このページのまとめ
- 買収された会社の行く末に関わるのはM&A手法や買収企業との関係、最終契約書の内容
- 買収された会社の社長の進路は、引退や退職、残留などがある
- 買収された会社の役員は、役員を継続するか一般社員になるか、あるいは退職する
- 買収された会社の社員の待遇は変化することもあり、悪化すると退職する可能性がある
- 買収された会社の社員が生き残るには、体制に慣れたりスキルアップしたりすることなどが重要
会社が買収されたあと、社員や役員などがどうなるのか気になる経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。M&Aのスキームによって買収された会社の状況は異なりますが、いずれにしても社員や役員に変化が訪れるのは明白です。
本コラムでは、買収された会社の行く末に影響を与えるものや、買収された会社の社員・役員・社長それぞれの行く末、また社員・役員が生き残っていく方法などを解説しています。
目次
買収された会社の末路を左右する要素
一般的に、買収とは、会社の経営権を取得することです。M&Aは買収とほぼ同義語ともいえますが、その中には会社の経営権ではなく、事業の運営権を取得するようなケースも含まれています。
会社の買収であれ事業の買収であれ、買収後に必ず変わることは「買収側が新たな経営者になる」ということです。
経営者が代わる以上、買収された会社には何らかの変化が生じると予想されます。そのような買収された会社の行く末を決める要素として考えられるのは、以下の3点です。
- M&Aの手法
- 買収企業との関係
- M&Aの最終契約書の内容
これらが、買収された会社の行く末に、どのような影響を及ぼすのか説明します。
M&Aの手法
M&Aスキーム(手法)は、大別すると以下のように分かれます。
買収 | 株式譲渡株式交換株式移転 | 対象会社は買収側の子会社になる |
第三者割当増資 | 新たに交付する株式数が全体の過半数であれば子会社になる | |
事業譲渡 | 会社の経営権は移転せず、事業の運営権が買収側に移転 | |
合併 | 吸収合併 新設合併 | 対象会社の法人格は消滅 |
会社分割 | 吸収分割 新設分割 | 買収の対象は選別不可だが、買収されるのは事業の運営権にとどまる |
ここでは、買収・合併・会社分割についてそれぞれ解説します。
買収
「買収」に含まれる5つのM&Aスキームは、以下の5つです。
- 株式譲渡:対象会社の株式の過半数を買収してその経営権を取得する
- 株式交換:既存の会社間で行われる完全親子会社関係になる買収取引
- 株式移転:新設会社が完全親会社になる買収取引
- 第三者割当増資:対象会社が特定の第三者に株式を交付して増資する
- 事業譲渡:対象会社が行っている事業とそれに関連する資産、権利義務などを選別して売買する
株式譲渡、株式交換、株式移転では、必ず対象会社が買収側の子会社になります。文字どおりの買収です。第三者割当増資は、資金調達手段という側面もありますが、新たに交付する株式数が全体の過半数であれば株式譲渡と変わらず出資者の子会社になります。
一方、事業譲渡では会社の経営権は移転しません。事業の運営権が買収側に移転します。しかし、買収される事業に従事している社員は、基本的に買収側の会社へ転籍となるため、大きな影響を受けるでしょう。なお、法人格を持たない個人事業主の場合は、このM&Aスキームを用いるしかありません。
合併
「合併」には以下の2種類があります。
- 吸収合併:複数の既存の会社が1社に統合される
- 新設合併:既存の会社が新設会社に統合される
合併では、被買収側は買収側の会社に統合されるので、法人格は消滅します。この点が、子会社として法人格が残る株式譲渡などとの大きな違いです。
会社分割
「会社分割」には以下の2種類があります。
- 吸収分割:対象会社の事業部門を丸ごと買収側(既存の会社)が取得
- 新設分割:新設会社が対象会社の事業部門を丸ごと買収
会社分割は事業譲渡のように買収の対象を選別できませんが、買収されるのは事業の運営権にとどまります。被買収側の会社の経営権に変化はないため、会社そのものは買収されません。買収される事業に従事している社員が転籍となるのも、事業譲渡と同様です。
買収企業との関係
