会社売却における手数料の相場や種類、計算方法、費用を抑えるポイントを解説

2024年7月30日

会社売却における手数料の相場や種類、計算方法、費用を抑えるポイントを解説

このページのまとめ

  • 会社売却の手数料の種類には相談料と着手金や月額報酬、中間報酬や成功報酬などがある
  • 会社売却の成功報酬はレーマン方式で算定される
  • 会社売却では、仲介手数料だけでなく、税金や株券発行費などの費用もかかる
  • 完全成功報酬制の仲介会社を選ぶなどの方法により、手数料を抑えられる
  • M&A仲介会社の選定ポイントは契約のタイプと実績内容、料金形態

「会社売却時にM&A仲介会社を起用すると、どのような手数料が発生するのだろう?」と思っている方も多いのではないでしょうか。M&A仲介会社の手数料には着手金や中間金、成功報酬などの種類がありますが、完全成功報酬制の会社を選ぶことで費用を抑えられる可能性があります。

本コラムでは、会社売却時の手数料の内容と相場、成功報酬の算定方法、M&A仲介会社を起用するメリットや選定の際のポイントなどを解説します。

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会社売却の手数料の種類と相場

会社売却を実施する場合、M&A仲介会社などに依頼することがほとんどです。業務を委託されたM&A仲介会社などは、以下のようなサービスを提供します。

  • 会社売却額の目安となる企業価値評価(バリュエーション)
  • 会社売却のための買い手探し
  • 必要資料の作成
  • 契約書の作成・チェック
  • 会社売却交渉の代行
  • 会社売却のアドバイス
  • その他、会社売却に対する全般的なサポート

以上のような業務を行うM&A仲介会社などでは、以下のような複数の手数料が発生します。

  1. 相談料
  2. 着手金
  3. 月額報酬
  4. 中間報酬
  5. デューデリジェンス費用
  6. 成功報酬

ここでは、会社売却時に発生する手数料の内容とおおよその相場を説明します。

手数料の種類手数料の相場
相談料無料~1万円
着手金無料~200万円
月額報酬無料~200万円(毎月)
中間報酬無料~500万円
または
成功報酬額の最大20%
デューデリジェンス費用数十万円~数百万円
成功報酬レーマン方式で算定(詳細は後述)
※最低報酬額:500万円~2,500万円

1.相談料

会社売却時の相談料とは、正式に会社売却の仲介業務を依頼する前の段階で行う相談に対する手数料です。漠然と会社売却を検討していたり、会社売却をするとどうなるか尋ねたりするレベルの相談も受けつけています。ほとんどのM&A仲介会社では、相談料は無料です。ただし、中には1万円程度の手数料が発生する場合もあります。

  • 相談料の相場:無料~1万円

また、初回のみ相談料は無料ですが、2回目以降は手数料が有料となるケースもあるので注意が必要です。M&A仲介会社のホームページを見れば、ほとんどの場合、相談料が無料かどうか記載されています。事前に確認をしてから相談に赴きましょう。

2.着手金

着手金とは、M&A仲介会社などへ正式に会社売却の仲介業務を依頼し、業務委託契約を締結した際に発生する手数料です。近年では、着手金も無料とする仲介会社が増えてきました。また、着手金が発生する場合の金額は、高くて200万円程度が相場になります。

  • 着手金の相場:無料~200万円

着手金が発生するケースで注意したいのは、仮に会社売却が成立せず会社売却を断念することになっても、返金されないことです。手数料として着手金が発生するかどうか事前によく確認してから、業務委託契約を結ぶようにした方がいいでしょう。

3.月額報酬

月額報酬とは、M&A仲介会社などとの業務委託契約締結後、顧問料やコンサルタント料のような意味合いで毎月、定額を支払う手数料のことです。この手数料は、リテイナーフィーやリテイナー報酬とも呼ばれます。

月額報酬が発生するケースは、あまり多くはありません。どちらかというと、FA(フィナンシャルアドバイザー)や経営コンサルタントに会社売却を依頼すると、発生する傾向があります。月額報酬が発生する場合、30万円~200万円程度と金額に幅があります。

  • 月額報酬の相場:無料~200万円(毎月)

