このページのまとめ
- 適格分割とは、法人税法に定められた要件を満たした会社分割のこと
- 適格分割では、資産や負債を簿価で分割先会社が簿価で引き継ぐことができ、げたり法人税の課税を繰り延べられるれたりする
- 適格分割とみなされるためには、要件をすべて満たす必要がある
- スピンオフ分割でも、要件を満たせばすことで適格分割と認められ税制上の優遇を受けられるれる
- 適格要件は複雑であるため、専門家のサポートを受けることが大切
会社分割を行った場合、資産や負債が時価で評価されることになるため、損益が発生し、法人税などが課税されることになります。
しかし、税制上の要件を満たして適格分割に該当する会社分割にすれば、税制上の優遇を受けることが可能です。税制上の優遇を受けることで、資産や負債を分割先会社に簿価で引き継ぐことができ、法人税が繰り延べられます。
会社分割を適格分割とするためには、さまざまな要件を満たす必要があります。要件を満たせない場合は、非適格分割となるため、税制上のメリットを受けることができません。
本記事では、適格分割に該当するための適格要件について詳しく解説します。2017年の税制改正によって新たに適格分割に該当することになったスピンオフ分割についても解説します。
適格分割を行うにあたって、ぜひ参考にしてください。
目次
会社の適格分割・非適格分割とは
会社分割は、企業が事業部門や子会社を独立させるプロセスです。
会社分割は、その後の支配関係や特定の要件に基づいて、適格分割となる会社分割と非適格分割となる会社分割の2つに分類されます。
適格分割となる会社分割と非適格分割となる会社分割は、引き継ぐ資産の計算方法、課税の扱いなど、多くの点で異なります。
適格分割とは、特定の要件を満たした会社分割のことを指し、日本では企業の組織再編行為を活性化させることを目的として2001年に導入された税制優遇制度です。
特定の要件を満たした会社分割は、税制上の優遇として課税が繰り延べられます。
適格分割に該当するためには、分割後の支配関係の継続、分割事業に関する主要な資産および負債の承継、従業員の引き継ぎ、事業の継続など複数の要件を満たさなければなりません。
適格分割が行われると、税法上の優遇措置が適用され、資産の移転が帳簿価額で行われるため、譲渡損益の計上が繰り延べられます。これにより、税負担が軽減される可能性があります。
それでは、どのような要件を満たせば、適格分割に該当するのでしょうか。
会社分割が適格要件に該当するための要件について、以下の3つの場合に分けて、詳しく解説していきます。
- 完全支配関係がある(100%グループ内の)場合の適格分割の要件
- 支配関係がある(50%超100%未満の)場合の適格分割要件
- 支配関係がない(共同事業の)場合の適格分割要件
完全支配関係がある(100%グループ内の)場合の適格分割の要件
会社分割において、完全支配関係(100%グループ内)がある場合の適格分割の要件には、特定の条件が設けられています。これらの要件は、分割対価や支配関係の継続などに関わるもので、分割後の税務処理に大きな影響を与えます。
以下では、これらの要件と具体的な適用例を紹介し、それぞれの要件がどのような状況で満たされるかを解説します。
要件 | 概要 | 適用の具体例 |
金銭等不交付要件 | 分割対価として株式以外の資産が交付されないこと | 分割対価が株式のみであれば要件を満たす。 現金使用時は不適格 |
継続保有要件 | 分割前後の完全支配関係の継続 | 株式売却予定がなければ適格。 M&Aによる譲渡計画時は不適格 |
このように、完全支配関係がある場合の適格分割は、分割対価の性質と分割後の支配関係の継続性に大きく依存します。適格分割に該当するためには、これらの要件を満たす必要があり、それにより税務上の優遇措置を受けることが可能になります。
支配関係がある(50%超100%未満)場合の適格分割要件
