吸収合併の仕訳や会計処理、のれんを子会社・非子会社別に説明

2023年12月22日

吸収合併の仕訳や会計処理、のれんを子会社・非子会社別に説明

このページのまとめ

  • 吸収合併では存続会社が取得企業、消滅会社が被取得企業となることが一般的
  • 株式を交付した企業が被取得企業となる逆取得が発生する場合もある
  • 吸収合併に関わる会社の株主は、基本的には仕訳や会計処理は不要
  • 買収価額が企業の時価純資産より高いときはのれんが発生する

「吸収合併を検討しているが、合併後の会計処理や仕訳がよくわからない」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。本記事では、吸収合併の仕訳と会計処理、のれんについて説明します。また、そもそも合併とは何か、合併にはどのような種類があるのかについてもまとめました。吸収合併を検討している方や企業の売却・取得を予定している方も、ぜひ参考にしてください。

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合併とは

合併とは、M&Aにおいて用いられることが多い手法のひとつで、複数の企業がひとつの企業になることです。

たとえば、同じくM&Aで用いられることが多い手法の株式譲渡では、株式を譲渡する側が取得する側の子会社となります。しかし、合併では関連する企業が等しくひとつの企業としてまとまるため、親会社・子会社といった関係は生じません。

吸収合併と新設合併

合併には、吸収合併と新設合併の2つの形態があります。

吸収合併とは、合併に関連する企業のうちの1社が他社を吸収する形でひとつの企業になることです。吸収する企業を存続会社と呼び、そのほかの企業はすべて消滅するため消滅会社と呼ばれます。存続会社は消滅会社の事業だけでなく、従業員や資産もすべて承継します。

一方、新設合併とは、新たに企業を設立し、合併に関連するすべての企業が新設された企業に含まれる形でひとつになることです。新設合併では既存企業は存続会社として残ることはなく、すべてが消滅会社になります。

取得企業とは

吸収合併の仕訳をする際、吸収合併で存続する会社を取得企業といい、消滅する会社を被取得企業と呼びます。この区別は吸収合併の会計処理と仕訳をする際に必要なポイントのため、ここで確認しておきましょう。

取得企業・被取得企業の会計処理・仕訳の違いは次のとおりです。

会計処理・仕訳
取得企業・交付した株式の時価を基準に算定する
・被取得企業の資産・負債を時価で受け入れる
・受け入れた純資産よりも増加資本金の方が多い場合はのれんが発生し、受け入れた純資産の方が多い場合は負ののれんを計上する
被取得企業・合併の前日を最終日として会計処理を行う
・時価評価ではなく適正な会計処理で算定された簿価を資産・負債として処理する

通常は合併時に株式を交付する企業が取得企業となりますが、株式を交付された企業が取得企業になる「逆取得」のケースもあるため注意しましょう。

取得企業かどうかを判定するときは、次の基準で総合的に判断することが必要です。

  • 合併後の存続企業における議決権比率
  • 合併後に議決権比率がもっとも大きい株主の存在
  • 取締役の解任・選任ができる株主の存在
  • 取締役会の構成
  • 株式の交換条件

上記5つの基準を押さえておきましょう。

被取得企業とは

被取得企業とは、吸収合併で消滅する側の企業です。被取得企業かどうかは、上記の基準で判断します。取得企業ではないと判断されるときは、被取得企業と考えられます。

会計処理は合併の前日を最終日として行うのが一般的です。

適格合併と非適格合併

合併には、適格合併と非適格合併の2種類があります。適格要件を満たす場合が適格合併で、それ以外は非適格合併です。通常取得による吸収合併は非適格合併です。

適格・非適格の違いは資産を時価で引き継ぐか簿価で引き継ぐかどうかの違いで、適格合併は法人税の課税対象となりません。非適格合併は法人税の課税対象となるため、合併時の金銭的な負担が大きくなることがあります。

たとえば、消滅会社から存続会社に資産が移転される場合、資産の譲渡が発生したと考えられるため、存続会社は資産の価格に応じた法人税を納付しなくてはいけません。しかし、適格合併の条件を満たすときは、資産を帳簿価額のまま引き継ぐことが可能です。

また、消滅会社に負債がある場合も、欠損金額としてそのまま引き継ぐことが可能なため、節税につなげられることもあります。適格合併と非適格合併の違いは、以下をご覧ください。

