M&Aによるシナジー効果とは?種類や分析用のフレームワーク、事例を紹介

2023年5月16日

M&Aによるシナジー効果とは?種類や分析用のフレームワーク、事例を紹介

このページのまとめ

  • M&Aによるシナジー効果とは、事業の発展や利益増が生じること
  • 同業種のM&Aだけでなく、異業種のM&Aでもシナジー効果が生じることがある
  • 丁寧に相手企業を選ぶことで、シナジー効果が生まれやすくなる
  • シナジー効果を考慮して企業価値を算定することもある

「事業が飛躍的に発展するようなM&Aを実施したい」とお考えの方も多いのではないでしょうか。

本コラムでは、M&Aによって期待できるシナジー効果(相乗効果)について説明します。また、シナジー効果が起こる相手企業の選び方、シナジー効果の評価方法、M&Aによってシナジー効果が生じた実例についても具体的に紹介します。

より良いM&Aを実現するためにも、ぜひお役立てください。

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シナジー効果とは?

シナジー効果とは相乗効果のことです。なお、シナジー(synergy)だけで相乗効果という意味がありますが、慣用的に「シナジー効果=相乗効果」と呼ぶこともあります。

相乗効果とは、簡単にいえば1+1が2より大きくなることです。1+1が3にも4にもなることは、相乗効果といえます。

たとえば1人では30kgしか持てない場合でも、3人で協力すれば100kgを持てたとしましょう。この場合は、3人のそれぞれの能力の総和(30kg×3=90kg)よりも大きな力を発揮しているため、シナジー効果が起こったと考えられます。

M&Aによるシナジー効果とは?

M&Aによるシナジー効果とは、M&Aにより複数の企業がかかわることで、それぞれが別個に企業活動をしていたときよりも優れた結果を生み出すことです。

たとえば、年間売上が10億円の企業Aと同20億円の企業Bが合併したとします。細かな設定は割愛しますが、単純計算なら年間30億円の売上が見込まれるところ、40億円もの売上があったとしましょう。M&Aにより好ましいシナジー効果が起こったと考えられます。

なお、シナジー効果には同業種の企業によって生まれるシナジー効果と、異業種によって生まれるシナジー効果があります。同業種か異業種かによって、期待できるシナジーの種類が異なる点に注意しましょう。

シナジーの種類同業種の企業によるシナジー異業種の企業によるシナジー
経営シナジー企業による見込める
生産シナジー見込める見込める
販売シナジー見込める企業による
投資シナジー見込める見込める

経営シナジー

経営シナジーとは、優れた経営戦略を共有できることで生まれる相乗効果です。

M&Aによりさまざまな経営ノウハウを持つ経営者や管理者が集まるため、1社でのみ経営していたときよりも、良い影響を受けることがあります。経営が思わしくなかった企業の経営が軌道に乗ったり、業績改善が見られたりするならば、経営シナジーが生じていると判断できます。

生産シナジー

生産シナジーとは、生産能力が拡大することで生まれる相乗効果です。たとえば生産工場を共有することにより、大規模製造が可能になって利益効率が向上することがあります。

大量に原料を購入することで原価が下がったり、工場の稼働率が上昇して、より多くの製品を生み出せる環境になったりすることもあります。また、物流業務を統合し、在庫管理や輸送にかかる費用削減を実現できることも、生産シナジーの1つです。

販売シナジー

販売シナジーとは、販売経路の拡大や販売ノウハウの共有などによって生まれる相乗効果です。たとえばM&Aにより店舗数が増えることで、ユーザーとの接点が増えて売れやすくなることもあります。

また、企業規模が大きくなることで知名度が向上し、売れやすくなることも販売シナジーです。相手企業が有名なブランドであれば、ブランド力を活かした販売ができ、さらに販売シナジーも起こりやすくなります。

投資シナジー

投資シナジーとは、技術の共有によって投資価値が増大する相乗効果です。たとえば研究開発によって誕生した技術を組み合わせることで、より優れた製品を生み出せたとしましょう。将来的にも利益増を見込めるため、投資価値を向上させる投資シナジーが生じていると考えられます。

また、研究開発部門を統合することで研究開発費を削減し、利益効率を高めることも、投資価値を向上させる投資シナジーです。

バリューチェーンと関連するシナジー

M&Aによって生まれる経営シナジーと生産シナジー、販売シナジー、投資シナジーの4つの効果は、それぞれ単独で生じるとは限りません。たとえばバリューチェーンにおいては、複数の種類の効果をもたらします。

