赤字会社の売却・M&Aの可能性は?手法・事例・成功のコツなど徹底解説!

2023年7月12日

赤字会社の売却・M&Aの可能性は?手法・事例・成功のコツなど徹底解説!

このページのまとめ

  • 赤字会社でも売却の可能性はある
  • 赤字会社の買収は節税・事業の拡大・シナジー効果などのメリットが想定される
  • 赤字会社の売却・買収の成功の大きなポイントは適切な専門家への相談

赤字だからといって、会社の売却をあきらめるのは早いかもしれません。本記事では、赤字会社を売却する方法について説明した上で、メリット・手法・成功のポイントなどを解説しています。廃業や売却を検討している経営者の方はぜひご一読ください。

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赤字会社でも売却は可能か?

近年では、後継者不足や事業の先行き不安から、会社売却を行う中小企業が増えていると言われます。売却は基本的には黒字企業が行うものですから、赤字会社でも売却できるのか不安だという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

赤字会社でも売却の可能性はある

赤字会社の買い手を見つけるのは難しいと思われがちです。ましてや、債務超過の会社であればなおさらでしょう。しかし実際には、経営状態が悪い赤字会社でも売却できるケースは少なくないとされています。

赤字会社の経営者は「自分たちの事業を引き継いでくれる第三者はいないだろう」と考えて、そもそも売却を検討すらしないケースも少なくありません。買い手が事業を高く評価するような要素があったとしても、赤字会社の経営陣がそれに気づかないケースも少なくないと言われます。

赤字会社の収支状況・財務内容・事業規模・保有不動産などは、容易に識別可能な企業特性です。しかし、事業の価値はこれらの要素に限定されるものではありません。例えば、高い技術力、良好な取引先や商流、地域や業界における知名度などは大きな要素です。また、社歴・業界におけるシェア・店舗網・特許などの知的財産・ノウハウなども非常に重要です。

したがって赤字会社の事業が小規模の場合や債務超過であっても、買い手が事業の価値を認識すれば、その引き継ぎを申し出る可能性はあります。また、売り手にとっては自明であるがゆえに魅力に気づきにくいこともあるでしょう。そのような事業価値を掘り起こす意味でも、まずは後述する専門家に早い段階で相談することが望ましいと言えます。

また、後程詳細を説明する含み資産の存在も無視できません。貸借対照表の帳簿上は債務超過でも、資産と負債を時価で再評価すると、実体として資産が負債を上回るケースもあるためです。

そもそも赤字に関して誤解されているケースが少なくありません。良い例が、投資によって一時的な赤字が発生した場合です。その投資が成功し利益が出れば、その後赤字は縮小する可能性が小さくありません。また、赤字会社の中に優秀な人材が在籍していることもあります。そういった場合は、将来大きな利益を生むことも考えられます。

赤字に対する決めつけを理由に、専門機関に相談する前に赤字会社の売却を断念する必要はありません。

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赤字会社の買収・売却について

赤字会社は大きく2つに分類できます。
損益計算書上の赤字会社とキャッシュフロー計算書上の赤字会社です。

損益計算書は企業の1年間の営業成績を示すものなので、損益計算書上の赤字は業績不振を意味します。このような会社は将来性がないと判断され、売却価格が低くなる場合や、買収されないこともありえます。

キャッシュフローは現金の流れを示すもので、キャッシュフロー計算書上の赤字は手元に現金がないことを示しています。しかし、キャッシュはないが他社と競争できる技術力がある企業の場合、資本を投下することで成長が見込めるため、赤字でも売却が成立することがあります。

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赤字会社買収のメリット

赤字会社を買収すると、利益やキャッシュフローが減少するため、一見するとメリットが少ないと思われるかもしれません。しかし、現実に赤字会社を買収する企業があるのは、メリットがデメリットを上回るからです。赤字会社を買収するメリットは、主に以下の3つです。