会社分割において、支配関係がある(発行済株式の50%超100%未満を保有)場合の適格分割要件は、分割対価の性質、継続する支配関係、従業者の引き継ぎ、事業の継続性、および主要な資産と負債の引継ぎに関連しています。これらの要件は、適格分割に該当するかどうかを決定し、税務上の扱いに重要な影響を及ぼします。
以下に、これらの要件と適用例を紹介し、適格分割がどのような状況で適用されるかを説明します。
要件 | 概要 | 適用の具体例 |
金銭等不交付要件 | 分割対価として株式以外の資産が交付されないこと | 株式のみ:適合、 現金使用:不適合 |
継続保有要件 | 分割前後の支配関係の継続 | 支配関係維持:適合 解消予定:不適合 |
従業者引継要件 | 約80%以上の従業者の引き継ぎ | 95%引継ぎ:適合 |
事業継続要件 | 分割事業の継続 | 事業継続:適合 |
主要資産負債引継要件 | 主要資産・負債の移転 | 主要資産・負債移転:適合 |
これらの要件を満たすことで、適格分割として認められ、税務上の優遇措置を受けることが可能になります。適格分割は、税負担の軽減や組織再編の効率化に有効ですが、その適用条件は厳格であり、各要件の詳細な検討が必要です。
支配関係がない(共同事業)場合の適格分割要件
共同事業における適格分割要件は、税務上の特別な取り扱いを受ける条件を定めています。このケースでは、分割法人と分割承継法人間の明確な支配関係が存在しない共同事業の状況を対象としています。支配関係がない場合の適格分割要件は、分割対価の性質、分割後の資産の継続保有、従業者の引き継ぎ、事業の継続性、主要な資産・負債の移転、事業関連性、さらには規模要件や経営参画要件にまで及びます。
以下に、これらの要件と適用例を紹介し、適格分割がどのような状況で適用されるかを説明します。
要件名 | 概要 | 適用の具体例 |
金銭等不交付要件 | 分割対価として株式のみが交付されること。金銭や他資産の交付は不適合。 | 分割対価として「分割承継法人の株式」のみであり、要件を満たす。 |
継続保有要件 | 分割承継法人の株式または親法人株式が全て分割法人により継続保有されることが見込まれる。 | 分割後の全株式の継続保有が見込まれている。 |
従業者引継要件 | 分割事業に従事する従業者の80%以上が分割後も業務に従事すること。 | 分割直前の従業者100名中95名が引き続き従事する予定。 |
事業継続要件 | 分割事業が分割後も継続されること。 | 分割後も事業が継続される予定。 |
主要資産負債引継要件 | 分割事業に関連する主要な資産及び負債が分割承継法人に移転すること。 | 主要資産及び負債が移転される。 |
事業関連性要件 | 分割事業と分割承継法人の事業が相互に関連していること。 | 例: 製造卸売事業と販売業が一体となって流通網を構築。 |
規模要件 | 分割事業と関連事業の売上高や従業者数が5倍以内であること。 | 例: 従業者数が100名と300名で5倍以内。 |
経営参画要件 | 分割法人の役員等と分割承継法人の特定役員が分割承継法人の特定役員となることが見込まれていること。 | 分割法人の取締役が分割承継法人の経営に参画する見込。 |
※規模要件と経営参画要件はいずれかの要件を満たせばよい
税制適格要件のまとめ
以下の表は、これまで説明してきた以下の3つのケースごとの要件をまとめたものです。
- 完全支配関係がある(100%グループ内の)場合の適格分割の要件
- 支配関係がある(50%超100%未満の)場合の適格分割要件
- 支配関係がない(共同事業の)場合の適格分割要件
なお、後述するスピンオフの場合の適格分割要件についても、こちらの表でまとめています。
要件 | 100%グループ内 | 50%超100%未満 | 50%以下(共同事業) | スピンオフ |
1. 分割対価要件 | ○ | ○ | ○ | ○ |
2. 継続支配要件 | ○ | ○ | ○ | |
3. 主要資産等引継要件 | ○ | ○ | ○ | |
