このページのまとめ
- スタンドスティル条項はM&Aで一定期間の株の買い増しなどを禁止する取り決め
- 強引な買収を防げる点が、売り手にとってスタンドスティル条項を盛り込むメリット
- 関係者からの信頼を得やすい点が、買い手がスタンドスティル条項を盛り込むメリット
M&Aを進める中で「スタンドスティル条項とは何?」と気になっている方もいるのではないでしょうか。スタンドスティル条項を盛り込んだ契約を締結することで、売り手は買い手に強引に買い付けされるリスクを軽減できるでしょう。
このコラムでは、スタンドスティル条項を用いるメリットを売り手と買い手の立場から解説しています。そのほか、M&Aで締結する契約書についても解説しているため、ぜひ参考にしてください。
目次
スタンドスティル条項とはM&Aに関連する条項
スタンドスティル条項とは、売り手と買い手の間で交わす取り決めのことです。ここから、スタンドスティル条項の意味や、英語に訳す際の表現を詳しく解説します。
スタンドスティル条項を用いる目的は?
一般的に、スタンドスティル条項には、売り手から情報を受け取った買い手候補に対して、一定期間株式の買い増しや委任状の勧誘などをさせないようにするという目的があります。
スタンドスティル条項は、主にM&Aで秘密保持契約を締結する際に盛り込まれることが一般的です。スタンドスティル条項を盛り込んだ契約を交わせば、買い手側は強引にM&Aを進められなくなります。
スタンドスティル条項を英語に訳すと?
スタンドスティル条項を英語に訳すとStand Still Clauses(Standstill Provisions、Stand Still Agreement)です。日本語で再買収停止条項と表現することもあります。
なお、M&A以外に海外との貿易協定で関税を現在の水準よりも上げないようにする取り決めも、スタンドスティル条項(Stand Still Clauses)です。
M&Aでスタンドスティル条項を用いるメリット
売り手と買い手の立場に分けて、M&Aでスタンドスティル条項を用いるメリットを紹介します。
売り手のメリット
M&Aを進める際にスタンドスティル条項を盛り込んだ契約を締結することで、売り手は買い手から一気に自社の株式を買い付けられるリスクを軽減できる点がメリットです。相手からの強引な手法を防ぐことで、買い手からの買収が自社にとってよいものなのか見極める時間を稼げます。
一方、スタンドスティル条項を締結しなければ、相手との信頼関係を構築する前に突然買収されることがあるかもしれません。信頼できない相手とのM&Aは、のちに統合作業がうまく進まないなどのトラブルにつながる可能性があります。
買い手のメリット
買い手はスタンドスティル条項を盛り込むことで、売り手に対して友好的な買収であることを示せる点がメリットです。買い手は強引な買収を進められない分、一般的に売り手からの信頼を得られます。
一方、スタンドスティル条項を盛り込もうとせず、敵対的買収を疑った売り手から対抗策を講じられると、M&Aは失敗に終わる可能性が高いです。また、対象先の従業員や世間からの不信を招くと、たとえM&Aの契約に至ったとしても、スムーズに統合作業を進められません。
M&Aで締結する契約書の種類
M&Aで締結する契約書は、秘密保持契約以外に基本合意書や最終契約書があります。それぞれの概要を把握しておきましょう。
秘密保持契約
秘密保持契約(NDA、CA)とは、自社の秘密情報を他社に開示する際、目的外での使用や第三者への漏洩を防ぐために締結するものです。M&Aで秘密保持契約を締結することで、売り手は買い手が秘密情報を漏洩することを防いだり、漏洩された場合の対応方法を明確にしたりすることができます。
秘密保持契約は、基本合意よりも前の段階で締結することが一般的です。
基本合意書
基本合意書(MOU、LOI)とは、売り手と買い手の間でM&Aに関する条件について、大筋で合意した際に作成する覚書のことです。基本合意書には、M&Aのスキーム・売却条件・株価(買収価格)・スケジュール・役員の処遇・従業員の雇用維持などに関する内容が盛り込まれます。
なお、基本合意書は法的拘束力を持たないことが一般的です。
最終契約書
最終契約書(DA)とは、M&A成約時に締結する契約書のことです。実際に「最終契約書」という名前の契約書があるのではなく、株式譲渡でM&Aを成立させる場合は株式譲渡契約書、事業譲渡で成立させる場合は事業譲渡契約書を締結します。
売り手と買い手の最終的な合意のため、法的拘束力がある点が基本合意書との違いです。契約後にどちらか一方の都合で破棄する場合は、他方から損害賠償請求される可能性があります。
M&Aの契約書を締結する際の注意点
インターネットなどで調べるとM&Aやスタンドスティル条項に関するひな形が見つかりますが、安易にそのまま使わないようにしましょう。サンプルのひな形の記載内容をそのまま取り入れると、自社の実情にあわず、後にトラブルにつながる可能性もあります。
M&Aの契約書作成には専門的知識を要するため、専門家に相談すると良いでしょう。M&Aを検討するにあたって、専門家が在籍する仲介会社を選ぶようにしましょう。
M&Aの契約で知っておきたい言葉
スタンドスティル条項以外にも、M&Aで用いられる条項が存在します。ここから、コベナンツやキーマン(ロックアップ)条項の概要を確認していきましょう。
コベナンツ
コベナンツ(誓約事項)とは、契約後に当事者がしてはならないことや、しなければならないことを規定した条項のことです。
コベナンツは、M&Aだけでなく、ローン締結時や社債発行時にも盛り込まれることがあります。M&Aでコベナンツを盛り込む場合、一般的に最終契約書の締結日から実際にM&Aを実行する(クロージング)日までの間や、クロージング以降が対象です。
キーマン(ロックアップ)条項
キーマン(ロックアップ)条項とは、M&A実行後も売り手側の主要人物が一定期間在籍することを定めた条項のことです。
キーマン条項を盛り込むことで、買い手はM&Aをスムーズに進められます。一方、売り手側の対象役員は、M&A後も引き続き業務をこなさなければなりません。場合によっては数年間会社を離れられない可能性もあるため、売り手側は条項を盛り込む際に注意が必要です。
まとめ
スタンドスティル条項とは、売り手と買い手の間で交わす取り決めです。一般的に、M&Aの秘密保持契約に盛り込まれます。
自社の株式を買い手からいきなり大量に購入されるリスクを軽減できる点が、売り手にとってのスタンドスティル条項を盛り込むメリットです。一方、買い手もスタンドスティル条項を盛り込む意思を示せば、相手から反感を買わずに友好的にM&Aを進められます。
M&Aの契約で実際にスタンドスティル条項を盛り込む際は、ひな形をそのまま使わないようにしましょう。M&A前後の法的リスクを防ぐため専門家に相談した上で、契約書を作成することがポイントです。
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