Webサービス売却とは?市場動向や相場、売却手法、事例を解説

2024年8月5日

Webサービス売却とは?市場動向や相場、売却手法、事例を解説

このページのまとめ

  • Webサービス産業全体の売上高は10年で2倍近く増加している
  • Webサービスの売却・買収にはさまざまなメリットがある
  • Webサービスの売却価格は、1ヶ月あたりの営業利益をベースに決定されるケースが多い

企業が新しいプロジェクトの資金を調達したいときや、個人で開発したWebサービスを手放したいとき、手持ちのWebサービスを売却する方法があります。Webサービスの売却を扱うプラットフォームは数多く存在し、高値で買い取ってもらえるケースも少なくありません。この記事では、Webサービスを売却するメリットや注意点、成功事例などについて解説します。

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Webサービス売却とは

はじめに、Webサービスの売却に際して、最低限知っておくべき知識を解説します。

売却対象となるWebサービスの種類

デジタル大辞泉によると、Webサービスとは「インターネット技術を応用し、外部Webサイトにあるソフトウェアシステムを呼び出し、利用できる仕組みまたはサービス」を指します。
したがってWeb経由で使えるサービス全般が含まれますが、主に、以下のWebサービスが売却対象となります。

  • Webメディア(ブログやホームページなど)
  • ECサイト
  • 画像や動画などの投稿サイト(SNS)
  • ゲーム
  • 地図検索サービス
  • 広告サービス

なお、広義では表計算ソフトや電子メールなどのアプリケーションソフトもWebサービスに含まれます。

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Webサービスの市場動向

経済産業省が実施した「特定サービス産業動態統計調査」の統計表「インターネット附随サービス業」によると、Webサービス産業全体の売上高は、2014年〜2023年の間で以下のとおり推移しています。

年次売上高(百万円)
2014年1,345,193
2015年1,488,053
2016年1,551,665
2017年1,613,582
2018年1,650,950
2019年1,747,830
2020年1,925,657
2021年2,241,839
2022年2,243,160
2023年2,433,100

2014年には約1兆3,452億円だった売上高は、わずか10年で約2兆4,331億円まで増加しており、Webサービス業界の市場規模は急速に拡大していると言えます。市場規模が拡大している理由として、主に下記が活発的になっていることが挙げられます。

  • ベンチャーキャピタルによるWeb領域に対する投資活動
  • 製造業など他業種によるWebサービス業への進出
  • IT企業による自社サービスの規模拡大、新しい技術や優れた人材などの獲得

また2020年以降は、新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴う以下の環境変化により、さらに急速に市場規模が拡大したと考えられます。

  • リモートワークの普及によるWebサービス需要の拡大(BtoB)
  • 外出自粛によるオンライン上での消費行動ニーズの拡大(BtoC)

今後もIT技術の進歩に伴い、新しいWebサービスが次々と生み出され、市場規模はさらに拡大すると予想されます。

参照元:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」インターネット附随サービス業 D14

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Webサービスを売却する5つの理由

Webサービスを売却する主な理由を5つ解説します。

理由1:売却益の獲得

Webサービスを売却する理由としてもっとも多いのが、まとまったお金を得るためです。アフィリエイトサイトやゲームサイトなど、大切に育ててきたWebサービスを売却し、ある程度の金額を手に入れたいという人は少なくありません。特に、市場価値がもっとも高いタイミングであれば、高額で売却できる可能性もあるでしょう。

理由2:売上の悪化

次に、作ったWebサービスの売上が減少することも、売却の理由として考えられます。全盛期には大きな売上があったWebサービスも、流行や環境の変化により売上が大きく減少するケースもあります。
ただし、売上が落ちていたとしても、他社にとっては魅力的なWebサービスも多くあります。一から構築するよりもコストがかからず、運営するノウハウもある程度は固まっているためです。売り手はコストに見合った売上を上げられないWebサービスを処分でき、買い手は必要なWebサービスが安価に手に入るため、お互いにとってメリットがあります。