4. 従業員引継要件 | ○ | ○ | ○ | |
5. 事業継続要件 | ○ | ○ | ○ | |
6. 事業関連性要件 | ○ | |||
7. 規模要件または経営参画要件 | ○ | ○ |
この表が示しているように、会社分割の際の税制適格要件は、分割のタイプ(100%グループ内、50%超100%未満のグループ内、50%以下の共同事業、スピンオフ)ごとに異なっています。
表における「○」マークは、そのタイプの分割においてその要件が適用されることを示したものです。例えば、「分割対価要件」はすべてのタイプに適用されますが、「継続支配要件」は100%グループ内と50%超100%未満のグループ内での分割にのみ適用されることがわかります。また、「事業関連性要件」は50%以下の共同事業における分割でのみ必要とされています。
スピンオフ分割
事業再編をさらに円滑化することを目指して、2017年の税制改正で導入されたのがスピンオフ税制です。2017年の税制改正は、企業が事業の選択と集中を進める上で、グループ内で必要とされない事業やシナジーが見込めない事業を切り離しやすくすることを目的としたものです。
スピンオフ税制は、組織再編行為のうち、会社分割の手法を用いて行われることから、スピンオフ税制を利用して行われる会社分割を「スピンオフ分割」と呼びます。
スピンオフ分割には主に2つの方法があります。
第一に、特定の事業を新設分割型分割(新しく会社を設立し、その会社に特定の事業を分割する会社分割)によって切り出し、その新設会社が発行する株式を元の会社(A社)の株主に直接交付する方法です。会社法上は、新設会社株式がいったんA社に交付され、その後、A社の株主に現物配当として交付されるという整理になります。
第二に、特定の事業を新設分社型分割によって切り出し、その新設会社株式を現物配当によってA社の株主に交付する方法があります。
どちらの方法も、分割対価として新設会社の株式のみが交付され、分割後にA社および新設会社とA社の株主との間に支配関係が生じないことが特徴です。
スピンオフ分割による組織改編には、次のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット |
元の会社は自社の中核事業に専念できる | スピンオフされた従業員のモチベーションが下がる恐れがある |
企業価値を下げずに事業や子会社を切り離せる | 不採算事業として切り離された場合、収益化が難しい可能性がある |
新設会社は元の会社に縛られずに、迅速かつ柔軟な意思決定ができる | 元の会社との資本関係が継続するため、重大な意思決定において、元の会社の意向が反映されることもある |
企業の事業全体ではなく、スピンオフした事業のみに興味がある投資家を惹きつけられる | 経営者にとってスピンアウトにかかる手間への対価が低く、事業譲渡やカーブアウトの方が効率的な場合がある |
スピンオフ分割のメリット
スピンオフ分割は、会社が一部の事業や子会社を独立させる戦略的な手法であり、さまざまなメリットがあります。
- 中核事業への集中
- 企業価値の維持
- 迅速な意思決定
- 新しい投資家層の獲得
スピンオフにより、元の会社は自社の中核となる事業に集中し、事業運営の効率化を図ることができます。そのため、企業の競争力強化と経営資源の最適化が期待できます。
またスピンオフは、企業価値を損なうことなく特定の事業や子会社を切り離すことが可能です。株主には新設会社の株式が交付され、保有する資産の価値は理論上変わりません。
新設会社は元の会社の枠組みから解放されるため、より迅速かつ柔軟な意思決定が可能になります。そのため、新しい市場の機会を素早く捉え、成長を加速できる可能性があります。
スピンオフによって独立した事業に特化した新設会社は、その事業分野に興味を持つ新しい投資家を引きつけることができます。そのため、資金調達や事業拡大の機会が拓けます。
スピンオフ分割のデメリット
