承継と継承の違いとは?使い分けや事業承継を成功させる方法を解説

2024年1月22日

承継と継承の違いとは?使い分けや事業承継を成功させる方法を解説

このページのまとめ

  • 「承継」は抽象的なものを、「継承」は具体的なものを引き継ぐこと
  • 一般的に「事業承継」が使われている
  • 事業承継(継承)では、経営権・資産・知的資産の3つを引き継ぐ
  • 事業承継(継承)は時間的に余裕も持って進めることが大切
  • 事業承継(継承)を行う場合、専門家へ依頼するほうがよりよい結果を得やすい

事業承継の検討中に、「承継と継承の違いとは何だろう?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。「承継」は精神などの抽象的なものを、「継承」は権利など具体的なものを引き継ぐことを指します。

本記事では、「承継」と「継承」の言葉の意味や使い分け、さらに事業承継の種類やそれぞれのメリット・デメリット、事業承継の進め方、成功ポイントを詳しく解説します。相談窓口も紹介しているので、ぜひご活用ください。

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「承継」と「継承」それぞれの意味と違い

多くの辞書が「承継」と「継承」を類義語として提示しており、2つの言葉は混同して使用されることも多いです。しかし、厳密にいえば引き継ぐ対象に違いがあります。まずは、「承継」と「継承」の違いについて解説します。

「承継」の読み方と意味

「承継」は「しょうけい」と読みます。辞書を引いてみると、この言葉は一般に、「精神」や「伝統」など、やや曖昧な「もの」を受け継ぐことだと分かります。「承継」によって受け継がれるのは、一般に事業やそれに伴う精神や地位を含む、抽象的なものです。

「継承」の読み方と意味

「継承」の読み方は「けいしょう」です。この言葉を同様に辞書で引いてみると、「身分・仕事・財産などを受け継ぐ」ことを意味していると分かります。「継承」によって受け継がれるものは、一般に具体的で体系化されたものです。

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「事業承継」と「事業継承」の使い分け方

「承継」が精神をはじめとする抽象的なものの引継ぎを指すのに対し、「継承」は具体的な権利や財産などの引継ぎを指します。例を挙げると、2つの言葉は下記のように使い分けられます。

  • 親から店を譲渡されるにあたり、「地域に愛される店を目指す」という精神を「承継」する
  • 親から店やそれに伴う権利を「継承」する

ただし実際のところ、事業を引き渡す際には、精神や方針といった抽象的なものと、権利や資産といった具体的なものの両方が後継者に引き継がれます。そのため「事業承継」と「事業継承」は、あまり厳格に使い分けられていないことも多いです。

法令や行政においては、一般的に、事業の引継ぎを「承継」と称しています。(例:中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律)

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事業承継(継承)により引き継がれる3つの経営資源

事業承継(継承)を行う場合、どのような経営資源が引き継がれるのでしょうか。ここでは事業を引き渡すにあたり、後継者に受け継がれる権利や資産について、簡単に解説します。

経営権(人)の承継

事業承継により引き継がれるものとして、まず挙げられるのが「経営権」、つまり会社を運営する権利です。一般に経営権の承継は、すべての、または最低でも議決権の2分の1を超える分の株式を譲渡する(引き継がせる)形で行われます。

3分の2以上の株式を所有している状態は、特に「支配権」を有しているとも称されます。これは3分の2以上の株式により、株主総会の特別決議を成立させることができるためです。支配権を有していれば、特別決議を通して会社の重要な事項(会社の解散や定款の変更など)を決定することができます。

経営権を引き継ぐことを、「人の承継」とも言います。

資産の承継

事業に関するあらゆる資産も、事業承継(継承)の対象となります。ここでいうあらゆる資産には、店舗や設備などはもちろん、株式や許認可に加え、債務や連帯保証といったマイナスの財産までもが含まれます。

個人間の相続と似たような形と考えると、分かりやすいかもしれません。

知的資産の承継

知的資産とは、資産の中でも目に見えないノウハウや人材、技術、組織力、顧客とのネットワーク、ブランドなどのことを指します。契約書などを通して定義することが難しい資産ではあるものの、大きな価値がある対象です。特に同じ土地で同じ事業を承継するのであれば、知的資産の引継ぎと維持は非常に重要となります。