買収によって子会社化するのか、合併して会社を統合するのか、あるいは事業だけ買収するのか、その時点で買収側の方針による選択があります。また、どれを選択した場合でも、買収側のその後の方針次第で、買収された会社の行く末は決まっていくでしょう。買収側の方針に影響を及ぼす可能性があるものとして、買収側と買収される側との関係性があります。
たとえば、経営者同士が知己の関係であったり、長年、しのぎを削ってきたライバル会社でお互いを認めるような関係だったりすれば、買収後の経営方針に一定の配慮があるかもしれません。
一方で、買収側が大企業で買収される側が中小企業だとすれば、規定や業務システムなど買収側のやり方に統一されてしまう可能性が高いでしょう。
海外企業への買収
近年はグローバル化が進んでおり、海外の会社や外資系の会社が買収側となる場合もあります。海外企業に買収された場合、以下のような事態が起こる可能性を視野に入れておかなければならないでしょう。
- 年功序列から能力主義への切り替え
- 社内の公用語が英語になる
- 買収側の求める基準を下回る社員の降格や退職勧告
M&Aの最終契約書の内容
M&Aで交渉が合意に達すると、必ず最終契約書を締結します。交渉が行われたさまざまな条件は、全てこの最終契約書の中に記されるものです。交渉した条件の中に、買収された会社の社長・役員・社員の処遇が含まれていれば、最終契約書に記されます。つまり、M&A交渉の中で話し合われた条件が書かれている最終契約書の内容も、買収された会社の行く末に影響をもたらすものといえるでしょう。
なお、最終契約書というのは便宜上の表現です。実際には株式譲渡契約書、事業譲渡契約書、合併契約書、会社分割契約書など、用いられるM&Aスキーム名を冠した契約書名になります。
関連記事:事業買収とは?買い取る手法や目的、メリット・デメリットを解説
買収された会社の社長はどうなる?
ここでは、買収された会社の社長はどうなるのかを解説します。考えられるケースは以下の4つです。
- 買収直後に引退する
- 引き継ぎ後に引退する
- 買収後すぐに退職する
- 買収後も会社にとどまる
社長の場合、後述する役員や社員とは立場が異なります。それは、社長は買収される交渉を行った当事者だという点です。社長自身が、目的を持って買収交渉に臨んでいるはずです。一般にいわれる被買収側のM&Aの目的には、以下のようなものがあります。
- 事業承継
- 経営の安定化
- オーナー利益の獲得
- 経営者保証からの解放
後継者不在の中小企業の場合、そのまま社長が引退時期を迎えれば廃業せざるを得ません。廃業となれば社員は解雇となり、取引先は仕事を失います。会社を売却し買収側が後継者(新たな経営者)となることで事業承継が実現し、社員や取引先にも迷惑がかかりません。
買収側が大企業であれば、その傘下に入ることで買収側の経営資源を用いられるようになります。運転資金の調達も楽になり、業績の安定化が望めるでしょう。
株式譲渡で自社株式を売却すれば、オーナー社長には売却益が入ります。また、この場合、会社の債務は基本的に買収側に移るため、金融機関との交渉によって社長個人が連帯保証している経営者保証や個人資産の担保差し入れなどから解放されるでしょう。
これらのことを踏まえて、買収された会社の社長の行く末を考えてみましょう。
ケース1.買収直後に引退する
買収された会社の社長が高齢である場合、また、経営面は役員が残留したり、現場の業務は幹部社員が残留したりすることなどで引き継ぎ業務が発生しないようなケースでは、買収直後に社長が引退することもあるでしょう。
高齢ではない社長の場合でも、今後の生活費として十分なオーナー利益を得ているケースでは、アーリーリタイアとして買収直後に引退することもあります。ただし、どちらの場合でも社長が引き継ぎを行わない環境にする(=役員や幹部社員が退職しない)ことが、最終契約書の条件に書かれるはずです。
ケース2.引き継ぎ後に引退する
一般には、買収後、社長は引き継ぎを行ってから引退するケースが多いでしょう。特にオーナー経営者として社長がワンマン経営を行ってきた会社では、たとえ役員が残留したとしても、社長の代わりの引き継ぎはできないことが多いからです。引き継ぎにどの程度の期間を要するかは、業種・業態・会社の経営状況によって異なるため、一概にはいえません。