スピンオフ分割を活用することには多くのメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあるので注意が必要です。
- 従業員のモチベーション低下
- 収益化の難しさ
- 元の会社の意向の影響
- 手間と効率性の問題
スピンオフされた従業員は、元の会社から切り離されることで、所属意識の低下やモチベーションの低下を感じる可能性があります。そのため、業績への影響が懸念されます。
また、不採算事業をスピンオフする場合、新設会社が独立しても収益を上げることが難しい場合があります。資源や市場の制約により、事業再生が困難になる可能性があります。
スピンオフ後も元の会社との資本関係が継続する場合、新設会社の重要な意思決定に元の会社の意向が反映されることがあります。そのため、新設会社の独立性が制限される恐れがあります。
スピンオフ分割の適格要件
スピンオフ分割は、適格分割型分割と適格株式分配の要件の2つに分けることが可能です。
適格分割型分割の要件
スピンオフ分割のなかでも、適格分割型分割は、企業が自社内の特定の事業部門や子会社を独立させる際の会社分割で、税務上の課税繰延べを受けることができる条件を満たす必要があります。この分割においては、分割後も継続的に事業を運営できるようにするための一定の要件が設けられています。
以下は、適格分割型分割を行う際に満たすべき主な要件をまとめたものです。
要件 | 説明 |
非支配要件 | 分割前後での他者による支配関係がないこと |
株式のみ按分交付要件 | 分割による株式が全て株主に比例して交付されること |
主要資産等移転要件 | 分割事業の主要資産・負債が承継されること |
従業者引継要件 | 80%以上の従業者が分割後も引き続き働くこと |
事業継続要件 | 分割事業が分割後も継続されること |
役員引継要件 | 分割法人の役員または重要な使用人が分割承継法人の特定役員となること |
これらの要件は、分割を行う企業が計画段階から慎重に検討し、適格分割の条件を満たすように進めることが重要です。適格分割に該当しない場合、分割による資産移転で課税されるリスクが高まるため、税務上の影響も含めた総合的な検討が必要になります。
適格株式分配の要件
適格株式分配は、企業が100%子会社の株式を自社の株主に配当することで、子会社を独立させる方法です。この過程で税務上の課税繰延べを受けるためには、一定の要件を満たす必要があります。以下に、適格株式分配を行う際に満たすべき主要な要件を示します。
要件 | 説明 |
非支配要件 | 分配の直前・直後で他者による支配関係がないこと |
株式のみ按分交付要件 | 完全子会社の株式のみが持株比率に応じて交付されること |
従業者継続要件 | 80%以上の従業者が引き続き完全子会社で働くこと |
事業継続要件 | 完全子会社の主要事業が引き続き営まれること |
役員継続要件 | 特定役員が全て退任するものでないこと |
適格株式分配に該当することで、分配法人は帳簿価額により子会社株式を譲渡したものとして処理し、譲渡損益は計上されません。また、子会社株式を受け取る株主側においても、課税関係は生じません。これにより、企業は税務上有利な条件のもとで子会社の独立を進めることができます。
適格株式分配は、企業グループの再編や組織の合理化を目的とした戦略的な手段として利用されます。税務上の適格要件を満たすことで、これらの再編を税務上の負担なく実行することが可能となります。
非適格分割
スピンオフ分割を含め、適格要件を満たさないような会社分割による組織再編行為は、原則としてすべて非適格分割となります。
したがって、非適格分割とは、適格分割の要件を満たさない会社分割のことです。
非適格分割に該当した場合、資産は時価で引き継がなければなりません。その際、時価と簿価の差額に法人税が課税され、分割会社の株主にはみなし配当の課税義務が生じます。
みなし配当課税とは?
