M&Aでの事業再生の方法は?ポイントや企業再生との違いについて解説

2024年7月5日

M&Aでの事業再生の方法は?ポイントや企業再生との違いについて解説

このページのまとめ

  • 事業再生とは、事業単位の見直しや改善を通して再生を図ること
  • M&Aで事業再生を行う方法は4種類ある
  • M&Aによる事業再生はポイントを押さえればさまざまなメリットがある
  • 事業再生に活用できる支援制度も多数ある

経営状態が悪化した際に、M&Aを活用して事業再生を検討している方もいるのではないでしょうか?M&Aによる事業再生には、いくつかのポイントがあります。

本コラムでは、M&Aで事業再生を行う方法、メリットやポイントなどについて解説します。また、M&Aで事業再生を行う際に活用できる支援制度も併せてご紹介します。M&Aを活用した事業再生でお悩みの際は、ぜひ参考にしてください。

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「事業再生」とは

事業再生とは、倒産や廃業を防ぐために、事業単位の見直しや改善を通して、経営状態が思わしくない事業の収益を上げられるように再生を図ることです。一般的には、不採算事業を対象とし、債務整理や再生計画で健全化を図ります。債務整理や再生計画では再生できない場合には、不採算事業を切り離して清算し、採算事業のみを継続することもあります。

事業再生の方法4つ

M&Aで事業再生を行う方法には、以下の4つがあります。

  • 事業譲渡方式
  • 会社分割方式
  • 第二会社方式
  • 企業再生方式

それぞれの特徴を把握して、自社に合った事業再生を行う必要があります。
以下にて、それぞれの方式の特徴やメリットを解説していきます。

事業譲渡方式

事業譲渡方式とは、収益性が見込める事業など、事業の一部を別の企業に譲り渡す方法です。メリットとしては、以下の4つがあげられます。

  • 譲渡する事業範囲を自由に決められる
  • スポンサーが見つかりやすい
  • 譲渡益は即座に事業資金に回せる
  • 事業の劣化を防ぐことができる

事業譲渡方式は、売り手企業と買い手企業が合意できれば、譲渡する範囲を自由に決めることが可能です。事業が選択でき清算手段が明快なので、スポンサーが見つかりやすい傾向にあります。さらに、事業の譲渡益は現金で会社に支払われるため、換金する手間が省け、すぐに事業資金に回せます。早期に事業譲渡方式をとることで、企業全体の経営が悪化していても、譲渡する事業の劣化を防ぐことが可能です。

会社分割方式

会社分割方式とは、事業譲渡方式と同じく収益性の見込みがある事業を切り離して、既存会社(吸収分割)または新設会社(新設分割)に継承させる方法です。

事業譲渡方式との違いは、労働契約承継法の適用と取得対価の支払い方法です。事業譲渡方式は労働契約承継法が適用されないため、事業譲渡に伴う従業員の転籍手続きを個別に行う必要があります。一方で、会社分割方式は労働契約承継法が適用されるため、労働者との協議や事前通知のみで、従業員の転籍手続きを個別に行う必要がありません。

ただし、新設会社に譲渡事業を継承させる場合、取得対価は株式による支払いが原則です。売り手企業が上場企業ではない場合、換金性が悪く事業資金に回すのに時間がかかる可能性があります。

第二会社方式

第二会社方式とは、事業譲渡や会社分割を行うことで収益性の高い優良事業を別の企業(第二会社)に分離し、不採算事業が残った旧会社を特別清算する方法です。

メリットとしては、以下の2つが挙げられます。

  • 収益性のある事業のみを引き継げる
  • 不採算事業を精算できる

単に売り手企業が法人格を消滅させると、技術や従業員を失ってしまいますが、第二会社方式を利用することで、収益性のある優良事業のみを別企業が引き継ぎ、事業再生を果たせます。

企業再生方式

企業再生方式とは売り手企業を清算せず、法人格を維持した状態で、将来性のある事業を中心に再生を図る方法です。スポンサー企業の傘下に入り、子会社として事業の立て直しを目指します。

