第二会社方式とは?メリット・デメリットや事業再生の成功事例を解説

2024年1月23日

第二会社方式とは?メリット・デメリットや事業再生の成功事例を解説

このページのまとめ

  • 第二会社方式とは、優良事業を別会社に移転することで事業再生を図る手法
  • 第二会社方式のスキームは、事業譲渡と会社分割の2つ
  • 第二会社方式を成功させるには、適切なスキームを選択することが大切
  • 第二会社方式は、経営不振の影響が大きくなる前に着手する必要がある
  • 第二会社法方式の実施に際しては、必要に応じて専門家のサポートを受けるのもおすすめ

第二会社方式での事業再生を検討しているものの、その選択が正しいのか自信が持てない方もいらっしゃるのではないでしょうか。第二会社方式は、税制面の優遇を受けられるなどのメリットがある一方で、許認可の取得が保証されないなどのデメリットがあるのも事実です。

本記事では、第二会社方式の概要や知っておきたい2つのスキーム、メリット・デメリットなどを解説します。また、成功させるためのポイントも参考になるはずです。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

第二会社方式とは

まず最初に、第二会社方式の定義について解説します。

第二会社方式の定義

第二会社方式とは、債務超過に陥った企業の事業のうち、継続の見込みのある事業を再生させる手法のことです。事業譲渡や会社分割といった方法(スキーム)を用いて、採算性の見込みがある事業を別の会社に移行させて、既存の会社の法人格を消滅させるプロセスになります。
この手法は赤字事業を清算し、優良事業を存続させることを目的に利用されることがあります。

また、第二会社方式と同じ債務免除の手段で「直接免除方式」と呼ばれるものがあります。

直接免除方式との違い

直接免除方式とは、債務免除を直接的に行う方式を指します。
直接免除方式も第二会社方式も、債務免除手段の一種です。債務免除とは、債権を放棄することによって経営再建をはかる方法です。

同じ債務免除ですが、直接免除方式は免除された債務の額が債務免除益として課税対象になることに対し、第二会社方式は特別清算をすることで債務免除益が発生しない、という違いがあります。

繰越欠損金が多額にあるなど、債務免除益が発生しても課税に至らない場合は直接免除方式を、債務免除益が高額になる場合は第二会社方式を選択することが多いでしょう。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

第二会社方式のスキーム

第二会社方式には、「事業譲渡型」と「会社分割型」と呼ばれる2つのスキームがあります。自社の状況に適した方法が選べるよう、それぞれの内容について把握しておきましょう。

事業譲渡型

事業譲渡型は、旧会社から受け継ぎたい資産や契約を、別会社に引き継がせるスキームです。それぞれの債権や債務を契約者と合意したうえで継承させていく手法になります。

事業譲渡型のメリット・デメリットは以下のとおりです。

<メリット><デメリット>
・契約・資産・負債等の選択承継が可能
・契約書に明記された債務以外は引き継がない
・資産の移転コスト(不動産取得税等)がかかる場合がある
・譲渡益に対し消費税がかかる
・税負担の軽減措置がない

明記された債務以外を引き継ぐ必要がないことが事業譲渡の大きなメリットとして挙げられます。一方で、売買により消費税が課されること、税負担の軽減措置がないことはデメリットといえるでしょう。

会社分割型

会社分割型は、旧会社から引き継ぎたい優良事業を切り離し、資産や負債を包括的に別会社に継承させるスキームです。事業譲渡とは異なり、個別的な合意はなく包括的な継承になります。会社分割型のメリット・デメリットは以下のとおりです。

<メリット><デメリット>
・包括承継のため、個別の手続きが不要
・税負担の軽減措置がある
・許認可が承継できる場合がある
・包括承継のため、簿外債務などの負債も承継する

移転する際の手間が少ないことや税負担の軽減措置があること、事業の許認可をそのまま旧会社から受け継げる可能性があることはメリットといえるでしょう。一方で、不要な資産や負債も継承してしまうことはデメリットだといえます。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

第二会社方式の3つのメリット

第二会社方式の主なメリットに、下記の3つが挙げられます。

  • 優良事業を残して事業再生ができる
  • 税制面が優遇される
  • スポンサーからの協力が得やすい(スポンサー型)

順番に解説していきます。

1.優良事業を残して事業再生ができる

第二会社方式は、優良事業を残して赤字事業を切り離すことで、事業再生が可能になります。これまで多くの事業に割いていた資金や人材などを、残したい事業に投入することができるので、優良事業に集中することができるのがメリットです。

