合同会社を売却する方法とは?売却が難しい理由や譲渡のメリットを解説

2024年3月26日

合同会社を売却する方法とは?売却が難しい理由や譲渡のメリットを解説

このページのまとめ

  • 合同会社と株式会社の重要な違いは、所有と経営が異なるかどうか
  • 持分譲渡は、社員全員の同意が必要となるなど売却が難しい
  • 事業譲渡は持分譲渡より比較的容易に行える
  • 事業譲渡では、売り手に負債が残る可能性があるため注意が必要である
  • 合同会社の売却では、M&A仲介会社などの専門家への依頼が必須である

「合同会社を売却したいけど、実際に可能だろうか?」とお困りの方もいることでしょう。合同会社は、持分譲渡や事業譲渡により売却が可能です。ただし、どのような方法で売却を進めるのかを決定する際は、専門家への相談が欠かせません。

本記事では、合同会社と株式会社の違いから持分譲渡や事業譲渡の方法、企業価値評価を算出する方法、合同会社を売却する際の相談先まで詳しくお伝えするので、ぜひ参考にしてください。

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

合同会社とは

合同会社とは、会社法で定められている法人形態の一つです。法人として一般的なのは株式会社ですが、株式会社以外にも持分会社という形態が認められています。持分とは、会社に対する出資を意味し、株式会社の株式にあたるものです。持分会社は、次の3つに分類されます。

  • 合同会社
  • 合名会社
  • 合資会社

2006年に旧商法は改正され、会社に関する部分が独立して会社法として定められました。現在の合同会社は、旧商法の有限会社が廃止されたのと同時に定められた法人形態です。株式会社よりも設立の費用や手間がかからないため、小規模な会社を想定して設定されました。

合同会社の社員は、次の2種類にわけられます。

  • 代表社員:会社の代表で、取引や業務の代表権を持つ
  • 業務執行社員:事業計画の実行やサービスの提供などの業務を行う

これらの社員には、それぞれ別の人が就く場合もありますが、兼務も可能です。そのため、一人でも合同会社を設立できます。

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

合同会社と株式会社との違い

合同会社と株式会社には、さまざまな違いがあります。合同会社の売却を検討する際は、株式会社との違いを把握しておく必要があります。参考までに、次の表をご覧ください。

株式会社合同会社
意思決定株主総会総社員の同意
所有と経営分離同一
代表者の名称代表取締役代表社員
役員の任期通常2年(非公開の場合、最長10年)任期なし
出資者責任間接有限責任間接有限責任
決算公告必要不要
利益配分出資比率により配分定款で定めた分配比率による
議決権出資比率一人一票
定款変更株主総会の特別決議全社員の同意
株式譲渡の条件自由(譲渡制限可能)全社員の同意
設立費用25万円程度10万円程度
設立時の手続き煩雑容易

このように、合同会社は株式会社と細かな違いがいくつかありますが、次にそのなかでも重要な相違点をお伝えします。

「所有と経営」の違い

合同会社と株式会社の最も重要な相違点は、所有と経営が異なるかどうかです。

株式会社は、出資者の株主と事業を運営する経営者は異なります。経営者が株主になる場合もありますが、基本的に株主と経営者は別です。

一方、合同会社は、持分を出資した人と経営を担う人は同じで、出資者が同時に経営も行うということです。合同会社では、出資した人を社員と呼びますが、株式会社における従業員とは違う意味合いを持ちます。この場合の社員とは、株式会社の株主と取締役を兼ね備えた存在といえばイメージがつきやすいでしょう。

会社の所有と経営が分離されていない点が、合同会社をはじめとする持分会社の大きな特徴です。

登記事項の違い

登記事項についても、いくつかの違いがあります。

合同会社のような持株会社では、株式会社のように株式を発行しないため、発行済み株式の登記は行いません。なお、議決権や利益の配分については定款に定めることが可能です。

