業務移管(事業移管)とは?事業譲渡との違いや行う目的、メリットを解説

2023年8月17日

業務移管(事業移管)とは?事業譲渡との違いや行う目的、メリットを解説

このページのまとめ

  • 業務移管とは、社内の特定の業務の管轄を社内の別の部門や外部企業に移すこと
  • 業務移管と事業譲渡は、対価を受け取る側や移行する対象などに違いがある
  • 業務移管の目的は、業務の効率化、人員の確保、コスト削減、事業の立て直しなど
  • 業務移管の対象業務は、単純なデスクワーク業務や定型業務、専門性の高い業務など
  • 円滑な引き継ぎの実施が業務移管のポイントとなる

外部への業務移管を検討中で、事業譲渡との違いを把握したいとお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。M&Aスキーム(手法)である事業譲渡と業務移管は異なるものです。

本コラムでは、業務移管の目的、メリット・デメリット、対象になりやすい業務、ポイントなどを解説するとともに、事業譲渡との違いも説明しています。

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業務移管(事業移管)とは

業務移管とは、会社内の特定の業務の管轄を、社内の別の部門や外部の企業に移すことです。管轄とは、当該業務を管理して実行する権限を意味します。

業務移管は事業移管と呼ばれることもありますが、厳密には「業務」と「事業」は異なるものです。大企業の例で言えば、複数の業務が連携することで1つの事業が形成されます。このように業務と事業は同義語ではありません。
ただし、中小企業などでは、1つの業務を事業として行っているケースもあります。この場合、「業務≒事業」であり、業務移管のことを事業移管と呼ぶこともあります。

本コラムでの表記は、「業務移管」に統一して記事を進めさせていただきます。

業務移管を行う目的

業務移管を行う場合の代表的な目的には、以下のようなものがあります。

  • 業務の効率化
  • 人員の確保・再配置
  • コスト削減
  • 事業の立て直し
  • 働き方改革

事業に関係する業務ではあるものの、不慣れ・適任者がいないなどの理由で効率が悪い場合、当該業務を得意とする外部の企業に業務移管することで効率化が図れます。効率が悪いということは無駄なコストが発生していることも多く、コスト削減効果も生むでしょう。

業務移管することで手の空く人材もいます。その人材が得意とする業務に配置し直せば、社内業務の効率化も期待できるでしょう。また、不採算部門があるケースでは、同部門を外部に業務移管することで立て直しを図ることもあります。

さらに昨今は、働き方改革の一環として、従業員の負担軽減のために、従来、社内で行っていた業務の一部を、外部の企業に業務移管するケースも増えてきました。

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業務移管の対象にされやすい業務

一般に、業務移管の対象になりやすい業務とされるのは以下の2例です。

  • 単純なデスクワーク業務や定型業務
  • 専門性の高い業務

具体的な内容をみてみましょう。

単純なデスクワーク業務や定型業務

業務移管されやすい単純なデスクワーク業務や定型業務の具体例は以下のとおりです。

  • 工場での生産業務
  • 伝票整理
  • 経費集計
  • データ入力
  • 申告書作成
  • バックオフィス業務(コールセンター、お客様センターなど)

これらに共通しているのは、マニュアル化により作業内容が決まっている業務であることです。業務中に臨機応変な対応が求められたり、試行錯誤したりといったことはあまり発生しません。間違いが起こりにくい業務であることが、業務移管しやすい理由です。

専門性の高い業務

比較的単純な作業が業務移管される一方で、専門的な知識や経験を必要とする業務も、業務移管の対象となっています。
一から新規事業に進出する場合などは、社内で専門的な経験が乏しく、特定の業務を行う体制が構築されていません。そのようなケースにおいて、当該業務を得意とする外部の企業に対して、業務移管が積極的に行われています。

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業務移管と事業譲渡の違い

事業を他社に移す方法として、M&Aの手法の一つである「事業譲渡」があります。
ここでは、業務移管と事業譲渡の違いを解説します。まずは、事業譲渡とは何であるかを説明します。

事業譲渡とは

M&Aスキーム(手法)の1つである事業譲渡とは、売り手が行っている事業とそれに関連する資産や権利義務などを、売り手・買い手が協議したうえで選別して売買を行う取引です。事業譲渡は個別承継であり、売り手は売りたいものだけを、買い手は買いたいものだけを選べます。

