このページのまとめ
- 会社分割では登記申請が必要である
- 吸収分割と新設分割で必要な書類や手続きの流れが異なる
- 会社分割の登記申請では多くの書類を提出する必要がある
- 会社分割の登記申請は、分割効力発生日から2週間以内に実施する
- 必要に応じて外部の事業者のサポートを受けることが大切
会社分割の際は、複雑な登記手続きが必要です。どのような流れで手続きを進めるべきなのか、何を用意すればよいのかなど、わからないことも多いでしょう。
本記事では、会社分割における登記手続きについて、流れや必要書類、期限や費用などを解説します。手続きの委託先や会社分割の相談先も紹介しているため、会社分割に向けて準備を進めている方はぜひ参考にしてください。
関連記事:会社分割とは?事業譲渡との違いや実施方法、ポイントを解説
目次
会社分割における登記
まず、本記事で取り扱う「会社分割」や「登記」といった用語の意味を解説します。
吸収分割と新設分割
会社分割とは、特定の事業を切り離して別の企業に譲渡するM&Aの手法であり、吸収分割と新設分割に大別されます。吸収分割は、分割した事業の権利義務を既存の会社に承継する形式です。一方で新設分割は、新たに設立する会社に事業を承継する形式となります。
吸収分割 | 新設分割 | |
事業承継の手法 | 既存会社が承継 | 新設会社が承継 |
承継の対価 | 金銭 | 株式 |
厳密には、吸収分割は対価の受け取り方法に応じて2種類、新設分割は関連する会社との関係に応じて3種類に細かく分けられます。ただし、登記手続きの観点では、吸収分割と新設分割のレベルで流れなどが異なるため、手法ごとの詳細は本記事では割愛します。
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登記
登記とは、「法人や個人が保有する、財産の権利や義務を公示し、帳簿に登録すること」と定義され、関係者間での円滑な取引を可能にすることを目的としています。登記を行うことで、第三者に対し権利を主張でき、社会からの信頼も得やすくなります。
登記には主に不動産登記と商業登記がありますが、本コラムで扱うようなビジネス上の手続きは商業登記にあたります。
会社法人等番号 | 設立した際に割り振られる番号 |
商号 | 会社名 |
本店 | 会社の本店所在地 |
目的 | 会社の事業目的や内容 |
発行可能株式総数 | 株式会社の場合は発行可能な株式の総数 |
資本金 | 資本金の額 |
役員 | 代表取締役や取締役の情報 |
商業登記には主に以下の項目が記載されており、これらは取引を行う際に相手方の情報確認などで利用されます。商業登記というと、会社設立時に行う手続きを思い浮かべる方が多く、そこまで煩雑なイメージはないかもしれません。しかしながら、会社分割における商業登記手続きは、より複雑で専門的な知識が求められるため、ぜひ本コラムにて理解を深めてください。
吸収分割の登記申請について
ここからは、吸収分割と新設分割それぞれの登記申請における、具体的な手続きのフローを紹介していきます。まずは、吸収分割におけるフローです。
吸収分割の登記申請全体の流れ
吸収分割の手続きは、次の5つのステップに沿って進めます。
- 分割契約書の作成および締結
- 株主総会での承認決議
- 債権者の保護手続き
- 分割効力発生
- 登記申請
それぞれについてやるべきことを解説します。
1.分割契約書の作成
まずは、分割会社と承継会社間で協議のうえ、吸収分割の内容を契約書にまとめましょう。
契約書には、必ず記載しなければならない法定記載事項と、必要に応じて記載する任意記載事項があります。任意記載事項の例は、吸収分割実施後の従業員の処遇や、財産の管理に関する善管注意義務、分割会社の承継会社に対する競業避止義務などです。
任意記載事項の内容については当事者で協議し、双方が納得のいく契約内容になるようにしましょう。
2.取締役会での承認決議
分割会社と承継会社が取締役会を設置している場合は、取締役会を開き、契約内容について承認を得なければなりません。吸収分割の前は、契約締結前に取締役会を開催し、承認を得ましょう。
取締役会の議事録も提出しなければならないため、開催日時や開催場所、出席取締役名、承認内容などを記録することが必要です。
分割契約の承認と併せて、株主総会の招集についても決議しましょう。
3.債権者の保護手続き
