原則的評価方式で非上場株式を評価する!評価方法を詳しく解説

2023年6月14日

原則的評価方式で非上場株式を評価する!評価方法を詳しく解説

このページのまとめ

  • 原則的評価方式とは、非上場株式の価値を評価する際に使う方法
  • 原則的評価方式は、会社規模(大会社・中会社・小会社)によって評価方法が異なる
  • 大会社は類似業種比準方式、小会社は純資産価額方式が原則
  • 開業から3年未満の会社など、会社規模にかかわらず算定するケースもある

株式を取得する際に、「原則的評価方式とは何?」と気になっている方もいるのではないでしょうか。同族株主が相続や贈与で非上場株式を取得する場合、原則的評価方式を用いることが一般的です。

本コラムでは、原則的評価方式の概要や、具体的な評価方法について解説します。大会社・中会社・小会社をどのように区分するかも説明しているため、ぜひ参考にしてください。

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原則的評価方式とは

原則的評価方式とは、株式の価値を評価する際に使う方法のひとつです。非上場株式には上場株式とは異なり取引相場がないため、株式の価値を評価する際に原則的評価方式を使うことがあります。

ここから、上場株式と非上場株式の違いや、原則的評価方式を使う具体的なケースについて確認していきましょう。

上場株式と非上場株式の違い

上場株式とは、証券取引所で取引されている株式のことです。企業が株式市場に上場するには、証券取引所に申請し、上場審査を通過しなければなりません。

東京証券取引所のプライム市場の場合、審査の基準は株式の流動性や企業の財政状態・収益力、企業の継続性などです。基本的に、上場した株式は不特定多数の個人が売買できます。

一方、非上場株式は証券取引所に上場していない株式のことです。上場株式と異なり、非上場株式は市場で不特定多数の投資家が取引する機会がありません。

原則的評価方式を使う具体的なケース

相続や贈与で非上場株式を取得し、原則的評価方式を使うのは、主に取得者(株主)が「同族株主」に該当するケースです。

国税庁によると、同族株主とは、株主の1人およびその同族関係者の有する議決権の合計数が対象会社の議決権総数の30%以上のときの、株主およびその同族関係者を指します。

なお、株主の1人およびその同族関係者の有する議決権の合計数が最も多いグループの有する議決権の合計数が50%超である場合には、議決権総数の50%超のときの株主およびその同族関係者が同族株主に該当します。

参照元:国税庁「同族株主の判定」

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原則的評価方式での評価方法の違い

原則的評価方式を用いる際の評価方法は、会社の規模によって異なる点に注意が必要です。会社の規模は大会社・中会社・小会社の3つに分かれており、従業員数・業種・純資産価額・取引金額から総合的に判断されます。

それぞれ該当するケースを確認していきましょう。

大会社に該当するケース

従業員数が70人以上の会社は、大会社です。また、従業員数が35人以上70人未満で、総資産価額(帳簿価額)と取引金額のいずれかが以下にあてはまる場合も、大会社に該当します。

業種総資産価額取引金額(直前期末以前1年間)
卸売業20億円以上30 億円以上
小売・サービス業15億円以上20 億円以上
卸売業、小売・サービス業以外15億円以上15 億円以上

たとえば、従業員数37人で小売・サービス業を営み、総資産価額が21億円の会社は大会社です。

中会社に該当するケース

従業員数が5人超70人以下で、総資産価額と取引金額のいずれかが以下にあてはまる会社(大会社除く)は、中会社です。

業種総資産価額取引金額(直前期末以前1年間)
卸売業7,000万円以上2億円以上30億円未満
小売・サービス業4,000万円以上6,000万円以上20億円未満
卸売業、小売・サービス業以外5,000万円以上8,000万円以上15億円未満

たとえば、従業員数33人で卸売業を営み、取引金額が20億円の会社は中会社に該当します。

小会社に該当するケース

従業員数70人以下で、総資産価額と取引金額のどちらも下記条件を満たす会社が小会社です。

業種総資産価額取引金額(直前期末以前1年間)
卸売業7,000万円未満2億円未満
小売・サービス業4,000万円未満6,000万円未満
卸売業、小売・サービス業以外5,000万円未満8,000万円未満