売上が減少して投資額の回収が見込めないため、Webサービスの停止や休止を考えているのであれば、まずは売却できないかを検討してみるとよいでしょう。他人から見れば、自分のWebサービスの弱点を補える魅力的なコンテンツであるかもしれません。売却の方向で動き、難しいようであればサイトの休止や閉鎖を計画しても遅くはないでしょう。

理由3:別事業・サービスへの集中

一方、売上が好調なWebサービスを売却することもあります。これは、運営コストが増加しているケースなどです。例えば、アクセス数の増加によるサーバーの維持費や、競合他社の出現による広告費の高騰など、コストが増加すると、売上高が変わらなくても採算が合わなくなることがあります。費用対効果が悪くなったWebサービスを売却し、新しい分野に投資するという判断は合理的と言えるでしょう。

複数のWebサービスを運営しており、「特定のWebサービスに集中したい」「費用対効果の高いWebサービスだけを残したい」という場合は、残りの売却を検討することも一つの手です。人件費やサーバーの維持費といった運営コストの回収が見込める部分のみに集中できます。

理由4:従業員の離職

従業員の離職に伴い、やむを得ずにWebサービスを売却するケースもあります。エンジニアやWebディレクターなど、Webサービスの根幹を担う従業員が離職した場合、これまでと同様の収益を維持できなくなるリスクが高まります。

キーパーソンが離職したあとも事業を続けることで収益性が悪化し、手元の資金がショートしたり、残った従業員の待遇を悪化させざるを得なくなったりするおそれがあります。手遅れになる前に、先手を打ってWebサービスを早めに売却できれば、従業員に迷惑をかけずに済む上に、運営者自身も手元により多くの現金を残した上でリタイアできるでしょう。

理由5:モチベーションの低下

運営者のモチベーション低下を理由に、Webサービスを売却する場合もあります。モチベーションが低下した状態で運営を続けると、業績が悪化してしまい、好条件での売却可能性が低下するおそれがあります。また、廃業するにしても、業績が悪化してからでは十分な現金を手元に残せません。加えて、サービス品質の低下によって顧客にも迷惑を与えるおそれがあります。

こうした事態を防ぐために、早い段階でWebサービスを売却する方は少なくありません。

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Webサービスを買収する2つの理由

買い手がWebサービスを買収する理由は大きく2つあります。

理由1:Webサービスの立ち上げや開発期間の短縮

まず、1つ目の理由はWebサービスの立ち上げや開発にかかる時間を短縮するためです。消費者の嗜好の変化や新興国の追い上げなど、国際環境が大きく変化する時代に、企業が単独で柔軟に対応できることには限界があります。

Webビジネスをゼロから始める時間がない場合や、できるだけ短期間で目標を達成したい場合もあるでしょう。事業成長のための時間短縮は、競争力の維持にもつながります。また、迅速なM&Aを実施すれば、競合企業が同じターゲット企業にアクセスする前に優位な地位を確立することも可能です。

理由2:リスク軽減と既存事業とのシナジー創出

2つ目の理由は、Webサービスをゼロから作るリスクを軽減し、既存事業とのシナジーを創出するためです(例:買収したウェブサイトを通じて自社製品を販売するなど)。

シナジーは、それぞれの企業が独立して運営するのではなく、2つ以上の会社または事業が合わさることで生まれる相乗効果です。買収による代表的なシナジーには以下のようなものがあります。