メーカーがM&Aにより協力した場合、従来は扱っていなかったジャンルの異なる商品を提供できるようになるかもしれません。クロスセリングすることで、売上が飛躍的に向上するなら「販売シナジー」が生じていると考えられます。

また、原料を大量購入し、原価を削減するならば、「生産シナジー」が生じるでしょう。他にも、各活動で次のような相乗効果が想定されます

バリューチェーン想定されるシナジー
購買・原価コストの削減・原料調達の効率化
製造・工場稼働率の向上・技術共有による業務の効率化・組織合理化によるコスト削減・内製化による外注費用の削減
物流・在庫管理コストの削減・物流網の拡大
販売・販路の拡大・ブランド力の向上・マーケティングや営業コストの削減

アナジー効果とは?

シナジー効果とは、2つ以上のものがお互いに作用しあうことで起こる相乗効果です。常に良い影響しかありません。

一方、アナジー効果とは、相互に影響することでマイナスの効果が出ることです。たとえば2つの企業が合併したことで、利益効率が下がった、売上が下がったなどのネガティブな影響が見られたときは、アナジー効果が生じていると判断できます。

なお、M&Aを実施した直後は、利益率が低下したり離職率が上がったりなどのネガティブな効果が見られることがあります。これは一時的なものと考えられるため、アナジー効果とは断定しにくいでしょう。しかし時間が経過しても利益率が改善しないとき、売上が低下しているときなどは、アナジー効果の可能性が想定されます。

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M&Aによるシナジー効果を高めるポイント

M&Aには時間だけでなくコストもかかります。そのため、単に1+1=2の結果では、かかわった企業にとってプラスになったとはいえません。

M&Aを実施するときには、シナジー効果が起こりやすいように意識することが必要です。シナジー効果を高めるためのポイントを買収側と売却側に分けて紹介します。

【買収側】関連業種の企業を買収する

最初に紹介したように、異業種のM&Aでもシナジー効果は起こります。しかし、シナジー効果の大きさや起こりやすさを考えるなら、同業種のM&Aのほうが成功しやすいと考えられます。

M&Aによって企業買収を検討している場合は、まずは関連業種で買収企業を探してみましょう。たとえば宅配にも対応しているスーパーなら、同じく宅配可能なスーパーを買収することで、宅配エリアを拡大できます。また倉庫や物流にかかるコストを削減でき、利益率を高められる可能性もあります。

【売却側】強みと課題を整理する

売却する側は、自社の強みを分析しておくことが必要です。強みを把握しているなら、同業種からM&Aの声掛けがあったときだけでなく、異業種からのオファーにも協力できる部分があるのかすぐに判断できるようになります。たとえば、親子二代以上の顧客が多い、染色技術はどこにも引けを取らないなど、強みとなるものはすべて書き出しておきましょう。

また強みだけでなく自社の課題も整理しておくことが大切です。M&Aにおいて、自社の姿を等身大で相手企業に見てもらうことは重要なポイントです。少しでもよく見せたいと誇大アピールをすると、M&A実施後に実際の姿が見えてしまい、相手企業を失望させるだけでなく、損害賠償に発展することもあります。

たとえば販売チャネルが少ない、市外での知名度が低い、遊休資産が多いが活用の目処が立っていないなど、率直に相手企業に伝えましょう。自社にとっての課題が相手企業にとっては利点となる可能性もあります。

【買収側・売却側】企業文化が合うか確認する

買収側・売却側のいずれも、相手企業の企業文化が合うか確認しましょう。企業文化が似ていると、スムーズなM&Aが実現しやすくなります。また、無駄な体力を消耗しないため、シナジー効果も起こりやすいというメリットがあります。

たとえば、事業にスピードを求める企業と、顧客との対話に時間をかけ永続できる関係構築を目指す企業がM&Aを実施したとしましょう。企業のスタンスに差があり、各所でトラブルが生じると想定されます。業務に通常以上の時間がかかり生産性が低下する可能性もあります。また、ストレスを感じて離職する社員が増えるかもしれません。

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シナジー効果分析に用いるフレームワーク

シナジー効果を分析する際には、次のフレームワークを利用することがあります。

  • アンゾフの成長マトリクス
  • プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)
  • バリューチェーン分類に注目したフレームワーク
  • 経営資源に注目したフレームワーク

それぞれのフレームワークを簡単に説明します。

アンゾフの成長マトリクス

アンゾフの成長マトリクスとは、シナジー効果の分析に用いるフレームワークのなかでもよく利用されるものです。M&Aにより新しい事業を始める際に、事業計画を立てるうえで用いることが多いです。次のように4つのマトリクスに分け、状況に応じた経営戦略を構築します。

