このページのまとめ
- クロージングとは、最終契約書に基づいて手続きを行い、M&Aを完了させること
- クロージングは、M&Aが法的に有効であることを証明するために必要
- クロージングでは書類の準備や煩雑な手続きが必要であり、専門家に依頼することが大切
M&Aにおいて、クロージングは非常に重要な役割を果たします。クロージングは、最終契約に基づいて、経営権の移転や対価の支払いといった必要な手続きを行うことです。クロージングが完了してはじめてM&Aが完了します。M&Aを行ううえで、クロージングへの理解は必須です。
クロージングを実施するためには、M&Aのスキームごとにさまざまな書類を準備したり、複雑な手続きを行ったりする必要があります。本コラムは、M&Aを検討している方に向けて、クロージングの重要性や期間、必要な手続きや用意すべき書類、クロージングの注意点などを解説します。
目次
M&Aにおけるクロージングとは?重要性と期間
M&Aにおけるクロージングとは、最終契約書に基づいて最終的な手続きを行い、M&Aを完了させることです。経営権の移転や対価の支払いを完了させ、会社や事業を引き渡すためにさまざまな実務を行います。
M&Aに向けたプロセスは重要ですが、最終契約書を締結して終わりではありません。M&Aの目的を果たすためには、クロージングが必要です。
ここでは、M&Aにおけるクロージングの重要性とクロージングに要する期間について解説します。
M&Aにおけるクロージングの重要性
クロージングは、M&Aの有効性を法的に証明するために欠かせない、重要なプロセスです。
クロージングで行う実務は多岐にわたります。たとえば、株式譲渡の場合なら、株式を譲渡することにより、譲渡企業の経営者から譲受企業に経営権が移転されます。その対価として、譲受企業は株式代金を支払う仕組みです。これらの手続きは会社法などの法律に基づいて厳正に行われ、クロージングが完了してはじめて、正式に経営権が移転され、M&A成約となります。
つまり、最終契約を締結するのみでは、M&Aの目的は果たせません。クロージングは、M&Aを成立させ、その有効性を第三者に証明するために欠かせないプロセスと言えます。
クロージングの手続きに抜け漏れや不適格な要素があった場合、M&Aの有効性を法的に証明できません。複数のM&Aが同時に行われるなど、取引が複雑になると必要書類や手続きも複雑になるため、各手続きを履行して法律要件を充足する必要があります。
クロージングにかかる期間は1ヶ月~1年
クロージングでは煩雑な手続きが必要になるため、一朝一夕では完了しません。クロージングにかかる期間は、M&Aの手法や引き渡す資産などによって異なります。
一般的には、1ヶ月~1年ほどの期間が必要です。場合によっては、1年以上かかることもあります。
クロージングの手続きは法律に基づいて進める必要があり、M&Aのケースによってやるべき手続きが大きく異なります。決して簡単なプロセスではないため、専門家によるサポートを受けることがおすすめです。
M&Aにおける契約からクロージングまでの流れ
クロージングについて理解するうえで、M&Aの開始からクロージングに至るまでの取引全体の流れを理解することが大切です。
M&Aを実行するためには、譲渡企業・譲受企業ともに複数のプロセスを経る必要がありますが、大きな流れとして以下の3つに分けることができます。
- M&Aを検討する
- 専門業者と契約し、交渉相手を選定する
- 最終契約を締結する
それぞれのステップについて詳しく解説します。
1.M&Aを検討する
まずは、M&Aを実行するか否か、実行する場合の戦略などを検討します。M&Aをスムーズに実行するために必要な、準備段階です。
M&Aを成功させるためには、譲渡企業・譲受企業ともに、M&A戦略を立てることが欠かせません。M&A戦略は、自社の状況や市場動向、将来性などを分析して策定します。
次に、M&A戦略に基づいて、以下のような点について検討しましょう。
譲渡企業
- M&Aの実施により達成したい目的
- 目的達成のために、売却がベストな選択肢であるか
- 会社全体を売却するのか、一部の事業を売却するのか
- 希望金額、売却のタイミング
- M&Aを進めるにあたって問題になりそうな論点があるか(財務・法務・税務リスクなど)
- 譲渡後の役員や従業員の待遇
- 譲渡後の商号や取引先との取引関係の維持 など
譲受企業
- M&Aの実施により達成したい目的
- 目的達成のために、買収がベストな選択肢であるか