たとえば、従業員数13人で製造業(卸売業・小売サービス業以外)を営み、総資産金額が3,000万円かつ取引金額4,000万円の会社は、小会社に該当します。

なお、従業員数が5人以下であれば、総資産価額・取引金額に関係なく小会社です。

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会社規模による評価方法

国税庁によると、原則的評価方式では、会社規模(大会社・中会社・小会社)によって以下のように使い分けることが原則です。

  • 大会社は類似業種比準方式が原則
  • 小会社は純資産価額方式が原則
  • 中会社は類似業種比準方式と純資産価額方式を併用

各評価方法について、詳しく解説します。

参照元:国税庁「No.4638 取引相場のない株式の評価」

大会社は類似業種比準方式が原則

大会社の場合、類似業種比準方式で評価することが原則です。類似業種比準方式とは、類似業種の株価に基づき、対象会社の一株あたり配当金額・利益金額・純資産価額を比較して計算する評価方式を指します。

2017年の税制改正で、配当金額・利益金額・純資産価額の比重が1:1:1となりました。類似業種比準方式の具体的な計算式は以下のとおりです。

類似業種の株価 × (評価会社の1株当たりの配当金額/類似業種の1株当たりの配当金額類+似業種の1株当たりの利益金額/評価会社の1株当たりの利益金額+評価会社の1株当たりの純資産価額/類似業種の1株当たりの純資産価額)× 0.7

計算に必要な類似業種の業種目や業種目別株価などは、国税庁のホームページから確認できます。

参照元:国税庁「財産評価関係 個別通達目次」

小会社は純資産価額方式が原則

小会社の場合、原則として純資産価額方式で評価します。純資産価額方式とは、会社が解散した場合の価値に着目した評価方法です。

純資産価額方式では、貸借対照表に記載された会社の総資産や負債を相続税の評価額に洗い替えします。洗い替え後の総資産価額から負債や評価差額に対する法人税額等相当額を差し引いた金額が、その会社の評価額です。

中会社は類似業種比準方式と純資産価額方式を併用

中会社の場合、大会社の評価方法(類似業種比準方式)と中会社の評価方法(純資産価額方式)をあわせて評価します。

評価する際の類似業種比準方式と純資産価額方式の比率は、中会社の規模(純資産額と取引額)によって異なる点がポイントです。

類似業種比準方式を用いる比率は、以下の図表から判断できます。図表で該当する純資産額と取引額をそれぞれチェックし、該当する大きい方の数字が類似業種比準方式の比率です。

業種総資産価額(帳簿価額)及び従業員数に応ずる割合
卸売業7,000 万円以上(従業員数が5人以下の会社を除く。)2億円以上(従業員数が20人以下の会社を除く。)4億円以上(従業員数が35人以下の会社を除く。)
小売・サービス業4,000万円以上(従業員数が5人以下の会社を除く。)2億5,000万円以上(従業員数が20人以下の会社を除く。)5億円以上(従業員数が35人以下の会社を除く。)
卸売業、小売・サービス業以外5,000万円以上(従業員数が5人以下の会社を除く。)2億5,000万円以上(従業員数が20人以下の会社を除く。)5億円以上(従業員数が35人以下の会社を除く。)
割合0.600.750.90
業種直前期末以前1年間における取引金額に応ずる割合
卸売業2億円以上3億5,000万円未満3億5,000万円以上7億円未満7億円以上30億円未満
小売・サービス業6,000 万円以上2億5,000万円未満2億5,000万円以上5億円未満5億円以上20億円未満
卸売業、小売・サービス業以外8,000 万円以上2億円未満2億円以上4億円未満4億円以上15億円未満
割合0.600.750.90

なお、類似業種比準方式で用いる比率を「L(の割合)」と呼ぶことがあります。中会社を評価する際に、純資産価額方式を用いる比率は、「1-L」です。

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会社規模にかかわらず算定する方法

条件次第で、会社規模に関係なく算定するケースがあります。主な例は以下のとおりです。

  • 規模関係なく純資産価額方式を用いる場合
  • 特例的評価方式(配当還元方式)を用いる場合

それぞれ詳しく解説します。

規模関係なく純資産価額方式を用いる場合

同族株主が相続や贈与で非上場株式を取得しても、対象の会社が特定の評価会社に該当する場合は原則として純資産価額方式で計算しなければなりません。該当する株式は、主に以下のとおりです。

  • 直前期末に配当金額・利益金額・純資産価額のいずれか2つが0で、直前々期末も2つ以上が0の会社の株式
  • 株式等保有特定会社の株式
  • 土地保有特定会社の株式
  • 課税時期に開業後3年未満の会社や、直前期末の配当金額・利益金額・純資産価額がすべて0の会社の株式
  • 開業前・休業中の会社の株式

