子会社化のメリット・デメリットを解説!成功のポイントも紹介

2023年6月13日

子会社化のメリット・デメリットを解説!成功のポイントも紹介

このページのまとめ

  • 子会社化とは、株式の取得などによって経営権を得て自社の傘下に組み入れることを指す
  • 子会社化には、節税効果や意思決定の迅速化、リスクヘッジなどのメリットがある
  • 既存の会社の買収と新会社設立が主な方法で、必要な期間や費用は方法によって異なる
  • 親会社と子会社の間で良好な関係を築くことが、子会社化成功のポイントとなる

「子会社化するメリットには何がある?」と疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
子会社化をすると、節税できたりリスクヘッジができたりするなどのメリットがあります。

この記事では、子会社の概要や子会社化するメリット・デメリットなどを紹介。また、子会社化する手順や必要となる期間・費用などについても解説します。

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子会社化とは

「子会社化」とは、自社以外の会社の経営権を得て自社の傘下に組み入れることです。自社が親会社となり、他の会社を支配下に置くようなイメージで捉えればよいでしょう。

2021年実施の「経済産業省企業活動基本調査」によると、国内・海外を問わず子会社を持つ会社の割合は44.7%です。近年は44%強で微増減しており、ほぼ横ばいの状態になっています。1企業当たりの国内の子会社の保有数は4.7社・同海外は8.0社です。製造業は海外の子会社を保有する率が高く、卸売業・小売業は国内の子会社を保有する率が高い傾向があります。ただし卸売業については1企業当たりの海外の子会社保有数は9.7社で、保有する場合は数が多くなっています。

参照元:
経済産業省「2021年企業活動基本調査確報-2020年度実績-

子会社化をする方法

子会社化をする方法は、子会社となる会社の株式の過半数を保有するか、40%以上の株式を保有しているうえで一定の条件を満たすことの2つです。
株式の半数以上を保有するということは、議決権の過半数を持つということです。つまり経営権を得ることだといえます。
取得する株式が50%に満たないときに子会社化する場合は、子会社の株式を40%以上保有し、子会社の役員構成の過半数以上が親会社の役員や使用人であることなどが条件となります。

子会社化が行われるときは、大きく分けて2つの形があります。もともと存在していた他の会社を買収したりして傘下に取り込む形と、自社の一部門を新しい会社として自社から分離させる形です。既存の会社を子会社化する際は、M&Aによる株式取得の手法をとるのが一般的です。

子会社化する目的

子会社化する主な目的としては次の2点が挙げられます。

  • 事業ごとの責任の明確化と効率化
  • 事業を多角化することによる相乗効果

まず1つ目の目的として、事業ごとの責任を明確化・効率化することが挙げられます。とくに新規に子会社を設立する場合、子会社化は事業の分散を意味します。事業を分散させることによって事業ごとの責任のありかが明確になり、それぞれが自らの責任を果たすことに集中できるようになります。それにより効率化が進み、全体の業績が向上することが期待できます。

また事業を多角化することによる相乗効果も子会社化の主な目的の一つです。主に他社を傘下に置く場合では、事業の多角化を図るケースも多くあります。そういったケースでは、子会社化によって自社と異なる事業を得ることで、もともとの事業との相乗効果を目的とすることもあります。

関連記事:子会社化とは?実施するメリットやデメリット、関連会社との違いなどを解説

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子会社と関連会社の違い

「関連会社」とは、親会社が議決権の20%以上を所有している会社のことです。そのほか一定の要件を満たしていれば、親会社の所有する議決権が15%以上・20%未満であってもその会社は関連会社とされます。ここでいう「一定の要件」とは、具体的な例を挙げると人事・融資・取引・技術提供などについてです。そのうちのいずれかを満たすと関連会社に該当することになります。

子会社と関連会社は似ていますが、親会社が持つ議決権の割合が異なります。
親会社の議決権の割合が高く親会社に支配されている会社が子会社とすれば、支配ほどではないが親会社から重要な影響を受ける会社が関連会社だと言えるでしょう。

そのほか連結決算の処理については、子会社の場合は連結法が適用されますが、関連会社は持分法が適用されます。その点も両者の違いです。

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子会社の種類

子会社は、大きく分けると次の3つに分けることができます。

  • 完全子会社
  • 連結子会社
  • 非連結子会社

親会社が保有する株式の割合と連結決算の対象となるかどうかで、子会社の種類が分類されます。それぞれの具体的な違いについて、順に見ていきましょう。

完全子会社

「完全子会社」とは、親会社に100%の株式を保有されている会社のことです。すべての株を親会社が保有しているため、経営面において完全に親会社の支配下にあります。ただし、個人や相互会社が株式を所有する場合は完全子会社に該当しません。

少数株主が存在しないため、経営方針の意思決定がスムーズとなり親会社の意向を反映させることができるというメリットがあります。また株式の配当金などが不要になり、経営資源をグループのために集中して使えるのもメリットです。