コスト削減効果

買収によって重複する業務や機能を統合することで、運営コストの削減が可能です。人件費・広告宣伝費などを見直して効率化を図りつつ、規模のメリットを享受できます。

売上拡大効果

買収によって新たな市場に進出できます。買収先のWebサービスが持つブランド価値や顧客基盤を活用することで、自社の売上向上が期待できるでしょう。知識の共有

買収先のWebサービスが持つ専門知識やノウハウを共有することで、自社の技術力や競争力を強化でき、イノベーションの促進につながります。

マーケティング・ブランディングの強化

買収先のWebサービスのブランドイメージやマーケティング手法を取り入れることで、市場での競争力が高まります。

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Webサービス売却のメリット

Webサービスを売却するメリットは大きく下記の2つがあります。

Webサービス販売による利益を得られる

Webサービスを売却すると、数カ月から数年分の収益に相当する金額をまとめて受け取れます。短期間でまとまったお金が手に入るため、新規事業やコア事業への投資も可能です。また、経営からの引退や借金の返済に充てることもできるでしょう。

特にWebサービスの場合、検索エンジンのアップデートやトレンドの変化などで、収益が急減するおそれがあります。経営が悪化して安定した利益を得られなくなる前に、大きな金額を前倒しで受け取れる点は売却のメリットです。

選択肢を増やすことができる

Webサービスの売却により、まとまった現金と時間を確保できると、余裕ができたリソース(現金・時間など)を新規事業の立ち上げやコアビジネスの強化などに活用できます。また、金額によってはセミリタイアして悠々自適な生活を送ることもできるでしょう。

「他の事業に力を入れたい」「現金を確保して余裕のある生活をしたい」といった前向きな理由はもちろん、「Webサービスの運営に疲れたので、しばらく自由になって将来を考えたい」という場合でも、Webサービスの売却は有効な選択肢となります。

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Webサービスを売却する3つの方法

Webサービスは、以下3つの方法で売却できます。

  1. M&Aプラットフォーム
  2. M&A仲介会社
  3. 直接交渉

この章では、各方法の概要やメリット・デメリットを解説します。

方法1:M&Aプラットフォーム

M&Aプラットフォームとは、売り手と買い手がオンライン上でマッチングや交渉、契約などの手続きを行えるサービスです。M&Aプラットフォームを利用するメリット・デメリット、費用は以下のとおりです。

メリット

  • 手数料が仲介会社よりも安い
  • 買い手探しや相手側との交渉などを直接行える

デメリット

  • M&Aの手続きを自力で行う必要があり、多大なリソースや労力を要する
  • 買い手とのトラブルや情報漏洩が生じるリスクが比較的高い

費用

無料または完全成功報酬制が一般的
※成功報酬:取引金額の1〜5%

方法2:M&A仲介会社

M&A仲介会社とは、売り手と買い手の仲介という立場で、M&Aの成立をサポートする業者です。M&A仲介会社と契約することで、Webサービス売却の相手探しや交渉、契約などの手続きを支援してもらえます。M&A仲介会社を利用するメリット・デメリット、費用は以下のとおりです。

メリット

  • 専門家から助言やサポートを得ることで、トラブル回避や成功につながりやすい
  • 資料作成や相手探しなどの労力軽減につながる

デメリット

  • 売却相手探しや交渉などの手続きを直接行えない
  • 手数料が比較的高い

費用

着手金:無料〜300万円
中間金:無料または成功報酬の1〜2割
成功報酬:取引金額の1〜5%
など

方法3:直接交渉

売り手または買い手が自ら、直接M&Aの相手探しから契約までを行う方法もあります。直接交渉でWebサービスを売却するメリット・デメリット、費用は以下のとおりです。

メリット

  • 仲介手数料が発生しないため、手元に多くの利益を残せる
  • 買い手探しや交渉を直接実施できる

デメリット

  • 専門的な助言やサポートがないため、トラブルを回避しにくい
  • 売却成立までの手続きを全て自力で行うため、他の方法よりも労力やリソースを要する

費用

基本的に無料
※契約書作成などを専門家に依頼する場合は、別途費用が発生

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Webサービス売却の最初のステップ

Webサービスの売却は、M&Aプラットフォーム(売買サイト)を利用して行われることが一般的です。この章では、M&Aプラットフォームを利用した場合の最初のステップを解説します。

プラットフォームへの登録

自社の本業と並行してWebサービスの買い手を探すことは、時間的に難しいケースが多いでしょう。そこで、マッチングサイトなどのプラットフォームに登録する方法が効率的です。

