類似企業比較法(マルチプル法)とは?メリットや手順、数値例を紹介

2024年3月25日

類似企業比較法(マルチプル法)とは?メリットや手順、数値例を紹介

このページのまとめ

  • 類似企業比較法とは類似する企業を参考に企業価値を算出する方法のこと
  • 類似企業比較法はマルチプル法や類似企業比準法とも呼ばれる
  • 類似企業比較法は他の方法と比べて計算方法が比較的簡単
  • 特殊な事業内容の場合は類似企業が見つかりにくい
  • 類似企業比較法はマーケットアプローチによるバリュエーション手法である

「M&Aをする前に企業価値を正確に把握しておきたい」と考えている方も多いのではないでしょうか。本コラムでは、企業価値の算出方法の1つである類似企業比較法について説明します。他の算出方法との違いやメリット、デメリット、具体的な計算方法なども数値例を用いて解説します。M&Aを成功させるためにも、ぜひお役立てください。

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類似企業比較法(マルチプル法)とは?

類似企業比較法とは、類似した企業の企業価値算出の例から、適正な企業価値を導き出す方法です。マルチプル法や類似企業比準法、類似会社比較法、コンパリソン、倍率法などとも呼ばれることがあります。

類似企業比較法は、どのような企業を類似していると判断するかによって、評価が変わる方法です。そのため、類似企業の選定基準を明確にすることが、正確な評価の重要なポイントとなります。

また類似企業比較法は、基本的には非上場企業の企業価値を算出するときに使用されます。上場企業では株式が公開されているため時価総額も簡単に計算でき、企業価値を客観的に求めることが可能です。しかし、非上場企業では株価が客観的に決まるわけではないため、企業価値の算定も容易ではありません。

類似企業比較法では、客観的に企業価値を計算できる上場企業を基に対象企業の企業価値を算定するため、算出した金額に客観性を付与できます。

類似取引比較法との違い

類似取引比較法とは、類似する規模の会社のM&Aの例から、適正な企業価値を導き出す方法です。類似企業比較法とは異なり、参考にする企業は上場企業に限られません。

関連記事:企業価値とは?計算方法や高めるための4つの方法をわかりやすく解説

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類似企業比較法のメリット

類似企業比較法を使って企業価値を算出することには、次のメリットがあります。

  • 計算式が比較的簡単
  • 市場価値と比較できる

それぞれのメリットについて見ていきましょう。

計算式が比較的簡単

類似企業比較法では、基となるデータの比を計算するだけで企業価値を求められるため、計算式が簡単です。たとえば、EBITDAなどの特定の数値が何倍になっているかを求め、その倍率を時価総額にかけるだけで企業価値が算出できます。

複雑な計算式を必要としないため、企業価値を正確に求めるときだけでなく、概算するときにも用いられます。いくつか類似企業を上げて、それぞれの基準となる数値を出し、対象企業の企業価値の目安を把握することも可能です。

市場価値と比較できる

類似企業比較法では、計算のベースとなる企業を複数設定することも可能です。いくつかの企業を類似企業として対象企業の企業価値を調べることで、算出した数字が市場において妥当なものなのか、あるいは割高・割安なのか判断しやすくなります。

たとえば類似企業として、A社、B社、C社の3社を設定したとしましょう。対象企業の当期純利益が1億円とした場合、類似企業の設定によって以下のように時価総額(=企業価値)は変わります。

類似企業当期純利益時価総額対象企業の企業価値の推算
A社10億円50億円5億円
B社20億円80億円4億円
C社5億円30億円6億円

この場合であればA社を基準に推算すれば中央値としてほぼ妥当な数字が出ますが、B社では割安、C社では割高な企業価値が算出されます。M&Aを実施する際、割高感のある価格に設定すると取引が成立しなくなるリスクがあります。M&Aの成功のためにも、複数の企業を基準とした類似企業比較法などを用いて、自社の市場価値を客観的に把握しておくことが必要です。

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類似企業比較法のデメリット

類似企業比較法には、デメリットもあります。主なデメリットとしては、次の2つが挙げられます。

  • 類似企業の選定が難しい
  • 事業内容が特殊なときは類似企業が見つからない

具体的にはどのようなデメリットなのか、わかりやすく説明します。

類似企業の選定が難しい

類似企業比較法では、類似する企業であればすべて計算に活用可能です。しかし、何をもって「類似」と判断するかが難しく、選定基準によって計算結果にブレが生じる可能性があります。