デメリットとしては、運営コストが2社分になること、赤字になった場合に親会社が補填する必要があることが挙げられます。完全子会社は親会社の連結決算の対象になります。

なお、親会社が複数の完全子会社を持つことはありますが、完全子会社から見た場合、親会社は1社だけです。完全子会社の親会社は「完全親会社」と呼ばれます。

連結子会社

「連結子会社」とは、親会社の連結決算の対象となる子会社です。ほとんどの子会社が連結子会社に該当します。

完全子会社と異なり、連結子会社では株式のすべてを親会社が保有しているわけではありません。そのため、経営の独立性を維持させたい場合、社風や企業風土を尊重したい場合に連結子会社とするのが一般的です。

メリットとしては、意思決定が迅速になることが挙げられます。デメリットとしては、完全子会社に比べると意思の疎通や情報共有が難しくなる点があります。

非連結子会社

「非連結子会社」は、子会社ではあるものの連結決算の対象から除いた会社のことをいいます。

親会社の支配が一時的な場合や、親会社にとって資産・売上の重要性が低い場合などに、連結決算の対象から外すことが可能となります。ただし非連結子会社であっても、親会社の持つ議決権所有比率が20~50%の場合は持分法適用会社とされます。

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子会社化の3つのメリット

子会社化することにはいくつかメリットがあります。具体的には、次の3点が挙げられます。

  • 節税効果がある
  • 経営スピードが上がる
  • リスクヘッジになる

以下、それぞれのメリットについて解説していきます。

節税効果がある

まず子会社化のメリットとして節税効果がある点が挙げられます。節税効果があるということは、会社からすれば出費を抑えることができるということです。

節税できる税金は何種類かあります。次の点で節税が可能となります。

  • 法人事業税の節税
  • 消費税の節税
  • 経費の計上による節税

まず、子会社化は「法人事業税」の節税につながります。法人事業税は企業のある都道府県に対して支払う税金です。法人事業税は企業の資本金や所得に応じて金額が決まるため、子会社化して資本金や利益を分けることで軽減税率が適用されるケースがあります。
ただし自治体によって条件などが異なるので注意が必要です。

また「消費税」も節税できます。子会社を設立すると、その後2年間は子会社の納税義務が免除されます。ただし子会社の資本金や親会社の売上高の金額によっては免除されない場合があるので注意してください。

さらに子会社化は経費をより多く計上することができ、その分を節税につなげることが可能です。たとえば交際費には計上できる上限額がありますが、子会社化して2つの会社にすることで
交際費の上限が2社分を合わせた金額になります。また子会社設立に伴って親会社から役員や従業員が転籍する場合、親会社の退職金を経費として計上できます。

経営スピードが上がる

子会社化には、経営スピードが上がるというメリットもあります。経営スピードが上がると、意思決定が早まり市場の変化への対応などがスムーズになります。それによってビジネスチャンスをつかみやすくなるでしょう。

企業の規模が大きいと、経営陣による意思決定に時間がかかってしまいます。しかし特定の事業を子会社に振り分ければ、その事業の意思決定のスピードを早くすることができます。とくに完全子会社の場合は親会社が100%の議決権を持っており、ほかの株主への対応が不要です。そのため経営のスピードアップが可能になるだけではなく、方針のブレや妥協なしに経営を進めることができます。

リスクヘッジになる

さらに子会社化することがリスクヘッジにもつながります。不測の事態の損失を小さく抑えられるほか、事業の多角化によって収入源を分散させることが期待できます。

子会社化した場合、親会社・子会社どちらかが業務停止などの処分を受けたとしても、処分を受けていない方の会社は業務を続けることができます。また不祥事などによる信用失墜が起こってしまったとしても、問題を起こしていない方は悪影響をある程度抑えることができます。

また異なる事業を展開することで、グループ全体の事業の多角化につながります。事業を多角化すると、1つの事業に売上を依存することなく収入源を分散させることが可能です。環境の変化があったときなどのリスクヘッジになります。

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子会社化の2つのデメリット

子会社化にはデメリットもあります。メリットとデメリットの両方を比較して、子会社化を行うかどうかを総合的に判断することが重要です。
デメリットとしては次の2点が挙げられます。

  • 手間がかかる
  • 損益通算ができない

それぞれについて確認します。

手間がかかる

まず、子会社化の結果として手間がかかるようになることが挙げられます。企業活動を続けていくうえでの負担が増えてしまうということです。

とくに既存の会社をM&Aなどで子会社化する場合は、社員が増えることとなり人事や経理など事務作業の量も多くなります。

さらに子会社ができれば、親会社と子会社とで別々に確定申告を行う必要があります。さらに連結決算は親会社の業務となります。そのほか子会社の業績評価を行う必要があります。業績評価のためには営業利益やキャッシュフローを把握しなくてはなりません。加えて、必要に応じて経営面でフォローすることも求められます。子会社が上場している「親子上場」の場合、株価動向や対策なども必要です。

