海外M&Aとは何か?海外M&Aの目的や注意点について詳しく解説

2023年10月3日

海外M&Aとは何か?海外M&Aの目的や注意点について詳しく解説

このページのまとめ

  • 海外M&Aとは海外で活動を行う事業者をM&Aによって自社に統合することを言う
  • 海外M&Aは、市場拡大・新規市場の開拓を目的としているケースが多い
  • 海外M&Aを行うことで、特定の地域で迅速に経済活動を行えるようになる
  • 海外M&Aは新技術の迅速な導入や規模の経済の活用のためにも利用される
  • 海外M&Aを行う場合には、商習慣や文化の違いに注意が必要

海外で営業する事業者のM&Aを検討している経営者の方もいるのではないでしょうか。海外M&Aを実施すれば、海外市場に参入することができ売上規模を飛躍的に拡大できる可能性がありますが、成功させるにはさまざまな注意点があり、難易度が高いM&Aでもあります。

このコラムでは、海外M&Aの定義、目的、実際の事例について解説していきます。実際の海外M&A事例も紹介するので、ぜひお役立てください。

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海外M&Aとは

海外M&Aとは、企業が海外の他の企業を買収したり、統合する行為を指します。特に、自国の企業が海外の企業を買収または統合する場合を指すことが多いです。

譲渡企業または譲受企業のいずれかが海外の企業であるとき、その取引は海外M&Aと見なされます。国境を越えて行われるため、クロスボーダーM&Aとも呼ばれることもあります。

関連記事:クロスボーダーM&Aとは?メリットや成功のポイント、注意点を解説

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海外M&Aが行われる目的

ここでは、企業が海外M&Aを行う目的について、解説していきます。

海外での競争力強化

海外の特定の地域に進出するためには、その地域ですでに事業を展開している企業をM&Aで取得するのが効果的です。新しい市場で事業を展開する場合、一から事業を成長させるのは時間がかかるためです。

M&Aを活用すれば、その地域における取引市場に容易にアクセスできるようになり、既存の顧客ベースを活用して新製品やサービスの普及を加速することができます。さらに、買収した企業のブランド名やビジネスネットワーク、現地の知識と経験など、有益なリソースも得ることが可能です。

現地市場におけるニーズの把握

海外でビジネスを行う際、異なる文化的背景を持つ人々から新たな視点やアイデアを得ることは極めて重要です。異なる文化的背景を持つ人の意見を聞くことで、新市場への理解が深まり、消費者の行動や嗜好を理解するための洞察を深めることができます。

たとえば、日本の食品会社がアメリカ市場に進出を計画しているとします。ここで重要なのは、アメリカ人の食文化や消費者の行動・嗜好を理解することです。アメリカ人は一般的にスナック文化が強く、フードトラックやファストフードが広く受け入れられています。また、近年は、ヘルシーフードの需要も増加している国です。

海外M&Aを行うことによって、このような文化的な嗜好性を詳細に把握することができるため、その国の需要に合致した製品開発やマーケティング戦略を適切に立案することが可能となります。

規模の経済の活用

製品やサービスの製造・販売規模を拡大することにより、規模の経済(スケールメリット)を活用することが可能です。規模の経済を活用することで、一部のコストを削減し、利益率を向上させることができます。

さらに、販売規模の拡大は市場シェアの拡大とブランド認知度の向上につながります。これにより、さらなる市場の獲得と成長を実現し、企業の安定性と持続可能性を高めることが可能です。

たとえば、テレビを製造する企業が、同じ事業を営む企業を買収したとします。すると、その企業のテレビの生産量が増えることで、部品の大量購入や生産ラインの効率化が行われ、テレビ一台あたりの生産コストを下げることが可能となります。これが「規模の経済」のメリットであり、生産コストの削減は利益率を向上させることにつながります。

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海外M&Aの注意点

海外M&Aには、異なる商習慣や文化、言語の壁、物理的な距離などに起因するさまざまな困難が伴うため、ハードルが高いものです。

ここでは、海外M&Aを行うにあたって、リスクとなり得る点について解説します。

商習慣や文化の違いを理解する

企業が異なる文化圏でビジネスを展開する際、その地域の商習慣や文化の理解が必要です。

買収対象の国のビジネススタイルや意思決定プロセス、労働習慣などの違いを無視すると、統合後の業績低下や組織間の摩擦を引き起こす可能性があります。

これらの違いを理解し尊重することが、海外M&Aを成功させるために重要です。

企業価値算定には高度な分析力と経営判断能力が必要となる

海外企業の企業価値評価は容易なことではありません。企業を評価する際には、その国の経済状況、規制環境、競争状況などを考慮する必要があります。つまり、その国の市場動向を深く理解していないと、正確な企業価値評価を行うことは難しいでしょう。

また、海外M&Aは企業規模が大きいものが多いため、企業の財務状況や業績、将来の成長見込みなどを評価するためには、高度な分析能力と経営判断力も必要になります。

シナジー効果を過度に期待しすぎない

海外M&Aは、企業が統合することによるシナジー効果を目指すものです。しかし、期待するシナジー効果と現実には乖離が生じることがあります。

たとえば、マーケティング、生産、R&Dなどの部門で効率化やコスト削減を期待していたが、実際には文化的な違いや組織的な抵抗により、その効果が現れないことがあります。