知的資産は経営権や資産と異なり、所有者が死亡した場合であっても基本的には相続の対象となりません(具体的な契約や債権などが存在する場合を除く)。

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【種類別】事業承継(継承)のメリットとデメリット

事業承継(継承)は大きく次の3種類に分けられます。

  1. 親族内承継
  2. 親族外承継
  3. M&Aによる第三者への承継

ここからは、それぞれの事業承継(継承)のメリットとデメリットについて解説します。

親族内承継

「親族内承継」とは名前通り、親族間で事業の承継(継承)を行うことを指します。父母や祖父母といった直系尊属からの承継はもちろん、叔父・叔母や兄弟姉妹などからの事業承継も、親族内承継に含まれます。

親族内承継のメリット

親族内承継のメリットは、従業員を含む関係者の理解を得やすいことや、事業承継までに十分な時間をかけやすいことです。直系親族からの事業承継は、古くから行われている一般的な方法です。

「突然知らない人がトップに立つ」よりも、「先代の子供や親族が後を引き継ぐ」場合の方が、関係者にとって受け入れやすいでしょう。また、事業を承継する子供や親族の同意があれば、先代が事業を退く前から計画的に次期経営者として教育できます。

親族内承継のデメリット

親族内承継のデメリットは、「承継者としてふさわしい親族がいるとは限らない」ことです。経営者の子供という理由だけで適切でない人物がトップに立った場合、従業員や取引先の離反は容易に考えられます。

また、職業の選択肢が増えたことから、近年は「子供や親族が、事業承継を受け入れたがらない」ことによる後継者不足も頻発しています。これとは反対に、複数の子供や親族が事業承継を希望した場合は後継者争いが起こり、親族間でトラブルが発生する可能性もあるでしょう。

親族外承継

「既知ではあるが親族ではない」人へ事業を承継させることを「親族外承継」と呼びます。この方法を使うと、信頼のおける従業員などへ事業を引き継ぐことができます。

親族外承継のメリット

親族外承継のメリットは、血縁の有無にかかわらず、信頼・実績のある人へ事業を引き継げることです。特に十分な知識やノウハウのある人材に事業を承継させるのであれば、経営者としての教育もスムーズに進みやすいと考えられます。

また、その人物に十分な信頼・実績があれば、他の従業員からの理解も得やすいことでしょう。

親族外承継のデメリット

親族外承継のデメリットとしては、主に以下の2点が挙げられます。

  • 決定に反感を持つ従業員や関係者が離反する可能性
  • 後継者が株式譲渡や個人保証の承継に必要な資産を持っていない可能性

親族外承継を行った場合のデメリットの一つは、人選に納得できない従業員や関係者からの反発があることです。従業員が離職したり、取引を停止されたりする恐れもあるでしょう。

もう一つのデメリットは、後継者候補の資金不足により承継ができないリスクがあることです。事業承継を行う際には、株式や資産、各種契約も後継者に引き継がれます。このとき、仮に後継者が十分な資産を持っていなかった場合、「引き継がれるべき株式を購入できない」「現在融資を行っている、債権者(銀行など)が難色を示す」といった懸念が発生します。

M&Aによる第三者への承継

M&Aとは「Mergers(合併)& Acquisitions(買収)」の略称です。M&Aによる第三者への事業承継には、M&Aを仲介する会社を利用して進めることが一般的です。

M&Aのメリット

M&Aの利点は、「周囲に事業を承継したい人がいなくても、承継者を見つけられる可能性がある」ことです。

中小企業庁の資料「中小M&Aの意義」の3ページでは、黒字状態であるにもかかわらず、後継者不足などを理由に廃業せざるを得なかった企業が約6割に上ると分かります。こういった企業に買い手が付けば、自身は事業から退きながら、ノウハウや従業員を引き継ぐことができるでしょう。

また、M&Aを用いると、選択したスキームによっては個人の保証または担保による借入金を買い手企業に引き継ぐことも可能です。経営者(法人代表者)自身が連帯保証人となっている場合や、経営者が所有する不動産を担保に事業資金の融資を受けている場合であっても、問題なく手続きを進められます。

参照元:中小企業庁「中小M&Aの意義」

M&Aのデメリット

M&Aを使った第三者への承継のデメリットは、従業員や関係者の理解を得づらい可能性があることです。従業員や関係者から見ると「経営者が知らない人に代わる」形となってしまうためです。従業員・関係者に対して十分に説明を行い、M&Aへの理解を得る必要があります。