株式会社は、議決権や利益の配分に関しては保有株式数に応じて決まるため、登記事項への記載は必要ありません。

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

合同会社を売却する方法

合同会社を売却するには、主に次に挙げる4つの方法があります。

  1. 事業譲渡
  2. 合同会社のまま持分譲渡
  3. 株式会社に組織変更後、株式譲渡
  4. 吸収合併

それぞれの方法について説明します。

事業譲渡

事業譲渡は会社の事業の全部、または一部の事業の部門を切り離して譲渡する方法です。会社自体を売却する方法ではないため、事業譲渡を行っても法人格は残ります。譲渡の対象は事業に使用する不動産や備品、機械類、車両などのほか、従業員や取引先、ノウハウなども含まれます。

事業譲渡に必要な手続きは、合同会社も株式会社の場合とほぼ同様です。事業譲渡契約書の作成と事業譲渡を行う機関決定として、出資者である社員の過半数の同意が必要です。事業譲渡契約書に記載するのは、譲渡対象の資産・負債、公租公課の負担、従業員、取引先、譲渡価格、譲渡実行日、実行の前提条件、表明保証、補償などです。

そして、事業譲渡の実行日に、資産・負債の移転手続きを行います。事業譲渡では、売り手に対して資産や負債の個別の承継手続きが必要となる点に注意が必要です。

合同会社のまま持分譲渡

合同会社のまま持分譲渡するのは、株式会社の株式譲渡に近く、会社を売却するシンプルな方法です。合同会社の持分譲渡とは、出資者である社員が自分の持分の全部または一部を譲渡する方法です。買い手は合同会社の持分を取得することで、経営権を得られます。

合同会社のまま持分譲渡を行う方法に必要な手続きを挙げていくと、まず、持分譲渡契約書の作成と持分の譲渡に関する社員全員の合意の取得を行います。持分譲渡契約書に記載するのは、持分額、譲渡価格、譲渡の実行日などです。

また、合同会社では業務執行社員や代表社員は登記事項になっているため、持分の譲渡に伴い、登記手続きを行います。

株式会社に組織変更後、株式譲渡

合同会社から株式会社に組織変更を行った後、売り手に株式譲渡をする方法です。合同会社から株式会社に変われば、通常の株式会社の株式譲渡の手続きを行うことで、会社を売却できます。

株式会社への組織変更後に株式譲渡を行う場合の手続きは、まず、組織変更計画の作成を行います。次に組織変更計画に対して、社員全員の同意をとります。そして、債権者を保護するため、官報公告への掲載と個別の催告を実施し、異議を申し立てる期間を設けることが必要です。その後、株式会社への組織変更に伴い、代表取締役を選任。株式会社の設立登記と合同会社の解散登記を同時に行うという流れです。こうした一連の手続きを経たうえで、買い手側と株式譲渡に関する手続きを行います。

吸収合併

吸収合併は、一方の会社が法人格を失って消滅する消滅会社となり、もう一方の会社が消滅会社の権利義務を承継する存続会社となる合併方法です。合同会社も、存続会社と消滅会社のいずれの立場でも吸収合併を行うことが可能であり、株式会社との合併もできます。売り手となる合同会社は消滅会社になります。合同会社は吸収合併を行う場合にも社員全員の同意が必要です。

吸収合併を行う際の手続きを見ていくと、まず、合併契約書を作成しますが、会社法による法的記載事項が定められている点に注意が必要です。法的記載事項は、存続会社と消滅会社の商号と住所、存続会社が消滅会社に支払う金銭などの対価の内容、効力の発生日などです。次に合併契約書について、合同会社ではすべての社員の同意を得た後、契約の締結に進みます。

そして、債権者保護のための官報公告や個別の催告を行った後、登記手続きへと進むという流れです。

関連記事:会社売却の相場や税金はどれくらい?準備からクロージングまでの流れも解説

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

合同会社の売却・譲渡が難しい理由

合同会社の売却の方法をみてきましたが、現実的には売却が難しいとされるのは、主に以下の理由によります。

  1. 社員全員から持分譲渡の同意を得る必要あがある
  2. 株式会社への組織変更が難しい
  3. 事業譲渡の場合も社員の半数から同意を得る必要がある
  4. 合同会社を買収するメリットが少ない