事業譲渡のメリット・デメリット

ここで、事業譲渡のメリット・デメリットを確認しておきましょう。
事業譲渡のメリット・デメリットを、それぞれ売り手・買い手に分けて説明します。

事業譲渡の売り手のメリット

事業譲渡における売り手の主なメリットは以下のとおりです。

  • 対価が現金
  • 事業の選択と集中が実現
  • 法人格が残る
  • 負債があっても買い手が見つかりやすい

事業譲渡の対価は現金のみです。会社分割のように買い手の自社株式を対価にはできません。売り手としては、不採算事業やノンコア事業などを売却することですぐに使える運転資金を得られるので、主力事業に資金を投入できます。
また、法人格はそのまま残っているため、事業を売却して得た資金を基に、新たな事業を始めることも可能です。

そのほか、負債があっても買い手がつきやすいことが事業譲渡のメリットの一つです。売り手に負債があった場合、会社を丸ごと売却する株式譲渡では買い手がつきにくいでしょう。しかし、譲渡対象を選別できる事業譲渡であれば、買い手は負債を譲渡対象から外せるため、M&Aが成立しやすくなります。

事業譲渡の買い手のメリット

事業譲渡における買い手の主なメリットは以下のとおりです。

  • 譲渡対象や範囲を選別できる
  • 節税効果がある

株式譲渡などの包括承継では、買い手は不要な資産や負債なども全て一括で承継するしかありません。その点、事業譲渡は譲渡対象・範囲を選別できるため、不要な資産・負債を引き継がずに済みます。

事業譲渡の対価は、譲渡対象資産・負債の金額よりも高くなるのが一般的です。買い手は、その差額を「のれん」として無形固定資産に計上します。この場合、のれんは損金扱いとなり5年にわたって減価償却するため、減税につながるのです。

事業譲渡の売り手のデメリット

事業譲渡における売り手の主なデメリットは以下のとおりです。

  • 手続きが多い
  • 競業避止義務が発生する

事業譲渡を、株式の売買だけで成立する株式譲渡と比べると、手続き面が非常に煩雑です。譲渡対象選別のための交渉に始まり、事業に関連する取引先の引き継ぎ、移籍する従業員の同意を取るなど、時間・手間がとてもかかるでしょう。

また、会社法の定めにより、事業譲渡の売り手には競業避止義務があります。競業避止義務とは、事業譲渡の買い手が事業所を置く市区町村および隣接する市区町村において、売却した事業と同じ事業を20年間、行ってはならないという法令です(買い手の同意が得られれば期間短縮や義務免除も可能)。

事業譲渡の買い手のデメリット

事業譲渡における買い手の主なデメリットは以下のとおりです。

  • 手続きが多い
  • 消費税が課税される
  • 許認可は引き継げない

事業譲渡では、売り手同様、買い手も手続きに追われます。取引先を引き継ぐには、同意を得て新たに契約を締結しなければなりません。自社に移籍する売り手側の従業員とも、個別に労働契約を結び直す必要があります。

事業譲渡の譲渡対象に消費税課税資産が含まれている場合、消費税の納付が必要です。売り手に対価を渡す際に消費税分を加算して支払うため、その分の現金も調達しておかなければなりません(税務署への消費税納付は売り手が行う)。

また、事業譲渡では、買い手は許認可を新たに取得する必要があります。許認可は、申請を行った事業者に与えられるものであるため、事業譲渡の対象にはできないからです。

業務移管と事業譲渡の対象の違い

業務移管では業務移管した側が対価を支払います。一方、事業譲渡は、自社が行っている事業を売却することであるため、事業譲渡の売り手は対価を得るのが常です。

業務移管は、特定の業務が対象となって実施されます。事業譲渡の場合、買い手が当該事業を行うためには、それに関連する資産や権利義務、従業員などが欠かせません。それらも譲渡の対象になるため、特定業務の業務移管に比べて、事業譲渡の対象は幅広くなります。

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業務移管を行うメリット

ここでは、業務移管を行う際のメリットを以下のように分けて説明します。

  • 社内での業務移管のメリット
  • 外部企業への業務移管のメリット
  • 社内・外部への業務移管で共通するメリット

社内での業務移管と外部の企業への業務移管では、得られるメリットが違う場合があります。以下で具体的に解説します。

社内での業務移管のメリット

社内での業務移管では、業務に関わる資産や負債、契約などを移転する必要がありません。複雑な手続きは発生しないため、比較的手軽に行えます。業務を担当する従業員を業務移管する部署に異動させる場合は、業務内容の個別引き継ぎの手間も発生しません。これまでと変わらず円滑に当該業務が進められます。