Webサービスを運営する企業全体を売却する場合、買い手を探すためには仲介会社を介する必要があるケースも想定されます。また、利用するプラットフォームやサービスの内容、得意とする業種、事業規模などによって手数料の仕組みが変わることも留意しましょう。

案件の掲載と購入候補者の選定

プラットフォームへの登録が完了して情報を公開すると、買収候補者からのオファーを待つことができます。案件を投稿する際に必要となる主な項目は以下のとおりです。

  • Webサービスの概要
  • 売却理由
  • 財務情報
  • Webサービスの強み・魅力

登録が必要な項目はプラットフォームごとに異なるため、情報漏洩が心配な方は事前に確認しておきましょう。また、プラットフォームによっては、売り手が買収候補者を選んで売買を打診できるものもあります。

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Webサービス売却の交渉からサービス移転までの流れ

購入候補者の選定が固まれば、M&Aに向けた本格的なステップに進みます。この章では、M&Aプラットフォームを利用した場合の交渉からサービス移転までの流れを解説します。

交渉の実施

自社のWebサービスに関心を持つ買収候補者が現れ、こちらも関心があれば交渉が開始されます。具体的な交渉内容は、売却価格・M&Aのスキーム・スケジュールなどです。

多くのプラットフォームでは、売り手と買い手の担当者がインターネットを介して交渉を行います。専門家が交渉の一部をサポートするプラットフォームや、M&Aアドバイザーが取引成立まで全面的に仲介するプラットフォームも存在します。

Webサービスを売却する際の実務に不安がある場合は、サポートが充実しているサービスを利用しましょう。

契約書の締結

交渉が成立すれば、次は契約書の締結です。プラットフォーム上で譲渡手続きが完了したら契約書を交わし、譲渡金額を支払います。契約書は、後々のトラブルを避けるため、慎重に作成する必要があります。弁護士やプラットフォームのサポートを受けながら作成しましょう。

サービス移転作業

契約が締結されたあとは、契約内容に従ってWebサービスが売り手企業から買い手企業に移転されます。Webサービスの譲渡プロセスは、大きく「コンテンツの移転」「ドメインの移転」「その他の資産や契約の移転」の3つに分類できます。

コンテンツの移転

「コンテンツの移転」とは、Webサービスのコンテンツ(記事内容・イラスト・画像など)を移転する作業です。具体的には、「サーバーの名義の変更」を実施する方法や、「ファイル・データベースの買い手企業のサーバーへの移管」を実施する方法があります。

ドメインの移転

「ドメインの移転」とは、Webサービスのドメインを買い手企業に移転することです。ドメインの移転は、主に「同一ドメインの管理会社内での名義変更」と「ドメイン名の管理会社を変えた上での名義変更」があります。

その他の資産や契約の移転

最終契約の内容によっては、コンテンツやドメイン名以外の資産・契約も移転されます。事業用資産や、外部委託したスタッフとの契約などが該当します。

また、Webサービスの譲渡や販売収益の支払いに、エスクローの仕組みを利用するプラットフォームもあります。エスクローとは、第三者が介入して支払いを繰り延べ、前払いのリスクを軽減する支払い方法です。

エスクローを使用するプラットフォームでは、Webサービスの移転と購入代金の支払いは以下のプロセスで行われます。

  1. 買い手企業がエスクローサービス運営者に譲渡対価を預ける
  2. 売り手企業がWebサービスを譲渡する
  3. 譲渡完了後、エスクローサービス運営者が売り手企業に代金を支払う

この手順により、売り手企業は不払いのリスクを回避することができます。

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Webサービス売却の相場

Webサービスの売却価格は、1ヶ月あたりの営業利益をベースに決定されるケースが多いです。一般的なWebメディアの場合、「営業利益×12〜24ヶ月分」の計算結果が相場であると言われています。営業利益が100万円のWebメディアを例にすると、売却価格の相場は以下のとおり計算されます。