それぞれの理由について詳しく見てみましょう。

社員全員から持分譲渡の同意を得る必要がある

合同会社を売却する際の持分譲渡という方法は、株式会社株式譲渡と同様の効果を得られる方法ではあります。しかし、株式会社の株式譲渡と合同会社の持分譲渡は仕組みが異なります。

株式会社では、原則として持ち株比率が過半数を超えていれば、経営権を取得できます。また、株式会社のうち、公開会社は自由に株式の譲渡をすることが可能です。株式の譲渡に制限のある非公開会社であっても、株主総会、または取締役会の承認を得られれば、株式譲渡ができます。

これに対して、合同会社の議決権は出資金額に応じたものではなく、1人の社員に対して1議決権となるという違いがあります。そのため、経営権を取得するにはすべての社員の持分の取得が必要です。また、持分譲渡を行うには原則として社員全員の同意が必要です。

つまり、株式会社は非公開会社であっても、株主全員の承認がなくても売却できるのに対して、合同会社は社員が1人でも反対すると売却できないというハードルの高さがあります。そのため、合同会社は社員が1人、あるいは少人数の会社を除くと、持分譲渡という方法をとるのが難しいのです。

株式会社への組織変更が難しい

合同会社を株式会社へ変更すれば、株式譲渡という形をとって会社を売却することが可能です。しかし、そもそも合同会社から株式会社への組織変更を行う手続き自体が難しいのです。

まず、合同会社から株式会社への変更場合も、組織変更計画に社員全員の同意が必要です。株式会社への組織変更に反対する社員が一人でもいたら、株式会社に変更することはできません。また、債権者への公告や個別の催促を行う手間も時間もかかります。

こうした理由から、合同会社から株式会社への組織変更も、社員が1人など社員の人数が少ない場合に実現しやすい方法です。また、手続きの煩雑さを考えると、買い手が合同会社から株式会社への組織変更を計画している場合に、買い手にとって魅力的な方法といえます。合同会社の経営者が将来的な売却を検討している場合には、早めに株式会社への組織変更に着手しておくと、譲渡をスムーズに進められます。

事業譲渡の場合も社員の半数の同意が必要

合同会社の売却において、持分譲渡や株式会社への組織変更よりも、事業譲渡は比較的実現しやすいとされている方法ではあります。

合同会社の持分譲渡では、原則として社員全員の同意が必要です。これに対して事業譲渡を行う際に要とされるのは、社員の過半数の同意です。合同会社では持株譲渡という方法をとるよりも、事業譲渡の方が実現させるためのハードルが低く、社員の意見がまとまらない場合にも用いられています。しかし、社員が複数いる合同会社では、社内での合意形成に時間がかかる可能性があり、買い手側に事業譲渡の実現を必ずしも保証できないことが難点です。

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

合同会社を買収するメリットが少ない

そもそも、合同会社を買収するメリットの少なさも、売却が難しいとされている大きな理由の一つです。合同会社を買収するメリットが少ないというのには、いくつもの要因があります。

1つ目として会社が大きく成長しても、合同会社のままでは株式を発行することができず、株式上場を目指すこともできないことが挙げられます。加えて、合同会社から株式会社への組織変更はハードルが高く、手続きが煩雑です。また、2つ目は株式を発行できないことにより、資金調達の自由度が低いことです。株式会社のように第三者割当増資などを行うことはできず、資金調達は融資や社債に頼ることになります。

3つ目として、合同会社は会社法の改正によって2006年に設けられた会社形態で、一般的に株式会社などと比較して認知度がまだ低く、融資や取引で不利になることが考えられる点です。

4つ目に挙げられるのは、経営権を取得しにくいことです。株式会社の株主は原則として出資金額に応じた持ち株分比率によって議決権を保有します。また、持ち株比率が過半数以上あると、株主総会で単独で普通決議を成立させることができるため、ほとんどの意思決定を行うことが可能です。さらに持ち株株比率が3分の2を超えると、特別決議を単独で成立させることができることから、経営上の重要な事項を決定できます。