違いが生じる項目適格合併非適格合併
合併時の資産・負債の評価方法帳簿価額時価
消滅会社の株主のみなし配当認識しない認識する
資産調整勘定・負債調整勘定認識しない認識する
利益積立金承継する承継しない

適格合併の条件は以下をご覧ください。なお条件が複数ある「支配関係」と「共同で事業を行う関係」においては、すべての条件を満たしたときのみ、適格合併と判断されます。

支配関係•被合併法人の従業員のうち、およそ80%以上が合併法人の業務に従事することが見込まれている
•被合併法人の主要な事業が、合併後の合併法人においておこなわれると見込まれている
共同で事業をおこなう関係•被合併法人の主要事業を合併法人も手がけていること、あるいは関連性のある事業を手がけていること
•被合併法人と合併法人において、関連する事業の売上高・従業員数・資本金の差がおよそ5倍を超えないこと。もしくは、被合併法人の特定役員のうちの1人以上と、合併法人の特定役員のうちの1人以上が、合併後の合併法人において特定役員になると見込まれていること
•合併により交付される株式のうち、支配株主に交付されるもののすべてが、支配株主によって継続して保有されると見込まれていること

関連記事:吸収合併とは?メリットや手続きの方法、新設合併との違いを解説

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吸収合併(通常取得)の会計処理と仕訳

合併時に株式を交付した企業が取得企業(存続会社)、株式を交付された企業が被取得企業(消滅会社)になるときの会計処理と仕訳について説明します。

取得企業の会計処理と仕訳

取得企業では、次の会計処理が必要です。

  • 取得対価の算定
  • 資産・負債の時価評価
  • のれんの計上

取得対価として自社株式を交付した場合、株式の時価を基準に取得対価を算定します。上場企業であれば株価×発行株式数で計算できますが、非上場企業の場合は公開株価がありません。企業規模や業種が類似している会社の吸収合併の例などを参考に合理的に対価を算出します。

非適格合併において、取得企業は被取得企業の資産・負債を時価で受け入れます。知的財産権などの無形資産も含め、すべての資産・負債を時価に換算しておきましょう。

被取得企業に交付した株式よりも、被取得企業の資産から負債を差し引いた金額が少ないときは、のれんが発生します。反対に、被取得企業の資産から負債を差し引いた金額のほうが、交付株式よりも大きいときは、負ののれんとなります。正しく計算して帳簿に計上しておきましょう。

なお、負ののれんが発生しているときは、被取得企業を安価に取得できたと考えられます。ただし、債務や未払い給与などによって負ののれんが発生している場合は、合併後に多額の支払いを請求される可能性もあるため注意が必要です。

被取得企業の現金資産が200万円、売掛金が300万円、負債が100万円、合併の対価として1株=1,000円の株式を3,000株発行した場合の仕訳は以下のとおりです。なお、取得企業をA社、被取得企業をB社とします。

借方貸方摘要
現金2,000,000円借入金1,000,000円B社を吸収合併
売掛金3,000,000円資本金3,000,000円
負ののれん1,000,000円

被取得企業の現金資産が300万円、売掛金が200万円、負債が100万円、合併の対価として1株=1,000円の株式を5,000株発行した場合の仕訳は以下のとおりです。

借方貸方摘要
現金3,000,000円借入金1,000,000円B社を吸収合併
売掛金2,000,000円資本金5,000,000円
のれん1,000,000円

なお、負ののれんは「特別利益」、のれんは「特別損失」の勘定科目を使うこともできます。

取得企業の株主の会計処理と仕訳

取得企業の株主は、現金あるいは金銭価値のあるものの取引をしていません。そのため、吸収合併後に会計処理を行う必要もありません。
ただし、吸収合併により株式の持ち分が大きく変動した場合については、株式の時価評価をおこない、会計処理をする必要が生じます。

被取得企業の会計処理と仕訳

被取得企業は、吸収合併が成立すると消滅します。そのため、合併の前日に会計処理をしなくてはいけません。その際、資産と負債を時価ではなく、適正な会計処理によって算定された簿価として記載することが必要です。

借方貸方摘要
借入金1,000,000円現金2,000,000円A社により吸収合併
B社株式3,000,000円売掛金3,000,000円
合併差損1,000,000円