既存製品新規製品
既存市場市場浸透戦略製品開発戦略
新規市場新市場開拓戦略多角化戦略

市場浸透戦略

既存市場で既存製品を販売する場合は、市場浸透戦略を採択します。競争力強化を目指すなら、同業種の買収が良いでしょう。

ただし、シェア向上を目指すと、市場において自由競争が生まれにくくなり、独占禁止法違反に問われるリスクがあります。組織合理化や技術共有なども併用し、シェアだけにこだわらない戦略を実施していくことが成功のポイントです。

新市場開拓戦略

新規市場で既存製品を販売する場合は、他業種でも良いのですが、同業種内で異なる層をターゲットにした企業とM&Aする方法も採択できます。とりわけ人員や拠点などに共通点があると、コスト削減のシナジー効果を得やすくなります。

ただし、市場は異なるけれどもエリアが同じ、国が同じなどの何らかの共通点があると、独占禁止法違反に問われるかもしれません。特定の市場における競争力の向上だけでなく、「開拓」にも注目してM&A後の経営戦略を立案しましょう。

新製品開発戦略

既存市場で新規製品を販売する場合は、製品開発戦略を採択できます。異なる製品を扱う企業を買収する、あるいは企業のブランド獲得目的で買収するなど、少し視点をずらしたM&Aを実施してみることが必要になるかもしれません。

ただし、ブランド統合が円滑に進まないときは、顧客離れが起こり、アナジー効果が生まれることもあります。既存顧客が離れないように、新規性一辺倒の開発を避けるようにしましょう。

多角化戦略

新規市場で新規製品を販売する場合は、多角化戦略が必要です。多角化戦略には、次の4つの種類があります。

  • 水平型:新製品開発と新市場開拓を同時進行する
  • 垂直型:サプライチェーンの下流・上流方向に事業を拡大する
  • 集中型:従来の事業で獲得した顧客や技術を活かせる分野に注力する
  • 集約型:既存事業とは関連のない分野に進出する

企業が手掛けてきた事業内容や展望によって、適した多角化戦略が異なります。目指す姿を決めてから、種類を選択してください。

プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)

プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)も、アンゾフの成長マトリクスと同じく4つのカテゴリーに分けられます。アンゾフの成長マトリクスは主にM&Aで利用されるのに対し、PPMはM&A以外にも活用されることが多いです。M&Aでは、アンゾフの成長マトリクスと同じく新規事業のプランニングや、事業を整理するときにも使用します。

フレームワークの概要

PPMでは市場成長率と市場シェアによって、自社の事業を花形と問題児、金のなる木、負け犬の4つのマトリクスに分けます。

市場シェアが高い市場シェアが低い
市場成長率が高い花形問題児
市場成長率が低い金のなる木負け犬

フレームワークの分析

市場成長率が高く市場シェアが低い問題児に該当する事業は、市場シェアが高い花形に成長させる必要があります。一方、花形は市場シェアを維持するために、設備や資本などの投資が必要です。

市場成長率が低く市場シェアが高い金のなる木は、企業にとってキャッシュフローの源となります。現状維持を目指して、適度な投資を続けていくことが求められます。負け犬にカテゴライズされる事業は、原則として撤退です。事業を早めに整理し、他事業の足を引っ張らないようにします。

フレームワークをM&Aに応用する

M&Aにおいては、自社にとって金のなる木を買収することが優先されます。市場成長率が低く、なおかつ市場シェアが高い事業を見つけ、買収を進めていきます。

なお、PPMにおいては、事業として金のなる木だけあれば良いというものではありません。負け犬を除き、バランスよくマトリクスを配置することが、企業存続につながります。たとえば問題児や花形は、将来的に収益源となる可能性があります。不足している場合は買収し、バランスよく配置するようにしましょう。

バリューチェーン分類に注目したフレームワーク

バリューチェーンの購買→製造→物流→販売の流れに注目し、売上シナジーとコストシナジーを分析するフレームワークもあります。M&Aでは自社と対象会社のバリューチェーンを比較し買収企業を決定する際に用います。

ある程度買収対象企業を絞り込んでから、バリューチェーンに注目したフレームワークを用いて分析することで、M&A後にどのプロセスにおいてシナジーを期待できるのかが明確になるでしょう。