さらに子会社化に伴う手続きなども負担となります。やむを得ないことではありますが、子会社化が完了するまでは業務量が増えてしまいます。

子会社化を実施する前に、そもそも子会社化にメリットがあるのかを検証しておくことが大切です。子会社化すること自体に必要となる手間や費用、子会社化してから継続していく手間や費用の両方を算出し、費用対効果や労力に見合うかどうかを確認しましょう。

損益通算ができない

完全子会社を除き、子会社は納税金額を計算するときに損益通算ができないのもデメリットです。損益通算とは、赤字所得を黒字所得から差し引いて相殺することです。それにより節税することが可能となります。

しかし完全子会社以外の子会社の場合、親会社とは別個の会社と扱われるため親会社・子会社の両方に黒字分相当の法人税がかかります。親会社・子会社のどちらかが赤字だったとしても相殺できないため、グループ全体での節税ができなくなってしまいます。

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子会社化するまでにかかる期間

子会社化するまでにかかる期間は、子会社化する方法によって違いがあります。

新たに子会社を設立する場合は、子会社が株式会社なのか合同会社なのかで必要となる期間が異なります。株式会社を設立する場合は、必要な期間は最低1ヶ月程度です。合同会社の場合はそれより短く、1週間程度あれば設立することができます。

既存の会社を子会社化する場合はケースバイケースです。条件に合う企業が見つかるかどうか、交渉がスムーズに進むかどうかなどによってさまざまです。場合によっては長期化することもあります。基本的に、設立に比べるとまとまった時間がかかります。これは必要な手続きが多いためです。

買収などによって既存の会社を子会社化する場合、子会社となる会社が上場企業なら比較的スムーズです。お互いの合意ができれば短期間で子会社することも可能です。
それに対して非上場会社の場合は、上場企業より時間がかかる傾向があります。証券市場を通じて株式を取得することができない、売買に譲渡制限があることが多いといった理由によります。買収などにより子会社化する場合は、3~12ヶ月程度が目安と考えればよいでしょう。

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子会社化にかかる費用の目安

子会社化にかかる費用も、期間と同様にどのような形で行うかによって大きく異なります。

新しく子会社を設立する場合、登記の費用が必要です。株式会社の場合で20万円以上、合同会社で6万円以上かかります。さらに実際には弁護士や税理士、司法書士などに手続きを依頼することがほとんどです。そのための顧問費用がさらにかかります。

既存企業を子会社化する場合は交渉次第で金額が変わりますが、基本的に設立する場合よりも高額となります。「M&Aは時間を買うこと」とよくいわれます。すでに企業として成立している会社を取得するので、新たに設立して会社を育てていくよりも時間がかかりません。しかし代わりに時間の対価として費用が必要です。

株式取得の費用は、相手企業の価値や交渉結果によって決まります。
また、M&Aを仲介会社にサポートしてもらう場合は株式費用に加えて仲介会社に支払う手数料が必要です。手数料はいくつかの項目に分かれます。項目の1つで金額が大きい「成功報酬」は、買取価格が5億円以下なら買取価格の5%です(手数料は仲介会社による)。
成功報酬以外の料金設定をしている仲介会社もあり、プラス数百万円が必要となることもあります。月額報酬を設定している仲介会社の場合、子会社化が長期化するほど費用がかさむでしょう。

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子会社化を成功させるための2つのポイント

子会社化を成功させるためには、大きく次の2点がポイントとなります。

  • 親会社と子会社間で良好な関係を築く
  • 正確なデューデリジェンスを実施する

詳しく解説します。

親会社と子会社間で良好な関係を築く

子会社化の成功のためには、親会社と子会社との間で良好な関係を築くことが大切です。敵対する関係にあると、意思決定や情報のやり取りがスムーズに進みません。その結果、効果的な相乗効果を生むことができなくなってしまいます。
親会社と子会社とが協力し合える体制作り・雰囲気作りが大切です。

正確なデューデリジェンスを実施する

株式取得など既存の会社を子会社化する場合は、デューデリジェンスが重要です。デューデリジェンスとは、前もって相手の企業のリスクや価値を調査しておくことです。
財政状態・税務状況などの確認を行い、子会社化がメリットとなるか、マイナスの影響にならないかを検証しておきます。それによって成功の確率を高めることができます。

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まとめ

子会社化は他の会社を自社の支配下に置くことです。節税効果が得られる、経営スピードが上がる、リスクヘッジになるといったメリットがあります。
方法としては、自社の事業を子会社として分離する方法と、既存の企業を買収するなどの方法があります。いずれの方法も、親会社と子会社との間で良好な関係を築くことが必要です。メリットよりもデメリットやリスクの方が大きくないか、あらかじめよく調査・検討して総合的に子会社化するかどうかを判断しましょう。

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