ポイズンピルとは?仕組みや手法・メリット・事例を解説

2023年9月11日

ポイズンピルとは?仕組みや手法・メリット・事例を解説

このページのまとめ

  • ポイズンピルとは、新株予約権の交付によって行う買収防衛策
  • メリットは、高い抑止力や買収者の議決権比率を下げること
  • デメリットは、株式の希薄化を招くこと
  • ポイズンピルには、事前警告型と信託型の2種類がある

ポイズンピルとは、既存株主に対して新株予約権を割り当てることで、敵対的買収を防ぐ施策です。敵対的買収の抑止力として高い効果を発揮するだけではなく、新株発行によって買収者の議決権比率を下げる効果が期待できます。一方で、既存株主に不利益を与えるおそれもあるため注意が必要です。この記事では、ポイズンピルの意味や種類、実際の事例などを解説します。また、ポイズンピル以外の代表的な買収防衛策も紹介します。

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ポイズンピルとは

ポイズンピル(Poison Pill)とは、新株予約権の発行によって敵対的買収を防ぐ「買収防衛策」の一種であり、ライツプランとも呼ばれます。
なお、敵対的買収とは「被買収企業の経営陣から賛同を得ずに実施する買収」であり、賛同を得た上で行われる買収は「友好的買収」と呼ばれます。

具体的に、ポイズンピルでは、敵対的買収者が一定割合の株式を取得した場合に、買収者だけが行使できない条件が付与された新株予約権を株主に無償または安い価格で割り当てます。
買収者以外の友好的な株主に新株が発行されるため、敵対的買収者の株式取得割合(議決権割合)が低下し、買収が困難となります。

ポイズンピルを日本語に訳すと「毒薬」です。新株予約権の発行によって自らの議決権割合が低下する事態は、敵対的買収者にとって毒を飲まされる印象があるため「ポイズンピル(毒薬)」という名称が付けられたと言われています。

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ポイズンピルのメリット

ポイズンピルを導入するメリットは以下の2つです。

買収防衛策としての効果が強力

最大のメリットは、買収防衛策として高い効果を発揮する点です。

前述のとおり、ポイズンピルが発動すると敵対的買収者の持株比率は自動的に低下します。
また、敵対的買収者以外の株主に交付される株式は、無償または著しく安い価格で発行されるため、敵対的買収者が取得した株式の価値のみが大きく下落することにつながります。
加えて、敵対的買収を強行するには、当初の想定よりも多額の現金を準備しなければなりません。

このような理由から、敵対的買収を成功させる難易度は大幅に上がるでしょう。

抑止力としても効果を発揮する

前述のとおり、一度ポイズンピルが発動すると、敵対的買収が成功する可能性は大きく下がってしまいます。また、買収を諦めて取得した株式を売却するにも、新株発行によって株価が下落している場合には、多額の売却損を被る事態になり得ます。

敵対的買収者にとって、ポイズンピルは自らに莫大な損失を与え得る手法です。そのため、事前にポイズンピルの発動を匂わせるだけでも、大きな抑止力となるでしょう。

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ポイズンピルのデメリット

買収防衛策として大きな効果を発揮するポイズンピルですが、万能な施策ではありません。ポイズンピルの導入にあたっては、以下3つのデメリットに注意が必要です。

株式の希薄化や株価の下落を招くおそれがある

ポイズンピル発動における最大の懸念点として「株式の希薄化」および「株価の下落」があります。

ポイズンピルによって新株予約権が大量に発行されると、発行済株式数が大幅に増加します。その結果、1株あたりの価値(当期純利益や権利など)が減少する(希薄化する)事態となります。

つまり、既存株主が1株あたりから得られる恩恵が減少するため、株主からの反発を招きかねません。それに伴い、株価の下落にもつながることが想定されます。

新株発行の差止め請求が行われるおそれがある

会社法第210条により、株主が不利益を受けるおそれがある場合には、新株発行をやめるように請求する権利が認められています。上述したとおり、ポイズンピルは株主の利益を損なう可能性がある手法です。

そのため、ポイズンピルによって不利益を被ると判断された場合に、株主側から新株発行の差止めを請求されるおそれがあります。新株発行の差止めが認められると、ポイズンピルを実行できなくなり、敵対的買収を止められない事態となり得ます。