会社分割では、債権者の保護手続きが必要です。会社分割では債権者個別の同意を得る必要がなく、債権者に拒否権がないため、救済措置として保護手続きを行わなければなりません。
債権者保護手続きは、官報公告によって行います。会社分割を実施する旨や、分割会社と承継会社の商号、所在地、貸借対照表などを記載しましょう。そして、異議のある債権者は1ヶ月以内に申し出るよう公告します。
4.分割効力発生
債権者保護手続きを行った後、吸収分割の効力発生日までに分割会社で株主総会の特別決議を行います。
特別決議では、議決権を行使できる株主の過半数が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成を得なければなりません。
その後、株主に対して通知・公告を行い、株主から株式買取請求があった場合は買い取りに応じる必要があります。
株主総会を経て問題がなければ、分割契約書で定めた効力発生日に、分割の効力が発生します。
5.登記申請
効力発生日から2週間以内に、登記申請を行いましょう。分割会社と承継会社の管轄登記所(法務局)が異なる場合は、承継会社を管轄する登記所で分割会社の登記も申請します。
吸収分割の登記申請者
吸収分割の際には、以下のいずれかに該当するものが登記申請者となります。
- 会社分割をする会社の代表者
- 分割会社を吸収する会社の代表者
- 会社分割をする会社もしくは吸収する会社の代表者から依頼された司法書士
吸収分割の登記申請は専門家に依頼するケースが多く、3番目の「会社分割する会社もしくは吸収する会社の代表者から依頼を受けた司法書士」が登記申請を行うのが一般的です。
また、登記申請を司法書士が行う場合は、代理人に委任した委任状が必要です。委任状には、登記所に提出している印鑑の押印が求められます。
吸収分割の登記をする際の必要書類
登記にあたり、提出が必要な書類は以下のとおりです。提出が必須の書類と、必要に応じて要求される書類があるため、事前に準備しておきましょう。
提出必須の書類
吸収分割の登記をする際は、以下の書類の提出が必要です。
- 分割契約書
- 分割会社・承継会社の株主総会議事録
- 株主リスト
- 官報公告のコピー
- 債権者の異議がないことを示す上申書
- 債権者保護手続き書類
なお、2016年10月より、会社分割の登記申請時に株主リストの提出が必要となりました。
株主リストは、株主名簿と混同しやすい点に注意が必要です。どちらも株主の名称や住所、各株主の保有株式の数を記載した書類ですが、株主リストには株式の種類、議決権数および割合も記載されています。株券番号や株式取得日が記載されている株式名簿とは異なります。非常に間違えやすいため、提出時にあらためて確認してください。
必要に応じて提出する書類
以下の書類は、必要に応じて提出が求められます。
- 分割会社の登記証明書
- 分割会社の印鑑証明書
- 承継会社の資本金計上証明書
- 委任状
分割会社の登記証明書と印鑑証明書は、分割会社と承継会社の管轄登記所が異なる場合に必要です。
承継会社の資本金計上証明書は、資本金が会社法の規定に従って計上されていることを証明するために提出が求められるケースがあります。また、登記を司法書士に依頼する場合は委任状が必要です。
吸収分割の登記申請所
吸収分割をする際は、吸収する側の会社における本店所在地を管轄する法務局が登記申請所となります。
ちなみに、登記申請は吸収する側の「承継会社」と吸収される側の会社「分割会社」それぞれで行う必要があります。
承継会社は管轄法務局で登記申請を行いますが、分割会社においては、管轄法務局が承継会社と同じかどうかで申請プロセスが以下のように異なります。
管轄法務局が同じ | 管轄法務局にて承継会社と同時に登記申請 |
管轄法務局が違う | 承継会社の管轄法務局経由で分割会社の管轄法務局へ経由申請 |
吸収分割の登記期限
吸収分割の登記期限 | 効力発生日から2週間以内 |
期限を過ぎた場合の過料 | 100万円以下 |
吸収分割の登記は、吸収分割契約書に定めた会社分割を行う日である「効力発生日」から2週間以内に行います。2週間をすぎると100万円以下の過料が発生するため注意しましょう。
過料は裁判所から請求され、登記期限から過ぎた期間が長ければ長いほど過料金額が高くなる傾向があります。