  • 売却価格の相場 = 100万円×12〜24ヶ月 = 1,200〜2,400万円

なお、売却するWebサービスの種類によって相場は以下のとおり変わってきます。

  • Webメディア:営業利益×12〜24ヶ月分
  • ECサイト:営業利益×12〜18ヶ月分
  • ブログ:営業利益の約15ヶ月分
  • SNSアカウント:営業利益×6〜12ヶ月分
  • スマートフォンアプリ:営業利益×24〜60ヶ月分

売却価格を見積もる際には、Webサービスの種類に応じた相場を参照しましょう。ただし、上記の相場はあくまで目安であり、価格は買い手との交渉によって決定されます。ユーザー数やPV数、コンテンツ品質、デザイン性などの強みが買い手に評価されれば、相場よりも高い価格で売却できる可能性もあるでしょう。

高値で売却されるWebサービスの特徴は、次章でくわしく解説します。

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高値で売却されるWebサービスの特徴

Webサービスを高値で売却するにはポイントがあります。ここではどんな特徴をもったWebサービスが高値で売却されるのか、解説します。

無料コンテンツが充実している

質の高いコンテンツを作るためには、アクセス数の多いWebサイトやブログを参考にすることが重要です。

Webサイトやブログだけではなく、TwitterやYouTube、InstagramなどのSNSも身近なコンテンツソースとして参考にできるでしょう。人気サイトには、人を惹きつけるだけのコンテンツを作るノウハウがあるため、成功のヒントを得られる可能性があります。

特に、無料コンテンツが充実していると、集客に良い影響を与えます。

 SEO対策がされている

WebサービスのSEO対策を強化することで、検索エンジン経由の潜在顧客を恒常的に獲得できる可能性があります。

安定した見込み客数を確保できれば、その後のプロモーションによっては売上を大きく伸ばせるでしょう。その結果、Webサービス買収候補者からの評価が高まり、高値での売却につながります。

カスタマージャーニーが明確に意識されている

カスタマージャーニーとは、顧客が商品・サービスを知ってから興味を持ち、購入に至るまでの過程を指します。

カスタマージャーニーは、ユーザーが製品・サービスとどのようなタッチポイント(顧客接点)を持ち、別のタッチポイントへどのように移動しているのかを把握するうえで重要なものです。また、ストレスと満足度・好意と嫌悪・嬉しさと悲しさ・安堵と戸惑い、といったユーザーの感情の変化を理解する際にも役立ちます。

カスタマージャーニーが明確に意識されているWebサービスは、顧客からの評価も高い傾向があります。そのため、買収候補者からの評価や買収金額も高くなるでしょう。

サービスの継続利用者数が多い

Webサービスの買収候補者の多くは、収益の安定性や成長性を判断基準の1つとしています。継続的に利用するユーザーが多いWebサービスは、安定性や成長性が評価されやすいため、高値で売却できる可能性が高いでしょう。

さらに、買収候補者の販売チャネルとして当該Webサービスのユーザーを利用できるなど、シナジー効果が期待できる場合は、市場価格よりも高く販売されるケースが多く見られます。

SNS向けに最適化されている

Webサービスの流入源はGoogle検索が中心ですが、アルゴリズムが更新されると流入量が変化するため、安定したものではありません。WebサービスをTwitterやInstagramなどに向けて最適化し、SNSからの流入経路を確保することで、流入量や利益が安定するでしょう。SNSの最適化は、Webサービスの整備と並行して実施する必要があります。

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Webサービスを高値で売却する方法

次に、売却手続きに焦点をあてWebサービスの高値売却のポイントを解説します。

自社サービスの優位性を見極める

Webサービスをより高値で売却するためには、優位性を明確にして、買収候補者にわかりやすくアピールする必要があります。なぜなら、将来性などのアドバンテージがあっても、買収候補者がそれを認識できなければ、高い評価を得られないからです。