メリットとしては、以下の2つがあげられます。

  • 資金面の問題をクリアできる
  • 事業再生の計画性が増す

スポンサー企業から資金援助してもらうことで、資金面の問題がクリアできます。また、資金面で余裕ができることから、事業再生の選択肢が広がります。

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企業再生との違い

事業再生と企業再生では、対象となる範囲が異なります。企業再生は企業全体の再生、事業再生は事業単位の再生のことを指します。このように、企業再生の方が事業再生よりも対象範囲が広いのが特徴です。

ただし、どちらも最終的な目的は会社全体を健全化することなので、同一の意味合いで使われることが多いです。あまり違いを意識する必要はないでしょう。

事業再生について検討するべきタイミング

事業再生は着手するタイミングが重要です。
事業再生は、必ずしも全ての企業が成功させられるわけではありません。資金繰りが完全に手詰まりになってから決断するのでは遅く、倒産や廃業を余儀なくされる場合もあります。

事業再生を検討すべきタイミングとして、以下の2つの時期があげられます。

  • 業績が悪化したとき
  • 廃業を検討しているとき

それぞれ解説していきます。

業績が悪化したとき

業績が悪化して、資金繰りが難しくなったときには、事業再生を検討する必要があります。早期に着手することで事業再生が見込めます。まずは、以下のことを行いましょう。

  • リスケジュール(借入金の返済計画変更)
  • 事業整理
  • 経営革新

このように資金繰り改善や経費削減を行うことで、事業再生を目指します。

廃業を検討しているとき

経営状態が深刻な状況の場合、廃業か事業再生のいずれかを選択する必要に迫られるケースが多いです。このとき、1つでも収益性が見込める事業があれば、外部から資金援助を受けたい場合に資金力のあるスポンサーを見つけやすくなります。そうすることで、今後事業に利益計上が期待でき、将来性があれば廃業を免れる可能性が高くなります。

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事業再生の種類

事業再生の種類には、以下の4つが挙げられます。

自力再生企業が独自に資金調達や経営改善を行い、再生を目指す方法
私的整理債権者との直接交渉により、債務の一部免除や弁済期の延長などを行う方法
法的整理裁判所を通じて、民事再生法や会社更生法に基づく手続きを行う方法
第三者支援による再生他社からの資金援助や経営参画、M&Aによって再生を図る方法

これらの方法は、企業の状況や目指す再生の形態に応じて選択されます。

自力再生

自力再生は、債権者や他企業の手を借りずに、企業が独自に経営改革や事業収益力の改善策を構築・実践することで事業を立て直す方法です。このアプローチでは、一定期間の支払猶予を得ることが多く、企業は自主的な再生計画に基づいて行動します。

私的整理

私的整理は、法的手続きを経ることなく、債権者との直接交渉によって債務整理を行う方法です。事業の規模や現状に応じて手続きを柔軟に変更でき、法的整理に比べて時間と費用を抑えることが可能です。

法的整理

法的整理には、民事再生、会社更生、破産、特別清算の4種類があります。これらの手続きを通じて、債務超過企業は債務部分を大幅にカットし、残債務の支払条件を定める弁済計画を作成します。この計画は債権者の多数決により法的効果が発生し、企業の再生を図ります。

第三者支援による再生(M&Aによる事業再生含む)

事業継続が困難な場合、破産を回避し第三者の支援を受けて事業再生を行う方法です。第三者とは、経済産業大臣の認定を受けた公正中立な立場の機関を指し、法的整理手続きに頼らず債権者の協力を得ながら事業再生を図ります。この方法は、事業再生ADR(Alternative Dispute Resolution)とも呼ばれます。主には、不採算事業の売却やM&A、事業承継などの手段を用いて事業再生を実現します。

参照元:経済産業省「事業再生ADR制度

関連記事:
事業再生ADRとは?制度概要やメリット・デメリットについて解説
企業再生とは?手法や事業再生との違い、メリットを解説

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M&Aで事業再生を行う際の流れ・手順

M&Aで事業再生を行う際の流れは、以下のとおりです。

  1. M&A戦略の策定
  2. M&A先の選定・交渉
  3. 基本合意書の締結
  4. デューデリジェンスの実施
  5. 最終契約書の締結
  6. クロージング

それぞれの概要を以下で解説します。

1.M&A戦略の策定

M&Aによる事業再生を行う際、まず初めに戦略の策定、その後M&A先の選定を行います。幅広い候補の中から選定する際のポイントは、自社の事業を強く欲してくれているかどうかです。