- M&Aによってどのような経営資源を得たいのか
- M&Aの予算
- 買収したい企業のエリア、規模、業種といった条件
- M&A後にどのように自社と統合するのか など
2.専門業者と契約し、交渉相手を選定する
M&Aの実施を決めたら、専門業者と契約し、いよいよ交渉相手を探すフェーズに入ります。
専門家を介さない直接交渉では、契約や手続きに不備が生じたり、情報漏えいが発生したりと、さまざまなリスクが考えられます。M&Aに精通している人物が自社にいない場合は、専門家に支援を依頼することがおすすめです。
M&Aは、専門家にサポートしてもらうと円滑に進めやすくなります。M&Aでは、相手の選定や交渉、契約、クロージングなど、多くの手続きを行います。いずれも専門的な知識が必要であるため、専門家からのサポートが重要です。
信頼できるM&A専門業者を選定したのち、専門業者と委託契約を締結しましょう。契約締結後、交渉相手探しが始まります。
譲渡企業においては、買い手候補に提示できるよう、専門業者がノンネームシートとIMを作成します。ノンネームシートとは、譲渡企業が特定されない形で、企業の概要をまとめた書類のことです。
また、IMとは「Information Memorandum」の略で、譲渡企業の事業内容や財務内容、組織体制、M&Aの希望条件といった詳細な情報をまとめたものです。IMは重要な機密情報であるため、買い手候補に提示する際は、秘密保持契約が締結されます。
譲受企業においては、専門業者と相談して買収先の条件を絞り込みましょう。専門業者が条件に当てはまる案件を紹介し、ノンネームシートやIMの情報をもとに、M&Aをどのように進めるのかを検討します。
3.最終契約を締結する
譲渡企業・譲受企業の経営者が対面するトップ面談を経て、譲受企業が本格的に交渉を進めると判断した場合は、意向表明書を提出します。意向表明書は、譲り受けの意思を示す書面で、法的拘束力はないものの、本格的な交渉に移るという意思表示です。
その後、双方が本格的なM&Aの交渉を進める意思をある程度固めた段階で、通常は法的拘束力のない基本合意書(LOI:Letter of Intent)を締結します。
基本合意書を締結後、最終契約締結の前に実施されるのがデューデリジェンス(対象事業や経営実態の調査)です。デューデリジェンスでは、譲受企業が専門家を派遣し、譲渡企業の企業価値やM&Aのリスクなどを、さまざまな観点から徹底的に調査します。
デューデリジェンスには、以下のような種類があります。
- 財務デューデリジェンス:財務諸表や過去の業績推移、簿外債務、キャッシュフロー、会計方針などの財務面を調査する
- 税務デューデリジェンス:法人税の未払いや債務超過などの税務リスクを調査する
- 法務デューデリジェンス:当該M&A取引に影響を与える法的問題点の有無を調査する
- 労務デューデリジェンス:残業代の未払いや労使トラブル、就業規則の内容や社会保険の適用状況など、労務面を調査する
- ビジネスデューデリジェンス:営業戦略やマーケティング、シナジー効果、統合によって起こりうるリスクなどのビジネス面を分析する
デューデリジェンスによって致命的な問題が発覚した場合は、取引内容が変更される可能性もあります。
デューデリジェンスにおいて抽出されたリスクへの対応などの交渉の結果を、具体的に買収契約書に明文化し、最終契約締結に至ります。
関連記事:M&Aの流れ・フローをわかりやすく解説!手続きの進め方や検討事項も紹介
4つのパターン別│M&Aにおけるクロージング
クロージングの進め方や必要な手続きは、M&Aの手法によって異なります。たとえば、M&Aでよく用いられる手法である株式譲渡では、クロージングにかかる時間が比較的短く済むことが多いです。一方、事業譲渡では、特別決議の実施や当事者から個別に合意を得たりするプロセスが必要であり、その分時間や手間がかかります。
- 株式譲渡
- 事業譲渡
- 合併・会社分割
- 第三者割当増資
ここでは、上記4パターンのM&Aの手法の特徴と、クロージングの進め方や手続きについて解説します。
1.株式譲渡
株式譲渡とは、譲渡企業が譲受企業に株式を譲渡し、譲受企業が対価として株式代金を支払うことで、経営権を移転させる手法です。株式譲渡は多くのM&Aで用いられる代表的なスキームであり、ほかの手法に比べると手続きが比較的簡単という特徴があります。
株式譲渡でM&Aを実行する際の、クロージングの進め方・手続きは以下のとおりです。