競合他社との比較や客観的なデータを通じて、買収候補者に自社の強みを認識させることが重要です。さらに、競合他社のサービスにはない独自の強み(顧客を確保するノウハウなど)があれば、より高く評価される可能性が高まります。

Webサービスの成長状況や市場環境を考慮する

同じWebサービスでも、売却のタイミングによって価格は変わってきます。具体的には、以下を満たすタイミングを選ぶと、高く売れる可能性が高くなるでしょう。

  • 利益や加入者数など、Webサービスの重要業績評価指標が上昇している
  • 市場が拡大し、買い手の需要が高い

逆に、重要業績評価指標が悪化しているときや、Webサービス自体の需要が低下しているときは、他の時期よりも売却価格が下がってしまうおそれがあります。

重要業績評価指標(KPI)とは、会社の目標達成に向けて重要な活動や成果を定量的に評価するための指標です。

財務指標である売上高や営業利益だけではなく、日常の取り組みに関連する指標を設定することで、目標達成のための活動がどれだけ実行されているかを測定できます。重要業績評価指標が好調であることを示せれば、高値売却に近づくことができるでしょう。

売却先を慎重に見極める

売却する相手は慎重に決定する必要があります。買い手の見極めを怠ると、買収後にサービス内容に不満が出たり、Webサービスの顧客や取引先に迷惑がかかったりするなど、トラブルにつながってしまいます。

また、自社のサービスとシナジーを発揮できる買い手を選ばなければ、売却価格やその他の条件面で不利となるおそれがあります。

Webサービスの売却を成功させるためには、顧客や取引先を大切にしながら、買収後もサービスの質を落とさずに事業を継続できるか、買い手の事業とのシナジーが期待できるかどうかが重要なポイントです。シナジーが期待できれば買い手からの高評価に繋がり、高値での売却が期待できます。

アウトソーシング部分の権利を明確化する

デザインやシステム部分の権利(所有権など)が不明確な場合、Webサービスの販売において法的な問題が発生しかねません。販売したあとに権利者との間で問題が発生すれば、買い手が責任を負うリスクもあるでしょう。

また、権利が明確でなければ、買収希望者が現れなかったり、買い手との交渉が難航したりする事態も想定されます。権利が明確でないことで悪印象を与えることは高値での売却という狙いに悪影響を及ぼします。

Webサービスの売却を円滑に進め高値で売却するためには、事前にアウトソーシング部分の権利関係を明確にしておくことが重要です。

専門家に相談する

M&AやWebサービス売却の専門家に相談することも、売却価格を上げるために重要です。Webサービスの売却価格は、売り手の企業価値だけではなく、交渉の結果にも左右されます。

売り手はより高く売却したく、買い手はより安く買収したいものです。希望する価格で売却できるかどうかは、交渉にかかっているといっても過言ではありません。M&AやWebサービスの営業経験が豊富で、交渉のスキルに長けた専門家の力を借りることも検討しましょう。

ターゲットを明確化する

売却するWebサービスがターゲットとする顧客層を明確に定義することも効果的です。

消費者向けか企業向けか、またその市場規模や成長性などを提示することで、買い手に買収するメリットを訴求しやすくなります。例えば人材や金融などの分野だと、客単価やLTVが高い傾向があります。

こうしたターゲットの強みを訴求することで、買収後も大きな利益を安定的に確保できる可能性を認識してもらうことができ、高く評価されやすくなります。

良質なユーザー(リスト)を確保する

良質なユーザー(リスト)を確保することで、買い手から高く評価されやすくなります。良質なユーザーとは、利用頻度・期間や客単価、LTVなどが高く、短期〜中長期にわたって運営側に大きな利益をもたらす顧客を意味します。