第二会社方式をとらず破産手続きをとってしまうと優良事業も含めて消滅してしまいますが、第二会社方式であれば赤字事業のみを切り離して再スタートすることができます。

2.税制面が優遇される

直接免除方式で事業や会社を整理する場合、債務者は免除された債務を利益として取り扱わなければならず、多額の法人税を課される可能性があります。

しかし、しっかりと計画を練ったうえで第二会社方式を利用すれば、残った旧会社は特別清算をすることができるので、債務免除益課税などを回避することができます。

また、第二会社方式の協定型の清算手続き(債権者集会の決議と裁判所の認可を経て行う清算手続き)を行うことで、債権者にとっても安全に税務上の損金処理が可能になります。

3.スポンサーからの協力が得やすい(スポンサー型)

第二会社方式では、優良部門取得の対価を払えるスポンサー企業に事業を承継することもあり、これをスポンサー型といいます。

スポンサーにとっては、不採算部門やその債務を引き継がずに、優良事業のみを引き継ぐことができるため、大きなメリットがあります。また、優良事業がスポンサー企業の事業とシナジーを生む可能性が高いものであれば、よりスポンサーの協力を得られやすくなるでしょう。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

第二会社方式の3つのデメリット

第二会社方式にはデメリットも存在し、下記の3つが主なものになります。

  • 許認可が必ず取得できるとは限らない
  • コストが発生する
  • それまで融資を受けていた金融機関から資金調達を行える可能性が低い

1つずつ紹介していきます。

1.許認可が必ず取得できるとは限らない

許認可が承継できるかどうかは、業種の種類によって変わります。飲食店営業や旅行業などは、会社分割による許認可の承継が認められていますが、建設業や宅建業などは承継が認められていません。

許認可が承継できなかった場合、事業に必要な許認可を再度取得する必要があります。以前の企業で許認可が得られていたからといって、許認可がまた降りるとは限らないので、この点は大きなリスクとなります。

2.コストが発生する

新たな第二会社を設立して第二会社方式を行う場合は、会社移転による不動産コストや設立にあたっての登録免許税などの費用がかかります。第二会社方式を採用する会社の多くは、不採算事業を抱えていることが多いため、費用の捻出が難しい場合もあるでしょう。

第二会社方式を行うにあたって、どの程度の費用がかかるのか、事前にある程度の見積りをとっておくことが必要です。

3.資金調達に困難が伴う可能性がある

金融機関からは新会社と旧会社を同様と見なすため、それまで融資を受けていた金融機関からの追加融資が難しくなることが多いです。そのため、スポンサー企業からの支援やその他の資金獲得方法を、リスクヘッジとして考えておくことが重要です。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

第二会社方式を成功に導く3つのポイント

第二会社方式を成功させるためには、次の3つのポイントを心がけておくことが重要です。

  • 採用するスキームを慎重に検討する
  • 経営不振の影響が大きくなる前に着手する
  • 専門家に相談する

それぞれのポイントを詳しく解説します。

1.採用するスキームを慎重に検討する

先の章でご紹介したとおり、第二会社方式には事業譲渡と会社分割という2つのスキームが用いられます。自社の現状を正しく把握し、より効果的なスキームを決定するようにしましょう。

簿外債務の引き継ぎリスクに備えることを優先するのであれば、事業継承を選択することになります。個別に資産や負債の引き継ぎができ、必要なものに範囲を絞って引き継ぎできるのがメリットです。

ただし、各種納税面では、会社分割のように優遇が受けられない点を把握しておく必要があるでしょう。

一方で、包括承継とみなされる会社分割は、引き継ぎの手続きがスムーズに行えるほか、消費税の免税や登録免許税・不動産取得税の軽減措置が受けられるのが大きなメリットです。しかし、包括承継であるからこそ、表面化していなかった債務を引き継いでしまうリスクがあるでしょう。

このように、両者にはそれぞれメリットとデメリットがあるため、どちらを選択するかじっくりと検討する姿勢が欠かせません。

2.経営不振の影響が大きくなる前に着手する

そもそも第二会社方式を実施するためには、魅力的な事業を保有していることが基本条件です。経営不振が長引き優良事業にまでその影響が及んでしまうと、不信感を持たれやすくなりスポンサーが集まらない可能性があるでしょう。

事業再生を確実に進めるためには、第二会社方式を実施するタイミングを逃さないことが重要です。第二会社方式を用いた事業再生が必要だと判断したら、経営不振の影響が大きくなってしまう前に、着手するようにしましょう。

3.専門家に相談する

第二会社方式を実施する際には、専門的な知識やノウハウが必要です。とくに自社の状況を正しく把握し、適切なスキームを選択することは、第二会社方式を成功させるために重要なカギとなります。