たとえば事業内容が類似する企業やビジネスモデルが類似する企業、エリアや業績の変遷が類似する企業など、さまざまな選定基準に応じて計算結果が大きく変わります。

事業内容が類似する企業に絞った場合でも、まったく事業内容が同じというケースはあまりありません。メイン事業以外に取り組んでいる事業や社会貢献活動などによっても変わるため、慎重に選定することが求められます。

ただし、類似企業の選定が難しいということは、反対にいえば意図的に企業価値を決められるということでもあります。たとえば意図的に企業価値が高くなるように、あるいは低くなるように類似企業を設定することが可能です。そのため、具体的な数字で企業価値を算出できますが、その数値が本当に客観的なのか疑う必要があります。

事業内容が特殊なときは類似企業が見つからない

事業内容やビジネスモデルが特殊で、類似企業が見つからないというケースもあります。特にベンチャー企業などはビジネスモデルが特殊なことが多いため、類似企業が存在しないことも珍しくありません。

上場企業に類似企業が見つからないときは、類似企業比較法は用いることができません。簿価純資産法などのコストアプローチや、収益還元法などのインカムアプローチなどの他の方法を使って、企業価値を求めることが必要です。

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類似企業比較法の計算に用いるデータ

類似企業比較法では、類似企業のデータを使って対象企業の企業価値を算出します。類似企業比較法に用いられるデータとしては、次のものが挙げられます。

  • 売上高倍率
  • PER
  • PBR
  • EBITDA倍率
  • EBIT倍率

それぞれのデータの特徴、メリット、デメリット、向き不向きを紹介します。

売上高倍率

売上高倍率とは、時価総額を年間の売上高で割ったものです。株価売上高倍率やPSRとも呼ばれます。企業規模やビジネスモデルによっても異なりますが、0.5倍以下なら割安、20倍以上は割高と判断されることが一般的です。

ただし、中小企業と上場企業の利益率は異なるため、売上高倍率を用いて企業価値を算出すると、現実離れした数値が出る可能性があります。他の指標とも組み合わせ、より客観的な金額を導き出すようにしましょう。

PER

PER(Price Earnings Ratio)とは、1株あたりの株主価値を1株あたりの当期純利益で割ったものです。現在の株価が企業の利益と比べて、割安か割高かを判断する際に用いられます。

PERが小さいほど株価は割安、反対に大きいほど株価は割高と判断します。ただし、割安・割高の基準は業種によっても異なるため、同業他社のPERを比較することが必要です。

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PBR

PBR(Price Book-value Ratio)とは、株価が1株あたり純資産の何倍まで買われているかを評価する指標です。株式時価総額を簿価純資産額で割って求めます。PERと同じく株価が割安かどうか判断する際に用いられます。

なお、理論的にはPBR=1のときは株価の底値と考えられますが、PBRが1未満でも安定した経営を実現している企業もあり、PBR=1かどうかだけでは割安・割高を判断できません。業種によっても基準が異なるため、同業他社のPBRと比較して判断することが必要です。

EBITDA倍率

EBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)倍率は、営業利益+減価償却費で求められる指標です。

EBITDAを類似企業比較法で用いるときは、EV/EBITDA倍率(事業価値がEBITDAの何倍になっているかを表す指標)を参考にすることが一般的です。EV/EBITDA倍率の平均は業種や企業規模によって異なるため、類似する業種・企業規模の企業を適切に見つけることが前提となります。

EBIT倍率

EBIT(Earnings Before Interest, Taxes)倍率とは、営業利益とほぼ同義です。税引前当期純利益または経常利益に支払利息を足し、受取利息を引いて算出します。

EBIT倍率を類似企業比較法で用いるときは、EBITマージン(EBITを売上高で割った倍率)を参考にすることが一般的です。EBITマージンは業界によって差があるため、同業他社のEBITマージンを参考にすることが必要になります。また、業界によってはEBITマージンがマイナスになることもあり、計算時に注意が必要です。

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他のバリュエーション手法との関係

企業価値を算定するバリュエーション手法には、マーケットアプローチ、コストアプローチ、インカムアプローチがあります。類似企業比較法は、マーケットアプローチに含まれます。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、上場している同業他社や類似した取引事例などから企業価値や事業価値を推定・計算する手法です。主な手法には、類似企業比較法以外に、「市場株価法(評価対象企業の株式の市場価格などを基に評価する方法)」があります。マーケットアプローチの長所としては、客観性があり、市場での取引環境を反映できる点が挙げられますが、短所として企業の固有の性質を反映できない点が挙げられます。