外部企業への業務移管のメリット

外部企業に業務移管するメリットの1つは、社内で発生する業務の低減化により従業員の業務負担が軽減することです。従業員の負担軽減により、ゆとりを持って仕事に接せられるようになります。また、移管した業務をこれまで担当していた従業員は別部門に編成可能となるため、増員せずに人員を確保することが可能です。

不採算部門を抱えている企業の場合、その業務を得意とする外部企業に業務移管することで、会計上の問題を改善し、不採算を立て直すきっかけにもできるでしょう。

社内・外部への業務移管で共通するメリット

社内外にかかわらず業務移管する際のメリットには、以下の点が挙げられます。

  • 業務の効率化
  • コストの削減

業務移管により、業務の一元化が実現します。業務の一元化は、業務全体の効率化につながると同時にコストダウンも可能となるでしょう。業務移管は、企業としての採算性向上をもたらす可能性もあるのです。

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業務移管を行うデメリット

業務移管では、以下のようなデメリットが懸念されます。

  • 手続きに手間や時間がかかる
  • 従業員が流出するおそれがある

デメリットの具体的な内容を確認しておきましょう。

手続きに手間や時間がかかる

業務移管の内容や相手先企業の状況によっては、単純に業務を委託するだけでは済まないケースがあります。その場合、業務の引き継ぎ作業が発生したり、一時的に自社の従業員を出向させたりするなど、業務移管をスタートさせるまでにいくつもの手続きを行わなければならないでしょう。

自社の取引先にも関わる内容の業務移管であれば、取引先にも通知して了承を得なければならないなどの手間も発生します。

従業員が流出するおそれがある

社内での業務移管だったとしても、業務を担当している従業員が他部署へ異動となった場合、不満を持ち、最終的に離職してしまう可能性があります。
そして、外部企業への業務移管に際し従業員を出向させる場合は、さらに注意が必要です。これには、出向に不満を持って退職につながるケースと、外部企業の業務環境に魅力を感じてそちらへ転職してしまう2つのケースがあります。

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業務移管を行ううえで必要な書類

外部の企業との間で業務移管を実施する場合、必要となる可能性があるのは以下の契約書です。

  • 秘密保持契約書
  • 業務委託契約書
  • 事業譲渡契約書

秘密保持契約書は、業務移管の交渉に先んじて、お互いの秘密情報を保護するために締結します。その後、交渉を経て業務移管の内容や条件が定まったら、業務委託契約書を結びます。

また、M&Aの手法である事業譲渡を実施することによって業務移管を叶える場合は、事業譲渡契約書が必要です。

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業務移管を行う際のポイント

業務移管をスムーズに行うには、業務の引き継ぎに注意を払うことが肝要です。特に、社内ではなく外部企業に業務移管をする場合、以下の点に気をつけましょう。

  • 仕事の関係者が困らないようにする
  • お客様と関わる業務を移管する場合、信頼を落とさないようにする

また、業務の引き継ぎをスムーズに行う具体的なポイントは以下の2点です。

  • 業務内容のマニュアル化
  • 明確なスケジューリング

業務内容を網羅したリストを起こして業務マニュアルを作成するのが、業務の引き継ぎを成功させるポイントです。そして、引き継ぎを行うスケジュールに余裕を持たせて実行することが、より引き継ぎの完成度を高めるでしょう。

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まとめ

業務移管とは、会社内の特定の業務の管轄を、社内の別部門や外部の会社に移すことです。業務移管は代わりに業務を行ってもらうだけであり、M&Aスキームである事業譲渡のように資本の移動と権利の移転(事業の売買)が行われるわけではありません。

業務移管を検討する場合は、その問題が業務移管で解決することなのか、事業譲渡を検討すべきなのかなどを考える必要があります。業務移管と事業譲渡の特徴・メリット・デメリットを比較して、結論を出しましょう。
また、手続きが複雑な事業譲渡を検討する場合は、M&A仲介会社が行っている無料相談を活用することがおすすめです。

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