買収側にとっては、買収後のPMI(Post Merger Integration=経営統合プロセス)がとても重要です。単に引き継ぎだけでなく、スムーズにPMIを進めるためにも、一定期間、社長に残ってもらおうとする会社も多いでしょう。その場合、最終契約書にロックアップ条項(キーマン条項)を設けられることが多くあります。
ロックアップ条項とは、買収された会社のキーマンである社長などを一定期間、会社にとどまらせ、引き継ぎやこれまでどおりの業務を担当させる契約条項のことです。期間は数年間に及ぶこともあります。
ケース3.買収後すぐに退職する
最終契約書にロックアップ条項もなく、引き継ぎも短期に完了するようなケースでは、買収後、社長がすぐに退職することもあります。引退ではなく「退職」であることが上述したケース1との違いです。このケースで退職後の社長の行動として可能性が高いのは、オーナー利益を元手として、再び新たな事業を起業することが考えられます。
近年では、シリアルアントレプレナー(連続起業家)として、新しい事業を立ち上げ成功させて被買収することを繰り返す起業家も出現しています。その場合、社長が買収後すぐに退職する道を選ぶでしょう。
ケース4.買収後も会社にとどまる
若い経営者や起業家の中には、会社が買収された後も、そのまま会社にとどまるケースも見られます。子会社化された場合は社長のままで、統合されたのであれば一部門長としてなど、買収の手法次第で残留する立場はさまざまです。ただ、いずれの場合にも共通する残留の理由は、自分が経営してきた会社や事業の発展性が高く望めることにあります。
大企業に買収されることによって、これまでとは規模が違う事業投資が実現することや、販路や事業規模の拡大、買収側企業のブランド力の獲得など、自力で経営していた頃とは別次元の経営や事業の運営が目指せるのは大きな魅力です。
買収された会社の役員はどうなる?
中小企業では、名前だけの役員(非常勤役員)として社長の家族や親族が役員になっていることもあります。そのような役員は、買収された後に残留することなくすぐに退任させられることが多いです。
ここでは、買収された会社の常勤役員が、買収後どのようになるかを以下の3つのケースに分けて解説します。
- 買収後も引き続き役員を務める
- 一般社員となり、社長になる機会を失う
- 会社に残留せず退職する
役員としての能力が買収側にどう評価されるかとともに、ほかに残留する役員や社員との人間関係も役員の処遇に影響を及ぼすでしょう。
ケース1.買収後も引き続き役員を務める
買収された会社のキーマンと目されるような常勤役員であれば、買収後もそのままのポジションで働くことになるでしょう。特に元社長が買収後すぐに退任や引退をしているようなケースでは、買収された会社の社員のモチベーションが不安定になりがちです。そのような社員たちをまとめ、これまでと変わらず業務に集中させる役目が求められるでしょう。
買収側が対象役員をキーマンと見定めるかどうかの要素はいくつかあります。買収側が独自に行うものとしては、能力評価や面接での判断などがあるでしょう。それ以外には、被買収側の社長や社員からの評価などが判断材料になります。
ケース2.一般社員となり、社長になる機会を失う
ワンマン体制の中小企業は社長の力量で経営が進むため、あまり能力が高くなくとも、イエスマンのような人物が役員に就いている場合もあります。買収された会社の社長からの申し送り事項もなく、買収側の能力評価の結果もぱっとせず、また、社員や他の役員からも特別、人気があるわけでもないような場合は、役員から降ろされてしまうでしょう。
また、買収後は買収側のやり方を徹底させるために、経営陣を一新するケースもあります。そのような経営方針の買収側の場合、能力評価以前に役員から降りざるを得ません。
ケース3.会社に残留せず退職する
買収された会社に残らず退職する役員には、3つのタイプがあります。1つは、上述したケース2のように、買収後は役員から降ろされることが判明している場合です。一般社員に落とされるというプライドの部分と給与額が下がるなどの待遇の部分に不満を覚えて退職します。
2つ目は、退任・引退する元の社長を慕っているケースです。元の社長が新しく事業を起こすのであれば、それについていくことになるでしょう。3つ目は、買収されることに反感を持っているケースです。M&Aによる買収が実施されると、一般の社員も含め反感を持つ退職者がどうしても一定数、出てしまうようです。
買収された会社の社員はどうなる?