- 譲渡企業が株式と株式名簿といった必要書類を譲受企業に引き渡す
- 譲受企業が株式の対価として株式代金を支払う
- 株主名簿の書き換えを行う
- 譲渡企業の実印や通帳、そのほかの書類を譲受企業に引き渡す
- 譲受企業がクロージング日に臨時株主総会を開催する
株式譲渡のクロージングは、必要書類の準備に時間がかかるものの、比較的短時間で完了することが多いです。中小企業のM&Aでは、1〜3日程度でクロージングが完了するケースも多く見られます。
2.事業譲渡
事業譲渡とは、会社まるごとではなく、譲渡企業の事業や資産の一部を譲渡し、譲受企業が対価を支払う手法です。株式譲渡に次いでよく見られます。譲渡する事業を選べるのが特徴で、株式譲渡のクロージングよりも煩雑な手続きが必要になることが多いです。
事業譲渡でM&Aを実行する際の、クロージングの進め方・手続きは以下のとおりです。
- 特別決議を実施する
- 資産や契約の当事者の合意を個別に得る
事業譲渡では、譲渡企業については事業の全部、あるいは重要な事業の一部を譲渡する場合、譲受企業については事業の全部を譲受する場合に、特別決議を実施する必要があります。
さらに、資産や契約の当事者から、個別に合意を得る必要があり、クロージングに時間がかかる場合が多いです。
3.合併、会社分割
合併は、複数の会社を1つの法人格としてまとめる手法、会社分割は権利義務の一部もしくは全部を別会社に移転させる手法です。
合併と会社分割は、それぞれ以下の種類に分けられます。
合併
- 新設合併:会社を新設し、既存の法人格を消滅させ、新設会社にすべての権利義務を承継させる
- 吸収合併:権利義務を承継させる会社以外の法人格を消滅させ、残った1社にすべての権利義務を承継させる
会社分割
- 新設分割:会社を新設し、権利義務を承継させる
- 吸収分割:既存の会社に権利義務を承継させる
合併や会社分割でM&Aを実行する際の、クロージングの進め方・手続きは以下のとおりです。
- 特別決議を実施する
- 債権者保護手続きを行う
合併や会社分割では、会社のあり方が変化するため、特別決議が必要です。さらに、債権者を保護するための手続きも欠かせません。債権者保護手続きでは、債権者に対して1ヶ月間の異議申し立て期間を設ける必要があるため、クロージングには時間がかかります。
4.第三者割当増資
第三者割当増資とは、会社が特定の第三者に新株を発行し、株式を引き受けてもらう手法です。資金調達を目的に実施されます。
第三者割当増資でM&Aを実行する際の、クロージングの進め方・手続きは以下のとおりです。
- 特別決議を実施する(株式譲渡に制限をかけている、あるいは株価と適正価格が大きく乖離している場合)
- 譲渡企業の取締役会決議を得て新株を発行する
- 株式を引き受ける第三者から株式代金を受け取る
第三者割当増資では、株式数が増加し、株主構成が変化します。上場企業が第三者割当増資を実施する場合は、既存株主の利益を保護しなければなりません。
上場していない中小企業の場合も、株式譲渡に制限をかけている、あるいは株価と適正価格が大きく乖離している場合は、特別決議を実施する必要があります。ほとんどの中小企業が株式譲渡に制限をかけているため、第三者割当増資のクロージングでは特別決議の実施が必要、と理解しておきましょう。
M&Aの重要ポイント「クロージング条件」とは
クロージング条件とは、M&Aを実行するうえで譲れない条件のことです。クロージング条件をどのように定めるかは、案件ごとに異なります。譲渡企業と譲受企業の間で合意した最終契約書によって定められます。
ここでは、クロージング条件がなぜ重要なのか、クロージング条件の例やクロージング条件を定める際の注意点について解説します。
クロージング条件が重要視される理由
クロージング条件は、M&Aを成立させる前提となる条件です。譲渡企業と譲受企業の双方が譲れない条件として定めたものであるため、クロージング条件に沿わないと、M&Aの目的が果たせなくなってしまいます。クロージング条件を1つでも満たせなかった場合、M&Aの成立が延期されたり、最終契約が解除されたりするリスクもあるのです。
このように、クロージング条件はM&Aを成立させるために非常に重要なポイントです。
クロージング条件の代表例
クロージング条件の代表例は、MAC条項とキーマン条項です。
「MAC条項」とは、Material Adverse Change(重大な悪影響)に関する条項のことです。最終契約締結からクロージングまでに、M&Aの成立にかかわる重大な悪影響が発生した場合の措置について定めます。