良質なユーザーを多く確保し、それを買い手側に訴求することが重要です。そのためには、SEO対策やWeb広告施策、SNS運営といった施策の強化が効果的です。

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Webサービスの売却の成功例

Webサービス売却の成功例にどのようなものがあるのか、数例紹介します。

株式会社TWOSTONE&Sonsと株式会社MapleSystemsのM&A

このM&Aは、譲渡会社がITエンジニアのマッチングサービスを運営する株式会社MapleSystems、買収会社はITエンジニアの人材不足解決につながるソリューションを提供する株式会社TWOSTONE&Sonsです。

実行時期は2024年2月であり、株式譲渡のスキームが活用されました。本件のM&Aは、双方が顧客基盤およびITエンジニアのデータベースを掛け合わせることにより、クロスセルを実現する目的で実施されました。売却価格は3億5,000万円であり、買い手企業がMapleSystemsの全株式を取得し、同社を子会社化しました。

参照元:株式会社TWOSTONE&Sons「株式会社MapleSystems の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

株式会社日伝と株式会社アペルザのM&A

このM&Aは、譲渡会社がものづくり産業向けのオンラインプラットフォームを提供する株式会社アペルザ、買収会社は産業用機器などの専門商社である株式会社日伝です。

実行時期は2024年3月であり、株式譲渡のスキームが活用されました。買い手企業は、企業のDX導入促進や労働人口減少などの課題解決により、自社事業の提供価値を高める目的でM&Aを実施しました。売却価格は非公表であり、買い手企業が株式会社アペルザの株式を取得し、同社を子会社化しました。

参照元:株式会社日伝「株式会社アペルザの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

TOPPAN株式会社と株式会社ココラブルのM&A

このM&Aは、譲渡会社がSNS広告事業やEC支援事業などを展開する株式会社ココラブル、買収会社はTOPPANホールディングスのグループ企業として印刷事業など情報系/生活系/エレクトロニクス事業を展開するTOPPAN株式会社です。

実行時期は2024年3月であり、株式譲渡のスキームが活用されました。買い手企業は、Web集客からEC購買までのプロセスを提供する機能を強化し、事業規模の拡大を図る目的でM&Aを実施しました。売却価格は非公表であり、買い手企業が株式会社ココラブルの株式を取得し、同社を子会社化しました。

参照元:TOPPANホールディングス株式会社「TOPPAN、SNS広告とEC支援を行うココラブルを買収、完全子会社化

株式会社イオレとオモイデノ株式会社のM&A

このM&Aは、譲渡会社がPC・スマートフォン向け各種サービスの運営を行う株式会社イオレ、買収会社がペット旅行に特化した情報などを提供するオモイデノ株式会社です。

実行時期は2023年2月で、事業譲渡のスキームで実行されました。イオレのペット事業の戦略的成長のために必要であったとのことです。

結果として、イオレがペット旅行専門メディア「休日いぬ部」を事業譲受しました。

参照元:株式会社イオレ「イオレ、オモイデノ株式会社の「休日いぬ部」を事業譲受

プラスワンホールディングス株式会社と株式会社popteamのM&A

このM&Aは、譲渡会社がSNSマーケティングオートメーションツール「DIGITAL PANDA(デジタルパンダ)」の提供などを行う株式会社popteamで、買収会社はインターネットを利用した商品の売買などを営むプラスワンホールディングス株式会社です。

実行時期は2023年2月で株式譲渡のスキームで実行されました。
経営資源の選択と集中を目的として実施され、結果としてプラスワンホールディングス株式会社が株式会社popteamを完全子会社化しました。

参照元:アジャイルメディア・ネットワーク株式会社「連結子会社の異動(株式譲渡)に関するお知らせ

株式会社ファブリカコミュニケーションズと株式会社アドブレイブのM&A

このM&Aは、譲渡会社がデジタル化推進事業などを営む株式会社ファブリカコミュニケーションズで買収会社はWebマーケティングなどを営む株式会社アドブレイブです。

実行時期は2023年2月事業譲渡のスキームで実行されました。

顧客⽣涯価値を最⼤化するためのPDCAを円滑かつ⾼速に回すことを可能とすることを目的として実行され、結果として株式会社ファブリカコミュニケーションズがEC特化型CRMプラットフォーム「アクションリンク」を事業譲受しました。