月額報酬は、会社売却が成立するまで毎月、発生するものです。上記の手数料相場額は総額ではありません。月額の相場です。会社売却に要する期間次第では、相当な額になります。また、着手金と同様に、会社売却が成立しなくても返金されません。月額報酬発生の有無も、正式契約前によく確認を取りましょう。

4.中間報酬

中間報酬とは、会社売却について売り手・買い手間で基本合意書を締結した際に発生する手数料です。中間金と呼ぶM&A仲介会社もあります。完全成功報酬制のM&A仲介会社では、中間報酬は発生しません。中間報酬が発生する場合、高くて500万円程度、または後述する成功報酬額の最大20%程度の金額です。

  • 中間報酬の相場:無料~500万円、または成功報酬額の最大20%

M&A仲介会社によっては、中間報酬を成功報酬の一部の前払い扱いとするケースもあります。その場合、成功報酬の支払金額は、中間報酬分が差し引かれた額です。中間報酬の場合も、会社売却が成立しなくても返金されません。

基本合意書は、その時点での合意内容の確認書という位置付けの書類です。会社売却の成立を約束するものではなく、会社売却に対し法的拘束力もありません。基本合意書の締結後に会社売却が破談になるケースもあり、その場合、中間報酬は戻ってきません。

5.デューデリジェンス費用

デューデリジェンスとは、売却対象の会社に対して、財務・税務・法務・労務・IT・事業などの分野ごとに、士業などの専門家を起用して実施する精微な調査のことです。デューデリジェンスで起用する専門家などへの手数料が、デューデリジェンス費用に該当します。デューデリジェンス費用は、売却される会社の規模により金額が変わるため、数十万円~数百万円と開きがあります。

  • デューデリジェンス費用の相場:数十万円~数百万円

デューデリジェンスは、業務委託契約の仲介業務とは別枠とされるため、成功報酬などとは別途、発生する費用です。デューデリジェンス費用は、基本的に買い手が負担します。デューデリジェンスが行われるタイミングは、基本合意書の締結後、最終交渉が行われる前です。最終交渉で会社売却が破談したとしても、デューデリジェンス費用は返金されない手数料となります。

6.成功報酬

成功報酬とは、会社売却が成立し売り手・買い手間で最終契約書を締結した後に発生する手数料です。ほとんどのM&A仲介会社では、成功報酬額は、後述するレーマン方式で算定します。算定の基となるのは会社売却の対価などであるため、規模の大きい会社売却ほど成功報酬は高くなるでしょう。

また、成功報酬の最低額として最低報酬を定めているM&A仲介会社もあります。これは、レーマン方式の算定結果が最低報酬額よりも低い場合は、最低報酬額が手数料として請求されるものです。中小規模の会社売却を手掛けることが多い仲介会社の最低報酬額は500万円程度ですが、2,500万円に設定している会社もあります。

  • 成功報酬の相場:レーマン方式で算定(詳細は後述)
  • 最低報酬額の相場:500万円~2,500万円

最低報酬額をホームページなどで明示していない会社もあります。こちらも正式契約前に確認するとよいでしょう。

関連記事:会社売却の相場や税金はどれくらい?準備からクロージングまでの流れも解説

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会社売却の成功報酬で使われるレーマン方式とは?

会社売却の際の手数料である成功報酬の算定には、ほとんどの場合、レーマン方式が採用されています。レーマン方式とは、基準額の金額帯ごとに異なる手数料率を掛け合わせ、それを合計して算定するものです。ここでは、レーマン方式の内容と計算例を説明します。

レーマン方式の計算方法

M&A仲介会社の成功報酬の算定で用いられる、一般的なレーマン方式の手数料率は以下のとおりです。

  • 基準額の5億円までの部分:5%
  • 基準額の5億円超~10億円の部分:4%
  • 基準額の10億円超~50億円の部分:3%
  • 基準額の50億円超~100億円の部分:2%
  • 基準額の100億円超の部分:1%

基準額に採用されるのは、以下の3種類のいずれかです。

  • 会社売却対価(≒株式価値)
  • 企業価値(株式価値+有利子負債)
  • 移動総資産(株式価値+負債総額)