反発した株主が敵対的買収者の味方となるおそれがある

新株発行の差止めを行われるだけではなく、ポイズンピルの実行に反発した株主が敵対的買収者の味方となってしまうリスクもあります。また、反発はしていなくても、買収側が出した事業計画を支持したほうが大きな利益を得られると判断されれば、同様に敵対的買収者の味方となるでしょう。

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ポイズンピルの仕組み

ポイズンピルの定義は前述のとおりですが、「なぜ敵対的買収を防げるのか」を理解するには、より詳細な理解が必要です。この章では、ポイズンピルの仕組みを噛み砕いてお伝えします。

株式会社の権利は「保有する株式(議決権)の割合」に比例する

株式会社では、持株比率(正確には議決権の割合)が高いほど、行使できる権限の大きさが変わります。「会社法」では、以下のとおり持株比率に応じた権利の行使が認められています。

持株(議決権)の比率行使できる権利
1%以上または300個株主総会の議案請求権(303条2項)
3%以上株主総会の招集請求権(297条1項)会計帳簿の閲覧・謄写請求権(433条1項)
33.4%以上(3分の1以上)特別決議の単独阻止(309条2項)
50.1%以上(2分の1超)普通決議の単独可決(309条1項)
66.7%以上(3分の2超)特別決議の単独可決(309条2項)
90%以上株式等売渡請求権(179条)

※参照元:e-Gov「会社法

敵対的買収の成功には過半数または2/3超の議決権が必要

上記のとおり、持株比率の上昇に伴い、株主としての権利は大きくなります。特に、過半数の株式を保有した場合には、取締役の選任・解任や資本金額の増加といった意思決定を単独で行えるようになります。

また、3分の2を超える場合には、定款の変更や事業譲渡の承認など、より重要な意思決定を単独で実施可能です。つまり、過半数や2/3を超える議決権を獲得することで、会社の支配権(経営権)を獲得できます。

したがって、敵対的買収を成功させるためには、過半数または2/3を超える議決権を取得しなければなりません。

ポイズンピルは支配権の獲得難易度を高める

上記の前提知識を踏まえると、ポイズンピルの効果をイメージしやすくなります。

たとえば、敵対的買収者が20%の株式を取得している場合を例に解説します。新株が発行・交付されることで、全体の発行済株式数は増加する一方で、敵対的買収者の持株比率は低下します。つまり、敵対的買収の成功ラインまで遠ざかることを意味します。

ここから、諦めずに過半数かそれ以上の株式を取得しようとすると、当初の想定よりも多くのコストが必要です。そのため、最終的には敵対的買収の実行を諦めてもらう効果が期待できます。

このように、ポイズンピルは支配権の獲得難易度アップに直結するため、敵対的買収の防止効果が高いと言えるでしょう。

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ポイズンピルの2つの手法「事前警告型」「信託型」とは

ポイズンピルを実務で活用する場面を想定すると「事前警告型」と「信託型」の2種類に大別されます。この章では、経済産業省の「ライツプランの類型について」をもとに、各種類の概要を解説します。

事前警告型ポイズンピル

事前警告型ポイズンピルとは、敵対的買収が仕掛けられた場合に、敵対的買収者に対して事前警告を発し、未然に敵対的買収を抑止する手法です。事前警告型では、以下の流れで敵対的買収の防止に努めます。

  1. 買収側が敵対的買収に向けて持株比率を高める
  2. 買収側に対して事前警告を発するとともに、買収目的や買収後の事業計画などに関する開示を請求する
  3. 開示された回答が納得できず、敵対的買収を強行してきた場合に新株予約権を無償で発行する
  4. 株主が新株予約権を行使し、時価よりも低い価格で新株を取得

合理的な買収目的や計画を準備していない買収者に対しては、特に効果を発揮しやすい手法です。ただし、緻密な事業計画や正当な理由を開示してきた場合、既存株主が敵対的買収者に賛同してしまい、買収が成立するリスクが高まります。

信託型ポイズンピル

信託型ポイズンピルとは、平時のうちにあらかじめ新株予約権を信託銀行に預けておく手法です。事前警告型と比べて、ポイズンピル実施にかかるコストや手間を削減できる点がメリットです。ただし、信託手数料の支払コストが発生します。

