株式譲渡の際の税金とは?確定申告の要否や納付方法についても解説

2023年7月18日

株式譲渡の際の税金とは?確定申告の要否や納付方法についても解説

このページのまとめ

  • 株式を譲渡すると、個人の場合は譲渡益に対して分離課税で計20.315%課税される
  • 法人の場合、事業所得として他の所得と合算して法人税が課税される
  • 特定の株式については譲渡損失が出た場合に損失額を繰越すことができる
  • 株式を譲受した場合、贈与税・相続税がかかるケースもある
  • 事業承継時の株式譲渡では、事業承継税制を活用することで税金を安くできる

株式を譲渡して譲渡益が発生した場合、その譲渡益には税金がかかります。一体どのくらいの税金がかかるのか、株式譲渡前に金額を把握しておきたい経営者も多いでしょう。
この記事では、株式譲渡の際にかかる税金について詳しく解説するとともに、株式譲渡における節税方法についても説明していくので、ぜひチェックしてください。

関連記事:株式譲渡による事業承継のメリットは?税金や手続きについても解説

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株式を譲渡した際の損益にかかる税金

株式を譲渡した際の損益に対しては税金がかかります。以下では、株式を譲渡した際の税金がどのように計算されるのか、その基本について説明していきます。

株式を譲渡した場合の譲渡益の計算方法

株式を譲渡した場合の損益は、以下のような計算式で計算することができます。

譲渡損益 = 譲渡価額−必要経費(取得費用+委託手数料など)

株式等の取得費用は、購入手数料等を含むその購入価額となるのが原則です。しかし、同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入している場合には、取得費用が異なるのが普通です。そのため次のように、総平均法によって算出した1株当たりの金額に、譲渡株数を乗じた金額を、その取得費とします。

例:
令和元年5月購入  1,000株  200万円(取得価額) 
令和元年8月購入  2,000株  250万円(取得価額) 

一株当たりの金額=取得価額(200万円+250万円) ÷ 株数(1,000株+2,000株)≒ 200.08万円
200.08万円×譲渡株数=取得費用

このように取得費用を計算したうえで、委託手数料などを加算して、譲渡価額から差し引くことで、譲渡損益を計算することができます。

そのうえで、譲渡益が出ている場合、譲渡益に対して所得税の税率15%と住民税の税率5%の合計20%を乗じて、株式譲渡に関する税金の額を計算します。

ただし、上記のように計算することができるのは、個人間の取引の場合です。個人から法人への株式譲渡の場合でも、上場株式であれば上記のように計算できますが、非上場株式の譲渡については、時価の1/2未満の譲渡価額で譲渡すると低額譲渡と見なされ株式の時価をもとに所得税が計算されることになります。時価は、同業他社の株価を参考にして算定します。

たとえば仮に、同業他社の株価が10万円である非上場株式を1万円で取得し、2万円で譲渡した売主がいたとします。この場合、2万円は無視され、10万円で売却したとして、次のように計算して譲渡損益が計算されます。

譲渡損益 (9万円)= 譲渡価額(10万円)−必要経費(1万円)

したがって、株式を譲渡した売主の譲渡益(9万円)に対して、税率を乗じた額が税額となります。

なお、非上場株式については、相続や贈与などを経て譲渡されていると、株式の取得費用が判明しないケースもあるため、その場合は譲渡価額の5%を取得費用として算出します。

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株式譲渡益にかかる税率

個人の場合、株式譲渡益にかかる所得税と住民税の税率は次の表のとおりです。

区 分税 率
上場株式等に係る譲渡所得等(譲渡益)20%(所得税15%、住民税5%)
一般株式等に係る譲渡所得等(譲渡益)20%(所得税15%、住民税5%)

参照元:国税庁「株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)

これに加えて、2037年12月31日までは、上記に復興特別所得税が加わって、合計20.315%(所得税15.315%+住民税5%)が税率となります。

株式譲渡の売却損益は、「上場株式等に係る譲渡所得等の金額」と「一般株式等に係る譲渡所得等の金額」に区分し、他の所得の金額と区分して税金を計算しなければならない「申告分離課税」が採用されています。また、上場株式等と一般株式等は区別して計算をしなければならないため、たとえば、一般株式等を売却して譲渡損失が出ていたとしても、原則として上場株式等を売却した譲渡益からその金額を控除することはできませんので注意してください。

ただし、上場株式等に関する譲渡損失(赤字)の金額と上場株式等に関する配当所得等の金額との損益については通算で計算することが可能です。この場合、確定申告書にその旨を記載するとともに、一定の明細書等を添付する必要があります。確定申告で損益通算を行うことによって、納めるべき税金の額(所得税額)を少なくできます。

法人や個人事業主などにおいて、営利目的で継続的に行う株式譲渡の所得に関しては、事業所得または雑所得となり、他の所得と合算して法人税などが課されます。

参照元:国税庁「株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)

上場株式等と特定中小会社の譲渡損失は繰越控除ができる

株式譲渡を営利目的で継続的に行う場合において、株式等について譲渡損失(赤字)が出た場合、以下のように繰越控除ができる定めがあります。

  • 上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
  • 特定中小会社の発行株式に係る譲渡損失の損益通算および繰越控除