以下で、それぞれのとらえ方を説明します。

会社売却対価

中小企業の会社売却で多く用いられるM&Aスキーム(手法)は株式譲渡です。買い手は対象会社の経営者が持つ自社株式を買い取ることで会社売却が成立します。いわば、会社売却の対価と株式価値は、ほぼ同義語です。

企業価値

企業価値は、その株式価値に有利子負債の金額を加えたものです。有利子負債とは、金融機関からの借入金や社債、コマーシャルペーパー(無担保の約束手形)などが該当します。有利子負債を加える分、企業価値の方が会社売却対価より高額になるのは明白です。

移動総資産

移動総資産は、株式価値に負債総額を加えたものになります。負債総額とは、有利子負債にさらに無利子負債を加えたものです。無利子負債とは、退職給付引当金、前受金、買掛金、未払金、仮受金、支払手形などが該当します。つまり、企業価値よりも移動総資産の方がさらに高額です。

採用する基準額で成功報酬は異なる

一例として挙げれば、株式価値1億円の会社の有利子負債が5,000万円、無利子負債が5,000万円だったとします。この場合、企業価値は1億5,000万円、移動総資産は2億円です。手数料率が5%だったとして手数料を計算すると、会社売却対価が基準額の場合の手数料は500万円ですが、企業価値が基準額の場合の手数料は750万円、移動総資産が基準額の場合の手数料は1,000万円になります。

このように基準額の設定の違いで、同じ手数料率でも実際の手数料額は大きく異なるため、成功報酬の計算における基準額が何に設定されているかは、正式契約前に明確にしておきましょう。

レーマン方式の計算例

基準額が110億円だった場合のレーマン方式の計算例を示します。

  • 5億円までの部分:5億円の5%なので2,500万円
  • 5億円超~10億円の部分:5億円×4%=2,000万円
  • 10億円超~50億円の部分:40億円×3%=1億2,000万円
  • 50億円超~100億円の部分:50億円×2%=1億円
  • 100億円超の部分:10億円×1%=1,000万円

各金額帯の計算結果を合計して、基準額が110億円の場合の手数料は2億7,500万円となります。

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会社売却でかかる手数料以外の費用

会社売却では、仲介手数料以外にもさまざまな費用がかかります。その中でも代表的なものが、税金と株券発行費です。

この章では、税金と株券発行費の概要や計算方法、目安を解説します。また、上記以外でかかる費用も簡単に紹介します。

費用の種類概要
税金株式譲渡や事業譲渡の譲渡益に課税
株券の発行費株券発行の旨が定款に定められている場合に必要
その他の費用弁護士への相談費用や株式集約に伴う税金など

税金

会社売却では、一般的に株式譲渡または事業譲渡のスキームが活用され、それぞれで税金の種類が異なります。

M&Aのスキーム税金の種類金額の目安
株式譲渡個人株主:所得税や住民税等
法人株主:法人税等
個人株主:20.315%(分離課税)
法人株主:30〜40%程度(総合課税)
事業譲渡法人税等および消費税法人税等:30〜40%程度(総合課税)
消費税:10%(課税資産のみ)

以下で、それぞれくわしく解説します。

株式譲渡

株式譲渡の場合、売却価格と必要経費の差額に課税されます。必要経費には、株式の取得費用や譲渡時にかかった費用(仲介手数料など)が含まれます。具体的に課される税金は、売り手株主が個人か法人かで異なります。

個人の場合には、売却価格と必要経費の差額が「譲渡所得」となり、合計で20.315%の税金(所得税、住民税、復興特別所得税)が課されます。なお、この場合の譲渡所得は分離課税となるため、他の所得とは別に税額を計算します。

一方で法人の場合、譲渡益(計算式は個人と同じ)が「法人税等(法人税、法人住民税、法人事業税)」の対象となります。譲渡所得と異なり総合課税となるため、他の所得と合算したうえで税額を計算します。また、法人税等の税率は所得の大きさや企業の規模などによって変わってきます(約30〜40%)。