  • 節税になる
  • 事業を拡大できる
  • シナジー効果が見込める

それぞれのメリットについて、詳しく説明します。

節税になる

法人税は、企業の純利益から導き出された所得に対して課される税です。赤字会社の損失は純利益の額を減らすことに繋がり、節税効果があるとされています。また、ある年の所得がマイナスである場合、翌年以降の一定期間にわたって所得から控除できるため、買収した年に大きな損失が出ても、通常はその会社の株価が下落することはありません。これは一般に繰越欠損金の控除と呼ばれる制度です。

ただし、節税目的のみの企業買収の場合、繰越欠損金の控除は認められていないことには注意が必要です。

事業を拡大できる

赤字会社には必ずしも多額の負債が存在するわけではありません。技術力・ブランド力・豊富な販売チャネルを持ちながら、資金力がないために、キャッシュフローが赤字になってしまった企業もあります。

そうした赤字会社を買収して資金を調達し、強い技術やブランドを活用すれば、売上を伸ばすことも不可能ではありません。また、広範な販売チャネルを持つ赤字会社の場合、この販売チャネルを利用して既存の自社製品の売上を増やし、認知度を高めることも想定できます。

シナジー効果が見込める

シナジーとは企業間の相乗効果のことで、売上が増加する「売上シナジー」と、売上原価や販売管理費などのコストが削減される「コストシナジー」に大別されます。企業買収を実施する場合、シナジーを期待して行われることが少なくありません。

赤字会社の買収の場合でも、シナジー効果やそのメリットが期待できるケースがあります。シナジー効果が期待できる場合は、買収時にデューデリジェンスをしっかり行うことが特に重要です。

デューデリジェンスとは買収者が行う調査のことで、主にM&Aの専門家に依頼して対象会社の様々なリスクなどを調査します。譲渡対価の額を精査し、判明した実情に照らして分析、事業を精緻化するといった目的で行われます。

調査項目は、M&Aの規模やM&Aを行おうとする側の意図によって変わりますが、一般的には、資産・負債等の財務調査(財務デューデリジェンス)、株式・契約内容等の法務調査(法務デューデリジェンス)などがあります。

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赤字会社の売却を成功させるコツ

赤字会社を売却する際に、売り手側がまず意識すべきコツを解説します。
主なポイントは以下の4点です。

  1. シナジーが期待できる買い手企業を選定する
  2. 他社にない強みを確立する
  3. 赤字の理由と今後の見通しを明確化する
  4. 専門家に相談する

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

1.シナジーが期待できる買い手企業を選定する

あなたの会社が仮に赤字でも、魅力的な商品・技術ノウハウ・優秀な人材が存在している場合があります。それらを自分では生かせなくても、買い手がうまく活用すれば、相乗効果で赤字から黒字に転換できる可能性があります。

シナジーが期待できる会社を買い手として選ぶことで、赤字を黒字に変える可能性が高まるでしょう。

2.他社にない強みを確立する

赤字会社でも他社にない強みがあれば売却できる可能性があります。赤字でかつ魅力のない会社であれば、買い手は興味を示さないでしょう。他社にない強みを作ることは簡単ではありませんが、強みを作ることで会社を売却できる可能性が高まるうえ、売却できなくても会社の業績を復活させる手段になりえます。

3.赤字の理由と今後の見通しを明確化する

赤字だからといって、全ての会社が買収に不向きというわけではありません。収益性・キャッシュフロー・市場環境などを徹底的に調査し、赤字の原因を突き止めることが非常に重要です。

損益計算書は、企業の1年間の業績を示すものです。収益・費用・利益の3つの要素からなり、「どれだけの収益があったか」「どこに費用がかかったか」「結果としてどれだけの利益があったか」を示しています。これらの数字を精査することで、赤字の原因や好転の可能性が見えてくるでしょう。

例えば本業以外の異常な損失や経費が原因で、一時的に赤字になっただけかもしれません。「災害による損失がある」「減価償却費が大きい」「含み損のある資産が存在する」などが原因で、本業は黒字でも決算が赤字になるケースがあります。