ちなみに、過料は必ずしも請求されるわけではありません。過去には効力発生日から数年程度過ぎて申請しても請求されなかった事例があります。
ただ、過料が発生するケースの方が一般的なため、効力発生日から2週間以内に登記を行うのが無難です。
新設分割の登記申請について
続いて、新設分割における手続きのフローを紹介します。吸収分割と流れは類似していますが、異なる点も多いため、両者の違いを正しく理解しましょう。
新設分割の登記申請全体の流れ
新設分割登記の具体的な流れも吸収分割と同様です。次の5つのステップに沿って行います。
- 分割計画書の作成
- 株主総会での承認決議
- 債権者の保護手続き
- 分割効力発生
- 登記申請
それぞれについて見ていきましょう。
1.分割計画書の作成
新設分割では、契約書の代わりに分割計画書を作成する必要があります。承継会社が設立されておらず、契約書を作成できないためです。
分割計画書には、以下のような事項を記載します。
- 新設会社の設立目的、商号、本店の所在地、発行可能株式総数など
- 新設会社設立時の取締役の氏名
- 新設会社設立時の監査役、会計参与、会計監査人の氏名
- 新設会社が承継する権利義務や資産、負債、契約など
- 分割会社に割り当てる株式や社債
- 新設会社の新株予約権など
分割計画書は、事前開示・備置が必要です。
2.取締役会での承認決議
吸収分割と同様に、分割計画書の内容について取締役会の承認を得ましょう。
議事録を提出できるよう、開催日時や開催場所、出席取締役名、承認内容について記録しておきます。
同時に、株主総会の招集についても決議しましょう。
3.債権者の保護手続き
官報公告に会社分割を実施する旨や分割会社と承継会社の概要などを記載し、債権者保護手続きを行います。
なお、官報公告の掲載を申し込んでから実際に掲載されるまではタイムラグがあります。実際に掲載される日数を確認し、余裕を持って申し込むことが大切です。
官報公告掲載後、異議を申し立てる債権者が現れたら、別途対応する必要があります。
4.分割効力発生
新設分割会社の株主総会特別会議で賛成を得た後、会社分割が認められます。議決権の過半数を有する株主から、3分の2以上の賛成を得ることが必要です。
吸収分割と同様に、反対する株主から株式買取請求があった場合は、公正な価格で買い取らなければなりません。買取請求権は、会社分割の効力発生日の20日前から前日まで行使できます。
5.登記申請
分割効力発生日から2週間以内に、登記申請を行います。新設会社の本店所在地を管轄する法務局に申請しましょう。
新設分割の登記では、会社設立の登記に加え、分割に関する登記も行わなければなりません。
新設分割の登記申請者
新設分割をする際の登記申請者は、以下のいずれかに該当するもののみです。
- 会社分割をする会社の代表者
- 新設会社の代表者
- 会社分割をする会社もしくは新設会社の代表者から依頼された司法書士
吸収分割のケースと同様、多くの場合3番目の「依頼された司法書士」が代理で登記申請を行うのが一般的です。
なお、代理人が申請を行う場合は、登記所に提出している印鑑が押印された委任状が必要になります。
新設分割の登記をする際の必要書類
提出書類も、吸収分割と新設分割で一部異なります(下記の赤字部分)。上述した新設分割計画書のほか、新設会社に関する定款、役員就任承諾書および印鑑証明書、資本金計上証明書は、新設分割でのみ提出が求められる書類です。
また、必要に応じて提出する書類には、吸収分割における承継会社の資本金計上証明書ではなく、新設会社の代表取締役選定書が含まれる点に留意してください。
提出必須の書類
新設分割の際は、以下の書類を提出する必要があります。
- 新設分割計画書
- 分割会社の株主総会議事録
- 株主リスト
- 官報公告のコピー
- 債権者の異議がないことを示す上申書
- 債権者保護手続き書類
- 新設会社の定款
- 新設会社の役員就任承諾書・印鑑証明書
- 新設会社の資本金計上証明書
提出書類も、吸収分割と新設分割で一部異なります(下記の赤字部分)。上述した新設分割計画書のほか、新設会社に関する定款、役員就任承諾書および印鑑証明書、資本金計上証明書は、新設分割でのみ提出が求められる書類です。
必要に応じて提出する書類
- 分割会社の登記証明書
- 分割会社の印鑑証明書
- 委任状
- 代表取締役選定書
新設分割の登記申請所
新設分割をする際は、新規に設立する会社の本店所在地を管轄する法務局が登記申請所となります。