一方、合同会社では出資金額を問わず、社員は1人1議決権です。合同会社では、たとえばAさんは1,000万円、Bさんは5,000万円、Cさんは1,000万円を出資していても、Aさん、Bさん、Cさんはそれぞれ1議決権を持っています。そのため、複数の社員がいる合同会社で経営権を取得するには、持分をすべて取得しなければ、重要事項の決定が単独で行えません。しかし、合同会社の持分譲渡は社員全員の同意が必要など、ハードルが高いという課題があります。

最後に挙げられるのは、合同会社は出資と経営を分離できない点です。株式会社では小規模な会社を中心に出資者と経営者が一致しているケースもありますが、「出資者=経営者」とは限りません。株主総会で選出された取締役に経営が委託されるなど、出資と経営が分離しているため、外部から優れた経営者を招くことも可能です。

一方、合同会社では出資者が経営者となるため、出資と経営が一致しています。出資者が社員となり、原則として代表権と業務執行権を持っているのが特徴です。定款によって業務執行権を持つ業務執行社員と業務執行権のない社員に分けることや、代表権を持つ代表社員を置くことはできますが、出資者以外は経営者になれません。そのため、合同会社では出資だけ行い、経営は選任した取締役に任せるという選択肢がとれないことに注意が必要です。

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

事業譲渡による売却のメリット・デメリット

売却しにくいとされる合同会社で比較的実現しやすいのは事業譲渡という方法です。合同会社を事業譲渡という形で売却することには、以下に挙げるメリットやデメリットがあります。それぞれについて解説します。

事業譲渡による売却のメリット

まずは、事業譲渡による売却の主なメリットは、次の4つです。

  1. 持分譲渡よりも手続きしやすい
  2. 売却する事業を選択可能
  3. 従業員の雇用を維持できる
  4. 一部の事業のみ売却するので会社自体は残せる

一つずつ詳しく見てみましょう。

持分譲渡よりも手続きしやすい

上述したように、合同会社における持分譲渡はハードルが高く現実的とはいえません。その点、事業譲渡は手続きがより簡単にすみます。

事業譲渡は通常業務に該当するため、社員の半数の同意があれば実施可能です。社員全員の同意を得るのが難しい場合には、事業譲渡を検討してみてください。

売却する事業を選択可能

合同会社を持分譲渡によって売却するのは、株式会社の株式譲渡に近く、会社を包括的に売却する方法です。これに対して、合同会社を事業譲渡によって売却する場合は、すべての事業を売却するという選択肢以外に、一部の事業を選んで売却することもおすすめです。また、事業譲渡の対象となる資産や負債も個別に選択が可能です。

たとえば、売り手の合同会社はA事業、B事業、C事業を営んでいる場合に、A事業とB事業のみを売却して、C事業は残すといったことができます。

売り手にとっては、成長事業を売却した資金を伸び悩む基幹事業に充てる、赤字事業を売却して財務基盤を立て直すなど、事業の再編を図れます。あるいは全事業を売却しても、法人格は残っているため、事業を売却した資金で新しい事業を立ち上げるといったことも可能です。

一方、買い手にとっても、経営戦略をもとに欲しい事業のみを選択して買収し、事業成長につなげます。たとえば、事業体制を強化したい事業や研究開発の知見を得たい事業などだけを選んで買収を行うことも可能でしょう。
また、譲渡対象の資産や負債を選択できることも大きなメリットです。事業譲渡であれば資産や負債を包括的に承継する持分譲渡とは異なり、不要な資産を引き継ぐ必要がなく、簿外債務を引き継ぐリスクもありません。特に売り手の管理体制が懸念される場合には、持分譲渡よりも事業譲渡が向いています。

