M&Aの交渉のポイントを解説!条件を決定するプロセスごとの注意点も紹介
2023年9月6日
このページのまとめ
- M&Aの買い手側はシナジー効果を得られるかや経営理念などの情報を得たいと考えている
- M&Aの売り手側は売却益の獲得や廃業の回避などを目的に交渉を行っている
- M&A交渉に臨む際には後だしで条件交渉をしないなど、相手の信頼を得ることが重要
- M&Aの交渉を成功させるためには相手の本音を引き出すことがポイント
- M&Aの交渉を上手く進めるためには、専門家を活用することがおすすめ
M&Aを検討している経営者の中には、どのように交渉を行えば良いか、不安な方も多いのではないでしょうか。交渉プロセスはM&Aの成功に大きく関わる要素です。
本コラムではM&Aの交渉における心構えや、成功させるポイントを紹介しています。また、M&Aの買い手側・売り手側の目的および交渉内容や、交渉フェーズごとの注意点も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
M&Aでの具体的な交渉内容
M&Aは買い手と売り手の交渉がまとまらなければ、成立しません。買い手はできるだけ安く買いたいと考え、売り手は高く売りたいと考えます。相反する立場の両者の交渉をまとめるためにも、買い手側・売り手側両方の考えを知っておきましょう。
ここでは売り手と買い手、それぞれの具体的な交渉内容を紹介します。
M&Aの買い手側
M&Aの買い手は、売り手企業との合併によるシナジー創出や新規事業への参入、新規エリアの開拓などを目的としている場合が多いです。
M&Aの効果を最大限にするためには、技術やブランド、取引先などの経営資源について、交渉を通してできるだけ正確に情報を引き出す必要があります。また、企業風土や経営理念、社風などの精神的な部分の情報も必要になるでしょう。
交渉で引き出した情報をもとに、自社にとってどれだけのメリットがあるかを判断します。また、算定した企業価値が正しいかどうかも併せて確認するようにしましょう。
こうしてさまざまな情報を引き出したうえで分析を行い、M&Aを進めるかどうかの判断を行います。
M&Aの売り手側
売り手側は、売却益を得たい、廃業を回避したい、従業員の雇用を守りたいなどの目的を持って交渉を行います。この際に気をつけたいのが、目的の優先順位を明確にしておくことです。複数の目的を漠然と持っているだけでは、交渉を上手く進められません。M&Aによって何を達成したいかとその目的の優先順位を明確にして交渉に臨むと良いでしょう。
もし自社内に問題を抱えていたり、簿外負債があったりするのであれば、買い手に対して誠実に対応することも大切です。スムーズにM&Aを行うには信用が重要なので、ネガティブな内容も隠さずに伝えるようにしましょう。
M&A交渉における4つの心構え
M&Aにおける交渉は非常に重要です。少しでも自社に有利になるように交渉を進めるためにも、下記のような心構えで臨むと良いでしょう。
- トップ面談で相手企業の信頼を得る
- 後出しで条件交渉・価格交渉はしない
- 条件の大枠を基本合意の段階で固める
- デューデリジェンスまでに正しい情報を整理しておく
それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。
トップ面談で相手企業の信頼を得る
お互いの経営者が会うトップ面談では、誠実な態度で臨むようにしましょう。多くの場合、トップ面談までには数字のデータや企業の情報は開示されています。トップ面談は細かい数字の確認ではなく、信頼できる相手か、経営理念はどのようなものか、といった定性的な部分を見極める場です。
質問に対して誇張せず誠実に答えて、信頼を無くさないようにしましょう。
また、M&Aの買い手の中には、売り手より立場が上だと思い込んでいる人もいます。買い手は横柄な態度を示すことのないように、謙虚な姿勢で対応してください。
後出しで条件交渉・価格交渉はしない
後出しで条件交渉や価格交渉は、しないようにしましょう。M&Aではデューデリジェンスが終わると、最終契約となります。
デューデリジェンスに問題がないにもかかわらず、このタイミングで価格交渉をするのは印象が良くありません。
トップ面談で議題にあがっていなかったような条件を、後から提示することもやめましょう。不信感を抱く原因になったり、後で大きなトラブルにつながったりする恐れがあります。
条件の大枠を基本合意の段階で固める
大まかな条件は、基本合意の段階で固めるようにしましょう。
トップ面談が終わると、具体的な条件面の交渉に入ります。この際、買い手側から譲受側の概要や譲渡金額、スケジュールに関する希望などを記載した意向表明書が提出されます。
意向表明書をもとに条件のすり合わせを行い、次に基本合意の締結に移ります。両者のM&Aに関する条件を記載した基本合意書を作成し、締結します。基本合意書には譲渡金額やスケジュールなど大まかな条件が記載されるため、大枠は固まったといえるでしょう。
デューデリジェンスまでに正しい情報を整理しておく
デューデリジェンスまでに、情報の整理を徹底して行っておきましょう。
基本合意が行われると、買い手企業によるデューデリジェンスが行われます。デューデリジェンスでは売り手企業の財務や、税務、法務に関する調査を行います。デューデリジェンスの段階で知らされていなかったマイナスな情報が新たに出たり、知らせていた情報が間違っていることが判明したりした場合、買い手企業は不信感を持ってしまうでしょう。
事前に伝えていた情報との差異がある場合は、それが原因で破談になってしまう場合もあります。破談にならなくても後々のトラブルに発生する場合もあります。デューデリジェンス前に、開示する情報は正確に伝えましょう。
M&Aの交渉フェーズの流れとポイント
