M&Aにかかる費用の相場・内訳|買い手・売り手別の費用と費用を抑えるポイント
2023年5月9日
このページのまとめ
- M&Aでは各ステップで買い手・売り手の双方に諸費用が発生する
- 買い手は消費税や不動産関連、売り手は譲渡損益などに対して税金がかかる
- M&Aかかる費用を抑えるためには、仲介会社の比較や相場の把握が重要
- 完全成功報酬型のサービスなら固定費負担がかさむ心配がない
近年、国内のM&Aは増加傾向にあります。実際に M&Aを検討中の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
M&Aを検討する際、必ず知っておかなければならないのが「M&Aにかかる費用相場」です。
そこで今回は、M&Aでかかる費用の相場を、買い手・売り手ごとにご紹介します。M&Aでかかる費用を抑えるポイントについても解説します。
目次
【買い手】M&Aでかかる費用の相場
M&Aに際して、買い手には以下のような費用が発生します。
- 買収費用
- 仲介手数料
- デューデリジェンス費用
- 税金
- 登記費用
また、買い手に発生する費用の相場は、以下表の通りです。
買収費用 | 買収する企業によって異なる |
仲介手数料 | 成功報酬+α |
デューデリジェンス費用 | 数十万円〜200万円程度 |
税金 | 消費税や不動産関連の税金など |
登記費用 | 商業登記や所有権移転登記など |
ここからは、上記表の詳細について見ていきましょう。
買収費用
買収費用とは、対象となる会社の買収に必要な費用を指します。株式譲渡や事業譲渡などの場合は支払対価が費用となり、株式交換や合併などの場合には、渡す株式が買収費用になります。
買収費用の決定方法には、以下の2つがあります。
個別交渉
譲受企業(買い手)と譲渡企業(売り手)が互いに株式価値を計算し、交渉によって買収費用を決定する方法です。
入札
譲渡企業が名前を伏せたうえで情報を公開し、その情報を見た譲受企業がオファーを出し、個別交渉へと移行する方法です。買取価格を決定する際は、入札した金額が重視されます。
なお、個別交渉の際に各社が実施する株式価値の計算方法(アプローチ方法)には、以下3つがあります。
インカムアプローチ
対象となる企業の収益性・将来における収益獲得能力などを反映して、株式価値を計算します。「DCF法」「収益還元法」「配当還元法」などの種類があります。
企業の将来性が盛り込まれている反面、計算結果が客観性を欠いたり、恣意的な価格となるリスクもあります。
コストアプローチ
対象となる企業の純資産に注目して、株式価値を計算します。「簿価純資産法」「時価純資産法」などの種類があります。
客観的な評価が期待できる反面、企業の将来性が読みづらい点がウィークポイントです。
マーケットアプローチ
類似する企業や業種での取引を参考に、株式価値を計算します。「類似会社比較法」「類似取引比較法」などの種類があります。
客観的な評価が期待できる反面、新規事業を展開している会社などで類似企業や取引がない場合、使うことが難しい計算方法です。
また、買収対価には「現金」「株式」があるため、それぞれの違いについても見ておきましょう。
現金
事業譲渡や株式譲渡などによる買収のケースでは、主に買収対価は現金となります。すでにご紹介した3つの計算方法(アプローチ方法)で株式価値を算出します。
譲受企業(買い手)と譲渡企業(売り手)がそれぞれどの計算方法(アプローチ方法)を選ぶかによって、計算結果が変わるため、交渉による最終的な買収価格のすり合わせが必要となるのです。
また、現金の支払い方法にはいくつかありますが、それによって課税額が変わるため最適な方法を選択するようにしましょう。
一例として株式譲渡では、譲渡対価として役員退職金(役員退職慰労金)を支給する方法もあります。
株式
合併や株式交換などのケースでは、主に買収対価が株式となります。
特に株式交換の場合は、譲受企業(買い手)と譲渡企業(売り手)の両方の株式価値を算出した上で、株式の交換比率を計算することが必要です。
仲介手数料
仲介手数料とは、 M&A仲介会社を利用した際にかかる費用です。