被取得企業の現金資産が200万円、売掛金が300万円、負債が100万円、合併の対価として1株=1,000円の株式を3,000株受け取った場合の仕訳は以下のとおりです。なお、取得企業をA社、被取得企業をB社とします。被取得企業の現金資産が300万円、売掛金が200万円、負債が100万円、合併の対価として1株=1,000円の株式を5,000株発行した場合の仕訳は以下のとおりです。

借方貸方摘要
借入金1,000,000円現金3,000,000円A社により吸収合併
B社株式5,000,000円売掛金2,000,000円
合併差益1,000,000円

被取得企業の株主の会計処理と仕訳

被取得企業の株主は、取得した対価が株式かどうかによって会計処理が変わります。取得企業の株式のみを受け取ったときは、借方に取得企業の株式、貸方にみなし配当の金額を記載します。

借方貸方摘要
A社株式500,000円B社株式400,000円A社により吸収合併
受取配当金100,000円

一方、合併対価として取得企業の株式以外を受け取っているときは、譲渡損益が発生することもあるため注意が必要です。借方に合併対価、貸方にみなし配当の金額、譲渡益があるときは差額を借方に、譲渡損があるときは差額を貸方に計上しましょう。

借方貸方摘要
合併対価450,000円B社株式400,000円A社により吸収合併
譲渡損益50,000円受取配当金100,000円
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吸収合併(逆取得)の会計処理と仕訳

消滅会社が取得企業となるケースにおいても、会計処理が必要です。非適格合併の場合において、関連する企業と株主の会計について説明します。

取得企業の会計処理と仕訳

吸収合併が成立すると、取得企業の存在は消滅します。そのため、会計処理は合併の前日に行うことが必要です。
引き渡す現金資産が500万円、売掛金が200万円、負債が100万円、合併の対価として600万円を受け取った場合の仕訳は以下のとおりです。なお、取得企業をC社、被取得企業をD社とします。

借方貸方摘要
借入金1,000,000円現金5,000,000円D社により吸収合併
現金6,000,000円売掛金2,000,000円

取得企業の株主の会計処理と仕訳

存在が消滅する会社側の株主は、現金あるいは金銭的価値のある取引は実施していません。そのため、会計処理や仕訳も不要です。

被取得企業の会計処理と仕訳

逆取得により、被取得企業は資産・負債を受け入れる側となります。通常取得とは異なり、時価評価ではなく合併直後の帳簿価額をそのまま計上します。

ただし、資産から負債を差し引いてプラスになるときは、資本金や資本余剰金として計上しますが、マイナスになるときはその他利益余剰金としてマイナス計上することが必要です。
受け取る現金資産が500万円、売掛金が200万円、負債が100万円、合併の対価として600万円を支払った場合の仕訳は以下のとおりです。なお、取得企業をC社、被取得企業をD社とします。

借方貸方摘要
現金5,000,000円借入金1,000,000円C社を吸収合併
売掛金2,000,000円資本金6,000,000円

被取得企業の株主の会計処理と仕訳

企業の存在が残る側の株主においても、現金や金銭的価値のある取引は実施していません。そのため会計処理や仕訳は不要です。

共同支配企業を形成したときの会計処理と仕訳

合併による共同支配とは、3社以上の合併において成立する関係です。複数の企業が共同し、対象となるひとつの企業を支配します。支配される企業は共同支配企業と呼ばれます。

共同支配企業の形成は、さまざまなケースが想定されるでしょう。たとえば子会社同士が共同支配を行うケースや、共同支配をおこなう企業が合併してから新設分割するケースもあります。
共同支配企業の形成においては、取得企業・被取得企業と区分できません。そのため、紹介してきた方法では会計処理や仕訳ができず、下記のような例外的な処理が必要となります。

存続会社の会計処理と仕訳

存続会社は、結合成立の前日の帳簿価額に沿って会計処理を行います。結合後に持ち越される資産・負債については、帳簿価額のまま計上しましょう。

なお、株主資本の金額については、資本金もしくは資本余剰金として計上することが原則です。しかし、消滅会社の帳簿の内訳をそのまま引き継ぐ形でも問題ありません。

存続会社の株主の会計処理と仕訳

存続会社の株主が子会社株式を保有している場合は、そのまま持ち越して振替処理を行います。子会社株式の帳簿価額を調べ、共同支配企業株式として振り替えましょう。

消滅会社の会計処理と仕訳

消滅会社は企業結合により消滅するため、結合成立の前日に会計処理を行います。基本的には通常取得における被取得企業と同じパターンで、結合成立の前日の帳簿価格により最終決算をしましょう。