また、吸収分割のケースと同様に、分割する会社の分割申請も吸収分割の登記申請所と同じ法務局に申請しなければなりません。
新設会社の登記申請は管轄法務局ですが、分割会社側の登記申請所は新設会社と管轄法務局が同じかどうかで以下のように異なります。
管轄法務局が同じ | 管轄法務局にて承継会社と同時に登記申請する |
管轄法務局が違う | 新設会社の管轄法務局経由で分割会社の管轄法務局へ経由申請 |
新設分割の登記期限
新規分割の登録期限は吸収分割と同様で2週間です。ただ、効力発生日の考え方と登記期限にあたる2週間の起点日が異なるため、ご注意ください。
起点日は新設分割に関する以下の手続きのうち、いずれかが完了した最も遅い日になります。
- 新設分割計画承認が株主総会で決議された日
- 新設分割をするために種類株主総会の決議が必要な場合は、その決議の日
- 反対株主に通知または公告を行った日を起点に20日を経過した日(反対株主が買取請求した場合)
- 新株予約権者に通知または公告を行った日を起点に20日を経過した日(新株予約権の買取請求が発生した場合)債権者保護手続きが終了した日
吸収分割と異なり、登記期限を過ぎても罰金に該当する過料は請求されません。ただし、新規分割の場合、会社分割と異なり効力発生日は新設会社の設立登記日となります。
新設分割の登記をしなければ、新設会社が存在している証明ができず、取引などにおいて不利益が生じる可能性があります。新規分割の登記は可能な限り早く行いましょう。
会社分割の登記申請にかかる3つの費用
会社分割の登記申請をする際には、主に以下3つの費用が発生します。
- 登記免許税
- 官報公告費
- 司法書士に支払う報酬
ここからは、上記3つの会社分割の登記申請にかかる費用について詳しく解説します。
1.登録免許税
登録免許税とは、会社や不動産の登記、資格の認定、特許の取得などを行う際に必要な税金のことです。登記などの事務作業を行う登記官署の所在地において、以下のいずれかの方法で納付します。
- 現金納付
- 印紙納付(納税額が3万円以下の場合)
- キャッシュレス納付
ちなみに、キャッシュレス納付には以下の2種類の方法があります。
- インターネットバンキングや金融機関のATMなど
- 登記を所管する省庁の長が指定したクレジットカード、電子マネー、QRコードなど
登録免許税は分割する会社と吸収もしくは新設する会社の双方に発生します。
分割する会社は、吸収分割する場合も新設分割する場合も同様で3万円ですが、承継する会社の登録免許税は、吸収分割するか新設分割するかにより異なります。
ここからは、吸収分割と新設分割の承継会社における登録免許税について詳しく解説します。
吸収分割の場合
吸収分割の際に発生する登録免許税は、吸収する会社の資本金額が増加する場合としない場合で以下のように異なります。
資本金額が増加しない場合 | 分割する会社同様3万円 |
資本金額が増加する場合 | 資本金の増加×0.7% |
ただし、吸収する会社の資本金が増加する場合の計算に関しては、計算結果が3万円を超えるかどうかで登録免許税が以下のように異なります。
資本金の増加額×0.7%が3万円未満の場合 | 一律3万円 |
資本金の増加額×0.7%が3万円以上の場合 | 算出された金額 |
新設分割の場合
新設分割の際に発生する登録免許税は以下の計算式で算出されます。
新設分割における納付額納付額 | 資本金の増加×0.7% |
当然ですが、資本金の増加額ではなく資本金額をベースに算出される点にご注意ください。また、吸収分割同様に算出された金額が3万円を超えるかどうかで登録免許税が異なります。
資本金×0.7%が3万円未満の場合 | 一律3万円 |
資本金×0.7%が3万円以上の場合 | 算出された金額 |
2.官報公告費
会社分割をする際は官報で公告する必要があり、官報掲載の費用が発生します。
ちなみに、官報とは政府が発行している新聞のことで、決算や合併など会社の重要な情報は、必ず官報に掲載しなければなりません。
官報公告費の目安となる金額と、一般的な費用は以下の通りです。
官報公告費の目安 | 1行当たり3,500円程度 |
一般的な会社分割の公告費用目安 | 22行程度で7万円〜8万円程度 |
ただし、多くの場合は会社分割の公告と併せて決算公告を行うのが一般的で、この場合の費用総額は15万円~17万円程度になります。