先述の通り、損益計算書が黒字でキャッシュフローが赤字の会社は、手持ちの資金が不足しているので、お金を投入すれば成長する可能性が高いと言えます。将来の見通しを立てることが非常に重要です。また、他社にはない独自の技術やノウハウを持っている場合も、将来の可能性から買収する価値が高まると言えるでしょう。

4.専門家に相談する

適切なM&Aアドバイザーに相談することで、的確なアドバイスが得られます。赤字会社の売却は難易度が高く、場合によっては相手先が見つからないこともあります。また、過去に赤字会社の売却に関わったことがない場合、どのように進めていけばよいのかわからないという不安もあるでしょう。

良いアドバイザーに相談し、スムーズに売却を進めることができるよう準備するのがおすすめです。

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赤字会社が見直すべきポイント

続いて、売り手である赤字会社側が具体的に見直すべき項目を解説します。

  1. キャッシュフロー
  2. 含み試算
  3. 簿外債務

それぞれのポイントについて見ていきましょう。

1.キャッシュフロー

損益計算書が赤字でも、キャッシュフローがプラスであれば、赤字の問題は軽減されます。「減価償却費」や「貸倒引当金」などが存在する可能性があるからです。これらは、現金及び現金同等物を減らさない項目の内で金額が大きいものと言えます。例えば、多額の事業投資を行い、それに伴う減価償却費が増加した場合や、他社からの不良債権に対する貸し倒れリスクを厳密に計算した場合などが該当します。

また、自社の損益計算書が赤字であっても、キャッシュフローが黒字であれば、買い手は投資がしやすくなります。売り手が生み出すキャッシュフローで買収費用を回収することができるためです。自分の会社が赤字の場合は、まずキャッシュフローの状況を確認しましょう。

2.含み資産

会社に含み資産があれば、赤字であっても会社を売却できる可能性が高まります。含み資産とは取得時の価値よりも現在の価値(時価)の方が高いものを指し、土地や建物などの固定資産やゴルフ会員権などの投資資産があります。

例えば、あなたの会社がホテルを経営していてその事業が赤字であっても、そのホテルを不動産として所有していれば、土地について含み益があることが期待できます。特に代々受け継がれてきた土地を所有している場合、土地の含み益が過去に比べて思いの他増えているケースもあります。

所有している不動産などに含み益があるかどうかはしっかり確認しておくとよいでしょう。

3.簿外債務

簿外債務とは、貸借対照表に記載されておらず現時点では必ずしも債務ではないものの、将来、債務となる可能性があるものを指します。何らかの事態が発生した場合、当該会社の負担となる可能性がある事項のことで、例えば、債務保証・未払賃金・退職金・損害賠償請求などが挙げられます。

後々のトラブルを避けるためにも、売却前に簿外債務を認識しておき、買い手に対して十分な説明ができるようにしておくことが望ましいと言えます。

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赤字会社買収を成功させるためのポイント

買い手側の立場で、赤字会社の買収を成功させるためのポイントについて解説します。
主なポイントは以下の4点です。

  1. 買収目的を明確にする
  2. 徹底的なデューデリジェンスを行う
  3. 適切な買収価格を算定する
  4. 統合プロセスを実施する

1.買収目的を明確にする

まず、買収の目的をあらかじめ明確にしておく必要があります。赤字会社の買収はリスクが高く、目的もなくリスクの高い買収を行うと、自社の株主や債権者が離れて資金調達ができなくなり、最終的に倒産に追い込まれる可能性もあります。

常に買収の目的を明確にし、赤字会社の買収のメリットとリスクを比較し、メリットが大きい場合に買収に踏み切るようにしましょう。

2.徹底的なデューデリジェンスを行う

徹底したデューデリジェンスを行うことも重要です。赤字会社を買収する場合、財務的なリスクを負うことになるので、買収のメリットがリスクを上回るかどうかを慎重に検討しなくてはなりません。

赤字会社は、自社の販売価格を下げないために簿外債務を隠蔽するケースもあります。財務体質の強い企業であればその負債を吸収することも可能でしょうが、資金力がなければ買収後に経営危機に陥る可能性があります。そうならないためにも、徹底したデューデリジェンスが必要です。