関連記事:分離課税とは?会社売却に与える影響を解説

事業譲渡

事業譲渡の場合、売り手側の会社に法人税等および消費税が課されます。

法人税等は、売却価格と譲渡資産の簿価の差額に対して課されます。税率は株式譲渡と同様です。

消費税に関しては、実際に負担するのは買い手企業となります。しかし、納税自体は売り手側が行う必要があるため注意が必要です。譲渡した資産のうち、課税対象資産に消費税率(10%)をかけた金額が納税額となります。課税対象資産には、無形固定資産やのれん代(営業権)、棚卸資産、土地以外の有形固定資産が該当します。土地や売掛金などの債権、株式などの有価証券は非課税です。

関連記事:会社売却時の税金は?節税対策やM&Aでの法人売却のメリットも解説

株券の発行費

定款に株券を発行する旨が定められている場合、株式譲渡に際して株券を発行しなくてはいけません。なぜならば、「会社法」第128条の規定により、株式譲渡の効力が認められないためです。
株券の発行には、目安として数万円〜100万円程度の費用がかかります。

その他の費用

上記以外にも、弁護士への相談費用や株式集約に伴う税金などが発生するケースがあります。具体的な金額はケースバイケースなので、M&Aアドバイザーなどの専門家に相談することがおすすめです。

参照元:e-Gov「会社法

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会社売却の手数料・費用を抑えるための5つのポイント

会社売却の手数料やその他費用を可能な限り少なくすると、より多くの利益を手元に残せるようになります。手数料や費用を抑えるには、主に以下5つのポイントを押さえることが効果的です。

  1. 複数の仲介会社を比較して選ぶ
  2. デューデリジェンスの調査範囲を狭める
  3. 完全成功報酬型のサービスを利用する
  4. 小規模案件ではマッチングサイトや公的機関を活用する
  5. 税金や譲渡価格から逆算してスキームを選択する

以下では、それぞれのポイントをくわしく解説します。

ポイント1:複数の仲介会社を比較して選ぶ

会社売却において手数料を抑えるためには、複数の会社に見積もりを依頼し、手数料の体系や費用感を比較することが重要です。同時に複数の業者間で比較することで競争原理が働き、より安い価格でサービスを受けられる可能性もあります。

また、手数料だけでなく、信頼性や専門性も考慮に入れることが大切です。手数料が安い仲介会社でも、適切なサポートやネットワークを持っていない場合、売却プロセスが滞る可能性があるためです。経験豊富な専門家や口コミを参考にし、信頼できる仲介会社を選びましょう。

ポイント2:デューデリジェンスの調査範囲を狭める

基本的には買い手側がデューデリジェンス費用を負担しますが、売り手側が負担することになったり、事前に売り手側で自社の調査を行ったりするケースもあります。売り手側が負担する場合、手数料を抑えるために、デューデリジェンスの調査範囲を狭める(優先順位を明確にする)ことがおすすめです。

デューデリジェンスの調査範囲は多岐にわたりますが、その中でも法的リスクや税金、売却価格など、M&Aの成功・失敗を大きく左右する重要なポイントのみに絞ることが効果的です。

また、会社やM&Aの取引規模に応じて、デューデリジェンスの調査工数を抑えることも重要です。小規模な会社売却であるにもかかわらず必要以上に調査を徹底すると、リスクに対する手数料が過大となってしまいますので注意しましょう。

ポイント3:完全成功報酬型のサービスを利用する

仲介手数料を最小限に抑える方法として、完全成功報酬型の仲介会社の利用が挙げられます。完全成功報酬型の仲介会社とは、M&Aが成立した場合にのみ手数料(成功報酬)を請求する業者です。

中間報酬はもちろん、月額報酬や着手金などの手数料も一切発生しないため、仲介手数料分のコストを大幅に低く済ませることが可能です。また、会社の売却が成功した場合のみ手数料が発生するため、リスクの最小化にもつながります。加えて、完全成功報酬型ではM&Aが成立しない限り報酬を受け取れないため、仲介会社が会社売却の成立に向けて最大限努力してくれることも期待できます。

ただし完全成功報酬型でも、成功報酬の手数料率が高いケースや、契約条件で例外的に費用が発生するリスクもある点には注意が必要です。

ポイント4:小規模案件ではマッチングサイトや公的機関を活用する

オンライン上で直接買い手探しや交渉を行えるマッチングサイトは、仲介会社と比較して手数料が安く設定されている場合が多いです。そのため、小規模な会社売却であればマッチングサイトを利用することで、大幅に仲介手数料を抑えられる可能性があります。中には売り手側の手数料を無料としているサービスもあるため、小規模な会社売却ではおすすめの選択肢となります。