参照元:株式会社ファブリカコミュニケーションズ「ファブリカコミュニケーションズ、EC特化型CRMプラットフォーム「アクションリンク」を譲受 顧客体験を向上し、更なる顧客満⾜度の最⼤化および取引拡⼤へ

Zホールディングス株式会社と株式会社ZOZOのM&A

このM&Aは譲渡会社がファッションに関するインターネットサービスの株式会社ZOZOで、買収会社はグループ会社に関する経営管理などを営むZホールディングス株式会社です。

実行時期は2019年11月で、公開買付け(TOB)のスキームで実行されました。
双方のeコマース事業においてさらなる成長につなげることを目的として実施され、結果としてZホールディングス株式会社が株式会社ZOZOを子会社化しました。

参照元:ソフトバンクグループ株式会社「当社子会社(ヤフー株式会社、証券コード:4689)による株式会社ZOZO株式(証券コード:3092)に対する公開買付けの開始予定及び資本業務提携契約の締結に関するお知らせ

株式会社エイチームとIncrements株式会社のM&A

このM&Aは譲渡会社がエンジニアの開発効率を向上するサービスやツールの提供などを行うIncrements株式会社で、買収会社はライフスタイルサポート事業などを営む株式会社エイチームです。

実行時期:2017年12月で、株式譲渡のスキームを用いて実行されました。
中長期的な成長及び企業価値の向上につなげることを目的として実行され、結果として株式会社エイチームがIncrements株式会社を完全子会社化しました。

参照元:株式会社エイチーム「Increments 株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

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Webサービスの販売に関する税制

Webサービスの販売に対する税金は、販売者が法人か個人かによって異なります。この章では、Webサービスの販売に関する課税について解説します。

法人が運営するWebサービスを販売する場合の税制

法人が運営するWebサービスを販売する場合、売上には法人税が課税されます。法人税の実効税率は、法人の種類や資本金の額によって異なります。なお、税額を計算する際には、他の所得との合算が必要です。

個人が運営するWebサービスを販売する場合の税制

個人がWebサービスを販売する場合、利益部分は原則として「譲渡所得」と見なされ、所得税と住民税が課税されます。したがって、本業の所得やその他の所得にWebサービスの売却による譲渡所得を加えて、所得税と住民税を計算する必要があります。

また、Webサービスの販売による譲渡所得は、サービスの所有期間に応じて「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」に分類されます。

長期譲渡所得と短期譲渡所得の違い

長期譲渡所得は、Webサービスを5年以上保有した場合に生じる所得です。現在の税法では、長期譲渡所得に対しては固定の税率が設定されています。所得税は15%、住民税は5%で、平成25年から令和19年までの間、復興特別所得税として、年ごとの基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付する必要があります。

短期譲渡所得は、Webサービスを保有して5年未満に売却した場合の所得です。長期譲渡所得と短期譲渡所得は、現在の税法において異なる税率や取り扱いが設定されています。所得税は30%、住民税は9%です。やはり、平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として、各年の基準所得税額の2.1%を所得税と一緒に申告・納付する必要があります。

事業所得として課税される場合もある

特に注意しなければならないのは、Webサービスの売上が例外的に事業所得として課税される場合があることです。継続的にWebサービスの販売を行っており、事業と判断されれば、その売上は事業所得として課税される可能性があります。

譲渡所得と事業所得では所得税の計算方法が異なるため、専門家に相談することをおすすめします。

参照元:
国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算
国税庁「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算

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まとめ

Webサービスを売却すると、まとまった金額を得ることができるため、将来の選択肢が大きく広がります。自社のWebサービスの課題を解決してくれる買い手を見つけることで、市場価格よりも高く売却できる可能性があるでしょう。

Webサービスの売却を成功させるためには、M&AやWebサービス売却に精通したエージェントやコンサルタントに相談することがおすすめです。

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