また、事業の引継ぎ先によっては、経営理念や方針が大きく変動してしまう可能性も考えられます。
そのためM&Aを行う際には、後継者との認識のすり合わせや従業員のケアに尽力することが重要です。

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事業承継(継承)の進め方 

ここでは、事業承継(継承)の進め方をお伝えします。以下に、概要を表でまとめました。

売り手側買い手側
自社の現状を把握するM&A戦略を立てる
支援機関や金融機関に相談する
後継者や承継方法を決める
事業承継(継承)の計画を立てる
親族内・親族外承継(継承)の場合M&Aの場合
関係者への説明買い手候補を探す売り手候補を探す
事業承継(継承)を実施する買い手候補と交渉売り手候補と交渉
デューデリジェンス対応デューデリジェンスの実施
売却契約の締結買収契約の締結
クロージング従業員や取引先への周知クロージングPMI実施

事業承継(継承)の一つにM&Aがありますが、M&Aを実施する場合は買い手側の動きを把握しておく必要があります。そのため、表内では買い手側の動きについても記載しています。ぜひ、事業承継(継承)を実施する際の参考にしてください。

自社の現状を把握する

事業承継(継承)を実施する場合は、事前に自社の経営現状や課題、後継者について把握することが大切です。次のポイントについて、考えてみてください。

  1. 自社株の評価
  2. 収益性の高い商品やサービス
  3. 競争優位性についての把握
  4. 業界におけるポジショニング
  5. 後継者候補の有無
  6. 相続財産の特定
  7. 相続税額の算定
  8. 親族への対応

次に、事業承継(継承)の流れをお伝えします。

事業承継(継承)の計画を立てる

自社の現状や課題を洗い出した後は、事業承継(継承)の計画を立てます。ここでは、親族内や親族外承継(継承)の場合とM&Aの場合のそれぞれについて説明します。

親族内・親族外承継(継承)の場合

親族内や親族外承継(継承)の場合は、経営者が一人で計画を立てるのではなく、後継者や関係者とともに計画を立てることが大切です。経営者や関係者が一緒になり、中長期的な経営方針や目標を具体的に設定していくことで、より現実的な計画が可能となります。

後継者にとっても、計画段階から参加することにより責任感が芽生え、自覚が培われます。現経営者と後継者が一つの目標に向かって作業することも、事業承継(継承)の大事なプロセスです。

M&Aの場合

M&Aを選択する場合、自社のみで行うのは非現実的です。M&A仲介会社のような専門家への相談が欠かせません。

まずは、M&A仲介会社のような専門家と契約を締結し、自社の状況からどのような相手がふさわしいのか、希望条件などを固めていきます。希望条件やスキームを策定したら、相手先を探し始めます。

事業承継(継承)を実行する

親族内や従業員へ引き継ぐ場合は事業承継(継承)を計画通りに進めていきます。第三者へ引き継ぐ場合は、M&Aの実施です。

親族内・親族外承継(継承)の場合は、資産の移転や経営権の譲渡を行います。親族内・親族外の承継では、経営者教育が必要なため、10年ほどの長いスパンが必要です。

M&Aの場合は、条件に合った相手先を探します。相手先候補が見つかれば、専門家のアドバイスをもとに交渉し、条件に納得できれば契約を締結します。M&Aであれば、事業承継(継承)を短期間に終わらせることも可能です。

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事業承継(継承)成功の5つのポイント

スムーズに事業を引き継ぐために注意すべきポイントは、次の5つです。

  1. 早い段階から準備する
  2. 情報漏えいに気をつける
  3. 資金面の課題を解決する
  4. 後継者と十分なコミュニケーションを図る
  5. 事業承継の専門家に相談する

次に、ひとつずつ解説しましょう。

早い段階から準備する

事業承継(継承)をスムーズに行うためには、できる限り早い段階で準備を進める必要があります。
事業の承継までに十分な時間を取ることで、従業員や関係者の理解が得やすくなるでしょう。

情報漏洩に気をつける

会社の運営に必要な秘密情報を提供する際には、秘密保持契約を結ぶことなどにより、情報漏洩を防ぐ必要があります。これは主に秘密情報やノウハウが承継先候補に不正に用いられ、将来の利益が減少してしまうことを防ぐためです。