会社分割と事業譲渡どちらのスキームを採用するか判断がつかない場合は、M&Aに関連するサポート経験やノウハウが豊富な専門家に依頼するのもよいでしょう。ほかにも、承継させる事業の範囲や第二会社での事業再生計画、旧会社の清算方法など、第二会社方式を実施する際に重要視すべきポイントを相談できます。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

第二会社方式を実施する際の相談先

第二会社方式を相談する際には、主に次の2つの選択肢があります。

  • 中小企業再生支援協議会
  • M&A仲介会社

それぞれの相談先の特徴やメリットなどを解説します。

中小企業再生支援協議会

第二会社方式を実施する際は、中小企業活性化協議会の支援を受けることが可能です。中小企業活性化協議会は、各都道府県に置かれている中小企業の事業支援団体で、商工会議所等が中心となって運営されています。

中小企業活性化協議会では、中小企業からの事業再生の相談に対して、金融機関や民間専門家、各種支援機関と連携し、再生計画の立案およびその支援を行います。

中小企業活性化協議会による支援内容は、下記のとおりです。

  • 収益力改善支援
  • プレ再生支援・再生支援
  • 再チャレンジ支援
  • 早期経営改善計画策定支援
  • 経営改善計画策定支援

上記の支援はいずれも信用が高く、費用も他の選択肢に比べるとはるかに安価であるため、コストの捻出が難しい場合でも利用しやすいです。資金面での不安がある方は、ご検討ください。

具体的に、第二会社方式の実施において中小企業再生支援協議会の支援を申請するには、多くの負債を抱えており事業の継続が難しい中小企業であると認められる必要があります。さらに、業種分類ごとに資本金または従業員数の要件が定められており、自社が支援対象として該当するかを確認することが重要です。

申請後にも承継される事業における従業員の8割以上の雇用を確保するなど、いくつかのクリアすべき条件が定められています。第二会社方式及びM&Aにまつわる知識が十分でない場合は、判定基準を満たしているのか判断するのが難しい場合もあるでしょう。

必要に応じて、専門家の助けを借りるのも一つの手です。

参照元:
中小企業庁「中小企業活性化協議会(収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援)
中小企業庁「中小企業承継事業再生計画に係るQ&A

M&A仲介会社

第二会社方式の実施をサポートしてくれる相談先として、中小企業再生支援協議会とともに知っておきたいのが、M&A仲介会社です。M&A仲介会社は、一般的に第二会社方式のみならず、さまざまなケースのM&Aに携わっており、付随する細かい業務についても相談できます。

なによりも、M&A仲介会社は売り手と買い手を仲介する役割として、中立的な立場で対応してもらえるのがメリットです。取引先の企業をリサーチする段階から、実際のM&Aを進行する段階まで、M&A全般においてサポートを受けられるでしょう。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

第二会社方式を利用する際の注意点

会社分割を行うにあたっては、濫用的会社分割と見なされないように注意が必要です。濫用的会社分割とは、債権者に同意を得ないまま会社分割によって優良部門を他の会社に移すことで、債権者の債権回収可能性を低減させる詐害行為の一種です。

会社分割では債権者から個別に同意を得なくても良いと解釈できる規定が設けられたことや、会社分割がM&Aで多く行われることによって、濫用的会社分割とみなされるケースも増えてきています。

ただし、下記すべてに当てはまる場合は、債権者への同意を得ていなくても、濫用的会社分割とは見なされないケースもあります。

  1. 会社が破綻しかけており、法的整理となる恐れがある場合
  2. 会社分割によって、正当な評価を得た分割対価を得ている場合
  3. その会社が破産手続きや民事再生、会社更生などの手続きをとるよりも、債権回収可能性が高い場合
  4. 上記を踏まえたうえで、債権者に対して再生計画と債務の弁済方法が示されている場合

いずれにせよ、第二会社方式で事業を再生させるにあたっては、原則的に債権者への個別同意を得たうえで進めることをおすすめします。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

第二会社方式の事例

ここからは、第二会社方式の事例について紹介します。

セノー株式会社の事例

2010年、スポーツ関連器具の製造および販売事業などを行うセノー株式会社が、第二会社方式により、事業再生を行いました。セノー株式会社は発足時より、体育施設のインフラ事業を中心に成長していましたが、建設事業において多額の損失を発生させていました。仮装経理による損失処理を繰り返した結果、2009年にセノー株式会社単体の実態債務超過は65億円に上り、その後企業再生のため、第二会社方式を活用しました。