コストアプローチ

コストアプローチ(ネットアセットアプローチ)は、企業価値や事業価値を評価する際に、主に評価対象企業の貸借対照表の純資産に焦点を当てる手法です。代表的な手法として、「修正簿価純資産法」と「時価純資産法」があります。長所として客観性があることが挙げられますが、短所として市場での取引環境や将来の収益獲得能力を反映できない点が挙げられます。

インカムアプローチ

インカムアプローチは、将来期待されるキャッシュフローや利益を基に企業価値や事業価値を算定する手法です。主な手法には、「DCF法(期待されるキャッシュフローを現在価値に割り引いて評価する方法)」や「収益還元法(期待される収益を現在価値に割り引いて評価する方法)」があります。長所として市場での取引環境や企業固有の性質を反映できる点が挙げられますが、短所として客観性に欠ける点が挙げられます。

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類似企業比較法の計算手順

類似企業比較法は、次の手順で計算を進めていきます。

  1. 類似企業を選定する
  2. 事業価値を算出する
  3. 倍率を算出する
  4. ディスカウントを実施する

それぞれの手順を見ていきましょう。

1.類似企業を選定する

まずは類似企業の選定です。類似企業をどこにするかによって結果が大きく変わるため、慎重に選ばなくてはいけません。また、類似企業比較法に用いるほとんどのデータは業種によって基準が異なるため、対象企業の業種を正確に見極め、類似性の高い企業を選ぶことが必要です。

一般的には業種だけでなく、規模や収益性なども参考にして類似企業を絞ります。できれば10社以上を類似企業とすると、より客観性の高い計算が可能になるでしょう。同業種の類似企業が上場企業に見つからないときは、顧客の属性やビジネスモデルなども参考に類似企業を選定します。

2.事業価値を算出する

次は対象企業の事業価値(Enterprise Value、EV)を算出します。次の計算式で求めてください。

事業価値=株式時価総額+純有利子負債

対象企業の事業価値を計算した後で、類似企業の事業価値も計算します。類似企業が10社であれば10社すべての事業価値を計算し、平均値を出しておきましょう。

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3.倍率を算出する

次は評価倍率の計算です。評価倍率を計算するときには、売上高倍率やPBR、PER、EBITDA倍率などのデータを用います。どのデータでも問題はありませんが、類似企業の数を増やすこと、倍率の中央値を用いることなどに注意をして客観性を保つことが大切です。

なお、平均値とは複数のデータを合算し、データの母数で割って算出する数字です。一方、中央値とはデータを降順か昇順に並べ、中央に来る数字のことを指します。

たとえば30、50、160という3つのデータがある場合、平均値は(30+50+160)÷3=80ですが、中央値は50です。平均値は異常に大きな数字(この場合であれば160)や小さな数字に結果が引きずられやすいため、類似企業比較法の倍率は実情に則した中央値を用いるようにしましょう。

EBITDAを用いる場合

EBITDAは、営業利益+減価償却費で計算します。また、次の方法でもEBITDAを計算することができます。

EBITDA=経常利益+支払利息+減価償却費
EBITDA=税引前当期純利益+特別損益+支払利息+減価償却費

EBITDAを計算した後でEV/EBITDAを求めます。なお、EV/EBITDAを類似企業比較法の評価倍率とすることは多く、日本だけでなく海外でも用いられます。

PER、PBRを用いる場合

PERやPBRは、上場企業ならすでに計算した状態で公開されているため、使いやすいというメリットがあります。企業の有価証券報告書などでも表示されていますが、証券会社の企業ごとの株価推移のページでも確認できます。計算式は以下のとおりです。

PER=株価÷1株あたりの利益

PBR=1株あたりの純資産÷1株あたりの利益

たとえば株価が800円、1株あたりの利益が100円、1株あたりの純資産が200円であれば、PERは8倍、PBRは2倍です。

4.ディスカウントを実施する

算出した対象企業の企業価値は、そのままでは用いません。参考にした企業がいずれも上場企業であるため、企業規模や流動性を考慮して1~3割程度のディスカウントを実施します。

ディスカウントにより、企業規模などに合わせた現実的な企業価値を算出できるようになりますが、ディスカウントの割合が決まっているわけではないため、数字を大きく操作することが可能です。これは類似企業比較法のメリットでもあり、デメリットともいえるでしょう。

また、1~3割のディスカウントを実施したあと、さらにいくらかディスカウントすることもあります。これは非上場企業の株式を現金化するための費用の分で、この際にも恣意性が働き、企業価値が意図的に変更される可能性があります。