また、買い手が持分譲渡のための資金を用意できず、譲渡価格を抑えたい場合にも、事業譲渡が選択されることがあります。

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

従業員の雇用を維持できる

事業譲渡は、売り手にとって従業員の雇用を維持しやすい点が魅力的です。事業譲渡を行う場合は、個別に契約を引き継ぐものを決定していくため、従業員に関しても同様です。売却する事業に関わる従業員の雇用契約を契約に盛り込むことができます。
たとえば、A事業、B事業、C事業を営んでいて、A事業のみを売却する場合には、A事業に従事していた従業員が買収先での雇用を維持されれば、これまでとほぼ変わらない環境で仕事に取り組めます。従業員の合意を得て、雇用条件を事業譲渡契約書に記載し、買い手と従業員の間で改めて雇用契約を結び、事業譲渡後の従業員の雇用条件が明確化される形です。

これに対して持分譲渡の場合は従業員の同意は不要で、雇用契約は包括的に買い手に引き継がれます。しかし、実際に雇用が維持され続けるかは、買い手次第という部分があるとされているのです。

また、事業譲渡も持分譲渡のいずれの選択肢もとらず、業績不振によって廃業した場合には、従業員は失業することになります。

一部の事業のみ売却するので会社自体は残せる

持分譲渡の場合は、元の会社は消滅します。しかし事業譲渡であれば、一部の事業のみの売却であるため、元の会社自体の存続が可能です。事業の売却で得られた資金で、新しい事業を始めたり財務状況の改善が図れたりできるでしょう。

出資者の社員の持分比率に変化はなく、引き続き会社を運営できます。さらに、顧客や取引先に迷惑をかける心配もありません。

会社自体を残したい場合は、事業譲渡が選択肢の一つとなりえます。

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

事業譲渡による売却のデメリット

続いて、事業譲渡による売却の主なデメリットは3つです。

  1. 資産や権利義務を移転する必要がある
  2. 売却後に負債が残る可能性がある
  3. 許認可を譲渡できない

それぞれの内容について詳しく見てみましょう。

資産や権利義務を移転する必要する

事業譲渡では、資産や負債、権利義務の移転手続きを個別に行う必要があるため、煩雑な手続きが発生し、時間もかかることがデメリットです。合同会社の持分譲渡の場合は経営権の移動のため、個別の移転手続きは発生しません。

譲渡の対象となる事務所や店舗、工場といった不動産、在庫、取引先、従業員、債務などに関して、それぞれ名義変更や契約の締結が必要になります。たとえば、譲渡対象資産に所有する不動産がある場合には、法務局での所有権移転登記が必要です。事務所の賃貸借契約を結んでいる場合には、所有者と買い手で賃貸借契約を結び直しが必要になります。また、債務の移転には債権者から個別に承諾を得なければなりません。

スムーズに資産や負債、権利義務の移転を進めるには、買収監査をもとに引き継ぎ方法の検討を十分に行い、事業譲渡契約書に記載しておくことが大切です。買い手側は重要な資産の引き継ぎが実現しなければ、事業運営に大きな影響を及ぼすことが懸念されます。また、従業員に関しても、主力となる人材と雇用契約を結ぶことができず、離職を選択する可能性があります。

売り手の事業規模が大きい場合や複数の事業を譲渡するケースでは、資産や負債の移転手続きが多岐にわたることが多く、事業譲渡というスキームを用いることに無理が生じることもあるため、慎重な検討が必要です。社員が1人の会社は持分譲渡の方がスムーズである可能性があるほか、社員が複数名の場合も持分譲渡の合意形成が図れるかが、スキームを選択するうえでのポイントとなります。

売却後に負債が残る可能性がある

合同会社の持分譲渡では、包括的に資産も負債もすべて買い手が引き継ぐため、売り手に負債が残ることはありません。しかし、事業譲渡では買い手と売り手で引き継ぐ資産や負債を個別に取り決めていくため、売り手に負債が残る可能性があります。負債の金額によっては、譲渡代金では返済できず、負債が残ってしまうリスクがあるのです。