3.司法書士に支払う報酬
登記申請者で解説した通り、委任を受けた司法書士が登記手続きを代行するケースがあり、その場合は司法書士に支払う報酬が発生します。
分割会社の登記手続きは、法人登記の中でも難易度が高く、自社で行うのは非常に困難です。
司法書士に支払う報酬は依頼する事務所により異なりますが、1対1の基本的な分割手続きであれば20万円〜30万円が一般的な報酬相場です。
会社分割の登記手続きの内製化と外部への委託
ここまで紹介したとおり、会社分割における登記手続きには、専門的な知識が不可欠です。そのため、外部事業者を活用することも選択肢の1つとなるでしょう。
本章では、自社で登記手続きを行うメリットとデメリットを踏まえて、登記手続き業務を担う外部事業者の特徴について解説します。
自社での内製化によるメリットとデメリット
自社で会社分割における登記手続きを行うメリットは、何といってもコスト削減でしょう。外部事業者に委託すると、数万円から数十万円、場合によっては百万円以上の委託費用が発生します。また、外部事業者との個別のコミュニケーションや、秘密保持契約の締結なども行わなければいけません。内製化することで、これらの業務にかかるコストや負担を削減できます。
一方で、会社分割における複雑な登記手続きを実行できる、高度な専門知識を持つ人材は限られていることも事実です。また、手続きには書類の作成をはじめとして、多くの時間と工数を要するため、他業務への影響も加味しなければなりません。
通常、会社分割は定常的に発生するものではなく、あっても数年に一度です。そうしたイレギュラーな業務において、内製化によるコスト削減のインパクトは、総合的に見ればそれほど大きくないでしょう。
したがって、多くのノウハウを社内に蓄積している、もしくは実績を持つ人材が自社にいる場合を除いて、会社分割の登記手続きは外部に委託することが有効といえます。
外部事業者の種類と特徴
では、どのような外部事業者に委託すればよいのでしょうか。
一般的に、登記手続き業務を行う外部事業者としては、次の4種類が挙げられます。以下に、事業者ごとの強みをまとめました。
外部事業者 | 強み |
司法書士事務所 | 登記手続きなどの法関連手続き |
M&A仲介会社 | M&Aに関するプロセス全般の支援 |
総合コンサルティング会社 | 上流の経営戦略レベルからの支援 |
SaaS系プロバイダー | 必要書類のフォーマットを活用した登録手続きの効率化 |
司法書士事務所、M&A仲介会社、総合コンサルティング会社については、どのフェーズを委託するかによって選択すべき事業者が異なります。費用は事業者によって大きく異なりますが、当然、支援範囲が広いほど費用も高くなります。したがって、自社が持つケイパビリティや支援範囲、費用などによる総合的な判断が必要です。
SaaS系プロバイダーは、登記手続きをサポートしてくれるというよりは、必要書類のフォーマットを活用して登録手続きの効率化を支援してくれるのが特徴です。委託費用が比較的安価ですむため、自社に専門的な知識を持つ人材がすでに存在する場合はSaaS系プロバイダーを活用するとよいでしょう。
- 司法書士事務所
- M&A仲介会社
- 総合コンサルティング会社
- SaaS系プロバイダー
上記1~3は、どのフェーズから委託を依頼するかによって、選択すべき事業者が異なります。
1の司法書士事務所は、登記手続きなどの法関連手続きに強みがあります。ただし、全ての司法書士が会社分割の登記を得意としているわけではないため、ご注意ください。
2のM&A仲介会社はM&Aに関するプロセス全般を、3の総合コンサルティング会社はさらに上流の経営戦略レベルからの支援を得意とする事業者です。
費用は事業者によって大きく異なりますが、当然、支援範囲が広いほど総費用も高くなります。したがって、自社が持つケイパビリティや支援範囲、費用などによる総合的な判断が必要です。4のSaaS系プロバイダーは、支援というよりも、必要書類などのフォーマットを有しているため、登記手続きの簡略化が可能です。1~3と比較して、委託費用は安価で済みます。自社に専門的な知識を持つ人材がすでに存在する場合に活用するとよいでしょう。
会社分割の相談先
会社分割は、信頼できる専門家に相談して進めることが大切です。会社分割の相談先としては、以下が挙げられます。