また、バリューチェーン分類に注目してシナジーを可視化することは、自社の事業構造の理解を深め、強みや課題を整理することにもつながります。

購買製造物流販売
売上シナジー・原料調達安定・製造量拡大・物流網拡大・商品種類増
コストシナジー・交渉力向上・内製化・物流網最適化・販売コスト減

経営資源に注目したフレームワーク

経営資源を内部リソースと外部ネットワークに分け、分析するフレームワークもあります。このフレームワークもバリューチェーンに注目したフレームワークと同様、自社と対象会社の経営資源を比較し相手企業を決める際に用います。

なお、内部リソースとはヒト、モノ、カネのことです。たとえば次のように自社の特徴と相手企業の特徴、期待できるシナジー効果を表にすると、相手企業とのM&Aを実施すべきか判断しやすくなります。

経営資源自社の特徴相手企業の特徴期待できるシナジー
内部リソースヒト・採用力が高い・技術者が多い・育成環境の強化
モノ・海外拠点が10箇所・都道府県ごとに拠点・国内外で営業推進
カネ・自己資本比率が高い・不動産が多い・遊休資産の活用
外部ネットワーク・提携企業が多い・顧客との関係が強力・顧客拡大
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M&Aによるシナジー効果のメリット

シナジー効果にはメリットしかありません。また、M&A直後にアナジー効果が生じているように見えても、長期的に見ればシナジーが生じていることも多いです。シナジーによるメリットを買収側と売却側に分けて説明します。

買収側のメリット

買収側にとって、M&Aによってシナジー効果が生まれることはコストパフォーマンスの改善を意味します。またM&Aが成功しやすく、ローリスクな買収を実現できます。

また、時間や費用を抑えつつ、新規事業に取り組めるのもメリットです。収益率の向上や事業拡大も期待できます。

売却側のメリット

売却側にとって、M&Aによりシナジー効果が生まれることは、企業価値の増大を意味します。短期間で事業を発展できるだけでなく、設立から日が浅い企業でも信用力が高まり、金融機関で融資を受けやすくなるなどのメリットもあります。

また、後継者不在の解決に役立つことも少なくありません。企業を解散せずに維持できるため、従業員の雇用を守ることにもなります。

M&Aによるシナジー効果の評価手順

M&Aの前にシナジー効果を評価しておくと、より実情に近い企業価値を算定できるようになります。次の手順でシナジー効果を評価しましょう。

  1. 買収側・売却側が期待するシナジー効果を抽出する
  2. シナジー効果の予測金額・実現可能性・コストを分析する
  3. シナジー定量化の結果を加味して企業価値を算出する

それぞれの手順を見ていきましょう。

1.買収側・売却側が期待するシナジー効果を抽出する

まずは、買収側・売却側がそれぞれ期待するシナジー効果を書き出します。たとえば市外の販路不足を感じている小売店であれば、市外に店舗数が多いことや代理店のネットワークが充実していることなどを相手企業に求められます。

2.シナジー効果の予測金額・実現可能性・コストを分析する

買収側・売却側が期待するシナジー効果の実現可能性について分析します。実現可能性があるかだけでなく、具体的にどの程度の金額的なメリットが得られるのかも算定します。

次にM&Aにかかるコストも分析しましょう。多額のコストがかかるM&Aになりそうなときは、シナジー効果によって期待できる金額的なメリットと比べて、妥当なコストといえるのか評価します。

M&Aにはコストがかかり、M&A後しばらくは利益率が低下した状態が続くことも珍しくありません。すぐにコスト回収を目指すのではなく、長期的な視点でシナジー効果がコストを上回るのか判断しましょう。

3.シナジー定量化の結果を加味して企業価値を算出する

別々に運営している状態とM&Aを実施した状態を比較し、シナジー効果を定量化します。つまり、スタンドアローンの状態に対してプラスアルファとなる部分が、シナジー効果の数字です。この数字を企業価値に加えて、実際のM&Aの取引価額を算出しましょう。

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M&Aによるシナジー効果の事例

M&Aによりシナジー効果が生まれた事例を紹介します。なぜシナジー効果が得られたのかも紹介します。ぜひ参考にして、シナジー効果が生まれやすいM&Aをプランニングしてください。

オイシックス・ラ・大地

生鮮食品の宅配事業を行うオイシックス・ラ・大地株式会社は、同業であるらでぃっしゅぼーや株式会社の株式を買収し、2018年合併を実現しました。合併後は、Oisixと大地を守る会、らでぃっしゅぼーやの3つのブランドを展開し、生鮮食品の宅配業界での地位を確立しています。