ここでは、買収された会社の社員の行く末を以下の3つのケースで考えます。
- 買収後も勤務先に変化なし
- 買収後は勤務先が変わる
- 退職する
社員に起こる変化の前提として、あらためてM&Aスキームによる違いを述べておきます。株式譲渡・株式交換・株式移転・第三者割当増資の場合、買収された会社は買収側の子会社です。合併・会社分割・事業譲渡の場合、買収された会社の社員は買収側の会社に転籍することになります。
ケース1.買収後も待遇面に変化なし
買収により会社が子会社化された場合、当面の間、社員の雇用契約・待遇はそのままであり、会社の規定などに変化はありません。勤務先が変更になることもないでしょう。ただし、ほとんどの場合、買収側はPMIを実施します。人事評価制度や給与規定などを、買収された会社の以前の状態のまま維持させることは、ほとんどありません。
業務システムや管理システム、ITシステムなども経営統合されていき、最終的には組織再編、社員の再配置が行われるケースもあります。ただ、子会社化は合併のように会社を統合するわけではないため、PMIは比較的緩やかに進んでいくでしょう。
人事制度が変わる
買収側と買収された側の企業での人事制度の統合は必須。人事制度の統合の過程では、「労働者の不利益変更」となる法的リスクを避けるため、社員との個別合意に基づいて制度の変更が図られます。1〜2年の期間を設定し、買収側の制度に移行して行くのが一般的です。
子会社であれば、ある程度の独立性が保たれることもありますが、それでも親会社とあまりにも異なる人事評価制度や給与規定は変更される可能性が高いでしょう。
福利厚生が変わる
人事制度の統合が図られれば、それに伴って福利厚生も変わる可能性があります。福利厚生は買収側の企業によって決められるため、人事制度同様、買収側の福利厚生に移行するのが一般的です。
社風が変わる
どの会社にも、社風・会社風土・会社文化などと呼ばれるものがあります。それらは、起業した社長の経営のもと、長年の日々の業務の積み重ねの中で醸成されたものです。社長の人物像が似ていたり同業種の会社であったりすれば、似通った社風の会社がある可能性もあります。しかし、その逆に同業種であっても全く似ていない社風の場合もあり、それぞれ独特のものです。
多くの場合、買収側の会社のほうが規模が大きいです。その場合、買収された会社の社員は新しい社風になじむことが求められることが多いでしょう。
なお、子会社となった場合は独立性が保たれるため、例外的に社風が維持されるケースもあります。
ケース2.買収後は待遇が変わる
買収側の規模が大きく、営業エリアが広かったり、事業所や支店、工場などが数多くあったりするケースでは、転勤となることもあるでしょう。
組織再編による部署換えにより、業務内容が変わる社員もいるはずです。待遇自体は良くなったとしても、大企業では異動は避けられないかもしれません。
合併・会社分割・事業譲渡の場合、社員は買収側の企業に転籍することになります。その場合、転籍した社員の雇用関係も見直されます。定年の年齢、給与、退職金の金額など、従来の会社の規定とは大きく変更される可能性があります。
ケース3.退職する
役員の話でも触れましたが、買収を機に退職を選ぶ社員がいるのも事実です。主な退職理由としては、以下のようなことが考えられます。
- 買収を会社の身売りのようなイメージで捉え、漠然とした不安を持つ
- 社長が変わることへの反発心
- 待遇が変わることへの恐れ
- 新しい環境で働くことに精神的ストレスを感じる
- 転勤を受け入れられない事情がある
- 買収側への悪いイメージ
特に、役員や幹部社員などのキーマンの退職が明らかになると、それに釣られて同じように辞めてしまう社員が出るようです。買収側としては、人材の獲得が買収の目的の場合もあり、なるべく退職者を出さないようにする工夫をするべきでしょう。
買収された会社の株式はどうなる?