譲渡企業が不祥事を起こしたり、譲渡企業の大口取引先が倒産したりといった事態が発生する可能性はゼロではありません。その際に、契約解除や条件の変更などが行えるよう、MAC条項を規定します。
「キーマン条項」とは、譲渡企業のオーナーや重要な役員といった事業運営の中核を担う人材を、M&A実施後に一定期間在籍させることに関する取り決めです。ロックアップとも呼ばれます。
重要な人材が抜けてしまうと、M&A実施後にスムーズに事業を運営できなくなる可能性があります。
キーマン条項を定め、重要人物を一定期間在籍させて事業の引き継ぎを行うことで、譲受企業に発生しうる損失を回避できます。
クロージング条件を決定する際の注意点
クロージング条件は、譲渡企業や譲受企業が決めるものですが、なんでも自由に定めてよいというわけではありません。クロージング条件は、M&Aの成立を左右する重要な前提条件です。そのため、重大な事項について定め、具体的かつ客観的に理解できる条件にする必要があります。
双方が納得できる条件を定めなければ、トラブルにつながる可能性があります。また、条件を具体的に定めなければ、どのような状況なら条件を満たしていると言えるのかがわかりません。譲受企業が「条件を満たしていない」と一方的に主張し、M&Aが成立しなくなってしまうという事態も考えられます。
トラブルを防ぐためにも、クロージング条件は重要な事項についてのみ定め、具体的かつ客観的な内容にすることが必要です。
M&Aのクロージング後に欠かせない「PMI」とは
クロージングと同様に欠かせないのが、PMIです。PMIは、「Post Merger Integration」の略で、M&A成立後の経営統合プロセスのことを指します。
M&Aの成立はゴールではなく、あくまでもスタートです。M&A後のリスクを取り除き、高い成果をあげるためには、PMIが欠かせません。クロージングがM&Aの成立を左右する重要なプロセスであるのに対し、PMIはM&Aを成功に導くための重要なプロセスと言えます。
ここでは、PMIで実施する内容と、PMIを達成させるためのポイントについて解説します。
PMIの内容
PMIで実施する内容は、ケースごとにさまざまです。以下では、クロージングまでに行うPMIと、クロージング後に行うPMIに分けて、代表的な内容を解説します。
クロージングまでに行うPMIとしては、統合に関する方針を固めることが挙げられます。統合方針は以下の3つに分類され、どのパターンを選ぶかを決めておきましょう。
- 連邦型統合:譲渡企業を子会社として存続させ、子会社の経営の自主性を維持する
- 支配型統合:譲渡企業を子会社として存続させ、譲受企業が積極的に経営に関与する
- 吸収型統合:譲渡企業を吸収し、同一法人とする
クロージング後は、円滑に統合してM&A実施によるリスクを取り除き、シナジー効果を発揮してM&Aの成果を高められるよう、PMIを実施します。譲渡企業と譲受企業それぞれから人材を選定し、PMIの専門チームを組む場合も多いです。
優先して取り組むべき課題については「ライティング・プラン」として計画をまとめます。具体的には、以下のような事項について見直しを行い、統合のために必要な作業を進めていきます。
- 定款や業務規程、運用ルール
- 財務
- 経営管理
- 役員人事
- 組織体制・人員配置
- 労働条件
- 役割や責任の範囲
PMIを達成させるためのポイント
PMIは、M&Aを成功させるための重要なプロセスであり、実施には多くの時間がかかります。成約から1年ほどかかる場合が多く、長期的に取り組まなければなりません。
十分な時間が割けず、PMIが不十分な状態では、M&A実施前に期待していた成果があげられなかったり、譲渡企業から反発が起こり、人材が次々と流出してしまったりするリスクがあります。
そのため、PMIは余裕を持って進めましょう。なるべく早い段階からPMIについて検討・着手し、計画的に進めていくことが大切です。
M&Aのクロージングに必要な書類
M&Aのクロージングには、譲渡企業・譲受企業ともに多くの書類を用意する必要があります。書類の中には、用意するのに時間がかかるものもあります。必要な書類を理解して前もって準備し、スムーズに進められるようにしましょう。
ここでは、株式譲渡を実施する際に必要な書類を、売り手側と買い手側にわけて紹介します。ただし、実際に必要な書類はM&Aのケースごとに異なるため、専門家に相談することが大切です。