また、公的機関が提供する事業承継支援や助成金の制度を活用することで、M&Aにかかる費用の削減につながる場合もあるでしょう。

ポイント5:税金や譲渡価格から逆算してスキームを選択する

用いるM&Aのスキームによって、税金や譲渡価格は変わってきます。税金が安くなるM&A手法を活用することで、会社売却のコストを抑えられるでしょう。もしくは、譲渡価格が最大化されるM&A手法の活用により、より多くの利益を手元に残せる可能性があります。

たとえば個人が売り手の株式譲渡の場合、事業譲渡と異なり税率が一律で20.315%となります。実際にはケースバイケースですが、事業譲渡と比べて納税額を抑えられるケースが多いと言われています。また、事業譲渡によって一部の事業のみを売却する場合と比べて、会社ごと売却することで売却価格が高くなり、結果的に多くの利益を手元に残せる可能性があります。

ただし、最適なM&Aのスキームは、手数料だけでなく、M&Aの目的や買い手企業の意向などによっても変わってきます。M&Aの専門家や税理士などと協力し、多角的な視点からスキームを選択することが重要です。

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会社売却・買収における手数料の会計処理

M&Aで支払った手数料(アドバイザリー報酬やDD費用などを含む)については、適切な会計処理を行わなくてはいけません。具体的な会計処理は、連結財務諸表と個別財務諸表で異なります。

連結財務諸表の会計処理発生した事業年度の費用として処理する
取得関連費用の金額や内容を注記事項として開示する
個別財務諸表の会計処理取得した金融資産の取得価額に含める
仕訳の例(個別財務諸表)手数料の発生タイミング:仮払金などで処理
M&A成立時:取得原価に付随費用を含める
M&Aが白紙となった場合:仮払金を費用として振り替える

この章では、連結財務諸表と個別財務諸表に分けて会計処理を紹介します。

連結財務諸表

連結財務諸表の場合、企業会計基準委員会「企業会計基準第21号 企業結合に関する会計基準」に手数料の会計処理が規定されています。同基準の26項によると、「取得関連費用(外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等)は、発生した事業年度の費用 として処理する」と規定されています。つまり、他の経費と同様にその年度に発生した費用として計上すれば問題ありません。

なお、同基準49項の規定により、取得関連費用の金額や内容を連結財務諸表の注記事項として開示する必要もあります。

個別財務諸表

個別財務諸表の場合、日本公認会計士協会「金融商品会計に関する実務指針」に手数料の会計処理が規定されています。同基準の56項を要約すると「金融資産(デリバティブを除く)の取得時における付随費用(支払手数料など)は、取得した金融資産の取得価額に合算する」といった内容が規定されています。
この規定に基づき、連結財務諸表とは異なり、取得原価に費用を含める必要があります。

仕訳の例

上記の会計処理は基本であり、経理の現場においては「どのような勘定科目を使うのか」「いつ、どのような仕訳を行うのか」といった点を把握することも重要です。厳密なルールはないものの、一般的には「手数料が発生したタイミング」「M&Aが成立したタイミング(または交渉が白紙となった場合)」の2回に分けて仕訳を実施します。

今回は、個別財務諸表を例に一般的な仕訳を紹介します。

手数料の発生時

まず、着手金や中間金などの手数料が発生したタイミングでは、費用を「仮払金」などの勘定科目を用いて計上することが適切であると考えられます。
理由としては、この時点ではM&Aが成立しない可能性もあるため、一時的な支出として考えることが自然だからです。預金から手数料を支払った場合の仕訳例は以下のとおりです。

借方貸方
仮払金 〇〇円預金 〇〇円

M&A成立時

個別財務諸表の場合、前述のとおり取得原価に付随費用を含める必要があります。このルールをもとに、以下のとおり仕訳を行います。 

借方貸方
子会社株式 〇〇円仮払金 〇〇円
預金 〇〇円

M&Aが白紙となった場合

一方でM&Aが白紙になった場合には、以下のとおり仮払金を費用として振り替える仕訳を実施します。

借方貸方
費用 〇〇円仮払金 〇〇円

上記はあくまで一例であり、最適な会計処理や仕訳はケースバイケースです。今回お伝えした内容は参考程度にとどめ、かならず公認会計士やM&Aアドバイザーなどの協力を得たうえで会計処理を実施しましょう。