また、事業譲渡にあたっては、売り手には法人税と消費税が課される点も考慮する必要があります。法人税は売却額が譲渡資産の簿価を上回った場合に課税の対象です。また、消費税の課税資産の売却には消費税がかかり、売り手が買い手から回収して税務署に納付します。そのため、資産がわずかに上回る状態の場合でも、法人税の支払いによって債務超過に陥る可能性があります。

事業譲渡によって売却後に債務超過となるリスクを避けるためには、事前に財務状況のシミュレーションを行っておくことが大切です。

許認可を譲渡できない

事業譲渡の場合、株式譲渡や吸収合併のような包括承継ではないため、事業に必要な許認可を譲渡できません。買い手側は、新規に許認可を取得する必要があります。

事業運営のために許認可が必要であれば、事業譲渡契約と同時に、許認可の手続きも並行して進めることが重要です。

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

合同会社の企業価値評価を算出する方法

M&Aにより企業を売却する場合、企業価値の評価が必要です。合同会社のM&Aにおいても同様です。

企業価値を測る手法は、大きく次の3つに分類されます。

  1. コストアプローチ
  2. インカムアプローチ
  3. マーケットアプローチ

それぞれの手法について、メリットとデメリットを解説します。

コストアプローチ

コストアプローチとは、会社の貸借対照表の資産・負債から純資産を算出し評価する手法です。貸借対照表の数字のみに着目するため、計算が容易で、客観性の高さがメリットです。

しかしながら、数字に表れない無形の資産が評価に反映されにくく、加えて売り手企業の将来性は反映されないというデメリットがあります。また帳簿に誤りがあれば、その誤りもそのまま反映されてしまう点もデメリットでしょう。

コストアプローチの具体的な手法としては、次の2つが挙げられます。

  • 簿価純資産法
  • 修正純資産法

貸借対照表を見慣れた方は、自分で計算できるでしょう。

インカムアプローチ

インカムアプローチとは、将来期待できる収益(キャッシュフローや配当など)をもとに企業価値を算出する手法です。売り手企業の将来性を反映した評価方法のため、ベンチャー企業やスタートアップ企業など、創業間もない資産価値の少ない企業を評価するのに適しています。

インカムアプローチは、市場状況や将来の収益力、またM&Aで得られるシナジー効果を反映できる点がメリットです。しかし評価する人の主観が介在するため、客観性が損なわれる点が大きなデメリットです。

インカムアプローチの具体的な評価方法としては、次の3つが挙げられます。

  • DCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)
  • 配当還元法
  • 収益還元法

インカムアプローチは計算が難しいため、専門家への依頼が欠かせません。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、自社事業に類似する上場企業の指標や取引事例などから相対的に価値を算出する手法です。情報を入手しやすく、客観的にかつ容易に計算できる点がメリットといえます。

しかし、類似企業の選択が困難であることや、そもそも小規模企業には適していない点がデメリットです。

マーケットアプローチの具体的な手法として、次の2つが挙げられます。

  • マルチプル法
  • 取引事例比較法

マーケットアプローチを活用する場合は、企業選択が重要なポイントです。税理士や公認会計士、M&A仲介会社へ相談してみてください。

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

合同会社の売却・M&Aに関する相談先

合同会社の売却やM&Aを行う場合は、専門家への相談が欠かせません。相談先としては、金融機関や税理士・公認会計士などの士業専門家、M&A仲介会社の3つが挙げられます。大まかな違いについては、次の表をご覧ください。

金融機関税理士や公認会計士などの士業専門家M&A仲介会社
料金
買い手とのマッチング地元企業とのマッチングに強みマッチングのためのネットワークをもっていないことが多い独自の充実したネットワークを持つため、高いマッチング率が特徴
M&Aノウハウの有無銀行によりばらつきがある少ない豊富
経営全般の相談不可可能可能

それでは、次に詳しく解説しましょう。

金融機関

取引金融機関は、日頃の取り引きを通して、会社の経営状況や財務、金融面の課題を把握している場合がほとんどです。そのため、内情を理解している金融機関は、相談先として頼りになる存在です。