このような乖離を避けるためには、事前の厳密な分析と明確な統合計画が必要となります。

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海外M&Aの事例5選

ここからは、日本企業による海外M&A事例を5つ紹介します。

オリンパス社による内視鏡検査向けクラウドAIの英医療会社の買収

2023年6月、 医療分野などで精密機器を製造するオリンパス株式会社は、英国のOdin Vision社を子会社化することに成功しました。

Odin Vision社は、内視鏡画像診断に使用する画期的なクラウドベースのAI技術を開発している企業です。この買収により、オリンパス社はOdin Visionが開発したソリューションを取り入れられるようになりました。

リアルタイムの手技や臨床データを活用することで、医療スタッフの管理作業の負担を減らし、臨床現場での意思決定を助け、医療スタッフが患者に対してより良い医療ケアを提供できるよう支援することを目指すとしています。

参照元:オリンパス株式会社「オリンパス、内視鏡画像診断に関するクラウド型AI技術スタートアップ、 英国Odin Vision社を買収

三菱電機社による英ICONICS UKの全株式を取得

2023年6月、三菱電機株式会社は、完全子会社である米ICONICS, Inc.(以下、ICONICS社)社を介して、イギリスのICONICS UK, Ltd.(以下、ICONICS UK社)の全株式を取得して子会社化しました。

ICONICS社は、SCADAと呼ばれる製造現場のシステム監視とプロセス制御を行うソフトウェアや、IoT分析ソフトウェアを開発・販売する企業です。ICONICS UK社は、イギリスにおけるICONICS社の販売代理店で、独自にSCADAやクラウドアプリケーションの開発・販売も行っていました。

今後、三菱電機社はICONICS UK社のクラウドアプリケーション開発技術や専門知識を活用し、製造現場の機器とシステムの最適化を達成することを目指すとしています。

参照元:三菱電機株式会社「ニュースリリース – 英国ICONICS UK, Ltd. を買収

新日本科学社による米バイオ企業を完全子会社化

2023年5月、株式会社新日本科学は、もともとライセンスを提供していた米国のバイオテクノロジー会社であるSatsuma Pharmaceuticals, Inc.(以下「Satsuma社」)を買収することに成功しました。

Satsuma社は、偏頭痛の急性治療用経鼻投与薬(STS101:ジヒドロエルゴタミン/DHE)について、大規模なフェーズ3臨床試験をすでに完了しており、2023年3月に米国FDAに新薬承認申請を提出するなど、今後の成長が見込める企業です。

新日本科学は、今回の子会社化を通じて、急性期の偏頭痛に悩む患者様の生活の質(QOL)の向上に貢献したいと説明しています。

参照元:株式会社新日本科学「Satsuma Pharmaceuticals, Inc.の買収に関するお知らせ

ニコン社によるC線・CT検査装置の米Avonixの子会社化

2023年4月、株式会社ニコンの子会社であるNikon Americas Inc.は、X線/CT検査機器の製造や販売を手掛ける米国企業Avonix Imaging, LLC(以下「Avonix社」)を子会社化しました。

ニコンとAvonix社は、ニコンの産業機器事業部門の製品である大型検査用CT装置の分野で、2015年から共同開発や販売、サービス提供などを通じて協力してきました。

この子会社化を通じて、両社は、新製品開発を加速させるとともに、Avonix社の自動車や宇宙航空業界の顧客ベースを活用して事業を強化する予定です。

また、ニコンは、2022年から2025年度の中期経営計画で、デジタル製造業を戦略的なビジネスとして位置付けており、今回の子会社化はその一環といえます。

参照元:株式会社ニコン「米国Avonix Imaging, LLCの子会社化に関する手続きを開始

内田洋行によるルクセンブルクのソフト会社の買収

2023年5月、2023年5月15日、株式会社内田洋行はルクセンブルクのOpen Assessment Technologies S.A.(以下、OAT社)の全株式を取得し、完全子会社化することを発表しました。

OAT社は、コンピュータベースのテストプラットフォーム(CBT)の開発で世界をリードしており、経済協力開発機構の学習到達度調査などにも採用されています。

この取得により、内田洋行社はOATの経営と開発を支援し、両社の知識を活用して日本のCBT市場を拡大し、学習デジタルエコシステムを構築することを目指します。

また、内田洋行社の教育ICT分野にもシナジーが生まれ、全国の学校へのタブレット端末の導入や、オープンソースのCBTシステムを活用した学習デジタルエコシステムの開発を進めていくとしています。

参照元:株式会社内田洋行「Open Assessment Technologies S.A.の株式取得(完全子会社化)に関するお知らせ

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まとめ

海外M&Aとは、海外の企業を買収または統合するM&A手法の1つです。市場拡大や新規市場進出、競争力強化、および規模の経済の活用を目的として行われ、地元企業の買収によってリスク分散と事業の安定化も図れます。

しかし、海外M&Aには文化や商習慣の違い、言語の壁、物理的な距離といったさまざまな課題が存在します。これらの課題に対処するためには、異文化を尊重するとともに、地域の経済状況や競争環境、企業の財務状況を正確に評価するための高度な分析力と経営判断力が求められます。もし海外M&Aの実施を検討する場合、海外M&Aに長けた専門家のアドバイスを受ける必要があるでしょう。

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