参照元:
企業会計基準委員会「企業会計基準第21号 企業結合に関する会計基準
日本公認会計士協会「金融商品会計に関する実務指針

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会社売却・買収における手数料の税務処理

はじめに、税務処理は難解な部分が多いため、結論のみを表形式でお伝えします。

費用の概要税務上の扱い
ある有価証券を取得する旨を決定する前に発生した調査費用損金処理を行う
ある有価証券を取得する旨を決定した後に発生した調査費用取得価額に含める

手数料の税務処理に関しては、基本的に「法人税法施行令」に基づいて行います。同施行令の第119条において、購入した有価証券の取得価額には「購入手数料その他その有価証券の購入のために要した費用」が含まれるとされています。

ここで問題となるのが「購入のために要した費用」の範囲です。実務上は、有価証券の取得(M&Aの実施)を決定する前に発生した手数料に関しては、損金処理できると考えることが一般的です。一方で、決定後に生じた費用は取得価額に含めることが適切であると考えられます。

ただし、M&Aの実施を意思決定したケースは状況ごとに異なるため、明確なタイミングは定められません。したがって、税理士やM&Aアドバイザーといった専門家に協力を仰ぎ、各々の状況に応じた税務処理を実施することが重要です。意思決定のタイミングを明確にするために、意思決定に関係する資料を抜けがないよう作成・保管しておくと良いでしょう。

参照元:e-Gov「法人税法施行令

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会社売却に仲介会社を活用するメリット

会社売却の際にM&A仲介会社などを起用することで得られるメリットとして、以下のような点が挙げられます。

  1. 適切なM&A相手を見つけやすくなる
  2. トラブルのリスクを軽減できる
  3. 適切な取引金額でM&Aを進められる
  4. 自社側の作業が減る

具体的なメリットの内容を説明します。

適切なM&A相手を見つけやすくなる

会社売却でM&A仲介会社を起用することで、優良な買い手を得られやすくなります。会社売却を成功させるには買い手選びが重要です。経営者が会社の経営を行いながら、独力で会社売却の買い手探しをするのは現実的ではありません。また、買い手候補を探すネットワークなども持ち合わせていないことが多いでしょう。

M&A仲介会社は、会社売却などM&Aの専門業者です。会社売却の買い手探しのネットワークも持っており、その中からこちらの状況や希望に適する相手を探し出してくれるでしょう。

トラブルのリスクを軽減できる

会社売却でM&A仲介会社に仲介業務を委託しておくと、トラブルを未然に防いだり問題が生じても円満に解決したりすることができます。会社売却の際、売り手と買い手は利害が対立する立場です。当事者が直接、条件交渉しても話がまとまらないかもしれません。

M&A仲介会社に業務委託している場合、会社売却の交渉は仲介会社が代行するため、交渉はスムーズに進むでしょう。また、会社売却では専門的な知識や経験が欠かせません。特に契約書の文言などは注意が必要です。問題なく会社売却の各プロセスを進めていくうえでも、M&A仲介会社は心強い存在といえます。

適切な取引金額でM&Aを進められる

会社売却の際、M&A仲介会社の知識や経験により、適切な条件や取引金額を提示し交渉してくれます。仮に、会社売却交渉において買い手が不当に条件や取引金額を下げてきたとしても、専門的な知識と経験を持つM&A仲介会社であれば、妥当な条件や取引金額の提示とその理由の説明ができます。

M&A仲介会社がいることで、適切な条件や取引金額で交渉がまとまる可能性が高まるでしょう。

自社側の作業が減る

会社売却をM&A仲介会社に業務委託することで、経営者の負担を軽減できます。会社売却には半年から1年程度かかるとされており、長丁場となることが多いです。その間、仮に経営者や役員、経理や総務など自社だけで対応した場合、会社売却のために多くの時間を割かざるを得ないでしょう。