デューデリジェンスは、考えられるすべてのリスクについて調査することもあれば、対象を限定するなど簡略化した形で調査を実施することもあります。

3.適切な買収価格を算定する

適切な買収価格を算定することは大きなポイントです。赤字会社でもある程度の強みがある場合は、その将来性を考慮した買収価格を精査する必要があります。適切な買収価格を算定するためには、M&Aの専門家に相談することをおすすめします。

4.統合プロセスを実施する

中小企業庁が実施したアンケートによると、M&Aを実施した企業の総合的な満足度が「予想より低かった」と回答した企業では、「シナジーが発揮されなかった」「相手の経営・組織体制が弱かった」「相手の従業員に不満があった」等の理由が挙げられています。

これらはすべて、M&A後の統合プロセスが大きく関わっています。統合プロセスの取り組みの成否は、M&Aの当初の期待が実現されるかどうか、言い換えると、M&Aそのものが「成功」と言えるかどうかに大きな影響を与えることが分かります。

通常の買収であっても統合プロセスの実施は難易度が高く、特に企業理念や従業員のモチベーションといったソフト面の統一を図るのは簡単ではありません。赤字が長く続いている企業では従業員のモチベーションが低いことが多く、ソフト面の統一がさらに難しい場合があります。

長期間の統合プロセスにおいて、売り手企業の従業員に対する経営指導を怠ったため、売り手企業の従業員が将来への不安を覚えたりモチベーションが低下したりなど、離職していくケースがありました。買収後、会社の経営が買い手企業から派遣された役員に引き継がれた結果、経営が安定せず、売り手企業の役員や従業員の心が離れてしまうなどの事態も想定されます。

対策としては、経営陣が徹底して統合プロセスの戦略を練ることです。また、デューデリジェンスの段階で統合に時間がかかりそうだと判断した場合は、買収を断念することも考慮に入れる必要があるでしょう。

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買収・売却価格の算定方法

次に、買収・売却価格の一般的な算定方法について解説します。
一般的な価格算定の手法として、下記の3つがあります。

  • コストアプローチ
  • インカムアプローチ
  • マーケットアプローチ

コストアプローチ

コストアプローチとは、対象企業の純資産をもとに企業価値を決定し、売却価格を導き出す計算方法です。貸借対照表に基づいて計算するため、客観的なデータを活用できるというメリットはあるものの、将来性が加味できないというデメリットがあります。今回は、コストアプローチの中で「時価純資産法」と「簿価純資産法」の2種類を解説します。

時価純資産法

時価純資産法では、時価で純資産額を算出し、それに基づいて売却価格を決定します。企業が現在保有しているすべての資産を売却し、その代金を債務の返済に充当した場合に残る金額を計算するケースが想定されます。計算に時間や手間がかかることがデメリットです。

簿価純資産法

簿価純資産法とは、対象企業の貸借対照表から純資産を算出し、それに基づいて売却価格を決定する方法です。この算出方法は、老舗中小企業のM&Aでよく使われます。

その理由は、将来の成長が見込めないためわざわざ以下で説明するインカムアプローチを実施する必要がなく、また、株式の発行や売買が少ないため以下で説明するマーケットアプローチも利用できないからです。

インカムアプローチ

インカムアプローチは、M&Aにおける売却価格の算定に最もよく用いられる方法です。インカムアプローチは将来の収益を予測するものであるため、客観的なデータに基づいていることが必要です。今回は、インカムアプローチのうち、「DCF(Discounted Cash Flow)法」と「配当還元法」の2種類を解説します。

DCF法

DCF法とは、将来的に企業が生み出すと予想されるキャッシュフローを、加重平均資本コスト(WACC)で割り引いて現在価値に換算、企業価値を算出し、売却価格を算定する方法です。

ここでいう企業が生み出すキャッシュフローとは、フリーキャッシュフロー、すなわち、税金や投資を差し引いて企業が株主や債権者に分配できる金額のことです。一方、WACCは、株主の期待収益率と債権者期待収益率の加重平均値です。