プロセスとして、関連会社の外部金融債務をセノー株式会社に集約し、その後新たにセノー株式会社の100%出資子会社を設立しました。その後、セノー株式会社の全事業を新会社に継承させる会社分割を実施。新会社は援助を受け、旧会社は特別清算手続きにより清算されました。結果として、48億円ほどが債権放棄額となりました。

参照元:地域経済活性化支援機構「セノー株式会社等に対する支援決定について」「株式会社企業再生支援機構 再生支援案件事例集(p.5)

藤庄印刷株式会社の事例

2011年、総合印刷事業およびデジタル画像処理事業を取り扱う藤庄印刷株式会社が、第二会社方式により事業再生を行いました。新たに埼玉に工場を設立した藤庄印刷株式会社でしたが、過当競争により低収益を余儀なくされ、財務内容は圧迫されていきました。その状況を改善するべく、藤庄印刷は第二会社方式でのM&Aを実施。旧会社100%出資の新会社を設立し、主力事業に関連する資産や負債を継承しました。

その後、旧会社は非承継資産を売却し、売却代金は負債返済に充て、結果として、旧会社の約20億円の残債務が債権放棄額となりました。

参照元:
地域経済活性化支援機構「藤庄印刷株式会社に対する支援決定について
地域経済活性化支援機構「株式会社起業再生支援機構 再生支援案件事例集(p.12)」

芝政観光開発株式会社の事例

2011年、北陸地方で有数のレジャー施設として人々に愛されている「芝政ワールド」を運営する芝政観光開発株式会社が、第二会社方式を用いた事業再生に取り組んだ事例です。1980年代に大きな注目を浴びてオープンしたジャンボプールを始め、博物館や美術レストハウスなど多種多様なレジャー施設を開設し成長を遂げていた同社ですが、バブル崩壊により来場者が激減するという危機に陥りました。

事業再生を図るべく、100%出資子会社を設立したうえで、まずは新会社の株式を企業再生支援機構に譲渡しました。その後、会社分割のスキームを適用し、「芝政ワールド」事業に関連する資産と負債を新会社に継承させる流れを取ったのが特徴的です。

参照元:
株式会社企業再生支援機構「芝政観光開発株式会社に対する再生支援の完了について」
地域経済活性化支援機構「株式会社起業再生支援機構 再生支援案件事例集(p.14)」

ヤマギワ株式会社の事例

2011年、特殊照明やオリジナル照明の開発・製造に携わっているヤマギワ株式会社が、財政状況の悪化を受けて、第二会社方式での事業再生を実行しました。同社は、負債を抱えてしまった店舗事業からの撤退が遅れたことや、価格競争激化による収益率の低下によって、抜本的な事業再生が必要な事態に追い込まれてしまいます。

第二会社方式の会社分割スキームを用いることで、ヤマギワ株式会社は新旧分離されることとなりました。旧会社側の遊休不動産は売却処理され、取得した利益によって負債の返済が実施された事例です。

それでも補いきれなかった負債に関しては、特別生産などの法的整理によって処理されました。

参照元:
株式会社企業再生支援機構「ヤマギワ株式会社に対する再生支援の完了について
地域経済活性化支援機構「株式会社起業再生支援機構 再生支援案件事例集(p.17)」

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

まとめ

第二会社方式とは、採算の取れている優良事業を新会社に移転する、事業再生の1つの手段です。第二会社方式のスキームとしては、事業譲渡型と会社分割型の2つの方法があります。

事業譲渡型であれば、簿外債務を引き継ぐリスクがないことなどがメリットとして挙げられますが、一方で税制面での優遇を受けられないというデメリットに注意しましょう。

対する会社分割型は、包括承継の手段であるため、個々の資産や負債の手続き処理をする必要がなくなり、一括で承継を進められるのがメリットです。ただし、表面化していない簿外債務がある場合は、想定していなかった負債を引き受けてしまう可能性がある点は押さえておく必要があります。

第二会社方式は、これらスキームの選定を始めとする、複雑な手続きやノウハウが求められる手法です。確実に手続きを進めるためには、中小企業再生支援協議会やM&A仲介会社への支援依頼を検討してみましょう。

中小企業再生支援協議会では条件を満たせば手厚いサポートを得られる分、審査や手続きが煩雑で条件が厳しいのが特徴です。一方のM&A仲介会社は、M&A全般に関する豊富な知識を持ったエキスパートとして、中立的な立場で第二会社方式の実施をサポートしてくれます。

M&AならレバレジーズM&Aアドバイザリーにご相談を

レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社には、各領域の専門性に長けたコンサルタントが在籍しています。第二会社方式はもちろん、さまざまな案件に対応しており、M&Aのご成約まで一貫したサポートが可能です。ぜひレバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社のご利用をご検討ください。