M&Aでは、売り手と買い手の交渉によって条件を詰めていきます。
交渉フェーズはM&Aの成否を決める重要な部分です。ここではM&Aの交渉の流れとポイントを解説します。
1.相手企業とのトップ面談
トップ面談は売り手と買い手の経営者が面談を行います。トップ面談は条件を詰める場ではなく、経営に対する考え方や統合後のビジョンなど、定性面を確認する場です。M&Aではトップダウンで物事を決めることも多いため、早めにトップ面談を行うと良いでしょう。
トップ面談をいつ行うかは案件によって違いますが、早ければ交渉開始の直後、遅くとも基本合意を締結するまでには行われます。
トップ面談では自社にとって不利な情報でも、きちんと伝えましょう。この後のデューデリジェンスの段階でネガティブな情報が発覚するととイメージが悪く、破談の原因になってしまいます。
2.デューデリジェンス
デューデリジェンスとは、買い手が売り手に対して実施する、財務・税務・法務・ビジネスなど多方面にわたる調査のことです。また、これまで提供された情報が正しいかどうかの確認も行います。デューデリジェンスで致命的な問題が見つかると、この段階でM&Aが不成立になる場合もあるでしょう。
デューデリジェンスは買い手企業が行いますが、売り手企業も協力的な姿勢で臨みましょう。不利な事実を隠したり、数字を改竄したりすると不信感を招くだけでなく、後々大きなトラブルになってしまいます。
3.最終条件交渉
デューデリジェンスで分かった結果を反映させて、最終の条件交渉を行います。最終条件交渉がまとまったら最終譲渡契約を結ぶため、後戻りはできません。最終譲渡契約は基本合意と違って法的拘束力があるため、内容を慎重に決定したうえで締結しましょう。
M&Aの交渉を成功させるための4つのポイント
M&Aを成功させるためには、交渉を上手く行う必要があります。M&Aでの交渉を成功させるためのポイントは、下記の4点です。
- 相手企業の本音を引き出す
- 相手企業の情報を調べてから進める
- 譲歩できる部分・できない部分を明確にする
- 専門家にあらかじめ相談しておく
それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。
1.相手企業の本音を引き出す
M&Aではお互いの目的を理解することが大切ですが、相手企業が必ずしも本音を話してくれるとは限りません。例えば本当は事業が苦しくて手放したいにも関わらず、表向きは後継者不在と説明している場合もあるでしょう。相手の本音が分からなければ、条件交渉を進めるなかでズレが生じてしまうかもしれません。
また、M&Aは買い手企業が有利な場合が多く、「買ってあげる」という態度で臨む企業もいます。このような姿勢では売り手が本音を出しにくくなり、交渉もまとまらないでしょう。
M&Aでは相手の本音を引き出すことが重要です。特に買い手は謙虚な気持ちで臨みましょう。
2.相手企業の情報を調べてから進める
相手企業の情報を調べたうえで交渉に臨むことも、重要なポイントです。M&Aの交渉はどうしても買い手優位で進みがちですが、買い手側にも弱みがない訳ではありません。例えば買い手がファンドの場合は、時間的に制約がある場合があります。年度内など期限までに買収実績を作らなければ、投資家への説明ができないためです。
買い手側も売り手側も相手の懸念点を見つけることで、不当な金額でM&Aが成立することを防げたり、スムーズに交渉を進められたりすることができます。
3.譲歩できる部分・できない部分を明確にする
M&Aの交渉で譲歩できる部分とできない部分を、明確に決めておくことも重要なポイントです。M&Aは売り手と買い手が交渉して、お互いの希望を擦り合わせていく必要があります。そのため希望が100%通ることは珍しく、譲歩しなければならない部分も出てくるでしょう。
希望を全て通すことに拘っていては、お互いの条件が合わずなかなかM&Aが成立しません。あらかじめ譲歩できる条件とできない条件を決めておくことで、交渉をスムーズに行えます。
4.専門家にあらかじめ相談しておく
M&Aの交渉を行う際には、専門家にあらかじめ相談しておくこともポイントです。M&Aマッチングサイトなどを利用すれば自分で手続きを進めることもできますが、M&Aは専門性が高く精神的負担も大きいため、専門家を活用することがおすすめです。専門家は交渉をはじめ、M&Aにまつわるさまざまなプロセスを手厚く支援してくれます。
M&Aの仲介会社や、M&A支援を専門とする部署を設けている銀行やコンサルティングファームなどの利用を検討してみましょう。
まとめ
M&Aの交渉を上手く進められるかどうかは、M&Aの成功に直結する重要なプロセスです。交渉を滞りなく進めるためには、自社が持つM&Aで叶えたい目的を明確にすることはもちろん、相手側の思惑についても考える必要があります。調査や交渉、トップ面談を通して相手のことをよく知りましょう。また、自社のことも正直に伝えて、信頼の失墜や破談が起きないようにしてください。
「交渉をどう進めたらよいのか分からない」「どこまで正直に伝えてよい?」とお悩みの方は、M&Aを専門的にサポートする支援機関を利用することもおすすめです。
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レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社には、M&Aの交渉術に長けたコンサルタントが在籍しています。契約書の作成支援やデューデリジェンスの実施など、M&Aのあらゆる業務に対応しており、M&Aのご成約まで一貫したサポートを提供することが可能です。ぜひレバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社のご利用をご検討ください。