2.M&A先の選定・交渉

選定したら、交渉に入ります。資料提供や面談を通して、詳細な情報を交換して交渉を進めます。

3.基本合意書の締結

交渉を進めていき、現段階での条件を記した基本合意書の締結を行います。契約書にはM&A手法・譲渡価格・スケジュールなどが記載されますが、この段階での基本合意書は法的効力を持ちません。

4.デューデリジェンスの実施

基本合意書の締結が完了したら、デューデリジェンスを実施します。デューデリジェンスとは、譲渡対象の企業価値・リスクなどを詳細に調査することです。これまでに提出された資料と実際の企業実態に財務状況などの差異がないかを調査します。デューデリジェンスにより、もし簿外債務などが発覚した場合は、最終契約書の譲渡価格に影響します。

5.最終契約書の締結

デューデリジェンスの完了後、最終契約書の締結を行います。最終契約書は契約内容のすべてとなり、法的効力を持ちます。万が一、最終契約書締結後に契約を破棄すると、破棄された側に損害賠償請求権が生じます。

6.クロージング

最終契約書の締結の完了後、事務手続きや必要書類を整えたら、クロージングを行います。クロージングとは、売り手企業の事業を引き渡すこと、買い手企業の取得対価の支払いを行うことです。ここまでの流れで、M&Aによる事業再生は完了です。

このように、M&Aを活用して事業再生を行う場合は手続きが複雑で専門知識を要するため、M&A仲介業者を利用するのがおすすめです。

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M&Aで事業再生を行うメリット・デメリット

M&Aを活用した事業再生は、さまざまなメリットがあります。ただし、場合によってはデメリットも存在します。では、それぞれ解説していきます。

メリット

M&Aによる事業再生のメリットは、以下のとおりです。

  • 第三者が事業再生をサポートしてくれる
  • 効率的に経営できる
  • 廃業・倒産を免れる
  • 複数の手法を考えられる

M&Aによる事業再生の1番のメリットは、スポンサーという形で第三者が事業再生をサポートしてくれることです。資本力のバックアップにより、債務を返済でき、資金繰りが改善します。

また、業績が思わしくない事業を切り離せるため、収益性のある事業に経営資源を集中させ、効率的な経営を行えるようになります。M&Aの専門家から、事業再生後の経営についても専門性の高いアドバイスがもらえる場合もあるでしょう。

廃業・倒産となれば、従業員が働く先を失い、再就職手当や再就職先のあっせんなどが必要となります。また、取引先にも迷惑がかかるでしょう。しかし、事業再生によって廃業・倒産を回避すれば、従業員の雇用を維持でき、取引関係も継続できます。

また、前述したように、事業再生を実施する際には事業譲渡方式・会社分割方式・第二会社方式・企業再生方式といったように、複数の手法が検討でき、自社に合った手法で事業再生を図ることが可能な点もメリットです。

デメリット

M&Aによる事業再生のデメリットは、以下のとおりです。

  • 専門的な知識が求められる
  • M&A先の選定が難しい

M&Aによる事業再生は複雑な手続きが多く、専門的な知識や対応が必要となるので、簡単に行えるものではありません。自社の経営陣のみでM&Aによる事業再生を試みた場合、専門的な知識や対応不足から、想定した効果を得られない可能性があります。M&Aに精通した専門家にサポートしてもらうのが良いでしょう。

また、M&A先の選定は事業再生の成否を分けるポイントとなり、M&Aの手順の中でも特に難航しやすいといわれています。選定先がなかなか見つからなかったり、希望の条件を満たさない可能性が考えられますので、やはり専門家に相談することをおすすめします。

関連記事:廃業とは?倒産や閉店などとの違いやメリット・デメリットなどを解説

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M&Aでの事業再生に適したケース

M&Aでの事業再生に適しているケースは以下の5つが挙げられます。

  • 事業低迷により自力での再生が難しい
  • 新規参入による事業展開がしたい
  • 業績向上のためにシナジー効果を生み出したい
  • 経営資源の最適化を図りたい
  • 自社の規模を拡大したい