みなし配当とは、実際の配当ではないものの、税務上配当と同様とみなされる収益のことです。非適格分割や分割型分割で承継会社から交付された株式の合計額が、分割会社に譲渡した資本金額を超える場合、その差額がみなし配当になります。
みなし配当と認められると、分割会社の株主がその分の課税義務を負わなければなりません。
分社型分割と分割型分割の違い
会社分割とは会社の一部の事業を分割して、他社に譲渡することです。事業譲渡と混同しがちですが、事業譲渡は事業の関連資産を個別に売買するのに対し、会社分割は事業を包括的に移転できるという違いがあります。そのため法務手続きも会社分割の方が容易ですが、引き継ぐ側は、不要な資産を引き継ぐ可能性がある点はリスクと言えるでしょう。また基本的に事業譲渡の対価は現金になりますが、会社分割の場合は新しく発行した株式を対価とする点も異なります。
会社分割には、新しく会社を立ち上げてそこで切り離した事業を運営する「新設分割」と、既存の他の会社に切り離した事業を引き継がせる「吸収分割」があります。
さらに会社分割は、対価の支払先の違いによって、以下の2つに分類することもできます。
- 分社型分割
- 分割型分割
両者の違いについて、以下で解説していきます。
分社型分割
分社型分割とは、分割の対価として、分割会社に承継会社の株式を交付する会社分割のことです。物的分割と言われることもあります。
分割型分割
分割型分割は、分割の対価として「分割会社の株主」に、承継会社の株式を交付する会社分割のことです。人的分割と言われることもあります。分割型分割では、分割会社には対価が支払われません。
なお、2006年に施行された会社法によって、分割型分割は廃止されました。しかし、分社型分割に剰余金の配当を組み合わせることで、実質的に分割型分割と同様の効果を得られます。つまり、分割型分割に関する規定は法律で明記されていないものの、分割型分割と同様の会社分割を実施することができます。
会社分割の適格分割の要件
最後に、会社分割において適格分割となるための要件を一つずつ解説していきましょう。
金銭・資産などの支払い(分割対価要件)
会社分割における適格分割の基準として、「金銭・資産などの支払い」は重要な要件です。この要件は、分割対価として、承継会社の株式、あるいは承継会社の完全親法人の株式以外に、金銭やその他の資産が交付されないことを求めています。このルールの背景には、会社分割を利用した不当な利益の移転や、税逃れを防ぐ意図があります。
しかしながら、例外も存在します。たとえば、分割によって生じる株式の端数に関する買取り、または分割に反対する株主への買取り請求に対応した金銭の支払いは、適格分割の要件を侵害しないとされています。このような例外を除き、会社分割においては、分割対価として承継会社の株式を利用することが、適格分割の要件を満たすための鍵となります。
移転事業の資産・負債の引き継ぎ(主要資産等引継要件)
分割会社から承継会社への主要資産及び負債の移転も、会社分割の適格要件のひとつです。この要件は、分割される事業の主要な経済活動が承継会社によって継続されることを保証するために設けられています。事業の継続性を保つためには、その事業に係る主要な資産と負債が適切に承継される必要があります。この要件は、分割による事業の断絶を避け、事業活動の円滑な移行を促すために重要です。
分割会社の主要な資産や負債を移転していることも、要件の1つです。移転事業の資産・負債の引継ぎ要件は、支配関係、支配関係なしの場合に適用されます。
80%以上の従業員の引き継ぎ(従業者引継要件)
会社分割の際には、承継会社が分割会社の従業員のうち80%以上を引き継ぐことが要求されます。この要件は、分割によって影響を受ける従業員の雇用の安定を図るために設定されています。従業員の大幅な削減を伴う会社分割は、従業員のモチベーションの低下や、事業継続性の損なわれる原因となり得るため、このような規定が設けられています。分割によって引き継がれる従業員に対する労働条件の変更には特に注意が必要であり、事前の協議を通じて、従業員の理解と合意を得ることが求められます。
事業の継続見込み(移転事業継続要件)