同業種の企業が合併するケースにおいては事業をまとめることが少なくありませんが、オイシックス・ラ・大地では事業をまとめず、ブランドをそのまま維持することで業界にインパクトを与えています。また、各ブランドの拠点もそのままに残しつつも、知名度が一気に向上したことで各ブランドの売上高・営業利益ともに目覚ましい成長を遂げました。

参照元:オイシックス・ラ・大地株式会社「オイシックスドット大地、らでぃっしゅぼーやとの経営統合と新社名が正式決定~「Oisix」「大地を守る会」「らでぃっしゅぼーや」の3ブランドが結束~」

日本たばこ産業

日本たばこ産業株式会社(JT)は、たばこ以外にも医薬品や食品の製造、販売を実施する企業です。日本における喫煙者の減少から、とりわけ1970年代以降は売上低下に悩まされていました。また、民営化も負荷が大きく、事業継続が難しい状況もありました。

このような状況のなか、日本たばこ産業は1999年、アメリカのRJRナビスコ社からたばこ事業の取得を実現しています。この取得によりたばこの販売本数が急激に増え、売上増加も実現しました。また、2007年にはイギリスのギャラハー社など、外国のたばこ関連会社とのM&Aを繰り返し、現在ではグローバル規模のたばこメーカーに成長しています。

日本たばこ産業のM&Aの基本スタンスは、同業種の買収です。日本ではたばこ離れが起こっていますが、世界的に見ればたばこ産業自体が大きく衰退しているわけではありません。たばこの増税などもあり国内での利益増が見込みにくい状況に鑑み、世界に注目して販路を拡大してきました。

活路がないような状況でも、海外という異なる市場に目を向けることで、まだまだ利益のチャンスがあると判断したのが日本たばこ産業の勝因といえるでしょう。また、同じ業種にこだわることで、新規事業に飛び込むリスクを回避している点も、日本たばこ産業のスタンスと考えられます。

参照元:
大和総研「クロスボーダー M&A統合成功の秘訣―日本たばこ産業の事例」
日本たばこ産業株式会社「JTグループの歴史」

大和ハウスグループ

大和ハウスグループでは、販売地域拡大のため、2021年アメリカのキャッスルロック社を買収しました。アメリカで戸建て住宅のニーズが高まっていることを受け、キャッスルロック社を足がかりとして現地での戸建て事業を推進しています。

大和ハウスグループでは、同じ業種にこだわった水平型のM&Aを実施する一方で、開発や販売、建設などのバリューチェーンの各段階におけるシナジー効果を期待した経営統合も実現しています。また、戸建て事業にこだわらず、ロボット開発やスポーツクラブの運営など、新規事業への参画も実施してきました。新規事業を新規市場で展開することで、集中型のM&Aも実現しています。

なお、大和ハウスグループでは、キャッスルロック社を買収した2021年時点で、すでに海外事業が全事業の売上の約1割を占めていました。大和ハウスグループによれば、2026年には海外事業が売上全体の約18%(1兆円)を占めると試算されています。アメリカの住宅ニーズをいち早く察知したこと、ロボット開発などの新規事業へ取り組みリスク回避に努めていることなどが、成長の要因と分析できます。

参照元:
大和ハウス工業株式会社「大和ハウス工業株式会社 2022年3月期 第2四半期アナリスト・機関投資家向け経営説明会 質疑応答(要旨)」
大和ハウス工業株式会社「【海外進出】入山章栄と読み解く、4兆円企業の「グローバル戦略」」
株式会社国際協力銀行「大和ハウス工業株式会社によるアメリカ合衆国法人の持分取得資金を融資」

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まとめ

M&Aによりシナジー効果が生じると、効率性の高い事業成長や利益増などを期待できます。また、M&Aによって想定されるリスク回避につながることも少なくありません。

M&Aを実施するときは、相手企業と結びつくことでどのようなシナジー効果が生まれるのか、丁寧に分析することが必要です。相手企業の強みや課題を正確に把握し、自社のニーズも分析していれば、よりシナジー効果が生まれやすいM&Aを実現できるでしょう。

シナジー効果の分析は、紹介したフレームワークを用いて進めていくことが一般的です。しかし、より詳細な分析は、M&Aの専門家に任せることがおすすめです。

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M&Aにより実現できるシナジー効果の分析については、M&Aの専門家であるM&A仲介会社に相談してみましょう。レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社には、各領域の専門性に長けたコンサルタントが在籍しています。シナジー効果の分析にも対応しており、シナジー効果の得られる相手企業の選定からM&A成立まで一貫したサポートを提供することが可能です。

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