M&A仲介会社は、当事者間に入って案件を進めるため、譲受企業(買い手)と譲渡企業(売り手)の双方から手数料を受け取ります。
一方、M&Aアドバイザリーを利用した際は、アドバイザリー費用が発生します。
M&Aアドバイザリーは、譲受企業(買い手)か譲渡企業(売り手)のいずれか一方に就くため、就いた企業から手数料を受け取ります。
なお、M&A仲介会社やM&Aアドバイザリーを利用した際の、手数料の内訳は以下の通りです。
相談料
M&A仲介会社・M&Aアドバイザリーへ正式依頼する前の相談費用です。相談料は無料の場合が多いですが、企業によっては数万円程度の相談料がかかるケースもあります。
着手金
正式依頼後に発生する費用です。 費用は0~200万円程度まで幅があります。着手金が必要なM&A仲介会社・M&Aアドバイザリーには、M&Aに対する熱量の高い企業が多く登録されていることが期待できる反面、通常、M&Aが不成立だったとしても着手金は返金されないため注意が必要です。
中間金
基本合意書が締結した段階で発生する費用です。費用は0~100万円程度まで幅がありますが、この他、成功報酬の10%~20%程度に設定されているケースもあります。なお、基本合意の締結はステップの途中であり、最終的にM&Aが成立しない可能性もありますが、通常、中間金は返金されません。
成功報酬費用
最終契約書を締結し、M&Aが成立した際に発生する費用です。M&A仲介会社・M&Aアドバイザリーによっては、相談料や着手金が無料のケースもありますが、成功報酬については必ず発生すると考えてよいでしょう。
なお、具体的な成功報酬費用の計算では、以下表のようなレーマン方式を採用しているケースが多く「買収金額の数%(レーマン方式で設定された手数料率)」が一般的です。
買収価格 | 手数料の割合 |
5億円以下の部分 | 5% |
5億円超・10億円以下の部分 | 4% |
10億円超・50億円以下の部分 | 3% |
50億円超・100億円以下の部分 | 2% |
100億円超 | 1% |
このように、レーマン方式は買収価格が高くなるほど、手数料の割合が下がります。
例えば買取価格が16億円の場合、5億円以下の部分に5%(2,500万円)、5億円超・10億円以下の部分に4%(2,000万円)、10億円超・50億円以下の部分(残り6億円)に3%(1,800万円)の割合で手数料がかかり「合計6,300万円」の成功報酬費用となります。
リテイナーフィー
リテイナーフィーは、月々発生する手数料です。リテイナーフィーが発生しないM&A仲介会社・M&Aアドバイザリーもある一方、発生する場合は月額50万円ほどかかるケースもあります。 M&A成立までの期間が長いほど、負担が大きくなる手数料と言えるでしょう。
デューデリジェンス費用
デューデリジェンスとは、譲渡企業(売り手)に対して実施される買収前のチェック(監査)です。
財務・法務・税務関係のデューデリジェンスはもちろんのこと、 ビジネス・人事・IT・環境・不動産・知的財産関連のデューデリジェンスが実施されるケースもあり、各方面の専門知識が必要とされます。
そのため、M&A仲介会社・M&Aアドバイザリーではなく、外部の専門家に依頼するケースも多く、そちらに費用を支払うことになります。
中小企業の会計・税務・法務デューデリジェンスには、数十万円から200万円程度の費用がかかると考えられます。さらに、大規模案件であれば数千万円程度の費用がかかるケースもあります。
税金
M&Aで買い手側に発生する可能性がある税金には、以下のようなものがあります。
消費税
株式交換・株式譲渡などの株式売買では、消費税は非課税となります。一方、事業譲渡は資産譲渡に該当するため、消費税が課税資産に対してかかります。
不動産関連の税金
事業譲渡に不動産が含まれるケースでは、登録免許税・不動産取得税などの税金が発生します。
このように税金の有無や金額は、M&Aの方法(スキーム)によって変わります。
登記費用
M&Aの方法(スキーム)によっては、登記手続きに関連した費用がかかります。
具体的には、所有権移転登記の登録免許税、商業登記費用などが発生する可能性が考えられます。
【売り手】M&Aでかかる費用の相場