まず、買収の際に株式の所在がどうなるかを説明します。各スキームによる株式の所有権は以下のように変わります。
スキーム | 所有権の所在 |
株式譲渡 株式交換 株式移転 | 買収側が被買収側の株式を所有 |
第三者割当増資 | 買収側が増資した分の株式を所有 |
合併 | 被買収側の株式は消滅 |
事業譲渡 会社分割 | 被買収側の株式に変化なし |
株式譲渡・株式交換・株式移転・第三者割当増資では、買収側が被買収側の株式を所有することになります(第三者割当増資は増資した分の株式)。
合併は買収側に統合されて被買収側は会社として消滅するため、株式も同時に消滅します。
事業譲渡・会社分割は事業の買収であるため、被買収側の株式に変化は生じず、所有者は変わりません。
次に、買収によって被買収側の株価がどうなるのか考えます。ここでは、以下の2つのケースを挙げました。
- 完全子会社化されるときの株価
- 完全子会社化されないときの株価
なお、株価とは株式市場での価格を指します。したがって、ここで説明するのは、上場会社が買収の対象となった場合の株価への影響についてです。
完全子会社化されるときの株価
上場会社を完全子会社にする(=全株式を取得する)場合の現実的な方法は、TOB(Take Over Bid=株式公開買付)です。TOBとは、完全子会社化したい上場会社の不特定の株主に対して、株式市場外で直接、株式の買付けを行う旨を呼びかけることです。呼びかけの際には、以下の内容を公告します。
- 対象株式
- 買付け期間
- 買付け価格
- 買付け株式数
一般にTOBの際の買付け価格は、市場価格に30~40%程度の上乗せをするプレミアム価格となります。対象株式を所有している株主は、このTOBに応じることで市場価格よりも30~40%高く売却できるのです。
完全子会社化されないときの株価
買収の際に完全子会社化されていないということは、買収側はTOBを実施せず、株式市場で50%超~100%未満の株式を取得したと考えられます。株式市場で1社の株式が50%超も買い集められた場合、株価は高騰するでしょう。また、完全子会社化されていないため、対象会社の上場は維持されます。この株式の所有者としては、買い集められて株価が上昇するときに売却することで利益を得られるでしょう。
買収された会社の取引先は?
事業譲渡による買収の場合、買収される側の取引先との契約は引き継がれませんが、株式譲渡による買収の場合は買収した側が取引先との契約をそのまま引き継ぐことになります。まとめると、下記のようになります。
スキーム | 契約の引き継ぎ先 |
株式譲渡 | 買収した側が被買収側の取引先との契約を引き継ぐ |
事業譲渡 | 被買収側の取引先との契約は引き継がれない |
買収された企業と取引先との間の契約でチェンジオブコントロール条項が定められていると、買収後の経営に大きな影響を与える可能性があるので、買収側の企業には事前に伝えておくべきです。
チェンジオブコントロール条項とは、M&Aなどで経営権の移動が生じた場合、契約内容に制限がかかったり、他方の当事者により契約を解除できる規定のことです。
買収されたことを従業員に伝えるタイミング
買収される会社が自社の従業員にその事実を伝えるタイミングは、買収が決定的になってからが良いでしょう。公表する時期が早すぎると、従業員の不安を煽ることになるだけでなく、取引先にも余計な混乱を招いてしまいます。
従業員に対しては、買収する企業の詳細や買収後の待遇について丁寧に説明する必要があります。
買収された会社が低迷する4つの理由
買収されて業績が安定・向上する会社がある一方で、買収後、経営状況が低迷してしまう会社もあります。そのような会社の共通点として挙げられるのが、以下の4点です。
- 新しい体制に順応できないから
- 社員になった役員が現場に慣れないから
- 社員のモチベーションが下がるから
- 給与体系などが不公平なことがあるから
それぞれの内容を具体的に確認しましょう。
新しい体制に順応できないから
買収された会社の社員や役員にとって、体制が一新したと感じる環境になることもあります。新たな経営者による会社の経営方針の変更に始まり、職場環境、業務環境、業務システム、社内ルール、待遇など、全てが一変する場合があります。慣れた環境と別のやり方をする場合、窮屈に感じて多大なストレスを感じてしまうでしょう。
たとえば、これが個人の転職によるものだとすれば自分で選択したことなので、新しい体制や環境になじもうとするはずです。しかし、買収の場合、他の同僚たちと一緒であるため、新しい環境や体制への不満を言い合うなどして、積極的になじもうとする意欲が湧きにくくなっている可能性があります。その状態がいつまでも続くと、会社は低迷していってしまうでしょう。