株式等保有特定会社や土地保有特定会社とは、それぞれ株式や土地が一定割合以上ある会社のことです。

なお、清算中の会社の株式は、清算分配見込額(清算の結果分配を受ける見込みの金額のこと)で評価します。

特例的評価方式(配当還元方式)を用いる場合

同族株主以外の株主が取得した株式は、会社規模に関係なく、特例的評価方式(配当還元方式)を用いて評価します。配当還元方式とは、対象株式を所有して受け取る年間配当金額を10%で還元して株式の価額を評価する方法です。

配当還元方式を用いる場合、以下の計算式で1株あたりの配当還元価額を算出できます。

(年間配当金額 / 10%) × (1株あたりの資本金額/50円)

年間配当金額は直前期、直前々期の配当金額を平均した金額です。たとえば、直前期配当金額が250円、直前々期配当金額が350円、1株あたりの資本金額が600円の場合、計算式にあてはめれば1株あたりの配当還元価額を36,000円と計算できます。

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原則的評価方式で評価する際の流れ

同族株主が非上場株式を相続や贈与で取得してから、原則的評価方式で評価するまでの流れは、主に以下のとおりです。

  1. 会社の規模を確認
  2. 特定会社どうかを判定

具体的に何をするのかを詳しく解説します。

1. 会社の規模を確認

従業員数・業種・純資産価額・取引金額から、対象会社の規模を確認しましょう。まず従業員数をチェックして、70人以上いれば大会社、5人以下であれば小会社と判断できます。

従業員数が5人超70人未満であれば、該当する業種(卸売業・小売サービス業・その他)に対応する純資産価額や取引金額から会社の規模を確認しましょう。

2. 特定会社に該当しなければ計算

特定会社に該当しなければ、具体的な金額を計算できます。特定会社かどうかを判定する流れと、実際に計算する際の流れを確認していきましょう。

配当・利益・純資産や株式と土地の保有割合を計算

対象会社の配当・利益・純資産などを確認して、特定会社に該当しないかチェックしましょう。たとえば、直前期末に配当金額・利益金額・純資産価額のいずれか2つが0で、直前々期末も2つ以上が0の会社の場合、原則的評価方式は使えません。

また、株式が純資産に占める割合が50%以上、もしくは土地が占める割合が一定(大会社70%、中会社90%)以上の場合も、原則的評価方式の対象外です。

類似業種比準価額・純資産価額を計算

特定会社に該当しなければ、会社規模に応じた方法で計算します。大会社で使うのは類似業種比準価額方式、小会社で使うのは純資産価額方式です。

中会社は類似業種比準価額・純資産価額を両方用います。規模から、適用する割合を確認しておきましょう。

なお、大会社・中会社・小会社の判定基準や、中会社Lの割合は、国税庁の「評価上の株主の判定及び会社規模の判定の明細書」でも確認できます。

参照元:国税庁「評価上の株主の判定及び会社規模の判定の明細書」

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自社株対策で評価額を下げる方法

取得する株式の評価額が高いほど、後継者に課される税金も高くなります。あえて評価額を下げたい場合には、自社株対策の実施が有効です。

ここから、類似業種比準価額方式と純資産価額方式のそれぞれを用いた場合に、どのようにして評価額を下げるかについて解説します。

類似業種比準価額を引き下げるには?

類似業種比準価額方式を用いる場合、1株あたり配当金額・1株あたり利益金額・1株あたり純資産価額で評価額が左右されます。そのため、利益金額が下がれば、理論上評価額の引き下げが可能です。

利益金額を引き下げるには、主に以下の方法があります。

  • 決算賞与の損金算入
  • 設備投資
  • 不要な固定資産の処分

ただし、安易に利益圧縮を試みると本業に支障をきたすおそれがあるため、慎重な対応が必要です。

純資産価額を引き下げるには?

純資産価額方式は、総資産価額から負債を引いた金額を計算に使うため、評価額が純資産に左右されます。純資産が増えれば評価額が高くなり、減れば評価額は低くなるでしょう。

含み損が生じる資産を購入したり、設備投資したりすると純資産価額が下がります。そのほか、株式数を増やすことも純資産価額方式で評価額を下げる方法のひとつです。

なお、自社株対策は専門的知識を問われるため、専門家に相談することも検討してみてください。

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まとめ

原則的評価方式とは、非上場株式の価値を評価する方法のひとつです。主に、同族株主が相続や贈与で取得した際に用いられます。

原則的評価方式は、原則として会社の規模によって評価方法が異なる点がポイントです。従業員数・業種・純資産額・取引額から規模を判断します。

評価額が高ければ高いほど、株式取得時の税金が上がるため、原則的評価方式を理解しておくことは重要です。事業承継予定がある方は、あらかじめ専門家に相談するとよいでしょう。

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