M&Aに際して、売り手には以下のような費用が発生します。
- 仲介手数料
- デューデリジェンス費用
- 税金
- 株券発行費
また、売り手に発生する費用の相場は、以下表の通りです。
仲介手数料 | 成功報酬+α |
デューデリジェンス費用 | 数十万円〜200万円程度 |
税金 | 譲渡損益の金額などによる |
株券発行費 | 数万円〜数十万円 |
ここからは、上記表の詳細について見ていきましょう。
仲介手数料
買い手側が支払う仲介手数料と同じ内容です。
デューデリジェンス費用
譲受企業(買い手)が譲渡企業(売り手)に対してデューデリジェンスを実施するだけであれば、基本的に、売り手側の費用負担はありません。
ただし株式交換では、互いにデューデリジェンスを実施する必要があるため、売り手側にも費用負担が生じます。
すでにご紹介したように、中小企業のデューデリジェンスでも数十万円〜200万円程度の費用がかかると考えられ、さらに大規模な案件では、数千万円程度の費用となるケースもあります。
税金
売り手企業はM&Aの対価を受け取る立場であるため、譲渡損益(取得原価と譲渡対価の差)に対する税金などが発生します。なお、発生する具体的な税金は、以下のようにM&Aの方法(スキーム)によって変わります。
事業譲渡でかかる税金
個人株主であれば、所得税・住民税・復興特別税(合計約20%)がかかります。
法人株主であれば、法人税・事業税・住民税(約34%)がかかります。
また、消費税の支払いも必要ですが、買い手から預かって納付するため、売り手側の負担はありません。
株式譲渡でかかる税金
個人株主であれば、所得税・住民税・復興特別税(合計約20%)がかかります。
法人株主であれば、譲渡損益に29~42%程度課税されます。
株券発行費
売り手企業が株式発行会社の場合、株式の現物を用意する必要があるため、その発行費用がかかります。
株式発行費用は数万円〜数十万円程度です。
なお、株式不発行会社の場合は株式発行費用は発生しません。
M&Aでかかる費用を抑えるポイント
M&Aにかかる費用を削りすぎると、M&A失敗につながる恐れもあります。ただし、自社のリソースは有限であるため、可能な範囲内で費用を抑える工夫をすることは有益です。最後に、無理のない範囲でM&Aにかかる費用を抑えるポイントをご紹介します。
- 複数の仲介会社を比較して選ぶ
- 費用の相場を把握しておく
- デューデリジェンスの範囲を絞る
- 完全成功報酬型のサービスを利用する
複数の仲介会社を比較して選ぶ
M&A仲介会社・M&Aアドバイザリーに支払う手数料は、 M&Aにかかる費用の大きな部分を占めています。
そのため、複数のM&A仲介会社・M&Aアドバイザリーをよく比較検討した上で、利用するサービスを決定することが望ましいです。
そこで重視したいのが「コストパフォーマンスの高さ」です。手数料がどんなに安くてもM&A失敗につながるのであれば意味はありません。
具体的には以下の3ステップで、自社に適したコストパフォーマンスの高いM&A仲介会社・M&Aアドバイザリーを絞り込んでゆくと良いでしょう。
手数料の前にチェックすべきことを確認する
はじめに、自社が依頼すべきでないM&A仲介会社・M&Aアドバイザリーを排除します。具体的には以下のようなポイントを確認してください。
業種・業界
得意とする案件の業種・業界は、M&A仲介会社・M&Aアドバイザリーごとに異なります。例えば、製造業のM&A案件を希望している場合、IT業界のM&A実績しかない会社などへの依頼は避けるべきです。
自社ビジネスに対する理解
相手企業のマッチングに際しては、自社のビジネスをコンサルタントが充分に理解していることが不可欠です。特に、専門性の高いビジネスを展開している場合は、M&A仲介会社・M&Aアドバイザリーの「専門的知見の高さ」が重要となります。
得意な案件規模
M&A仲介会社・M&Aアドバイザリーは、一般的にメインとする案件規模(顧客の企業規模)が異なります。例えば、中小企業同士のM&A案件であれば、大企業がメインのサービスではなく、中小企業をメインとして多くの実績を持つM&A仲介会社・M&Aアドバイザリーへ依頼すべきです。
可能な業務範囲