売り手側の必要書類
譲渡企業は、以下のような書類を用意しましょう。
- 株主名簿:株主や持分比率を確認するために必要
- 株式譲渡に関する名義書換の委任状/株主名簿記載事項書換請求書:株主名簿を書き換えるために必要
- 譲渡企業の印鑑証明書:株主名簿を書き換えるために必要
- 株式譲渡承認の議事録:譲渡制限株式会社の場合に必要
- 株式譲渡承認書兼承認通知書:株主総会の特別決議で、株式譲渡の承認を得たことを示す書類
- 株式譲渡代金の領収書:株式の取得対価を受け取ったことを示すための領収書
買い手の必要書類
譲受企業は、以下のような書類を用意しましょう。
- クロージングに関わる書類の受領書:譲渡企業から、クロージングに関わる書類を受け取ったことを示す書類
- 顧問契約書:譲渡企業の経営者と顧問契約を締結する場合に必要
- 譲受企業の印鑑証明書:印鑑が、確かに譲受企業のものであることを証明するために必要
- 譲受企業の登記簿謄本/登記事項証明書:譲受企業の登記事項を証明するために必要
M&Aにおけるクロージングの3つの注意点
クロージングはM&Aにおいて非常に重要なプロセスであり、一定の時間がかかります。クロージングについても考慮したうえでM&Aのスケジュールを立てましょう。クロージングは法律に則って行う必要があり、専門知識が必須です。
ここでは、クロージングを実施する際の注意点を3つ紹介します。
- 余裕のあるスケジュールを組む
- 価格調整を盛り込む
- M&Aの専門家に協力を依頼する
専門家のサポートのもと、確実にクロージングを進めましょう。
1.余裕のあるスケジュールを組む
クロージングには時間がかかるため、余裕のあるスケジュールを組むことが大切です。
M&Aのスキームの中でも、比較的手続きが簡単とされる株式譲渡であっても、必要書類を用意するのにある程度の時間を要します。書類が適切に管理できておらず、想定よりも準備に時間がかかる場合もあるため、注意が必要です。
事業譲渡の場合は、特別決議を実施したり、資産や契約の当事者から個別に合意を得たりしなければならないため、さらに時間がかかります。
クロージングには時間がかかることを理解したうえで、スケジュールを組むことが不可欠です。
譲受企業の都合で、タイトなスケジュールを提案される可能性もあります。「クロージングにかかる時間の見通しが甘く、クロージング日までに必要な準備が終わらなかった」という事態にならないよう、専門家に相談して必要な時間を見積もっておきましょう。
2.価格調整を盛り込む
クロージングでは、価格調整を盛り込むことが重要です。
価格調整とは、M&Aの最終契約締結時の取得価格に、クロージング日までにおける財政状態の変化を反映することを指します。最終契約を締結してからクロージング日までには期間が空くため、その間に譲渡企業の財務状況が大きく変化し、企業価値が変化する可能性があります。
想定外の事態が発生して企業価値が大きく変動する可能性を考慮して、価格調整を盛り込みましょう。
3.M&Aの専門家に協力を依頼する
クロージングを適切に行うためには、M&Aの専門家に協力を依頼することがおすすめです。
クロージングでは煩雑な手続きが必要であり、法律に則って進めていかなければなりません。専門家を介さずに進めると、意図せず法律に違反してしまい、法的に有効なM&Aを実行できなくなるリスクがあるため、注意が必要です。
さらに、当事者だけで手続きを進めると契約内容を客観的にチェックできないことも難点です。一方に不利な条件になっていることに気づかないまま、M&Aが成立してしまう可能性があります。
クロージングをスムーズに進め、適切なM&Aを成立させるために、豊富な専門知識と実績を持つ専門家のサポートを受けましょう。
まとめ
M&Aにおけるクロージングは、最終契約書に基づいて経営権の移転や対価の支払いといった手続きを行い、M&Aを完了させることです。クロージングが完了してはじめて、M&Aが成立します。クロージングに不備があると、そのM&Aが法的に有効であることを証明できません。このように、M&Aにおいてクロージングは非常に重要な役割を果たします。
クロージングでは複雑な手続きが必要であり、専門知識も必要です。クロージングを正しくスムーズに進めるためには、M&Aの専門家に依頼しましょう。
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