会社分割において、分割会社の事業が承継会社により継続される見込みがあることは、適格分割の要件の一つです。この要件は、分割後も事業が存続し、成長する可能性を秘めているかどうかを評価する基準となります。適格分割の枠組み内で事業を引き継ぐためには、承継会社がその事業を効果的に運営し、発展させる能力があると見込まれる必要があります。この評価には、対象事業の市場での競争力、将来的な収益性、成長戦略の実現可能性などが含まれます。
事業の継続性を保証するために、分割計画の初期段階で事業の将来性を詳細に分析し、事業計画を慎重に策定することが求められます。また、事業が承継会社によって継続されるためのリソースや能力が確保されているかも、この要件を満たすために重要なポイントです。
分割会社の事業が、会社分割後も承継会社によって引き続き行われる見込みがあることが必要です。
事業の継続見込み要件も、支配関係、支配関係なしの場合に適用されます。
事業の関連性(事業関連要件)
分割会社と承継会社の事業間に相互の関連性があることは、特に支配関係がない場合の分割で重要な要件です。この要件は、分割される事業が承継会社の既存事業とシナジーを生み出し、事業の相乗効果を高める可能性があるかどうかを評価します。事業間の関連性は、リソースの共有、技術の融合、市場戦略の統合など、多岐にわたる側面で見られます。
事業関連性の評価には、分割会社の事業が承継会社の事業ポートフォリオにどのように貢献するか、また、承継会社が分割会社の事業からどのような利益を得られるかを検討するプロセスが含まれます。このプロセスを通じて、事業の統合が双方にとって有益であることを確認することが重要です。
株式継続保有見込み(株式継続保有要件: 共同事業)
適格分割として認められるためには、会社分割前に支配関係があり、分割後も完全支配関係を継続することが必要です。なお、自己株式や無議決権株式は判定の対象から除かれます。
いずれの支配率であっても求められる適格要件です。
なお、分割会社が1社の新設分割の場合は、分割前の要件は満たしているとみなされるため、分割後の支配関係継続のみが求められます。
この要件を満たすためには、分割後も承継会社の株式を継続して保有するようにしましょう。
同等規模の制限(選択要件1: 事業規模要件)
適格分割を行う際には、分割前の支配関係が分割後も継続することが求められます。この要件は、分割によって生じる経済的結びつきが分割後も保持されることを保証し、事業の安定性と持続可能性を確保するために設定されています。特に、分割によって新たに設立される承継会社の株式が、分割前の株主によって継続して保有されることが期待される場合、この要件が適用されます。
支配関係の継続は、分割後の事業戦略や意思決定プロセスにおいて、安定した経営基盤を維持するために重要です。また、分割後も承継会社の株式を継続して保有することは、分割による事業の再編成が株主の利益に資することを示す指標ともなり得ます。
双方役員の経営参画制限(選択要件2: 経営参画要件)
双方役員の経営参画制限とは、分割前の分割会社の特定役員1人以上、承継会社の特定役員1人以上が、それぞれ分割後の分割会社の特定役員となることが見込まれていることです。
特定役員とは、社長、副社長や代表取締役、専務取締役、常務取締役や代表執行役、またはこれに準ずる役員のことを指します。
支配関係なしの場合に適用される要件です。
同等規模の制限と双方役員の経営参画制限は、どちらかを満たせばよいという選択要件であるため、クリアしやすい方を選ぶようにしましょう。
まとめ
会社分割を行う際は、税務上のメリットが大きい適格分割に該当するようにしましょう。適格分割とみなされることで、資産を簿価で引き継げるため、課税が発生しません。
ただし、適格分割と認められるためには、資産・負債の引き継ぎや金銭の交付、従業員の引き継ぎといった複数の要件を満たす必要があります。支配関係ごとに要件が細かく設定されているため、要件を満たしているか慎重にチェックしたうえで、会社分割を実行しましょう。
また、スピンオフ分割が適格分割とみなされるためには、同様に適格要件を満たす必要があります。
適格分割を自社だけで行うのはハードルが高いです。適格分割を行う際は、専門家のサポートを受けることがおすすめです。
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