資金面の課題を解決する

事業承継(継承)を成功させて事業を続けていくためには、資金面の課題を可能な限り解決しておきたいところです。状況によっては、事業承継の前または後に、自治体などからの支援を受けられる場合があります。

後継者と十分なコミュニケーションを図る

後継者と十分なコミュニケーションを取っておくことは非常に重要なポイントです。事業承継によって急激に方針や社風が変わることは、従業員や関係者の離反の原因となる可能性があります。想定外の変化が起きないよう、後継者と事前に方向性をすり合わせておきましょう。

また、経営に関する具体的なノウハウを引き継ぐことも、事業を存続させるうえで必要な要素といえます。

事業承継の専門家に相談する

事業承継を行う際は、専門家への相談が欠かせません。事業承継をサポートするために国や自治体が設けた機関やM&A仲介会社などの専門家に依頼するほうが、よりよい結果に繋がりやすくなります。

どのような相談窓口があるのか、次章で詳しくご紹介します。

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事業承継(継承)におすすめの相談窓口

事業承継(継承)を行う場合は、自社のみで行うのではなく、国や自治体、民間が設けた専門の相談窓口を利用するのがおすすめです。以下に、代表的な相談窓口の特徴を表にまとめました。

相談窓口特徴
事業引継ぎ相談窓口・事業引継ぎセンター・国が定めた相談機関で、全国47都道府県に設置されている
・公的な機関のため、公平なアドバイスが受けられる
・基本的な相談は無料
・民間に比べて実績が少ない傾向にある
商工会議所・会員であれば、ほとんどのサービスが無料
・必要な関係機関へ紹介してくれる
・サービスを受けるために会員になる必要がある
金融機関・取引のある金融機関であれば相談しやすい
・内情を知っている場合は、話がスムーズ
・小規模案件は取り扱ってくれない場合がある
弁護士・会計士・税理士などの専門家・専門的な立場からのアドバイスが得られる
・相談料が高い
・事業承継のノウハウやネットワークに限界がある
M&A仲介会社・M&Aの実績が豊富
・幅広いネットワークからより条件にあった相手先を見つけられる
・報酬が高額になる場合がある

事業引継ぎ相談窓口や事業引継ぎセンターは公的機関のため、公平なアドバイスが受けられるのが魅力的ですが、民間に比べると実績が少ない点に注意が必要です。

商工会議所を利用するには、会員になる必要があります。会員であれば、ほとんどのサービスが無料です。ただし、弁護士や会計士を紹介してもらう場合は費用がかかります。また、民間に比べてスピード感に劣るため、スピード重視の場合は民間のほうがおすすめです。

日頃から付き合いのある金融機関の場合は、相談しやすいのがメリットです。内情も理解しているため、話がスムーズに進みます。しかし、大きな案件の事業承継しか取り扱っていない金融機関が多く、小規模案件は受け付けてもらえない可能性があります。

弁護士や会計士、税理士も相談窓口の一つですが、報酬が高額になりやすい点がデメリットです。専門的なアドバイスが得られるものの、事業承継のノウハウやネットワークに限界があるため、思ったような相手が見つからないというケースが少なくありません。

M&A仲介会社は、なんといってもM&Aの実績が豊富で、ノウハウやネットワークが充実している点が特徴です。弁護士や税理士などの専門家とも連携しており、必要があれば、いつでも専門家に相談できるのも大きなメリットの一つです。事業承継をトータルでサポートしてもらえるため、満足のいく結果を得やすいでしょう。

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まとめ

「承継」と「継承」は、引き継ぐ対象に違いがあります。承継は、精神や方針、伝統といった「抽象的なもの」を、継承では権利や財産などの「具体的なもの」の引き継ぎを指します。事業を譲り渡す場合、「抽象的なもの」と「具体的なもの」のどちらも後継者に引き継がれるため、「事業承継」とも「事業継承」ともいえますが、「事業承継」が一般的です。

事業承継(継承)で具体的に引き継がれるのは、経営権や資産、知的資産の3つです。引き継ぐ方法としては、親族内承継(継承)、親族外承継(継承)、M&Aの3つの方法が挙げられます。

事業承継(継承)は時間を要するため、早めに取りかかることが大切です。M&Aを選択する場合は、事業承継・引継ぎ支援センターや民間の仲介会社などの活用がおすすめです。

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