によって決定します。

仲介手数料

仲介手数料とは、M&A仲介会社やM&AアドバイザーなどのM&A専門家に業務を依頼することで発生する費用です。報酬体系は仲介会社によって異なります。主な手数料に以下のものがあります。

着手金

M&A仲介会社と契約した時点で発生する手数料です。金額は30万円〜200万円程度と比較的安いものの、M&Aの成否に関係なく返還はされません。なお、着手金を無料としている専門業者も多いです。

中間報酬

M&Aプロセスが一定以上進んだタイミング(基本合意書の締結後など)で発生する手数料です。金額は成功報酬の10〜20%、または100万円程度に設定されるケースが多いです。着手金と同様に、返還されないため注意が必要です。

リテイナーフィー

専門業者との契約期間中、毎月発生する手数料です。金額は月30万円〜50万円程度が相場です。こちらも無料となっているケースが多いです。

成功報酬

M&Aの契約が成立した時点で発生する手数料です。多くの仲介会社では、レーマン方式によって成功報酬の金額を算出しています。レーマン方式では、取引金額に対して1〜5%の手数料率を適用することで成功報酬を算出します。

デューデリジェンス費用

売り手企業の調査を公認会計士などの専門家に依頼する際に発生する費用です。報酬の金額は、各専門家の工数と時間単価によって変動します。財務や法務など、依頼する調査分野ごとに費用が発生します。

その他

上記以外には、主に以下の費用が発生します。

  • 登記費用:所有権移転登記などの際に発生
  • 税金:消費税などの税金が発生

※関連記事:M&Aにかかる費用の相場・内訳|買い手・売り手別の費用と費用を抑えるポイント

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まとめ

本稿では、会社買収の意味や方法、メリット、流れなどを解説しました。

会社買収には、株式譲渡や株式交換などの方法があり、状況に応じて最適なスキームを活用することが重要です。シナジー効果を期待できる会社を買収するなどのコツを押さえることで、既存事業の競争力強化や事業の多角化などのメリットを得られます。
ただし、簿外債務の引き継ぎや減損リスクなどもあるため、デューデリジェンスやPMIの徹底が重要となるでしょう。

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