「M&Aのステップで、特に依頼したい業務に強みがあるか」「M&Aの各ステップをワンストップで担当できるか」「依頼が難しい業務はあるか」なども、事前に確認しておきましょう。
複数社から料金見積もりを取る
依頼するM&A仲介会社・M&Aアドバイザリー候補がピックアップできたら、それらの会社から見積りを取ります。
すでにご紹介したように、料金体系(報酬体系)の内訳には「相談料・着手金・中間金・成功報酬・リテイナーフィー」 など様々なものがあり、各社ごとに費用が異なるので、しっかり比較してください。
料金に不明瞭な点がある場合は、契約前に確認しておきましょう。
なお、見積もりを出してもらう際は、自社が依頼したい業務範囲を絞り込んでおくと、より比較検討しやすいです。
担当者から話を聞く
料金に納得できるM&A仲介会社・M&Aアドバイザリーが見つかったら、その中の数社の担当者と実際にコミュニケーションを取ることがベターです。
担当者の対応や知見などから、最終的に依頼するM&A仲介会社・M&Aアドバイザリーを決定しましょう。
費用の相場を把握しておく
買収費用が適正な範囲を超えて高額になることを避けるため、相場を把握しておくことは大切です。
買収価格は、業種・規模・業績など様々な要素で変わるため、相場の判断は難しいですが、実績のあるM&A仲介会社・M&Aアドバイザリーであれば、ケースに応じた相場をある程度判断することができます。
おおよその買収費用を把握しておくことは、交渉における落とし所(最終的な買収価格)を決める際の参考にもなります。
デューデリジェンスの範囲を絞る
デューデリジェンス(DD)には複数の種類があり、相手の企業の状況を細やかに把握しようとするほど、調査の種類が増えます。
具体的に、デューデリジェンスには以下のような種類があります。
- 税務DD
税務上のリスクなどを調査します
- 財務DD
業績・収益力・財務の健全性などを調査します
- 法務DD
訴訟・許認可などの潜在的なリーガルリスクを調査します
- ビジネスDD
買収にふさわしいシナジーが期待できるか調査します
- IT・DD
既存システムの有効性や新システムの必要性を調査します
- 人事DD
人事マネジメントや労使関係の状況を調査します
デューデリジェンスには上記以外にも、不動産DD・知的財産DD・顧客DD、人権DD、技術DDなどがあり、仮にそのすべてを実施すれば、非常に長い調査期間と多額の費用が発生します。
そこで、デューデリジェンスの優先順位を決めて実施したり、各デューデリジェンスの実務範囲を絞り込むことで、費用を抑えることが可能です。
完全成功報酬型のサービスを利用する
リテイナーフィー(月額報酬制)のM&A仲介会社・M&Aアドバイザリーを利用すると、常に固定費が発生している状態となります。
そのため、適切な相手企業が見つからなかったり、M&Aの期間が長くなるほど負担が増大するのみならず、M&Aが失敗しても月額報酬は返還されないため、損失が大きくなる恐れがあります。
一方「完全成功報酬型のサービス」であれば、月額報酬や着手金がかからないため、M&Aの長期化などに際しても、費用の増大を防ぐことが期待できます。
まとめ
M&Aでは買い手・売り手の双方に、様々な費用が発生します。
単に費用を抑えただけでは、M&Aの失敗につながる恐れがあるため、費用をかけるべき部分と抑える部分を明確にすることが重要です。
特にM&A仲介会社・M&Aアドバイザリーの選び方は重要で、実績があり信頼できるサービスであれば「完全成功報酬型のサービス」の利用がおすすめです。
M&AならレバレジーズM&Aアドバイザリーにご相談を
私たち、レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社も「完全成功報酬型」を採用。各プロセスでは、専門ノウハウを有するコンサルタントをご用意し、相談からご契約までトータルにご支援いたします。
高品質なサービスにも関わらず、料金はご成約まで発生しないため、お客様より安心してご利用頂いております。(*譲受会社のみ中間金あり)
もちろん相談料も頂いておりませんので、M&Aをご検討の方はぜひお気軽に弊社までお問い合わせください。