フリーキャッシュフローの金額が大きいほど、企業価値は高くなります。

配当還元法

配当還元法では、売り手企業が最近分配した配当金の総額を株主への期待収益率で還元して企業価値を算出し、それをもとに売却価格を算定する方法です。配当金は企業の業績に連動しており、株主に還元されるものなので、配当金をもとに企業価値を算出できるという考えに基づいています。

この方法のメリットは、配当総額に基づいて計算するため、インカムアプローチの中では比較的客観性が高いということです。

対して、デメリットは、正確な企業価値を算出できない可能性があることです。配当金の額は一般的に株主総会で決定されますが、取締役会で決定されるケースもあります。そうなると、企業価値を高めるために、意図的に配当額を増やす可能性があることは否めません。

配当還元法は、正確な企業価値を算出できない可能性があるため、特定の条件下以外ではあまり利用されていないようです。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、市場で決定された数値に基づいて企業価値を算出し、売却価格を算定する方法です。同規模の同業他社の株価・企業価値に基づいて計算するため、比較的客観的な数値を得られることが大きなメリットです。今回は、市場原理を利用した方法のうち、「市場株価法」と「類似会社比準法」の2種類を解説します。

市場株価法

市場株価法とは、同規模・同業種の上場企業の株価をもとに企業価値を算出する方法です。株価は企業の業績によって変動するため、これを元に算定する際に市場株価法が用いられます。通常は過去3ヶ月間の平均株価を用います。

類似会社比準法

類似会社比準法とは、対象会社と類似した会社の財務内容を比較することで、企業価値を出し、売却価格を算定する方法です。類似会社比準法も株価を元に算定を行います。具体的にはPBR(株価純資産倍率)やPER(株価収益率)などの財務指標をもとに企業価値を決定します。

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赤字会社の買収・売却の相場

赤字会社の買収や売却について、相場を端的に示すことはできません。しかし、売却価格は売却時の資産状態を考慮して計算されるため、同規模の同業他社より低くなることが多いと言えます。ただし、例外もあります。

1つ目は、その会社に将来性が見込まれる場合です。赤字の会社でも将来の成長が期待できる場合、売却価格は高くなる可能性があります。

2つ目は、その企業がコア・コンピタンスを有している場合です。コア・コンピタンスとは企業の中核となる強みのことです。例えば、技術やブランドなどの無形資産を有している場合、売却価格に加え、のれん代が考慮される可能性があります。

ただし、この2つの項目については、買収者がどのように判断するかによって大きく左右されます。

関連記事:会社売却の相場や税金はどれくらい?準備からクロージングまでの流れも解説

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赤字会社の売却スキーム

この章では、赤字会社を売却する主なスキーム・手法について説明します。
具体的なスキームとして下記の3つを紹介します。

  • 株式譲渡
  • 事業譲渡
  • 合併

株式譲渡

株式譲渡は、売り手の株主が発行済株式を買い手に譲渡する方法です。赤字会社は買い手の子会社となります。売り手会社は株主が変わるだけで、会社の資産・負債・従業員・第三者との契約・許認可などは原則として存続します。手続きも他の方法と比較して簡便です。ただし、先述した簿外債務を引き継ぐ可能性があることは買い手にとって大きなデメリットです。

事業譲渡

事業譲渡とは、売り手が所有する事業の全部または一部を譲渡することです。資産・負債・契約は債権者および従業員の同意のもと、個別に譲渡されます。多くの場合、ライセンスや許認可は買い手に譲渡されず、買い手は新たにライセンスや許可証を取得する必要があります。

個々の事業・物件単位での譲渡が可能であるため、売り手は事業の一部を手元に残すことが可能です。買い手にとっては、特定の事業や資産のみを買収できるため、簿外債務のリスクを切り離すことができるのは大きなメリットです。

ただし、繰越欠損金などの税制上の優遇措置はないため、赤字会社の事業を引き継いでもメリットがないと想定されます。

合併

合併とは、会社法に定められた組織再編手続きの1つで、売り手会社の権利と義務(会社のすべての資産、負債、契約など)を他の会社(または合併の結果、設立された新しい会社)が完全に引き継ぎ、売り手会社が消滅する手続きのことです。