社員になった役員が現場に慣れないから
買収側の方針、または買収側の能力査定の結果、買収された会社で役員をしていた人物が、役員から外されて一般社員になってしまうことがあります。この場合、転職するという選択肢もありますが、年齢や経歴などの状況で転職が難しいと自己判断すれば、会社に残るしかありません。
現場を離れて月日が経過しているような元役員の場合、下手をすると若手社員よりも現場の業務への対応ができないこともあります。周囲の社員たちも、元役員に対して遠慮してあまり注意も言えないでしょう。このようなケースでは、部署としてのチーム力が上がらず、会社の低迷につながってしまうおそれがあります。
社員のモチベーションが下がるから
一般に、社員にとって会社が買収されることは、思い描いてきた今後の人生設計・キャリアプランでは全く想定していなかったことでしょう。買収側が自分にとって魅力ある会社であればよいのですが、これまで全く興味を持ってこなかった会社であることも十分あり得ます。
後者の場合、環境の変化へのストレスも手伝って、買収側の経営方針などを理解しようという意欲が低下しがちです。このように、買収された会社の社員たちのモチベーションが下がった状態では、会社が低迷していっても不思議ではありません。
給与体系などが不公平なことがあるから
買収側と被買収側の給与体系などの内容にあまりにも差がある場合、統合が早期に進まないことがあります。給与水準が異なる場合、同じ業務を担当しているのに、もともとの買収側社員よりも被買収側出身社員の給与額が低いといったことがあるかもしれません。
このことを買収された会社出身の社員が知った場合、モチベーションは下がってしまうでしょう。場合によっては退職につながるかもしれません。給与体系の統合の放置は、買収側にとっても良いことにはなりません。
買収された会社で役員・社員が生き残る3つの方法
ここでは、買収された会社の役員・社員が、買収後も生き残る方法を考えます。具体的には、以下の3つが有効でしょう。
- 新しい体制に早く慣れる
- スキルアップを目指す
- 買収された側という引け目を感じない
それぞれの内容を説明します。
新しい体制に早く慣れる
前章で、「買収された会社の社員・役員が新しい体制に慣れないままでいると、会社が低迷していってしまう」と述べました。買収された会社の社員・役員が生き残るためには、その反対のことをすればいいのです。つまり、不平や不満、不慣れに対するストレスなどを思う前に、買収側の経営方針をよく理解するように努め、新しい体制・環境に順応して仕事をしていく意識を持ちましょう。
多少の時間や労力がかかるとしても、良い経験と捉え慣れていきましょう。早く新しい体制・環境に慣れてしまうことが、生き生きと業務が行えるようになる近道です。
スキルアップを目指す
たとえば、資格を取得するなどの明らかなスキルアップを図ることで、周囲から認められてチャンスが広がることもあります。会社が買収されたことを良い契機と考え、積極的にスキルアップを目指すことが大切です。また、資格取得だけがスキルアップではありません。現在、担当している業務の専門性を高めたり、精度を高めたりすることもスキルアップにあたります。
ミスを減らして丁寧な仕事ぶりを発揮することも、他者からの評価アップにつながります。得意なことと不得意なことを明確にして、苦手なことにどう向き合えるか考えるのも1つの方法です。自分なりのスキルアップの方法を早く確立させましょう。
買収された側という引け目を感じない
買収された会社の社員や役員が陥りやすいこととしてあるのが、買収側社員に対するコンプレックスです。人はコンプレックスがあると委縮してしまって、自分の真の実力が発揮できなくなることがあります。
後ろめたい気持ちから、買収側の社員に対して反感を持って攻撃的になるのは絶対にやめましょう。また、コンプレックスのあるままでは良い仕事はできません。買収側の社員に対し、反感ではなく良い意味の競争意識を持って仕事をすることで、業績は平等に評価されるようになるはずです。
まとめ
会社が買収されれば、そこで働く社員や役員にとって、基本的に環境は一変するといってよいでしょう。また、買収された会社の社長が、会社を去ることも少なくありません。会社を売却する場合、社長としては目的があるものですが、それに巻き込まれて社員や役員が不遇を受けないよう、買収の条件交渉は慎重に進めてください。
買収の実現に向けて不安がある場合は、M&A仲介会社などの専門家に相談してみるのがよいでしょう。現在、多くのM&A仲介会社が無料相談を実施しており、M&Aの正式依頼をする前でも気軽に相談できます。
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