業績低迷により自力での再生が難しい

業績が低迷し、市場の変化に迅速に対応することが困難な状況では、自力での再生は難しいといえます。このような場合、外部の専門家の意見を求めたり、新たな資金源を探ったりするなど、他の再生方法を検討することが重要です。企業は、現状を正確に把握し、持続可能なビジネスモデルへの転換を目指す必要があります。
経営不振企業のM&Aは買い手の立場からは、金融機関や取引先から頼まれて行う救済的なイメージが強いものの、現在は積極的に経営不振企業を探していることも否定できません。経営不振企業でも、窮境の原因が明確で、魅力的な技術や人材、事業を保有していれば、健全な企業に比べて買収価格が低い可能性があります。再生ノウハウを活かし、買収後に企業価値を向上させる買い手も存在します。

また、自力再生できる企業は少なく、第三者による再生に期待する方がうまくいくケースが多いです。企業は、現状を正確に把握し、持続可能なビジネスモデルへの転換を目指す必要があります。これらの視点を考慮に入れることで、企業の再生戦略はより具体的で効果的なものとなります。

新規参入による事業展開がしたい

新規市場への参入は、企業に新たな成長機会を提供します。市場調査や競合分析を行い、差別化された価値提案を策定することで、成功の可能性を高めることができます。新規参入にはリスクが伴いますが、適切な戦略と実行計画により、事業展開を実現することが可能です。

業績向上のためにシナジー効果を生み出したい

業績向上を目指すには、シナジー効果を生み出すことがポイントとなります。他社との提携や合併、買収を通じて、製品やサービスの強化、コスト削減、市場へのアクセス拡大など、相乗効果を追求することが重要です。

売り手の立場から見ると、企業が買い手の事業とシナジー効果を発揮できる場合、その企業は買い手にとって魅力的な投資対象となる可能性があります。売り手は事業をより高い価格で売却することができ、得られた資金を新たな成長機会に投資することが可能になるでしょう。

買い手の立場から見ると、企業が他社を買収することで、その企業が持つ技術や市場へのアクセス、ブランドなどを活用して自社の事業強化が可能になります。シナジー効果が発揮され、売上の回復や利益の増大が見込めるでしょう。

これらの観点から、シナジー効果が生み出せるM&Aは、事業再生を図る上で非常に有効な戦略と言えます。企業は、自身の強みと他社の強みを組み合わせることで、より大きな価値を生み出し、持続的な成長を達成できます。

経営資源の最適化を図りたい

経営資源とは、企業がビジネスを運営し、競争優位性を維持するために必要なもののことです。財務資源と言われる現金や設備、不動産、人的資源と言われる従業員のスキルや経験、知的資源と言われる特許、商標、ビジネスモデル、および社会的資源と言われるブランドイメージ、顧客関係、パートナーシップなどが含まれます。

なかでも人材は、企業の成功にとって重要な経営資源です。適切なスキルと経験を持つ人材の確保は、企業が競争力を維持し、革新的な製品やサービスを提供する上で必要です。しかし、人材の調達や削減は複雑で時間とコストがかかります。

経営資源の最適化は、企業の効率性と競争力を高めるために不可欠です。資源の再配分、プロセスの改善、無駄の削減などを通じて、コストパフォーマンスを向上させることが求められます。経営資源を最適化することで、企業は長期的な成長を実現することができます。

自社の規模を拡大したい

企業が規模を拡大することは、市場での影響力を増すとともに、経済的な安定性を高めることにつながります。投資の拡大、新製品の開発、市場の拡大など、成長戦略を実行することが重要です。規模の拡大は、企業のリスク分散にも役立ち、持続可能な成長を支える基盤となります。

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M&Aで事業再生を行う際のポイント

M&Aによる事業再生には、多くの費用と時間がかかります。また、失敗すると、廃業・倒産となるため、失敗に終わることを避けなければなりません。事業再生を成功させるためのポイントは、以下があげられます。

  • 現状や原因の把握
  • 専門家への相談
  • 適切なスケジュールの構築
  • スポンサー企業や融資してくれる金融機関探し
  • 社内・社外との情報共有

M&Aを成功させるためには、まず現在会社がどんな状態にあるのか、経営が悪化した原因は何にあるのかを把握しなければなりません。現状や原因を明確化することで、適切な改善策を考えられます。