結果として、2つ以上の法人が1つの法人となり、結合は強固なものとなります。さらに、許認可などがそのまま引き継がれるケースもあります。一方、組織内の雇用条件の調整・事務手続きの一本化など煩雑な手続きが必要となるケースがあり、また、簿外債務にも留意する必要があります。

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赤字会社の買収・売却の成功事例

ここでは赤字会社の買収・売却の成功事例を紹介します。

鴻海精密工業股份有限公司によるシャープ株式会社のM&A

このM&Aは、譲渡会社が電機メーカーのシャープ株式会社で、買収会社はスマートフォンや薄型テレビなどの電子機器の受託生産を行う鴻海精密工業股份有限公司です。実行時期は2016年8月で、第三者割当のスキームで実施されました。

鴻海精密工業股份有限公司は、シャープ株式会社と液晶事業において相互補完的な関係にあり、シャープ株式会社の競争力を強化するための協力関係を構築できると考えていたとされています。
また、鴻海精密工業股份有限公司のEMSとしての製造技術を他の事業にも活用することで、シャープ株式会社の生産性やコスト競争力をさらに向上させることが見込まれていました。

事業面でのシナジー効果が大きく期待されたことで、鴻海精密工業股份有限公司は赤字会社であったシャープ株式会社からの第三者割当を受けることを決定したのだと考えられます。
結果として鴻海精密工業股份有限公司がシャープを子会社化しました。

参照元:シャープ株式会社「第三者割当による新株式の発行並びに親会社、主要株主である筆頭株主及び主要株主の異動に関するお知らせ

株式会社ディー・エヌ・エーによる株式会社横浜ベイスターズのM&A

このM&Aは、譲渡会社はプロ野球の興行他の株式会社横浜ベイスターズで、買収会社はゲーム事業などの株式会社ディー・エヌ・エーです。
実行時期は2011年12月で、株式譲渡のスキームを用いて実行されました。譲渡価格は95億円です。

株式会社ディー・エヌ・エーは日本のプロ野球界の発展に貢献し、地域社会に寄与することで、青少年の健全な成長やスポーツ文化の促進、地域経済の発展を実現したいと考えていました。そしてそれにより、企業のブランド価値と知名度が向上することを期待していたため、株式会社横浜ベイスターズが赤字会社でも株式を譲り受けたのだと考えられます。
結果としてディー・エヌ・エーが横浜ベイスターズを子会社化しました。

参照元:株式会社ディー・エヌ・エー「株式会社横浜ベイスターズの株式取得に関するお知らせ

楽天株式会社によるイーバンク銀行株式会社のM&A

このM&Aは譲渡会社は銀行業などのイーバンク銀行株式会社で、買収会社はインターネット関連サービスなどの楽天株式会社です。
実行時期は2009年2月で、優先株式を普通株式へ転換するという手法で実施されました。

楽天グループは、イーバンク銀行を子会社化することで、ネット専業銀行であるイーバンク銀行の顧客基盤(300万口座)にアクセスできるようになりました。また、楽天グループのユーザーにとっても、イーバンク銀行の先進的な決済サービスを利用することができるようになりました。

このような相互に良い影響をもたらすこのようなシナジー効果が期待されていたため、楽天株式会社はイーバンク銀行株式会社が赤字会社でも子会社化したのだと考えられます。

参照元:楽天株式会社「イーバンク銀行株式会社の連結子会社化について

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まとめ

赤字会社の買収には、「買収コストの低減」「節税効果の期待」といったメリットがあります。経営が健全な会社を買収するより価格を低く抑えることができますが、戦略もなく買収した場合、損失が大きくなってしまう可能性があります。

赤字会社のM&Aの成否は、優秀なアドバイザーの存在にかかっていると言っても過言でありません。信頼できる専門家の力を借りて、慎重な企業評価とデューデリジェンスを行い、企業の真の価値を見極めるべきです。

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