具体的な手法として「直接型」と「SPC型」の2つに分けられます。

直接型

直接型の信託型ポイズンピルでは、以下の流れで敵対的買収を防止します。

  1. 新株予約権を無償発行し、信託銀行に預けておく
  2. 敵対的買収者の持株比率が上昇したタイミングで、信託銀行が株主に新株予約権を無償で交付する
  3. 株主が新株予約権を行使し、時価よりも安い価格で新株を取得

SPC型

SPC型では、以下の流れで敵対的買収を防止します。

  1. 新株予約権をSPC(特別目的会社)に対して無償発行する
  2. SPCが新株予約権を信託銀行に預けておく
  3. 敵対的買収者の持株比率が上昇したタイミングで、信託銀行が株主に新株予約権を無償で交付する
  4. 株主が新株予約権を行使し、時価よりも安い価格で新株を取得

直接型とは異なり、新株予約権を管理するためだけに設立された特別目的会社(SPC)を介在してポイズンピルを発動させる点が特徴です。

※参照元:経済産業省「ライツプランの類型について

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ポイズンピルを行使した・行使間際まで発展した事例

敵対的買収に対して、ポイズンピルが実際に行使された、もしくは行使間際まで発展した事例を参議院「我が国M&Aの現状と課題」から3例解説します。

ブルドックソース

調味料メーカーのブルドックソース(以下同社)は、投資ファンドのスティール・パートナーズから仕掛けられた敵対的買収を防ぐために、2007年6月にポイズンピルの導入を公表しました。

具体的には、基準日である2007年7月10日における株主に対して、1株あたり3個の新株予約権を無償で割り当てました。また、本新株予約権の行使価格を1個あたり1円とした上で、敵対的買収者を新株予約権の対象外とし、持株比率(議決権比率)の低下による敵対的買収の防衛を狙いました。

上記を受けて敵対的買収者側は、新株予約権の発行差止めの仮処分申し立てを実施。しかし、裁判所から却下されたため、ポイズンピルによる買収防衛策は成功に終わりました。

※参照元:ブルドックソース「新株予約権無償割当てに関するお知らせ

ツイッター

Twitter社は、電気自動車「テスラ」で有名なイーロンマスク氏から430億ドル(約5兆4,000億円)の買収を提案されたことを受けて、ポイズンピルの導入を公表しました。具体的には、マスク氏が15%以上の株式を保有した場合に、大量の新株が発行される仕組みでした。

買収の提示価格引き上げに関して、マスク氏が交渉に応じない姿勢だったことから、Twitter社側がポイズンピルの導入に踏み切ったようです。

Twitter社側が本格的に買収防衛に動くと見られていましたが、同年4月末には440億ドルでの買収で合意したため、ポイズンピルが買収防衛策として効果を発揮する事態には発展しませんでした。

一度買収の意向が撤回されるなど二転三転したものの、最終的にはマスク氏による買収が実行されました。

※参照元:
BBCニュース「マスク氏がツイッターに買収提案
BBCニュース「マスク氏、ツイッターの買収完了

ニッポン放送

2005年ニッポン放送は堀江貴文氏が経営していたことで有名なライブドアから敵対的買収を仕掛けられたことを受けて、ポイズンピルを行使しました。具体的には、従来の発行済株式総数の約1.44倍(4,720万株)に相当する新株予約権を発行し、友好的な買収者であるフジテレビに対して割り当てました。

敵対的買収が困難となったライブドアは、新株予約権の発行差止めを申し立てました。その後、裁判所はライブドアの主張を認めて差止めの仮処分を決定し、ポイズンピルによる敵対的買収の阻止は困難となりました。

ただし、別のスキームが行使されたことによって、ライブドアの最終的な目的であった「フジテレビへの経営関与」は実質不可能となりました。

ポイズンピルは失敗に終わったものの、別のスキームを活用することで、実質的には敵対的買収の防止に成功した事例です。

※参照元:
東京地裁「新株予約権発行差止仮処分命令申立事件」P6
財政金融委員会調査室「見直しを迫られる株主と企業の関係」P3

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ポイズンピルの導入事例

日本国内にも、事前警告型のポイズンピルを導入・公表している企業は存在します。この章では、その事例として「イオン」と「ファースト住建」を紹介します。

イオン

小売業大手のイオンでは、敵対的買収を仕掛けられた場合に備えて、ポイズンピルの制度を導入しています。具体的には、20%以上の議決権割合を保有することを目的とした買付行為、または結果的に20%以上となる買付行為を行った者(大量株式取得者)に対して、以下2つのルール遵守を求めています。