また、前述したように、M&Aには専門的な知識や対応が必要となるため、専門家に相談しましょう。専門性を欠いた状態でM&Aによる事業再生を進めると、失敗のリスクが高くなります。

現状や原因を把握し、専門家に相談したら、事業再生に向けて適切なスケジュールを立てましょう。事前にスケジュールを構築することで、今後の見通しが立てやすくなり、目標期間内に手続きを済ませるモチベーションにもつながるでしょう。

また、スポンサー企業や支援してくれる金融機関を見つけることも重要なポイントとなります。スポンサーや金融機関を見つけたら、円滑な情報共有を行いましょう。情報共有をしっかりすることで、周囲からの信頼獲得につながります。

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事業再生に活用できる支援制度の例

事業再生を行う際には、以下のように支援制度を活用できます。

  1. 経営改善計画策定支援
  2. 再生支援・プレ再生支援
  3. 挑戦支援資本強化特例制度
  4. 事業再生保証制度
  5. 中小企業継承事業再生関連保証制度

ただし、活用するにはそれぞれ定められた条件を満たしている必要があります。それぞれの制度の内容や対象者を解説していきます。

1.経営改善計画策定支援

経営改善計画策定支援とは、公認会計士、金融機関といった国が認定する士業等専門家である認定経営革新等支援機関が経営改善の計画立てを支援し、実行を促す制度です。

金融支援などの経営改善の取組が必要な企業や事業者が対象となります。

参照元:中小企業庁「経営改善計画策定支援」

2.プレ再生支援・再生支援

プレ再生支援・再生支援とは、中小企業活性化協議会が第三者の立場となり、弁護士や税理士などの専門家を配置して再生計画の作成や収益化を高めるためのアドバイスなどのサポートを行う制度です。

収益が見込める事業はあるものの、資金力がないなど財務上の問題を抱える中小企業や事業者が対象となります。

参照元:中小企業庁「プレ再生支援・再生支援」

3.挑戦支援資本強化特別貸付

挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)とは、資本調達の円滑化を支援する制度です。挑戦支援資本強化特別貸付を利用した債務は、金融機関の資産査定にて借入金ではなく、自己資本とみなすことができます。そのため、信用力に悪影響を与えることなく、資金調達ができ、追加で融資を受ける際にも影響を受けづらい点が最大のメリットです。

事業再生に取り組むため、財務体質を強化し、目下の返済負担を減らしたい企業や事業者が対象となります。

参照元:日本政策金融公庫「挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)」

4.事業再生保証制度

事業再生保証制度は、またの名をDIP保証制度といい、民事再生法などの法的手続により事業再生を行う中小企業に対する資金融資を円滑化するものです。

事業再生保証制度の対象者は、以下のとおりです。

  • 下記のどちらかに該当している
  1. 民事再生法または会社更生法による手続きを行っている
  2. 裁判所から再生手続終結の決定を受けた
  • 裁判所による再生計画が認められているまたは更生計画が認められてから3年以内である
  • 下記の両方に該当している
  1. 金融機関からの融資や取引先からの支援が得られ、事業再生の見通しがある
  2. 債務の償還の見込みがある

上記に該当していれば、事業再生保証制度による信用保証協会の保証を受けることが可能です。

参照元:J-Net21「事業再生支援制度」

5.中小企業承継事業再生関連保証制度

中小企業継承事業再生保証制度とは、資金調達を支援や場合によっては信用保証料を補助する制度です。

産業競争力強化法に定められている認定支援機関の指導やアドバイスを受けて事業再生の計画を作成した企業や事業主が対象となります。

参照元:中小企業庁「中小企業者に対する早期の経営改善や事業再生を後押しするための信用保証制度の要件を拡充します

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事業再生の成功事例

実際にM&Aによる事業再生に成功した企業の事例を5つ紹介します。

村田製作所によるVios Medical, Inc.の買収

村田製作所は、革新的なヘルスケアIT企業であるVios Medical, Inc.を買収しました。この買収は、村田製作所の医療分野における事業再生と拡大、海外進出を目的としています。