消滅会社の株主の会計処理と仕訳

消滅会社の株式は、存続企業の株式と引き換えられます。消滅会社の株主は、保有株式を合併が成立する前の帳簿価額で算定し、存続企業の株式取得対価として計上します。
ただし、企業結合前・後で帳簿価額は変わらないため、交換損益は生じません。

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親会社が子会社を吸収合併したときの会計処理と仕訳

親会社による子会社の吸収合併は、合併というよりはグループ内の構成の再編の意味合いが強くなります。そのため、内部取引のひとつと判断され、合併前後に帳簿上の食い違いが生じないよう、帳簿価格で会計処理をおこないます。

100%完全子会社を合併したときの会計処理と仕訳

100%完全子会社の合併は、先述の適格合併の条件を満たします。親会社(存続会社)は資産と負債を帳簿価額で引き継ぎ、基本的には譲渡損益やみなし配当は発生しません。
親会社と子会社に分けて、会計処理と仕訳を見ていきましょう。

親会社の場合

吸収合併により、子会社は存在しなくなります。そのため、子会社の最後の決算となる合併前日の帳簿価額に基づいて、会計処理を行います。

完全子会社の現金資産が500万円、売掛金が200万円、借入金は300万円、当期純利益は100万円の場合の仕訳は以下のとおりです。なお、E社は親会社、F社は完全子会社、F社の発行済み株式をE社はすべて保有しているとします。

借方貸方摘要
現金5,000,000円借入金3,000,000円F社を吸収合併
売掛金2,000,000円F社株式3,000,000円
抱合せ株式消滅差益1,000,000円

子会社の場合

完全子会社は合併が成立すると消滅するため、合併前日に会計処理を行います。

完全子会社の現金資産が500万円、売掛金が200万円、借入金は300万円、当期純利益は100万円の場合の仕訳は以下のとおりです。なお、E社は親会社、F社は完全子会社とします。

借方貸方摘要
借入金3,000,000円現金5,000,000円E社により吸収合併
F社株式3,000,000円売掛金2,000,000円
抱合せ株式消滅差損1,000,000円

債務超過の完全子会社との合併における会計処理と仕訳

完全子会社の負債が資産を上回り、すぐには債務を返済できないときもあります。このような債務超過の完全子会社であっても、株主総会で承認を得られれば、吸収合併が可能です。

完全子会社の現金資産が200万円、売掛金が100万円、借入金は500万円の場合の仕訳は以下のとおりです。なお、G社は親会社、H社は完全子会社、H社の発行済み株式をG社はすべて保有しているとします。

借方貸方摘要
現金2,000,000円借入金5,000,000円H社を吸収合併
売掛金1,000,000円
抱合せ株式消滅差益2,000,000円
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子会社同士で合併したときの会計処理と仕訳

子会社同士で合併するときは、原則として帳簿価格での会計処理が求められます。次の3つに注目し、会計処理を実施しましょう。

  • 資産・負債
  • 株主資本
  • 株主資本以外

合併により消滅するほうの企業は、合併直前に最終決算を行い、資産と負債の帳簿価額を割り出します。一方、存続会社の会計処理は簡単です。消滅会社によって算定された帳簿価額をそのまま記載します。
消滅会社に株主資本が存在し、なおかつ価額がプラスのときは、消滅会社の株主資本から取得対価の価額を差し引き、「払込資本」として記載しましょう。ただし、株主資本から取得対価を差し引いた結果がマイナスになるときは、払込資本はゼロとし、差額を「のれん」として帳簿に記載します。

反対に株主資本がマイナスのときは、消滅会社に対して支払った取得対価を「のれん」として帳簿に記載することが一般的です。この場合も払込資本はゼロになり、差額はその他利益剰余金としてマイナス処理を実施します。

株主資本以外の資産がある場合は、それぞれにおいて会計処理をしなくてはなりません。たとえば、新株予約権や包括利益累計額などがあるときは、合併が成立する直前の消滅会社の帳簿価額に基づいて、そのまま引き継ぎます。

ただし、取得対価として現金を受け取るときは、株主資本自体は変化しません。そのため、増加した資本に関しては会計処理は不要です。合併が成立する直前に最終決算を実施し、取得対価と株主資本差額について、プラスのときはのれん、マイナスのときは負ののれんとして記載します。

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吸収合併で生じるのれんとは?