特に経営者の場合、本業への悪影響が懸念されます。その点、M&A仲介会社に業務委託しておけば、会社売却に関する手続き・交渉・資料作成など必要なことのほとんどをサポートしてくれるため、経営者や自社側の負担は大きく軽減されるでしょう。

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M&A仲介会社を選定する際の確認事項

ここでは、M&A仲介会社を選定する際に比較するべき確認事項を紹介します。具体的には以下4点です。

  1. 契約の種類
  2. 実績
  3. 得意な業界
  4. 料金形態

それぞれの内容を説明します。

契約の種類

会社売却の際にM&A仲介会社と締結する業務委託契約には、以下の2タイプがあります。

  • 仲介契約
  • アドバイザリー契約

仲介契約は、M&A仲介会社が売り手・買い手双方と契約します。両者の間を取り持つように業務を進めるため、比較的、短期間に会社売却が決まりやすい反面、条件に妥協を求められやすいことが特徴です。

アドバイザリー契約では、M&A仲介会社は売り手と買い手のどちらかとしか契約しません。クライアントが最大限の利益を得るように業務を行います。そのため、会社売却が成立すれば希望条件どおりかそれに近い成約内容を得られる可能性が高いです。しかし、交渉に時間を要してしまうことが多く、条件を妥協しないため破談してしまう可能性もあります。

一概にどちらが良いとは断言できないので、自社の状況を考え判断しましょう。

実績

会社売却で業務委託するM&A仲介会社については、M&Aの仲介実績をよく確認する必要があります。会社としての実績だけでなく、在籍しているアドバイザーの個々の実績もできるだけ確認しましょう。ポイントは、自社と同規模の会社のM&A実績があるか、あるいは自社と同地域や隣接する地域の会社のM&A実績があるかという点です。

得意な業界

前項に引き続き、M&A仲介会社の実績の確認の一環になりますが、その会社がどのような業種のM&A実績があるかも重要です。M&A仲介会社には、幅広い業種に対応しているところと、特定の業種に特化して仲介業務を行っているところがあります。もちろん、自社の業種を得意としている、または同じ業種のM&A実績がある会社を選びましょう。

料金形態

会社売却のためのM&A仲介会社を選ぶ際には、その会社の料金形態にもこだわりましょう。まず、完全成功報酬制かそうでないかの2択があります。各種手数料が返金されないリスクや成約するまで費用発生がないことを考えれば、前述のとおり完全成功報酬制がおすすめです。

もう1つのポイントは、成功報酬の算定における基準額が何に設定されているか確認しましょう。会社売却対価、企業価値、移動総資産のうち、やはり会社売却対価が基準額となっている会社は、手数料が割安です。

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まとめ

会社売却の仲介業務をM&A仲介会社に依頼する場合、複数の種類の手数料が発生する場合があります。細かく何度も手数料を支払うことにためらいがある場合は、シンプルな料金形態である完全成功報酬制のM&A仲介会社を選ぶと良いでしょう。

ただし、現在、完全成功報酬制のM&A仲介会社は増えており、選択肢が多く難しいと感じる方もいるかもしれません。その際には、成功報酬算定の基準額が会社売却対価になっているところが良いでしょう。また、M&A仲介会社選びでは、手数料だけに着目するのでなく、契約形態や実績をよく調べることも肝要です。

なお、手数料の金額を抑えたい場合には、完全成功報酬制の業者を選ぶことはもちろん、複数の仲介会社を比較したり、デューデリジェンスの範囲を絞ったりする方法も効果的です。
仲介手数料以外のものとして、株式譲渡の税金や株券発行費などの費用もかかるため、M&Aアドバイザーの協力を得ながらコスト削減に努めましょう。

M&AならレバレジーズM&Aアドバイザリーにご相談を

レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、会社売却などのM&A全般をサポートする仲介会社です。専門的な知識・経験が豊富な各コンサルタントは、会社売却の際にも、それぞれの会社様に適したアドバイス・サポートを提供できます。

料金体系は、M&Aのご成約時にのみ料金が発生する完全成功報酬型のため、M&Aのご成約まで費用は発生しません(買い手企業様のみ中間金が発生します)。

随時、無料相談をお受けしておりますので、会社売却などのM&Aをご検討の際には、ぜひお気軽にお問い合わせください。