金融機関は、地元企業との充実したネットワークを構築しています。地元で買い手候補を探している場合には、おすすめの相談先といえるでしょう。ただし、全国レベルでのネットワークを駆使した候補先の検索は難しいため、買い手候補は限られます。

金融機関のなかには、M&A支援に特化したサービスを提供しているところもあります。金融庁も、M&Aの相談機関ないしは支援機関としての働きを後押ししています。しかしながら資金調達と融資の相談が主な役割で、M&A全般のノウハウは専門会社に比べるとやや劣るといわざるを得ません。

また金融機関に依頼すると、費用が高額になるケースもあるため注意が必要です。

もう一つ覚えておくべき点は、金融機関の本業は融資業務のため、融資業務とM&A支援業務との間で利益が相反する事態が生じかねないということです。たとえば、売り手企業を支援するのと同時に買い手企業にも融資を行う場合、融資の回収のために譲渡価格を低く抑えようとする恣意が働く可能性があります。

銀行法により、金融機関にはこのような事態にならないような取り組みが求められていますが、相談する側も注意が必要でしょう。

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

税理士や公認会計士などの士業専門家

取り引きのある税理士や公認会計士などの士業専門家も、会社の財務状況を把握しているため、相談しやすい相手です。M&Aに必要な財務や税務、会計といった専門的な立場からアドバイスをもらえる点が大きなメリットです。

M&A仲介機関として専門の窓口を設けている事務所もありますが、費用が高額になる場合が多く、費用を抑えたい場合はほかの相談先を検討するほうがよいかもしれません。

またM&A全般に関する知識やノウハウ、ネットワークなど総合的なサポートを行える事務所は少ないのが現実です。M&Aのノウハウは少ないものの、経営全般の相談先としてはおすすめです。M&Aを実施する以前に、経営について相談したい場合に利用するとよいでしょう。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、売り手と買い手を引き合わせ、成約に向けて総合的にサポートを行う会社です。仲介会社に依頼する大きなメリットは、M&Aの知見やノウハウ、ネットワークが充実している点でしょう。全国レベルのネットワークを構築しており、幅広い候補先から相手を選ぶことができるため、高いマッチング率を見込めます。

相談からクロージングまで一貫したサポートが受けられる点もM&A仲介会社の特徴です。費用に関しても、多くのM&A仲介会社は完全成功報酬型を取り入れているため、予算に余裕がない企業でもM&Aを実施できます。

雇用の維持や相互理解などを条件に、友好的な事業承継を求めている場合は、M&A仲介会社がおすすめです。中小企業ではそのようなニーズが多く、M&A仲介会社がよく利用されています。

しかし売り手企業と買い手企業の双方の支援を行う場合、仲介会社は買い手企業に偏った支援を行う傾向にあります。なぜなら、買い手企業は将来も他社を買収する可能性があり、仲介会社にとっては今後も大事な顧客となりうるからです。

仲介会社は、中立的な立場を維持しようと留意して支援を行っていますが、利用者側もこの点については注意が必要です。

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

まとめ

合同会社は、持分譲渡により株式譲渡に近い形で会社を売却できます。しかし持分譲渡は、社員全員の同意が必要なため、売却がスムーズに進まないケースが多々あります。このような場合は、比較的手続きを行いやすい事業譲渡を検討するとよいでしょう。

持分譲渡や事業譲渡による合同会社の売却は、自社で進めるのは困難なため、M&Aの専門家への相談が欠かせません。

M&AならレバレジーズM&Aアドバイザリーにご相談を

レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、豊富な実績を誇るM&A仲介会社です。各領域に精通したコンサルタントが、相談から成約まであらゆるサポートを行います。

合同会社の売却についても、御社の状況に適したスキームでM&Aを実施するため安心して任せられます。料金に関しては完全成功報酬型で、M&Aご成約まで料金は発生しません(譲受側のみ中間金あり)。無料相談も受けつけているため、会社売却についてのお悩みなら、ぜひお気軽にご相談ください。