自社の企業価値を類似企業比較法で算出するときは、数字に客観性を持たせるためにディスカウントの根拠を明らかにしておくことが必要です。また、現金化のための費用についても同様です。実際にどの程度のコストがかかるのかを調べ、現実的な数字として提示するようにしましょう。

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類似企業比較法の計算例

ここでは、PER・PBR・EV/EBITDA倍率・売上高倍率を用いた計算例を挙げます。一般的に、バリュエーションには、株主資本価値と企業価値の2つの指標があります。今回は、株主資本価値の計算例となります。

ここではX社を対象とし、類似したY社を比較対象として考えます。以下がX社とY社の財務数値です。

X社Y社
損益計算書(一部抜粋)
売上高1億円100億円
減価償却費600万円15億円
営業利益5,000万円25億円
当期純利益2,000万円20億円
貸借対照表(一部抜粋)
有利子負債5,000万円20億円
純資産9,000万円80億円

Y社の株式に関する情報は次のとおりです。

  • 株価 2,000円
  • 発行済株式総数 5百万株
  • 株式時価総数 100億円

この条件のもと、PER・PBR・EV/EBITDA倍率・売上高倍率を用いて株主資本価値を算出します。

PERを用いた株主資本価値の算出方法

PERを用いた計算式は以下のとおりです。

X社株主資本価値=PER×X社の当期純利益
PER=Y社株式時価総額÷Y社の当期純利益=100億円÷20億円=5.0
X社株主資本価値=5.0×2,000万円=1億円

したがって、X社の株主資本価値は1億円です。

PBRを用いた株主資本価値の算出方法

PBRを用いた計算式は以下のとおりです。

X社株主資本価値=PBR×X社の純資産
PBR=Y社株式時価総額÷Y社の純資産=100億円÷80億円=1.25
X社株主資本価値=1.25×9,000万円=1億1,250万円

したがって、X社の株主資本価値は1億1,250万円です。

EV/EBITDA倍率を用いた株主資本価値の算出方法

EV/EBITDA倍率を用いた計算式は以下のとおりです。

X社株主資本価値=EV/EBITDA倍率×X社のEBITDA–X社の有利子負債価値
EV/EBITDA倍率=(Y社株式時価総額+Y社の有利子負債)÷(Y社の営業利益+Y社の減価償却費)=(100億円+20億円)÷(25億円+15億円)=3.0
X社株主資本価値=3.0×(5,000万円+600万円)–5,000万円=1億1,800万円

したがって、X社の株主資本価値は1億1,800万円です。

売上高倍率を用いた株主資本価値の算出方法

売上高倍率を用いた計算式は以下のとおりです。

X社株主資本価値=売上高倍率×X社の売上高
売上高倍率=Y社株式時価総額÷Y社の売上高=100億円÷100億円=1.0
X社株主資本価値 =1.0×1億円=1億円

したがって、X社の株主資本価値は1億円です。

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類似企業比較法を利用して行われたM&Aの事例

この章では類似企業比較法を利用して行われたM&Aの事例について解説します。

SBIホールディングス株式会社による株式会社新生銀行のTOB

SBIホールディングスによる新生銀行への敵対的買収は、2021年に行われました。「株式会社新生銀行株式(証券コード:8303)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」によると、SBIは新生銀行の発行済み株式の19.85%を所有しており、TOBを通じて買い増す意向でした。

新生銀行は買収防衛策をとり、金融庁もこれを認めました。この買収は、通常ではない異例の事前通告なしの敵対的買収で、日本の金融業界において注目を集めました。

株式会社新生銀行

新生銀行は、1952年に日本勧業銀行と北海道拓殖銀行を独立させて設立された日本長期信用銀行が前身です。1998年に破綻し、金融再生法により国有化された後、1999年に米国の投資組合によって買収され、新銀行として再スタートを切った銀行です。

SBIホールディングス株式会社

買収企業であるSBIホールディングスは、オンライン証券や銀行、保険などの金融サービス事業を中心に提供しており、アセットマネジメント事業では主にベンチャー企業に投資しています。また、医薬品や健康食品、化粧品などの開発・販売、新薬の研究開発を手がけるバイオ・ヘルスケア&メディカルインフォマティクス事業も展開しており、これら3つの事業がSBIグループの急成長を支えてきました。現在は、「金融サービス事業」「投資事業」「資産運用事業」「暗号資産事業」「次世代事業」の5つの事業に焦点を当てています。

M&Aの目的

このM&Aの目的は部分買付けを通じて支配権を獲得することでしたが、残存株主に不利益をもたらす可能性があり、公開買付価格が低水準であるとして反対されました。一方で、SBIホールディングスは新生銀行との事業提携を構築・強化するため、連結子会社とする議決権比率を取得することを意図していました。