「上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除」とは、譲渡損失の金額が生じた年の翌年以後3年間にわたって、繰越控除ができる制度です。たとえば、一定の要件を満たしていれば、100万円の損失が出た場合でも、この100万円の損失を3年間にわたって繰り越すことで、以降3年間にわたって法人税などの負担を少なくすることが可能です。

「特定中小会社の発行株式に係る譲渡損失の損益通算および繰越控除」も同様に繰越控除ができ、さらにその年分の上場株式等に係る譲渡所得等の金額から控除することも可能です。特定中小企業とは、中小企業者等のうち、資本金が3,000万円(中小企業等基盤強化税制での卸売業・小売業・飲食店業・サービス業は例外として1億円)を下回る法人・個人等を指します。

この控除の適用を受けるためには、一定の書類を添付した確定申告書を提出するとともに、連続してその後の年に、一定の書類を添付した確定申告書を提出しなければなりません。

参照元:国税庁「株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い

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株式を譲渡した場合の確定申告の要否

株式等を譲渡して得た所得は、原則として、株式等に係る譲渡所得等として申告分離課税の方法によって課税されるため、確定申告が必要になります。

しかし、特定口座を利用して取引をしている場合には、申告手続きを簡素化することが可能です。特定口座を利用している場合、証券会社が利用者の代わりに譲渡損益等を計算してくれて、「特定口座年間取引報告書」が作成されます。これを利用することで、利用者は自身で煩雑な計算をすることなく確定申告が可能です。この特定口座年間取引報告書は、利用者と利用者の所轄の税務署へ交付されるものです。

また、2010年から、証券口座を特定口座で開設する際に、源泉徴収ありの特定口座を選択すると、証券会社と上場株式等配当受領委任契約を結ぶことになりました。この契約によって、確定申告を行わなくても、上場株式等の譲渡損失と配当等との損益通算が可能となります。

これ以外にも、NISA口座を開設している場合でも、確定申告は不要です。NISA口座の取引は非課税となることから、確定申告をする必要はないというわけです。

参照元:
国税庁「令和4年分 株式等の譲渡所得等のあらまし
国税庁「個人が上場株式等を保有・譲渡した場合の金融・証券税制について

関連記事:株式譲渡とは?手続きの流れや注意点・メリット・デメリットなどを解説

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株式譲渡で課される税金ごとの納付方法

株式譲渡で課される税金をどのように支払えば良いのかについて解説していきます。

株式等の譲渡等は、それを取り扱う口座の種類によって課税の取り扱いが変わります。「源泉徴収ありを選択した特定口座」を利用している場合には、特定口座を開設する証券会社が、株式譲渡を行ったタイミング(約定したタイミング)で、所得税15%(復興特別所得税を含めて15.315%)の源泉徴収および住民税5%の特別徴収を行います。

一方、「源泉徴収なしを選択した特定口座」または「一般口座」を利用している場合には、所得税の源泉徴収および住民税の特別徴収がいずれも行われていない状態です。したがって、利用者自身で確定申告をする必要があります。特定口座の場合は証券会社が、一般口座の場合は申告者本人が取引報告書を作成することになりますが、これを確定申告時に添付書類として提出を行い、確定申告時に納税を行うことになります。

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株式譲渡の税金の負担を軽減できる特例

事業承継において株式を譲り受けた側については、相続税または贈与税がかかることになります。

事業承継では、現経営者が保有する自社株式を後継者に引き継ぐケースがあります。特に親族内事業承継の場合、後継者となる親族に対して、生前贈与・相続によって自社株式を引き継ぐのが一般的です。しかし、この場合、多額の贈与税・相続税がかかることになります。

多額の贈与税・相続税がかかるとなると、現経営者は事業承継時に税金がかかることから、事業を承継せずに廃業を選ぶ可能性があります。これを防ぐために2009年の税制改正で始まったのが、事業承継税制です。事業承継税制を活用することで、事業承継を行ううえで後継者が取得した自社株式の贈与税・相続税について納税猶予を受けられます。納税猶予の後、一定期間にわたり要件を満たしていれば、猶予された税額は減免されます。

参照元:
事業承継税制特集|国税庁

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まとめ

株式を譲渡した場合には、基本的に、所得税・住民税・復興所得税の3つの税金がかかります。
株式譲渡の際に、譲渡益が出ている場合には、譲渡益に対して20.315%の税金を支払わなければなりません。譲渡損失が出ている場合で、一定の要件を満たしている場合には、その年に控除しきれない分の損失が発生した翌年以降3年間にわたって繰越しすることが可能です。これによって、株式譲渡で譲渡益が出た場合でも、納めるべき税額を少なくできます。所得税・住民税・復興所得税以外にも、事業承継で株式を譲渡すると、贈与税・相続税がかかることもあるので注意してください。事業承継時には、事業承継税制を活用することで、猶予を受けた税額が一部免除される可能性があります。

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