  1. 大量株式取得に先立って、十分な情報を提供する
  2. 取締役会が情報検討するために必要な期間の経過を待つ

上記のルールを遵守しない場合には、買収防衛策として新株予約権の発行等によるポイズンピルを実施するとしています。

※参照元:イオン「買収防衛策

ファースト住建

不動産業を展開するファースト住建は、役員等の各個人による事情に伴い株式流動性が増加し、敵対的買収のリスクが高まる事態に備えて、ポイズンピルによる買収防衛策を導入しています。

具体的には、20%以上の議決権保有に至る株式を買い付ける者を対象とし、意向表明書や必要情報の事前提出を求めています。また、イオンと同様に、取締役会評価期間の経過後にのみ、大規模な買付けを実施することもルールとしています。そして、本ルールに敵対的買収者が従わない場合に限り、新株予約権の無償割当を実施し、敵対的買収を防ぐ仕組みです。

なお、同社では、取締役会の恣意的な判断を排除する目的で、ポイズンピル発動の是非を評価・勧告する独立委員会を設置しています。

※参照元:ファースト住建「当社株式等の大規模買付行為に関する対応策導入について

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ポイズンピル以外の買収防衛策【予防型】

ポイズンピル以外にも買収防衛策はあります。状況に応じて最適な手法を選択することが重要です。この章では、敵対的買収の「予防」に役立つ買収防衛策を5つ解説します。

ゴールデンパラシュート

ゴールデンパラシュート(Golden Parachute)とは、取締役の退職金を極めて高額に設定しておく手法です。買収にかかる費用が大幅に高くなるため、敵対的買収者の意欲を下げる効果が期待できます。

経営陣にとっては、万が一買収された場合に対する保険の役割を果たします。一方で、導入することによって株価が下落するリスクや、それに伴って株主や従業員から反発を受けるリスクがあります。

ティンパラシュート

ティンパラシュート(Tin Parachute)とは、従業員の退職金を高額に設定したり、就職斡旋などの保証を設定したりしておく手法です。ゴールデンパラシュートと同様に、敵対的買収の意欲を低減させる効果が期待できます。

従業員からの賛同も得やすく、導入ハードルが比較的低い点もメリットです。ただし、株価が下落するリスクには注意する必要があります。

ピープルピル

ピープルピル(People Pill)とは、あらかじめ定款などに、敵対的買収が行われた場合に、経営陣や業績に貢献している社員が一斉に退職する旨を定めておく手法です。経営陣や優秀な人材が退職することで、買収した事業で利益を得ることが難しくなってしまいます。

買収するメリットが薄まるため、敵対的買収の意欲を失わせる効果が期待できます。特に、経営陣や優秀な人材に対する依存度が高い企業において高い効果を発揮するでしょう。

マネジメントバイアウト

マネジメントバイアウト(MBO)とは、経営陣が株主や親会社等から自社株式を買収する手法です。一般的には事業承継や親会社からの独立などで用いられる手法ですが、買収防衛策としても役立ちます。

経営陣に株式を集中させたり、上場廃止を実現したりすることで、敵対的買収を行使しにくくする効果があります。ただし、資金調達が困難となるリスクもあります。

黄金株

黄金株(Golden Share)とは、保有している株主が株主総会決議などで拒否権を発動できる株式です。

仕組みとしては、株主総会における決議事項について、通常の株主総会に加えて、黄金株を保有する株主で構成される株主総会の決議を必要とする旨が定められている株式となっています(会社法第108条1項8号)。黄金株を友好的な株主に与えておくことで、敵対的買収者の議案をすべて否決できるようになります。

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ポイズンピル以外の買収防衛策【自社対応型】

この章では、敵対的買収が実行されている際に、「自社で対応可能な」買収防衛策を4つ解説します。

クラウンジュエル(焦土作戦)

クラウンジュエル(Crown Jewel)とは、会社内にある重要な資産やコア事業を分社化もしくは第三者に譲渡し、買収対象としての価値を低下させる手法です。焦土作戦とも呼ばれます。