最終的に、SBIホールディングスは2021年12月にTOB手法を使用して新生銀行を子会社化します。「株式会社新生銀行(証券コード:8303)の株式に対する公開買付けの結果及び子会社の異動に関するお知らせ」より取得価額は約1,138億円と考えられます。

株式価値の算出においては、類似企業比較法での企業価値が市場株価法での企業価値よりも高いという結果が出ました。

参照元:
SBIホールディングス株式会社「株式会社新生銀行株式(証券コード:8303)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ
SBIホールディングス株式会社「株式会社新生銀行(証券コード:8303)の株式に対する公開買付けの結果及び子会社の異動に関するお知らせ

株式会社ニトリホールディングスによる株式会社島忠のTOB

ニトリホールディングスによる島忠のTOBは、2020年12月に発表されました。このTOBは成功し、ニトリホールディングスは2021年1月6日に島忠を子会社にしました。

株式会社島忠

島忠は、1890年創業の島村箪笥製造所が前身です。1960年に有限会社島忠箪笥店として設立され、その後の経緯で「株式会社家具の島忠」、さらに「株式会社島忠」と商号を変更しました。家具やホームセンター商品の小売業を展開しています。

株式会社ニトリホールディングス

譲り受け企業であるニトリは、家具・インテリアの製造・販売大手で、国内外に多くの店舗を展開しています。ニトリは手頃な価格で高品質な商品を提供し、自社ブランドの商品を主力としています。

M&Aの目的

このM&Aの目的は、当時複数の企業が島忠とのM&Aを模索していた中、島忠が有する首都圏の店舗や商品開発、物流網の相互活用などを通じて経営統合を急ぐというものでした。

TOBは2020年12月に実施され、「株式会社ニトリホールディングスによる当社株式に対する公開買付けの結果 並びに親会社及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」から取得価額約1,650億円で島忠を子会社化したと考えられます。島忠の株式価値の算出においては、類似企業比較法などに基づく結果が示されました。

参照元:
株式会社島忠「株式会社ニトリホールディングスによる当社株式に対する公開買付けの結果 並びに親会社及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ

Zホールディングス株式会社による株式会社ZOZOのM&A

Zホールディングス(当時のヤフー株式会社)によるZOZOのM&Aは、2019年9月に発表されました。このM&AでZホールディングスは、ZOZOの株式の50.1%を取得しました。

株式会社ZOZO

ZOZOは1998年に有限会社スタート・トゥデイとして設立されました。日本の主要なファッションブランドを扱うネット通販大手であり、2004年からZOZOTOWNというECサイトを展開しています。

Zホールディングス株式会社

ZOZOを買収したZホールディングスは、ソフトバンクグループの一員である持株会社です。グループ全体での協力を促進し、AIやIoTなどの新しい技術を駆使したサービスに注力しています。

M&Aの目的

M&Aの目的には、企業の成長戦略、競争力の向上、新規事業の展開、シナジー効果の追求、市場シェアの拡大、コスト削減、リスク分散などが含まれます。ZOZOの場合、ヤフーによる買収はEC事業の強化を意味し、双方のシナジーを活かして新技術やサービスの開発に注力することが主眼でした。同時に、ZOZOの買収により、ヤフーはEC市場での競争力を高め、市場シェアの拡大を狙いました。

ヤフー、TOBでZOZOを子会社化へ」によると、2019年11月に行われたTOBにより、ZホールディングスはZOZOを子会社化し、譲渡金額は約4,007億円となりました。ZOZOの株式価値は、類似企業比較法で算出した結果、市場株価基準法よりも高い値となり、DCF法での株式価値とほぼ同等であることが確認されました。

参照元:日本経済新聞「ヤフー、TOBでZOZOを子会社化へ

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まとめ

M&Aを進めていくにあたっては、まずは自社の企業価値を算出することが必要です。とりわけ非上場企業は時価総額などの具体的な数字がないため、実情に近い数字を算出することが求められます。

企業価値を算出する方法のなかでも、類似企業比較法は比較的利用しやすい方法です。しかし、企業の固有の性質を反映できないなどのデメリットがあります。

客観的に企業価値を算出するには、M&Aの専門家に依頼することをおすすめします。まずはM&Aの専門家であるM&A仲介会社に相談してみましょう。

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レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社には、各領域の専門性に長けたコンサルタントが在籍しています。企業価値の算出にも対応しており、M&Aご成約まで一貫したサポートを提供することが可能です。安心かつ円滑なM&Aを実現します。

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