のれんとは、そもそも資産としては計上されない企業の価値を指します。被取得企業の純資産よりも株式による取得金額が多いときは、実際の価格よりも企業にプラスの価値があると判断し、のれんとして帳簿に記載します。

一方、企業の価値が対価より低いというケースも少なくありません。対価よりも純資産として帳簿に記載されている金額が多い場合は、負ののれんとして帳簿に記載します。

のれんの特徴

のれんとは、企業価値の高さです。子会社同士が合併するときでも、純資産以上の企業価値があると判断されるときには、のれんが発生することがあります。たとえば被取得企業の技術力や人的資源、事業のノウハウ、実績などに基づくブランド力などが、のれんとして評価されます。

企業価値が高いと判断される企業を吸収合併するときは、純資産にのれんを加えて、取得価額として算出することが一般的です。のれんは将来の収益力となり、取得企業に利益をもたらすと考えられます。

負ののれんの特徴

すべての企業の価値が、プラスに評価されるとは限りません。たとえば帳簿上にはない未払い給与や残業代などがあるときは、取得企業は被取得企業の純資産を取得対価として支払うと、損をすることにもなってしまいます。

このように企業価値がマイナスに評価されるときは、対価との差額を負ののれんとして帳簿に記載することが一般的です。なお、通常ののれんを、負ののれんと比較する意味合いを込めて「正ののれん」と表現することもあります。

本来であれば、負ののれんが発生する企業を取得することは、将来的な利益にはつながりにくい行為と考えられます。しかし、現時点での価値が低くても、将来的に価値の上昇が見込めるのであれば、割安な価額で企業を取得できるチャンスともいえるでしょう。

そのため、あえて負ののれんが発生する企業を取得し、自社の発展に活かすケースも少なくありません。たとえば自社と同業種あるいは関連分野の事業を展開している場合であれば、吸収合併によりシナジー効果が生まれる可能性があります。

のれんや負ののれんが発生した場合の仕訳

のれんや負ののれんが発生した場合の仕訳をみていきましょう。

のれんは、買収価額が企業の時価純資産より高いときに発生します。A社がB社を吸収合併して時価1,000万円の新株を発行し、資産は1,500万円、負債は800万円、資本金は1,000万円の場合の仕訳は以下のとおりです。

借方貸方摘要
資産15,000,000円負債8,000,000円B社を吸収合併
のれん3,000,000円資本金10,000,000円

企業価値がマイナスに評価され、買収価額が企業の時価純資産より低いときは負ののれんが発生します。

C社がD社を吸収合併して時価1,000万円の新株を発行し、資産は2,000万円、負債は700万円、資本金は1,000万円の場合の仕訳は以下のとおりです。

借方貸方摘要
資産20,000,000円負債7,000,000円B社を吸収合併
資本金10,000,000円
負ののれん3,000,000円

のれんは償却が必要

日本の会計基準で会計処理を行う場合、計上したのれんは償却期間を20年とした定額法によって毎年償却します。国際会計基準で会計処理を行っているときは、のれんの価値が著しく低下した際に減損処理を行います。

日本の会計基準で仕訳をするとき、500万円ののれんを償却する場合の仕訳は以下のとおりです。

借方貸方摘要
のれん償却500,000円のれん500,000円のれん(500万円)を10年間の定額償却1年目
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吸収合併の仕訳をする際の注意点

吸収合併の仕訳は複雑で難易度が高いため、よくわからないときは専門家に相談しながら進めることも必要になるでしょう。吸収合併での仕訳では、まず取得企業か被取得企業であるかを確かめなければなりません。取得会社が消滅し、被取得会社が存続する逆取得のケースにも注意が必要です。

複雑な吸収合併の仕訳を専門家に依頼する際は、できる限り経験豊富な専門家を選ぶようにしましょう。特定の専門家がいる場合にも、合併の仕訳が適切に行われるとは限らないため、セカンドオピニオンとして税理士・会計士や、実績の高いM&A仲介会社を利用する方法もおすすめです。

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まとめ

吸収合併は存続会社が取得企業、消滅会社が被取得企業となることが一般的ですが、株式を交付した企業が被取得企業となる逆取得が発生するケースもあるため注意が必要です。通常取得と逆取得は、会計処理が異なります。

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