相談先 |
特徴 |
M&A仲介会社 |
|
公認会計士や司法書士などの士業 |
|
事業承継・引継ぎ支援センター |
|
金融機関 |
|
商工会議所 |
|
ここでは、それぞれの相談先についてメリットとデメリットを解説します。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、会社分割をはじめとするM&A全般に関する知識を持った専門家です。M&A戦略の策定から成約まで一気通貫でサポートしてくれる場合も多いため、会社分割をスムーズに進められるでしょう。弁護士や公認会計士といった士業や金融機関と連携している仲介会社も多く、安心して会社分割を実行できます。
M&A仲介会社の料金体系や費用は会社によってさまざまです。仲介会社によっては高額な費用が発生する可能性もあるため、事前に費用についてはよく確認しておきましょう。
公認会計士や司法書士などの士業
財務や法務、税務などの専門的なアドバイスを受けたい場合は、公認会計士や司法書士などの士業に依頼するのがおすすめです。
前述のとおり、司法書士には会社分割で重要な登記手続きを依頼できます。
また、公認会計士や税理士、弁護士に依頼することで、それぞれの専門分野を活かしたサポートを受けられるでしょう。各士業の専門分野や担当業務は以下のとおりです。
士業 |
専門分野 |
担当業務 |
公認会計士 |
監査・会計 |
|
税理士 |
税務 |
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弁護士 |
法務 |
|
士業に依頼する際は、会社分割やM&Aの専門家ではない点に注意しましょう。M&A仲介会社のように、会社分割のプロセスすべてをサポートしてくれるわけではない可能性もあります。会社分割やM&Aの支援実績が豊富な士業に依頼することが大切です。
事業承継・引継ぎ支援センター
事業承継・引継ぎ支援センターは、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する事業承継の相談窓口です。中小企業の事業承継をサポートしており、全国47都道府県に設置されています。無料で利用でき、公的機関であるため安心して相談できるのも魅力です。
ただし、会社分割のプロセスを一貫してサポートしてくれるわけではありません。相談やマッチング支援などを行った後は、金融機関や仲介事業者へ引き継ぎます。そのため、会社分割の完了までを1つの相談先でサポートしてもらいたい場合は不向きです。
金融機関
日頃から取引のある金融機関にM&Aの専門部署が存在する場合は、金融機関に相談するのも1つの選択肢です。自社の財務状況を理解している、信頼できる相手に相談できます。事業承継の相手を探している場合は、金融機関が持つ豊富なネットワークを活用して相手を探してくれるのもポイントです。
一方、金融機関が扱う案件は大型のものが多く、中小企業のニーズに合った相手を見つけるのが難しいというデメリットがあります。また、費用も比較的高い傾向にあります。
商工会議所
商工会議所や商工会に相談することも可能です。税理士や弁護士、公認会計士などの士業専門家が所属しており、会社分割やM&Aに関する相談ができます。
商工会議所や商工会に入会している場合は、多くのサービスを無料で利用できるのがメリットです。また、地域のネットワークを活用して相手を探してくれるため、同じ地域内でM&Aの相手を探している方にも適しています。
一方、会社分割やM&Aを専門に扱っているわけではなく、会社分割のプロセスを一貫してサポートしてくれるわけではない点に注意が必要です。会社分割の手続きや相手との交渉などは依頼できません。
まとめ
会社分割には吸収分割と新設分割があり、それぞれ登記手続きが必要です。登記の際は多くの書類を提出する必要があり、登記までに取締役会や株主総会などを開催しなければなりません。登記手続きは複雑であるため、事前に流れや必要書類などを理解し、余裕を持って準備を進めることが大切です。分割の効力発生日から2週間以内に申請できるようにしましょう。
登記手続きは、司法書士に依頼することも可能です。また、会社分割を一貫してサポートしてもらいたい場合は、M&A仲介会社を活用するとよいでしょう。
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