Vios社は、心拍数や呼吸数、心電図を計測可能なチェストセンサを開発し、これらのデータをリアルタイムでモニタリングするソフトウェアとクラウドサービスを提供している企業です。

村田製作所は、Vios社の技術力とノウハウを組み合わせ、独自の電子部品技術を活かすことで、医療分野でのイノベーションの推進を目指しています。この買収により、村田製作所は、エレクトロニクス社会の発展にさらに貢献することが期待されています。

参照元:村田製作所「Vios Medical, Inc.の買収完了について

ヤフーによるZOZOの買収

ヤフーによるZOZOの買収は、eコマース市場におけるヤフーの事業再生を促進するための戦略的な買収です。

ZOZOは、ファッション通販サイト「ゾゾタウン」の運営で知られる企業です。数多くのブランドを取り扱っており、特に20~30歳代の若者に人気があります。

この買収により、ヤフーは、市場シェアの拡大と収益性の向上が期待されています。

参照元:日本経済新聞「ヤフー、TOBでZOZOを子会社化へ」

富士フイルムホールディングスによる富山化学の買収

富士フイルムホールディングスは、富山化学の買収により、医薬品事業における事業再生を図りました。

富山化学は、インフルエンザ治療薬「T-705」、抗リウマチ薬「T-5224」、アルツハイマー病治療薬「T-817」といった有望な新薬の開発パイプラインを有しています。

富山化学の有望な新薬の開発パイプラインと富士フイルムの技術基盤の組み合わせにより、新薬開発の加速と市場競争力の強化、事業の健全化の推進につながっています。

参照元:薬事日報「富士フイルムが富山化学を買収」

メルカリによる完全子会社メルロジの吸収合併

メルカリは、完全子会社メルロジの吸収合併により、物流サービスの効率化を図り、事業再生を実現しました。この戦略的な動きは、物流コストの削減とサービス品質の向上を通じて、収益性の改善と市場競争力の強化をもたらしました。

メルロジは、メルカリのフリマアプリ「メルカリ」のユーザーに向けた物流サービスを提供していた企業です。この合併により、メルカリは経営資源を一層効率的に活用し、迅速な意思決定を可能にすることを目指しています。

参照元:メルカリ「完全子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ」

三菱商事と中部電力によるオランダEneco社の買収

三菱商事と中部電力によるEnecoの買収は、再生可能エネルギー事業の拡大という事業再生の一環でした。買収の目的は、再生可能エネルギー事業の拡大と欧州でのノウハウ導入です。三菱商事が80%、中部電力が20%を出資する共同出資会社を設立し、Enecoの発電事業、電力・ガスの売買取引、小売事業を展開します。

この買収により、両社はエネルギー事業の多様化と収益性の向上を図り、低炭素化社会への移行を加速させることで、長期的な成長戦略を確立しました。

三菱商事はEnecoの技術力を活用し、再エネ開発を加速させることで、経済価値、社会価値、環境価値の三価値を実現する取り組みを強化します。中部電力が目指すのはEnecoとの知見の融合を通じて、エネルギー事業におけるシナジーを創出することです。両社はEnecoと協力し、低炭素化社会への移行や地球環境保全に貢献することを目指しています。

参照元:
日本経済新聞「三菱商事と中部電、オランダ電力会社買収へ 5000億円」
三菱商事「オランダ総合エネルギー事業会社Eneco社の買収」

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まとめ

事業再生とは、事業単位の見直しや改善を通して、経営状態が思わしくない事業の収益性を高める試みです。業績が悪化したとき、廃業を検討しているときは、事業再生を検討すべきタイミングといえます。

事業再生の方法は複数ありますが、中でもM&Aを活用した事業再生には、第三者からの事業再生の支援を受けられる、経営を効率化できる、廃業・倒産を回避できる、複数の手法を検討できるといったメリットがあります。
ただし、実施にあたり専門的な知識が必要なことや、M&A先の選定が難しいことなどのデメリットも考えられます。

M&Aによる事業再生を成功させるためには、現状の把握、専門家への相談、適切なスケジュールの構築、スポンサー企業や融資してくれる金融機関探し、社内・社外との情報共有がポイントとなるので、これらのことを怠らないようにしましょう。また、活用できる支援制度もあるので、ぜひご確認ください。

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