買収者にとっては買収するメリットが薄まるため、敵対的買収の意欲を削ぐ効果が期待できます。ただし、企業価値の低下や株主からの反発を招くリスクがあります。

パックマンディフェンス

パックマンディフェンス(Pac-Man Defense)とは、敵対的買収を仕掛けられた際、逆に相手側への買収を仕掛ける手法です。会社法第308条1項の規定により、株式を相互保有する場合においては、相手企業の株式を25%以上保有することで相手企業の自社に対する議決権を失わせることが可能です。

この仕組みにより、4分の1以上の株式を買収すれば、パックマンディフェンスを成功させることが可能です。ただし、株式の取得に相応の費用が発生するため、資金力に乏しい場合には活用できません。

ジューイッシュデンティスト

ジューイッシュデンティスト(Jewish Dentist)とは、マスコミやインターネットなどを通じて、敵対的買収者のネガティブなイメージを広める手法です。

買収側の社会的信用力を低下させることにより、買収意欲を削ぐ効果があります。ただし、信用低下に関係なく敵対的買収を強行される可能性は残ります。また、ネガティブな印象を広めた自社の信用力低下につながる点もデメリットです。

増配

増配とは、配当金を増額することです。配当金を増額すれば、株主から見た自社株式の魅力は高まります。そのため、敵対的買収に伴うTOBに既存株主が応じにくくなる効果が期待できます。

また、株価の上昇によって買収に必要な金額を高め、買収意欲を削ぐ効果も見込めます。ただし、潤沢な資金力がなければ増配によって敵対的買収を防ぐことは困難です。

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ポイズンピル以外の買収防衛策【第三者協力型】

最後に、敵対的買収が遂行されている際に、「第三者からの協力を得た上で実施する」買収防衛策を3つ解説します。

ホワイトナイト

ホワイトナイト(White Knight)とは、敵対的買収を仕掛けられた際に、友好的な第三者に買収してもらう手法です。

つまり、敵対的買収者に買収される前に、M&A(株式譲渡による支配権の移転)を行って買収できなくすることを指します。上場企業の場合は、友好的な買収者が敵対的買収者よりも高い価格でTOBを行うことで、ホワイトナイトを成立させることが可能です。

成立さえすれば確実に敵対的買収を防げるものの、ホワイトナイトとなる企業に買収するメリットを提示しなければなりません。そのため、被買収企業にとって不利な条件でのM&Aとなる事態が想定されます。また、M&Aによって経営の自由度が低下するリスクもあります。

第三者割当増資

第三者割当増資とは、新しく発行する株式を特定の第三者(取引先など)に引き受けてもらう手法です。主に、資本業務提携の手段として用いられるスキームですが、買収防衛策としても役立ちます。

ポイズンピルと同様に、敵対的買収者の持株比率を低下させ、買収の意欲を下げることが可能です。引受先の持株比率によっては、敵対的買収で支配権を取得することを原則不可能とする効果も見込めます。ただし、新株発行によって株価が希薄化し、既存株主に不利益が生じるリスクには注意が必要です。

株式交換や合併によるM&A

株式交換や合併などのスキームを活用し、M&Aを行うことも買収防衛策の1つとなります。株式交換とは、発行済株式の全部を他の企業に取得させるM&A手法です。一般的には、対価として相手企業の株式を受け取ります。合併とは、自社の法人格を消滅させて、保有する権利義務の全部を他社に承継させるM&A手法です。

株式交換では対象企業の完全子会社になり、合併では法人格自体が消滅するため、敵対的買収を防げます。また、相手企業の傘下または社内事業として、ビジネスを存続させることも可能です。ただし、ホワイトナイトと同様に、自社にとって最適なM&Aの相手企業を見つける必要があります。

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まとめ

本稿では、ポイズンピルの意味やメリット・デメリット、事例などをお伝えしました。

ポイズンピルは、敵対的買収に対して高い抑止力を発揮する上に、買収を強行された際には議決権比率を大幅に下げる効果が期待できます。そのため、ブルドックソース社など多くの企業で活用されてきました。

一方で、株式の希薄化を招く点など、デメリットも少なくありません。したがって、ポイズンピルだけではなく、複数の買収防衛策を比較検討することが重要です。また、導入・実行する際には株主から賛同を得るための施策も実施しましょう。

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